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サウンド・ストリート 1984.1.19

山下: ついに、3週目に突入いたしまして、2週のつもりが、3週目になったよというわけでございますが、今日も大滝詠一さんをお招きいたしましてあれこれと、

大滝: これがまた、また、お邪魔します。

山下: 今年に入ってずっと、テーマは「悲しみのジョディ」という曲をかけておりますが、

大滝: これ、今年に入ってからだったっけ?

山下: テーマはまだつくってないんですよね、「つくろう、つくろう」と思ってるんだけど。

大滝: テーマをつくりなさいよ。

山下: はい、すいません。これも元々どっかのテーマだったんですけどね。どっかの評論家がね、新聞に書いてありましたけど「日本で初めて全曲裏声で歌った流行歌」なんだって。

大滝: すごい肩書きですね。

山下: ついに流行歌になったかというね。本当はそれ、嘘なんだよね。裏声で歌った曲って、前にもあったでしょ?

大滝: 全曲?うーん、なんですかね。

山下: あるでしょう?「流行歌」って見地でいえばね。

大滝: あー、「流行歌」という見地で。でも全部ってのはないんじゃないですか?「夜明け前の浜辺」以来じゃないですかね。あれが「流行歌」かどうかは知りませんけれども。

山下: というわけで、今日、大滝詠一さん1曲目、「青空のように」。

 曲:

大滝詠一/青空のように

山下: 1978年のシングル・カットでございますな。

大滝: 77年。

山下: 77年ですか、そして78年にリリースされました「ナイアガラ・カレンダー」の中に収められている、リミックスのし直しでございますね。

大滝: 81年にリミックスしました。後半の方で「『アー』っていってるのが誰か」って、昔ハガキが来たことがある、放送やってたときに、「あれがとっても好きで」って、これはなんと、クレジットはしませんでしたけども、山下達郎君でございます。

山下: 「ナイアガラ・カレンダー」と、あと、その前のLPかな、クレジットがないLPが多いですよね、大滝さんって。

大滝: 山下君だけ特にはずしたというね。この弦アレンジも、この当時は、クレジットなしでもやっていただいた。

山下: そんなんばっかり。ブラスもやってんだよね、確か。

大滝: ブラスもやってもらいました。「トゥパーパ」ってやつね。フリーダム・スタジオでね、一生懸命、横で忙しそうに書いていたのを、ほんとに昨日のように思い起こされる今日このごろではございます。

山下: この次の曲は、大滝さんのたっての要望で、僕はあんまり聴きたくないんですけども、「ナイアガラ・トライアングル」に入っております「フライング・キッド」という曲で、だいたい、なんで3週間やっているかというと、大滝さんがいるところで、大滝さんの曲をかけて、照れる顔を見たい、これだけなんです。

大滝: 実はその逆の立場にも立ってみたいというのでね。

山下: あんまり立ちたくないのですが、「ナイアガラ・トライアングル」で私がつくった曲の中で一番なんかみょーちくりんな、

大滝: この中でね、あんたがつくった中でほんとに一番みょーな曲なんじゃない?後にも先にも、みょーな曲って、これっきゃないんじゃない?

山下: なかば企画倒れというね。

大滝: それがね、そういう物がね、僕が「1941」が好きなようにね。

山下: もともとね、デキシー・カップスみたいなことをやってみたかったわけ。

大滝: えー、どうして?

山下: 要するに、しゃべりでもってって…。

大滝: ほー、シャングリラスじゃないの?

山下: ごめん、ごめん。まちがえた。シャングリラスね。そういうことをやってみたくてつくった曲なんですよ、これは。

大滝: 君の発想はわからないね。説明を聞くまでは。説明されてはじめて分かるというね。「聞いてみたからわかったよ」ってね。これはもう山下君の代名詞ですね。

山下: すみません。

 曲:

山下達郎/フライング・キッド

山下: もうね、6年ぶり位ですよ、この曲聴いたの。

大滝: 久しぶりだね。今、録音してたころを思い出したね。僕はだいたいノスタルジックな人間だから、いろんなことを、そのものについて、付随した想いが一挙によみがえってくるんだけどね。夜中に上原ユカリが一生懸命汗かきながら、必死にドラムを叩いててね。

山下: 1976年に、22歳のこどもがね、バリー・マンとシャングリラスをくっつけた曲をつくろうと思ってやってるんだから、そんなのどこにもいなかっただろうね。

大滝: ひねてたね。とにかくピアノに向かって、まだ何にもできてない、なんだかよく分かんない「ウォー」って怒鳴ってるのが聞こえるんだけど、どういう歌になるのか、まるでわからなくて、美奈子(吉田)がなんかすごい不思議な詞をつけて、どうやるんだって悩んでて、「ブルー・ブラックの朝は溶け出したー」って、これがね、銀次と2人でよるといつもいってたね、これが。「ブルー・ブラック」って。

山下: 「なんだかよく分かんない」って?

