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1985.1.10 サウンド・ストリート

山下: ラジオをお聴きの皆さん、新春あけましておめでとうございます。山下達郎です。ついにサウンドストリートも3年目に突入し、これもひとえにみなさんのおかげだと、厚く厚く御礼を申し上げる次第でございます。本年もひとつよろしくお願いしたいと思います。今年もサウンドストリートでやっていくわけですが、去年の新春は、みなさん覚えてらっしゃいますよね、大滝詠一さんをお呼びいたしまして、なんと3週間延々にわたって、45分全くわからないことをいって、新春を飾りましたけども、あの感激が忘れられず、今年もついに新春放談第2弾でございまして、大滝詠一さんをゲストにお呼びしまして、とりあえず今週と来週やってみたいと思います。おめでとうございます。

大滝: どうも、あけましておめでとうございます、いやはや。

山下: 福生で何してるんですか、最近?

大滝: いやいやいや、でも毎年ね、去年もすごかったですけど。

山下: あれからもう1年ですよ。速いですね。

大滝: あれから1年たったかなという流行歌が昔あったんだけどね、また古い話になるな、どうも。

山下: そういうこというから、

大滝: いけないんだね?はい。

山下: あの後ね、去年の正月に大滝さんが来て、あれしたでしょ。あの時にはがきがたくさん来たんですよ。はじめから終わりまで何を言っているかわからなかったけど面白かったって。

大滝: そうでしょう、これですよ。

山下: それで面白いのかなって疑問もあるんですけど。

大滝: いやいや、これが芸というもんです。

山下: これは、新春放談というかね、特別番組で、来年もこれでいきたいですね。

大滝: そうなってくれるといいですね。紅白が歌合戦があけると、必ず新春放談が始まるというような。

山下: というわけで、今年もですね、去年聴いた方はよくご存知ですが、全く訳のわかんない話をしつつ、わりとレアなレコードをかけつつ、これがまた訳のわかんないレコードがたくさんありますが、去年ディレクターの佐藤さんが懲りたので、今年は、ランダムに曲をならべて、次はこれをかけようとかいっていくんですが、

大滝: 懲りたの去年?

山下: 懲りたんですよ。曲順表をやってたら、むちゃくちゃになってきて、こっちにするとか、あっちにするとか、これはかけないとか、これやめてこっちにするとかやったから、今年は10数曲ならべてあってね、これをかけようと、最初は何いきましょうかね?

大滝: お正月といえば、こたつを囲んで、なんだかわかんないですね。

山下: あれを持ってこようと思ったんですよ、僕は。

大滝: ん?

山下: カレンダーは持ってきてますよ。

大滝: レコードですか?僕のはいいですよ、やっぱり、お正月というのは、レット・ザ・グッド・タイム・ロールというかね、楽しくいこうという感じで、

山下: じゃあ、一番目のをかけてみましょうか。

大滝: ツイストかなんかで、最近流行ってませんか?

山下: ぜんぜん流行ってない。

大滝: あれーっ、おかしいな。

山下: でも、ツイストが流行る傾向がまたあるみたい。

大滝: やっぱ、ツイストが一番からだにいいんじゃないでしょうかね。

山下: やっぱあれですね、ツイスト、ゴーゴーに匹敵するダンス、ないですね。

大滝: ように思うんですけど、どうなんだろう。

山下: 10年周期くらいでしょ、だから、ハッスルとかバンプとか位流行っているダンスないでしょ、ブレイクダンスだけでしょ?で、ブレイクダンスってのはステップとかないから、フォーミュラっていうの、定型がないから、そういうね。

大滝: よくほら、日本の踊りが型だとか、むこうの踊りが、西洋の踊りが型がないとか、そんなこともないんだろうけど、60年代に踊りが流行ったでしょ、ツイストでもモンキーでも、あの頃アメリカのバンドスタンドで流行っていた踊りっていうのは、みんな型だったね。

山下: うん、そう。

大滝: 不思議に。

山下: 必ず、要するにレオタード着た女の子と男が後ろにいて、

大滝: で、ほら女の子が5〜6人くらいならんでて、座りながら手をぐるぐるやったりとか、拍手をしたりとか、

山下: こういうのね、ラジオでやってもわかんないって。まあ、それでは、新春第1弾でございまして、

大滝: 腰を振るツイストでいってみましょうかね。

 曲:

チャビー・チェッカー/THE TWIST

山下: というわけで、チャビー・チェッカーのザ・ツイスト。

大滝: なるほどね。

山下: ダンスの話になりましたね。

大滝: うん、ダンスの話でさ、だからマイケル・ジャクソンのあの踊りに、ブレイクダンスっていうダンスは流行ってても、例えばツイストの王はチャビー・チェッカーだったんだけど、ブレイクダンスの王様っているのかな?