大滝: うーん、よく分かんない。これはでも、不思議に67年っぽいね。70年より2〜3年前って感じ。

山下: 福生のスタジオの音がしてます。福生のスタジオの音っていうのが、完全に60年代の音なんですよ。「ドリーミング・デイ」とか聴けば、今、ステージで「ドリーミング・デイ」やってるんですよね。

大滝: あれ、ニュー・オリンズっぽいと思わない?

山下: だから、僕はあれが唯一、ニュー・オリンズ・フレーバーをつくろうと思ってやった曲なんです。

大滝: あそこのスタジオだから?

山下: そう。

大滝: 計算はしっかりしてるね。

山下: 今、ちょっとテンポ遅めてやってるんだけど。

大滝: 「ドリーミング・デイ」やってる?

山下: やってる。

大滝: いい歌だもん。本当にいつも会うたび、その話題が出るたび、「誰かカバーすればいいのに」って、いつも思うんだけど。

山下: 声が高いからな。

大滝: 歌が難しいもの、また。

山下: 申し訳ございません。女の人が歌えばいいんだけどね。でもあれ、軽く歌うとつまんない曲なんだよね、張って歌わないとね。

大滝: そうなの、そうなんだよな。「フライング・キッド」のこの実験的な試み。

山下: それ以外何にもないですけど。語りの曲をやりたかったんですよね、あのころ。異常にそれに対して執着心があるわけ。

大滝: 語りに?

山下: うん、銀次と2人で「遅すぎた別れ」ってつくったでしょう。

大滝: やったね。どうして自分で歌わなかったの?語りに執着したんでしょ?

山下: あれはね、村松君とかたくさんいたでしょう。5〜6人いて、「誰が一番語りがうまいか」っていうのを、マイクの前に立ってやったの。

大滝: なぜに、自分の作品なのに退いたのさ?

山下: 銀次の方がうまかったんだよ。みんなそっちの方が雰囲気があるといってたんで…。

大滝: しゃべりたくなくて、逃げただけのことなんじゃないの?

山下: どうしてわかるの。

大滝: 何をいってる。

山下: 自分のことに似てるからでしょう?

大滝: でも面白いもんだね。こうやって、自分の曲がかかった時の顔、そういうふうな顔を、俺もさっきまでしてたんだなと思ったよ。

山下: そういうこと。というわけで、今日もまた珍しいレコードをいろいろとかけてみたいと思います。

大滝: これがまた。

山下: ジャッキー・デシャノン。

大滝: 出たね、ジャッキー・デシャノン、本当に好きだね。

山下: 好きです。

大滝: 山下達郎は、なぜにこのジャッキー・デシャノンが好きかと、ブルー・コメッツにいた人じゃないよ。「悲しき街角」の人でもないんだけどさ。

山下: 何ででしょうね、ジャッキー・デシャノンという言葉の響きがいいんですね。

大滝: ご名答だね。

山下: 金髪であの声っていうのがね。

大滝: えっ!初耳!「金髪」って初めて僕の前でいったでしょう?

山下: そう?

大滝: そういうふうな言葉聞くの初めて。だって、女性についてとかって、一切語ったことないんだから、照れてるけど。

山下: 大滝さんだって似たようなもんじゃない。

大滝: なにー、何だ、まずいな、おい。とばそう。それでさ、ジャッキー・デシャノンがなぜ好きか、歌声、顔が好きなのかねぇ?

山下: 結局、今から考えるとジャッキー・デシャノンのバック・グラウンドがよかったんですよね。ジャック・ニッチェがアレンジしてさ、あれを聴いたときは、全然そうは思わなかったんだけど。

大滝: 今にして思えば。

山下: そうなの。結局、僕がなんでプロデューサーとか作家が好きだったかというと、全部追体験なわけですよ。いいなと思った曲が、全部バリー・マンだったからバリー・マンが好きなわけね。

大滝: これちょっと若い人に聞いてもらいたいね、追体験について。

山下: 当時、僕が17、18のころ、有線とかあってさ、ラジオとかあるでしょ、そこでかかって、ドラムが「スッテテントンツカタントン」って、かっこいいドラムなんですよ。全部ハル・ブレインだったんですよね。だから、誰がなんといおうと、未だに好きなドラマーは誰かというと、ハル・ブレインなんですよ。それはもう、「ストレンジャーズ・イン・ザ・ナイト」から、ボーグスのレコードから、バーズのあれから、モンキーズから、アソシエーションズ、いわずもがなロネッツからクリスタルズまで、みんなそうなわけでしょ、アール・パーマーがやってるのもあるけど。でも、もうハル・ブレインですよ、そしてとどめが「マッカーサー・パーク」だったわけですよ。だから、そういうのと近いですね。プレストン・エップスの「ボンゴ・ロック」ってすごい好きだったの。

大滝: あったねー、「ジャントコダカトコダカ」

山下: あれ、ジャック・ニッチェなんですよ。変なのやってるでしょ。あと、「ドント・メイク・バイ・ベイビー・ブルー」ってのがあるでしょ、フランキー・レイの。

大滝: ありましたねー、バリー・マンの。

山下: あれ、バリー・マンの曲で、ジャック・ニッチェがアレンジしてるって、この間まで知らなかったの。シングル盤やっと手に入れて、「パッ」と見たらジャック・ニッチェ、アレンジってあって、「なんだそうなんだ」と。僕そんなんばっかりなんですよ。大滝さんもそうでしょ?

大滝: うーん、バリー・マンとジャック・ニッチェだ、とにかく。

山下: そうだね、まぁ、他にもあるけど。

大滝: 10年間、それを変わらずにいい続けているこの姿がね、10年前をまた思い出したね。

山下: 青春なんですよ。というわけで、このジャッキー・デシャノンの曲ではなくて、まさにジャック・ニッチェとそれからソニー・ボノの曲で、僕、これね、ジャッキー・デシャノンの曲だと思ってんですよね。異様にジャッキー・デシャノンの曲のつくり方に似てるんですよね。だから僕ずっとジャッキー・デシャノンの曲だと思ってたんだけど。

大滝: そういうね、正直な発言って好きだね。

山下: そう?で、プロデュース、アレンジがジャック・ニッチェで、これはもうサーチャーズの「ニードルズ・アンド・ピンズ」よりこっちの方が好きですよね。

大滝: これはもう、ほとんどかなわないね。

山下: 格が違うという雰囲気で。

大滝: これがね、フォーク・ロックのはしりだと。62年だったか63年だったか、要するに、フォーク・ロックが出てくる1年くらい前に、このサウンドを、実はジャック・ニッチェがつくっていたというね。

山下: スペクターのパーカッションは、もうほとんどジャック・ニッチェの音が多いんではないかと。リーバー&ストーラーとジャック・ニッチェがプラスしたらスペクターの音になったと。そして、ラリー・レビンのエコーがくっついてきたと。

大滝: そして、ラリー・レビンは(聞き取り不能)を行っただろうな。それで、少しエコー少なめにしてるっていうか、どういうのかな、横にフィル・スペクターがいない分だけ、トゥー・マッチ・エコーじゃないのね。ナチュラルな音に少し、少しでもないけど、加味してあるところ、この違いが、このクリアな部分ってのがまた、スペクター・サウンドと違ったいい音だね。

山下: ラリー・レビン持ってくればよかったな。「ビッグ・ハッツ」とかね。ま、いいや、とにかく、ジャッキー・デシャノンの「ニードルズ・アンド・ピンズ」。

 曲:

ジャッキー・デシャノン/ニードルズ・アンド・ピンズ

山下: というわけで、ジャッキー・デシャノンの「ニードルズ・アンド・ピンズ」、「完全にドリー・パートンだ」といった大滝さんの名言ですね、これは。

大滝: ドリー・パートンだなと思ったね。

山下: なるほどね。

大滝: これがね、僕の独特な時間軸でございましてね。

山下: これが確かに、ポップ・カントリーの系譜にも通じていくというね。

大滝: 本当、今、初めてドリー・パートンといわれても、わかんないかもしれないね。少し、なんか音がちょっと古い感じだなとかいう感じでさ。

山下: そうですね。

大滝: ドラム・ベースが違うだけでさ。ドラム・ベース、これにエコーかぶせたら、もう、すぐじゃないかな。

山下: 多分ね。これ今出したって、売れますね。

大滝: 売れるね、いい曲だから。

山下: 全然話飛ぶんですけど、今日フォー・シーズンズ持ってくるの忘れたんですよ。

大滝: どうして?フォー・シーズンズ。

山下: 大滝さん、フォー・シーズンズで何が一番好き?