山下: いないでしょうね、ブレイクダンスってのは、匿名性のダンスだから。

大滝: 匿名性ね!うーん、なるほど。

山下: ブレイクダンスというものは、要するになんていうの、ダンスのステップとかフォームとか、そういうのを称してブレイクダンスっていうのじゃなくて、ある特定の環境で行われているのをブレイクダンスっていうんでしょ。

大滝: ほーっ。

山下: むしろその方が、その中にああやって、頭で回るのとか、そういうのがあるだけで、元々は、ニューヨークとかそういうとこで、大道芸っていうのかな、子どもが道でやって、お金を取ってたんだよね。一種の大道芸でしょ、日本ではゴザひいてやるけど、向こうは滑りやすいように板とかひいて、それを子どもが、あんなんだったら、俺の方がうまいって、ガキのグループがいろいろいて、それが対抗でやってるうちにだんだん、だんだんソティスフィケートされてきて、形になってきて、一種の体操でしょ?日本対ソ連みたいなもんでさ。今、日本対ソ連じゃないけどね、中国対ソ連だけど。そういうような類で、あんな、何とも説明しがたいものってないでしょう、今までダンスは数あれど。

大滝: ねぇ。で、マイケル・ジャクソンは踊りでうけてるんじゃないのかしら、あれ?何なんだろうね。

山下: 僕はタノキンとかマッチとかに、すごい近いものを感じる。

大滝: あれがね。

山下: 完全にアイドルっていう、ジャニーズ事務所にちょっと知り合いの人がいるんだけど、その人がマイケル・ジャクソンをロスに見に行ってね、完全にスタイルとしては、タノキンとかそういうのと全然変わらないって、セットの考え方とか、ショウの構成の仕方とかって言ってた。だけど、マイケル・ジャクソンはブラックだから、本当の意味でオールラウンドの客は取りにくいんだよね、アイドルとしては。だから整形したのかな。

大滝: ほーっ、そういうことがあるんだね、やっぱりね。

山下: それで、アフロヘアーっていうのは、黒人ってチリチリ髪でしょ、それを、昔は、50年代はコンクって硫酸みたいなやつで焼いて、真っ直ぐしてたんだよね。

大滝: 詳しいね。

山下: それは一種の人種差別なんだけど、白人に近い髪でしょ。で、それが面倒くさくなって、体にもよくないっつうんで、60年代はなにかっつたらさ、かつらをかぶったわけじゃない。

大滝: あれ、焼いてたの?

山下: そうよ。だから、わりとこうすぱっとした髪のブラックマフィアというか、そういう人たちの髪っていうのは。マルコムXの自伝に出てくる、それ。コンクっていうんだって、そういうの。それで、ちり紙で伸ばして、コテで、それがすごい苦痛なんだって。で、コンクをやめるってことが、アフロにつながっていくんだよね。自然な髪でいくってのがさ。それがブラック・イズ・ビューティフルのあれとくっついてるんでしょ。60年代はその中間で、それを隠すため、かつらかぶってるわけでしょ、シュープリームスにしてもロネッツにしても、みんな。

大滝: なるほど。

山下: あれとれば、みんな普通の黒人の女の人の頭っていうか、チリチリ髪のすじがはいった、格子模様みたいな、細かくいく、ああいうやつになってるわけでしょう?それで、現代はもっと技術が発達したから、新しいコンクっていうか、プリンスにしたって、マイケル・ジャクソンにしたって、絶対にそういう溶剤を使ってるよね、あの頭は、どう考えても。あんなストレートになるわけないもん、黒人は。僕そんなんがすごいいやなのね。あれならかつらの方がまだいいんじゃないかってね。黒人のその、なんというか、白人の層に引き付ける方法っていうのはやっぱり、

大滝: いまだによくいわれたじゃない、例えばサム・クックでもレイ・チャールズでも白人の歌を歌って、どうのこうのって。やっぱり、そういうところに現れてるのかな?

山下: やっぱり、黒人もある意味で、少し収入も上がってきたし、地位も上がってきたでしょ、国会議員も生まれてるし。そういうところで、芸能の部分でも、なんていうのかな、より白人に近づこうっていう、ゆりかえしじゃないかって思うんだけどね、60年代の、そういうね。

大滝: さすがに社会学を目指しただけのあれはあるね。

山下: われわれというか僕なんか、スライとかジェームス・ブラウンで育ってきてるでしょ、そしたら、どうもあれが、黒人ブラックミュージックの最先端だったと絶対に信じたくないというか、そういうのありますけどね。チャビー・チェッカーがツイストで、もう1曲ダンスナンバーでオーロンズでワッシってありましたね。

大滝: 御輿の、あ、ちがうか?なんなんだ。

山下: どうぞ。

大滝: 失礼しました。

 曲:

オーロンズ/ワッシ

山下: というわけで、オーロンズのワッシ。何年だっけ、62,63年ですよね?