大滝: 俺が一番好きなの?うーん、難しいな。俺本当にフォー・シーズンズ好きなんだよ。

山下: なんか1曲出せっていわれたら、何します?

大滝: これがね、ほんっとにね、なんだろうね、俺、ビージェー時代。

山下: あっ、そう?

大滝: 俺は、ビージェー時代なんだよ。それでね、候補がいっぱいあるんだけどね、どうしてもフォー・シーズンズのバージョンの「ハニー・ラブ」だ。

山下: らしいね。

大滝: らしいでしょ。いや、本当はそのB面の「メランコリー」とかいおうかって、その辺はぐっと、あまりにもえげつないからやめて。

山下: 昔、有名な話があったじゃないですか。今、ラッツ&スターのエンジニアしてる助川ってのがいて、これが、京都に当時ビルボードっていう、フォー・シーズンズ・フリークの、

大滝: 神戸でしょ。

山下: 神戸でしたっけ?フォー・シーズンズ・フリークの経営してる店があって、それで、助川は郷里があっちの方なんで、行ってみようってことにして、大滝さんのとこに何か聞きに来た。

大滝: 聞きに来た。

山下: フォー・シーズンズのフリークだから、店行ってナメられちゃいけないから、

大滝: そう。

山下: 「フォー・シーズンズ・ファンが、こういうのを好きだっていったら、ツウだっていわれる曲を教えてくれ」と。それで、なんていったんだっけ?

大滝: そう、で、「ハニー・ラブ」のB面の「メランコリー」と何のB面だったか「スーン」って曲があるの、「インダッタ・シェーム」のB面だったかな、「『スーン』っていう曲と、その『メランコリー』っていう曲が俺は一番好きだ」といったら、「絶対コーヒーかなんか、一杯タダでくる」っていったんだよ。そしたら、本当にきたんだって。

山下: で、きたのはいいんだけど、「久しぶりにそういう事をいってくれる人が来」たっていって、

大滝: そうそうそう。

山下: 家まで連れて行かれて、フォー・シーズンズ片っ端から聴かされて、元々、全然知らない奴だから、わかんなくて、泣きそうになったという話がありますが、それが今、ラッツ&スターのエンジニアをやってるんですが、世も末だという感じがします。

大滝: それはね、大笑いだね。

山下: 僕がね、「フォー・シーズンズで1曲あげろ」っていわれたら、誰がなんといっても「ドーン」なんですよ。「ドーン」の歌詞が好きなんですよ。

大滝: 本当、ロマンチックな人間だね。

山下: フォー・シーズンズの歌詞ってのはね、すべからく、「プアな女の子とリッチな僕」か、「リッチな女の子とプアな僕」なんですよ。で、「プアな女の子とリッチな僕」の一番の典型的な例が「ラグ・ドール」なんですよ。

大滝: 「ラグ・ドール」だね。

山下: そして、「プアな自分とリッチな女の子」の典型的なのが「ドーン」なんだよね。「Think about the future to be with a poor boy like me」って歌詞がね、あれを聴く度に涙が出る。

大滝: 泣けるねぇ。

山下: 持って来りゃよかったなぁ、ちくしょう。

大滝: イントロでもなけりゃ、俺いつもね、朝、高校1年だったんだけど、朝いつも行くときは、「Pretty eyes midsummer's morning」という、「夏の明け方」のイントロを聴いて、出かけるんだよ。

山下: あれ、でもね、バースのあるバージョンってのがシングルなんですか?

大滝: なにが?

山下: 「ドーン」の。

大滝: だって、シングルにはあったよ。うん、バースがあるのがシングル。あれっ、LPにはないの?あらっ、へぇー。

山下: LPにはないんですよ。LPはね「タカトコタカトコーチンチン」なんですよ。なきゃダメなんだよな、これが。来週かけます、来週。

大滝: 本当すっごく、でもロマンチックなね、メランコリックなね、内容もいいし、とっても好きで、あそこのあの3連がまた好きでね、「風立ちぬ」で使ったんだ。失礼をいたしました。

山下: 「ビーナス・イン・ブルージーンズ」だったんじゃ?

大滝: だけではないんですよ。20あるんだから、20いわないと正解にしないんだ。

山下: あれは、あれですよ、バディー・ザルツマンのね、ニュー・ヨークのハル・ブレインですからね。

大滝: 最高だね、あのドラマーはね。

山下: というわけで、来週かけます、「ドーン」。こんだけいったらかけないと。

大滝: 聴いてる人はわからないだろうなぁ。

山下: この次はですね、オーティス・ブラックウェルいってみたいですね。オーティス・ブラックウェルといえば、大滝さんのヒャッカヤクチュウのものでございます。

大滝: なんだ?なんだかよくわかんないけどね、これは大笑いだけどね。オーティス・ブラックウェルってのは、とっても好きでね。この人がプレスリーの曲をたくさん書いててね、「オール・シュー・カップ」とかね、いろいろ書いてんだ、「ドント・ビー・クルー」とかね。で、この人が歌ったのもあるんだって。僕は、「オール・シュー・カップ」のデモ盤ってのは聴いたことがある。なんかこれは、山下君が持ってるという。

山下: これはね、インナー・シティという71年くらいにね、ソロLPを出したんですよね。

大滝: ずっと後だね。

山下: そうですね、このころはね、こういう南部の作家がね、ソロLPってのが非常に出てて、アラン・トゥーサンもこのころでしょう?あと、サム・デイズもこのころ出したんですよ。

大滝: 71、72年ね?

山下: シンガー・ソング・ライターってのが、キャロル・キングとかが出てきたんで、みんな触発されて、多分出したような気がするんですが、これがまたすごいLPで、インナー・シティという聞いたこともないレーベルなんだけど、クレジットは後でいうとして、とりあえずプレスリーのヒット曲で、

大滝: プレスリーの60年だったか、61年ごろに心の届かぬラブレターというね、なかなかいいね、「リターン・トゥ・センダー」、これ、「せんだみつおに戻した」っていう歌じゃないよ。みんな間違えて、「リターン・トゥ・センダ」。全然関係ないですけど。

山下: 自ら歌っております、オーティス・ブラックウェルの「リターン・トゥ・センダー」。

 曲:

オーティス・ブラックウェル/リターン・トゥ・センダー

山下: えー、というわけで、なかば投げやりに歌っておりますが、オーティス・ブラックウェルの数少ない…、

大滝: オーティス・ブラックウェルって、小林克也のペンネームじゃないかって感じがありますけど。

山下: オーティス・ブラックウェルはプレスリーの曲をたくさんつくってますが、他にもジミー・ジョーンズの「ハンディ・マン」、これデル・シャノンのカバーでも有名でございます。あと、ジョー・ジョーンズの「ヘイ・リトル・ガール」、「ヘッヘッヘッヘーイ」ってやつですが、そんなのも書いています。あとは、ジェリー・リールスの「グレート・ボール・オブ・ファイア」ってのもやっております。

大滝: あれもつくってんだよね。いい曲つくってる人だよね。

山下: いろいろつくってるんです。多彩な人ですね、この人。なんと72年、とんでもない77年のレコードで、よくこんなもんが出たという。

大滝: 77年にねぇ。

山下: これはアディショナル・バック・グラウンド・ボーカルズ・バイ・ウィンフィールド・スコットですよ。

大滝: あぁ、ウィンフィールド・スコットっていう人といっしょにやってたんだよね、この人は。

山下: ウィンフィールド・スコットはね、この間、ドゥー・ワップ特集で出てきたんだよ。

大滝: やったの?

山下: ウィンフィールド・スコットはどこのボーカルだったかな?

大滝: 「トゥィルリルディフィア、トゥィルリルディ」

山下: ちくしょう、来週まで調べておきます。

大滝: どっかにいたの?

山下: ドゥー・ワップ・グループなんです。

大滝: へぇー。

山下: もう大変なもんでございまして、でも、プレスリーかけてやんないと本当はね、いけないんだ。

大滝: これがね、この違いがね。この違いを明確にするというところにね。

山下: この辺が洋楽の番組の難しさだね、これからの。やっぱり、プレスリーをかけてもプレスリーがわかんない人もいるし、難しいですよね。

大滝: いるからね。せいぜい、でもさ、プレスリーとビートルズは最終的にもう「わら」だからね、わら。水じゃないよ。「をもつかむ」の方のね。で、そこを基点にして話さないと、もう、まるで途切れちゃいますな。

山下: そうですね。

大滝: だからカサブランカを知らずして、昼メロを見るというかね。長嶋を知らずして、原辰徳を語るとかさ。

山下: でも、長嶋を知らないで、原辰徳を語ることは別に全然罪悪じゃないんですよね?