大滝: そんなもんでしょうね。本当にダンスが流行ったんだけど、ダンスってのは、ずーっとダンス音楽ってのはすたらないね。

山下: そうですね。体を動かすというか、ダンスできるんですか、大滝さん?

大滝: いやー、もうツイストしかできない。

山下: ツイストやったんですか?

大滝: ツイストは当時やったんですよ。フラフープとかツイストとか、だめだなぁー。

山下: フラフープがダンスかというね。

大滝: ダンスじゃなかったかな?もう、あの辺までですね。だからよく、例えばね、リズム&ブルースのダンスミュージックをみんなベーシックにして、リズムつくって、歌をのっけるでしょ。日本の場合だと、そのリズムとしっかりあわせた歌をちゃんとつくる人もいるけれど、リズムだけそういうのを持ってきて、全然関係なくろうろうと歌謡をながす人もいる。それが面白いといってしまえば、それまでなんだけれども、リズムを、非常にリズミックなダンスできるようなものにして、ろうろうとのっけて歌って歌いにくくないか、よくああいうふうに無関係に歌えるなって、いつも尊敬してるんだよね、ああいう音楽。

山下: 歌謡曲なんて、ある意味でそうだよね。

大滝: あれはでも、すごい強いね。どこまでいっても、ああいうふうになるんだったら、なんかどこまでも行ってみたいね。

山下: 昔はさ、それでもピーナッツの頃は、ちゃんとイントロと歌はいってから関連性があったけどさ。

大滝: いや、なかったのもあったね、よく考えてみると。

山下: そう?

大滝: 70年頃のヒット曲ってのは、イントロと間奏だけが、完全に向こうのポップスみたいで、真ん中になると急にろうろうとしちゃうというね。

山下: 京平さんが出てくるあたりから、そうなってきたでしょう。

大滝: そうかもしんないね。あれはだから、ほんとに面白いね。

山下: これも今は一般だもんね。

大滝: 今となってみれば、今の僕の考えなんて、せいぜいナイアガラ音頭、っつてもまあみんな知らないかもしれないけど、ナイアガラ音頭の範疇を出ないなって思われるかもしれないけど、リズムをものすごくジャンジャンやかましくして、アフリカンドラムみたいなのをいっぱいいれて、ジャングルのようなバックにして、民謡を歌ったら、やっぱり極致かなって思っちゃうよね。

山下: 大滝さんのカラオケは、本質的にすごくやかましいよ。

大滝: うるさいよ、俺はジャングルビートが基本的に好きだもん、やっぱり。

山下: やっぱりだから、人のことを大作志向っていえないんだよね。

大滝: 何だ、何なんだ、それ?うるさいんだよ、要するに整理する能力に欠けてるから。

山下: それだったら、始めから10数人でいっちゃおうってさ。

大滝: だから、なんかね、とにかくグシャグシャいっぱいいれば、何がなっててもいいんじゃないかって、要するにね、整理の能力が欠けてるんだね。山下君とか、ああいうファンキーなリズムをやる人の音をよく聴くと、整然と、

山下: 整然と!

大滝: あれでしょう?部屋とか片づけるの好きでしょう。

山下: 大滝さんバンドやってなかったから、実質的に、バンドというものを。はっぴいえんどってステージバンドじゃないでしょ。僕らみんなステージからはいってくるから、ステージで5人しかいないし、その中でアンサンブルで、ドライブ感だすには、分業が生まれてくるわけじゃない。

大滝: 持ち前と分担と、そういうことになるわけね。

山下: それが根強く頭の中に残っているから。

大滝: 小さい頃から掃除好きだったんじゃないの?

山下: そんなことないよ、部屋めちゃくちゃだよ。

大滝: そう?結構きれいだったじゃない。

山下: 大滝さんが来るときに掃除するわけ。人が来るときだけ掃除するというね。

大滝: なにをいってる、なんなの?

山下: 何も考えてない。ところで、最近何をしてるんですか、大滝さん、毎日?

大滝: いやー、最近あれですよ、ちょっと休養を、ずーっとしてるんですよね。

山下: レコードはどうするんですか?

大滝: レコードもね、どうしようかと思って。

山下: 全国のファンは待ち望んでいますよ。

大滝: またまた、いつも。

山下: 去年も同じようなこといってるな。

大滝: でも、まだツアーやってるでしょ?