大滝: 罪悪じゃないんですね。

山下: だけど、プレスリーをかけないでオーティス・ブラックウェルの「リターン・トゥ・センダー」をかけると、公共の電波がどうしたということになるんですよ。

大滝: あぁ、そういう意味ね。

山下: どうしてでしょうね、本当に?

大滝: これはおかしいですね。ですから、中古レコード屋さんに行ってね、山下君のような少年は、よし、明日行って、「リターン・トゥ・センダー」を探そうと、こういう積極性を生む番組で、かけないのがいいんじゃないですかね。楽しみはとっとくというかね。

山下: 別に意識して、意地悪してるわけじゃ全然ないですけどね。

大滝: ないですけどね。

山下: これを説明しようと思うと、ほんとに45分の番組、1年に52本しかないんで、とってもね、

大滝: 聞いてる人は、でも意地悪してるって思ってるでしょうね。

山下: そうなんですかね?そんなことは全然ないんですよ、僕は。全然関係ない話だけど、ウッディ・アレンの「ボギー!俺も男だ」ってあるでしょ。僕はカサブランカの映画って恥ずかしながら見てなかったんですよ、1年くらい前まで。ウッディ・アレンの「ボギー!俺も男だ」ってのは、カサブランカから始まるんですよね。で、最後にカサブランカのパロディーで終わるでしょ。カサブランカがどういうストーリーで、どうなっているかを理解することなしに、全然あの映画見れないんですよ。

大滝: 面白くもなんともない。ただ、一応知らなくてもストーリーとしては楽しめる部分はあるけどもね。

山下: だけどカサブランカの最後のセリフを全くパロディーで最後にいうわけでしょ、その最後のセリフってカサブランカのだからね、最後のニュアンスってどういうストーリーかってわかんないと、全然面白くないでしょ。

大滝: なんともないですね、やっぱり。「Someday you'll be regreted」ってやつね。

山下: そういう難しさがあるようなね、今は。

大滝: まあ、せいぜいカサブランカはね、メロドラマの古典だから、メロドラマでカサブランカだったら、やっぱ、まあねぇ、プレスリー、ビートルズ位は、全部とまではいかなくても、なんかその辺は一応、わかっててというのでないとね。何とかしたいですな。

山下: 下手するとね、日本の音楽もそろそろ、そういう具合になってくるんじゃないかなと思ってね。

大滝: なっているんですね。分母分子論の僕の後半の方にはですね、実はそういうことが延々と書かれておりましたけど、自分に関する部分があったので、かなり割愛しましたけどね。

山下: なるほど、今度ゆっくり本にして、出してくださいよ。大滝さんしかやる人いないんですから、そういうこと。

大滝: そのうちに。これがね、パイオニアの辛さで、いっときますけど「開拓者」ですよ、いっときますけどね。

山下: もう1人、先週のデーブ・バーソロミューと双璧をなすというか、それと、プロフェッサー・ロング・ヘアー、アラン・トゥーサンいろんな人がいますが、この人もニュー・オリンズを代表するピアノ・プレイヤーでございますが、ヒューイルイス・アンド・ザ・クラウンズのハイブラッド・プレッシャー。

 曲:

ヒューイルイス・アンド・ザ・クラウンズ/ハイブラッド・プレッシャー

山下: 完全に、雰囲気的に、昔の中村とうようさんの番組に近いものがあるような気もしますが。大滝さんはこういうロックン・ロールやんないんですか?

大滝: このごろは、ロックン・ロールっていうか、今度ニュー・オリンズリズムのセカンド・ライン・ドラムのを1個。

山下: あっ、本当。久しぶりですね。

大滝: うん、やる。これは自信作で楽しみなんだ。これ面白いね、高血圧って意味なんだろ?名前呼ばれると、高血圧になるとかなんか、よくわかんない、これおかしいね。

山下: ノベルティーですね。

大滝: 名前呼ばれると、だからなんかさ、膝がかっけになるとかさ、そういうのだよね、面白いね。

山下: 黒人の言葉の使い方って、そういうニュアンスがあるんでしょうね。冗談な言葉の使い方とマジな言葉の使い方って、ほとんど変わらないでしょ、英語って、イントネーションとしては。

大滝: 要するに、表現の仕方で、日本の場合なんかでも、実はさ、一番どういうの、言葉が言葉として、僕が生き生きすると思うのは、どういうんだろうかな、「否定の感じで肯定をいう」とかさ、「肯定の感じで否定をいう」。これ、コンピュータには絶対できないことだと思うのね、「0101」の考え方からさ、要するに否定の顔して肯定をいえたりとか、肯定の顔して否定をいえたりとかって、その言葉が持ってて、人間が使ううえにおいて、一番魅力的なことじゃないかって思うわけ。で、おかしいことって、必ず笑っていわなければいけない、だから先に笑っちゃうとおかしくなるというのじゃなくて、話は飛ぶけど、だからケーリ・グラントのような喜劇役者って、あまり出てこないような気がするんだけどね。多少だから、話は飛ぶが、松田優作なんか可能性は少しあるんじゃないかな?

山下: なるほどね。

大滝: そういうようなんでね、変わっていきたい。江戸時代なんかよくあったんだ。

山下: 最近はよくいわれますよね、いろんなところで。婉曲な表現というか、婉曲な表現というのは、言葉のやり方かもしれないけど、「笑いながら泣く」とか、「泣きながら笑う」ってこと、そういうことがすごい少ない。

大滝: 少ないんだよ。婉曲はかなりあるけどね。京都の言葉なんか、すごく婉曲の一番極致だと思うんだけど。

山下: 表面的な態度ってあるでしょ、そういうのが、すごく重要になってきてるでしょ、今は。だから、背筋伸ばしていわないとまじめじゃないっていうかね、あんまりいい例であげられないけど。

大滝: なんかそういうところだね、表現とかいろいろ物つくっていくうえで、狭めているようなところがあるのではないかなと思うんだけどね。普通のまじめな調子でおかしいこといったって、別に構わないと思うんだけどね。なんかおかしいことはおかしくいわないといけないとかね、みんなもう最初に待ってて、待ってる状態に投げ入れるってことしかできないんだったらば、面白くないんじゃないかなって思うんだけどなぁ。どんなもんでしょうね。

山下: とかいいながら、そのピンをなんですか、手持ちぶさたなの?

大滝: 知恵の輪だな、たばこも吸わないからね、困ったもんだね。

山下: もう、たばこやめて何年になりますかね?

大滝: ずいぶんなりますね、76年だからね。

山下: よくやめられたなぁ。

大滝: 「すぐに年号をいう」ってみんなにいわれてね、別に暗記しているわけじゃないけど、たまたまちょっとね。失礼をいたしました。

山下: そういう年代だけは、あれですね、しかしね。

大滝: 相変わらず?事柄に結び付けて覚えている。76年っていうと、トライアングルのvol.1が一番最初に思い浮かぶわけ、それで山下君がサイダーをやった年なんだよ。あっ、いけね。

山下: いや、いいんですよ、構わない。大丈夫ですよ。

大滝: 構わない?「開拓者」の意味だからね。

山下: あのねNHKって、想像以上に寛容なんです、そういうことに関して。僕はね、サウンド・ストリートを初めてやった時に、「放送倫理コードに引っかからなかったら、どんな音楽でも、どんな曲でもいいです」っていわれたの。これはでもね、NHKのスタッフにしては、これが普通のことだと思っているけど、僕らにとっては、革命的なことですね、AMとおってきた僕らにしては。私は胸を張っていきます。何の話でしたっけ?

大滝: そうなんだよ、なんなんだ、なに言おうとしたんだ?よくあるんだ。これがね、年寄りの始まりなんだ。どうぞ。

山下: なんだっけな、忘れちゃったけど、ともかくそろそろお時間がきました。どうも3週間ご苦労さん。

大滝: 3週目になると、ほんと、だんだんね、

山下: 息切れしてきて、でも、とにかくお聞きのみなさんは、全国あれだし、大滝さんの声って初めて聞いた人が多いと思いますよ。

大滝: 多いと思うね。いかがでしたでしょうか?このクール・ボイスといわれていますが、

山下: 全国の大滝詠一ファンのみなさま、3月にLPが出るそうでございます。お楽しみに、

大滝: お待ちくださいませ。

山下: 予約のお金が無駄にならなくてすみそうですね。

大滝: 今度はならないと思いますけどね。

山下: ツアーもやらないとだめ!

大滝: やりません。ツアーは山下君が今年もまたギンギンにやると思いますからね、がんばってください。

山下: 大滝さん、ツアーやんないんですか?

大滝: やりません。山下君のを見に行ってください。

山下: 大滝さんテレビの話とかないですか?

大滝: ありません。

山下: なんでです?

大滝: 出たくない。

山下: 「出たくない」っていって、出なくいですむ人はしあわせですね、ほんとに。

大滝: 顔を知られたくない。あのね、だからそうなんだよ、映画を落ち着いて観られなくなるっていう楽しみを僕は奪われたらね、生きていけないの。なんか落着かないでしょ。もし顔が売れてたりすると、入って行くときとか。これでも時々声かけられることあるんですよ、10回に、20回、50回に1回くらいかな。でも、やっぱりあまりいいもんじゃないのよね。ひとりで観るもんなんだよ。で、帰り際でも、行き際でも、後味と前の予感と、自分個人で抱いて、「暗い観かただ」っていわれるんだろうな、こんなの。

山下: 大滝さん、そんなに映画好きなんだ。

大滝: 好きだよ。

山下: あー、そう。そうだっけ?へぇー。どっちの映画?洋画物、洋邦あわせて、

大滝: これがもう、邦洋問わずだ。

山下: 最近ビデオがたくさん出てるでしょ。

大滝: すごいもんだよ。

山下: 「幕末太陽伝」が出ましたね。

大滝: 出てるよ。

山下: この間買ってきたんですよ、ついに。

大滝: よかってでしょ?あれはほんとにね、日本のね、だから、ああいうのをつくれる人がいたんだから。

山下: あれは完全に、居残り左平次(?)じゃないですか。

大滝: そうですよ、居残り左平次だけど、途中にいろいろね、あれが入ってるんだよ。

山下: 居残り左平次って落語があるんですか?

大滝: 他にもあるんだよ。何が入ってたかな、いろいろあったな、「付き馬」なんかも入ってる。「三枚起請」とか入ってる。落語を聞いてくださいみんな。

山下: 何を言ってるんですか。というわけでございまして、

大滝: どうしてそんな結論になるの?

山下: 大滝詠一、華やかなる復活、3月を目の前にしまして、

大滝: あぁ、どうも、ほんとにもう3回も呼んでいただいてありがとうございました。

山下: とんでもございません。またぜひお願いまします。

大滝: 番組も、僕の方もまた、復活の暁には、山下君をゲストにお呼びして、またこの形態で、今度は逆の立場で、

山下: いかに呼んだ人間が、呼ばれた人間の照れるのを見るかというのが妙味でして。

大滝: これにつきますね。

山下: 今日の最後の曲は、私と銀次と大滝さんのやってたころに、伊藤銀次がココナツ・バンクというバンドをやってて、それの最大のヒット曲といわれております「ココナツ・ホリデー」を聴きながら今日はお別れしたいと思います。本当に大滝さんどうもありがとうございました。来週は、ぜひ「ドーン」をかけてみたいと思います。

 曲:

ココナツ・バンク/ココナツ・ホリデー

 いやー、疲れました。ちょっと張り切りすぎたようです。最初からこういう形式でやろうと考えていたこともあり、霧の乙女号乗船を機にやってみましたが、ここまで大変なことになるとは思いませんでした。会話中の曲名、アーチスト名は言うにおよばず、果ては落語のネタまで、私の知識では到底コンプリート版は困難です(これらが、全部わかるようになれば、ナイアガラ上級者ってとこでしょうか?)。しかし、できあがりを読むと、大滝さんと達郎さんの会話が聞こえてくるようじゃありませんか?えっ、わたしだけ?
 これから、どちらの形式を取るか検討中です。今回のような形式にすると、時間・手間がかかりすぎて、来年の新春放談までに完成するとはとても思えませんし(テープは全部で30本以上あります)、ホームページの容量が不足する(私の加入しているBEKKOAMEは20Mまで)恐れがあるなどの憂慮すべき事項が山積しています。1、2回目の概要版になる可能性が高いと思いますが、会話が面白い部分については、今回のような議事録形式で行こうかとも考えています。  これを読んでいただいたみなさんの感想をお待ちしています。

 溝口秀之様、幕末太陽伝の情報ありがとうございました。

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