山下: 今ちょうどやってるとき。

大滝: やっぱりね、だめです。

山下: だから、別にツアーをやんなくてもいいですけどね、レコードをやっぱり出さないと。

大滝: レコードっていうのもさ、なんかあれなんだけど、あんまり頻繁に出すものじゃないんじゃないかっていうふうに、考えちゃうんだよね。

山下: それはね、4ヶ月に1枚LP出せとはいいませんが、平均3年に1枚という人は珍しいですよ。リッキー・リー・ジョーンズぐらいしかいませんからね。

大滝: リッキー・リー・ジョーンズ、矢野顕子ちゃんによく似た人だよね、リッキー・リー・ジョーンズって。

山下: 顕子ちゃんと大滝さんって似たようなとこあるよね。

大滝: いやー、あの人はすごいね。去年の放送でも誉めてたけどさ、ほんとそう思うよ。

山下: 聴いてるの、僕のサウンドストリート?

大滝: 聴いてるよ。

山下: ほんとう?

大滝: なんで?注意してモノをいってね。

山下: よくいうよ。

大滝: なんなんだ、よくわかんないな。時々またネタに使ったりして、世の中に良いも悪いもなかりけりなんてなこと、前にいってたでしょ。

山下: 名言ですね、もうずいぶん前の話じゃないですか。

大滝: ずっと昔?失礼しました。

山下: 僕はね、人にいわせると、人に聞いた話を、自分の話しみたいにいうのがうまいんだって。うちのカミさんが良くいうけどね、うちのカミさんが昨日いったことが、人に話してて、どっかで聞いたことがあるって。

大滝: ぐるっと回ってくるってことあるよね。

山下: いいんだって、なんでも、本で読んだ話とか、僕の友達に聞いてどうしたこうしたとか、おかしいなって。いいんだって、それは会話を円滑にする手段なんだから。

大滝: ほぉー、さすがに。

山下: 人のこといえませんよ。

大滝: あぁ、そうか。もったいぶりじゃほんとにいい勝負なんだよね。

山下: 去年の正月に大滝さんがゲストできたとき、「ドーン」の話をしたでしょ、フォー・シーズンズの。そしたら、はがきがドコスカきてね、あの時レコードなかったから、なんでかけないんだっつてさ、あの後すみませんっていって、2ヶ月くらいしてから、「ドーン」かけたんだけど。

大滝: 聴きたいね。

山下: もう1回「ドーン」かけましょうよ、今日持ってきたんですよ。で、「ドーン」というのは、あれなんですよ、ふたつあるでしょ。イントロにバースがあってタカトコタカトコチンチンっていくのと、タカトコタカトコっていきなり始まるやつと。

大滝: チャンチャンで始まるの、あれ、声が引っかかっちゃたよ。

山下: 日本盤のシングルは、バースがはいってるんですよね?

大滝: はいってるんだよね。

山下: そうですね、オリジナルのシングルは、いきなり始まるでしょ。

大滝: うん、いきなり始まる。

山下: ということは、LPテイクなのかしら。

大滝: LPにもはいってないんでしょ。何なんだろうね?日本向けに歌ったんじゃないの?そんなことないか。

山下: 日本盤で出ているグレイテスト・ヒッツには、確か全部バースあるんだよね。

大滝: あるはずだね。

山下: 僕それで、ジムピューターでドーン聴いて、イントロないんでぶっとんだもん。

大滝: でもあのイントロはなぜかいいねぇ。

山下: それで、そのバース付きのイントロのはいった、バースがあるやつをかけたことはないので、この番組で。

大滝: なるほどね!2度目だけど、今度はバージョンが違うということを強調したいと、なるほど。

 曲:

フォー・シーズンズ/ドーン

山下: というわけで、再びフォー・シーズンズの、僕はフォー・シーズンズの曲はいろいろありますけど、これが一番好きなんですよね。何が好きかって、詞なんですよ、詞。フォー・シーズンズって、ほんとに悲しい失恋の歌とか、社会階層の違いとか、そういうのをすごく題材にしてるの。

大滝: 俺は、初めて高校1年にこれを聴いたんだけど、今日くらいイタリア的に聞こえたのは今日が初めてだね。ものすごく、あっカンツォーネだな、この歌はと思ったよ、今。ものすごく強く思った。

山下: ワンダラーズ見たんだ。

大滝: ワンダラーズ見たから、ワンダラーズを見ると、アメリカ自体が移民が多い国を含めて、ブロンクスの当時のとか、そのなかで、いろいろな国の系統の人たちが、どういうふうに生きたかをみると。だから、あそこは結局、あれでしょ?文化がぶつかる、一番濃いところがぶつかる場所なわけだから、まあ、おのおののところが出てると思うんだけど、ワンダラーズってのは、イタリアの移民の人たちを中心にした話だったんだよね。そこで、フォー・シーズンズが一番最初にかかってたんだけど。結局カンツォーネだね。好きだね、カンツォーネ。

山下: そうだね。何が好きかって、これがね「Think about the future to be a poor like me」、「僕みたいな貧乏な少年と一緒になるっていう将来について考えたみた方がいい」、だから「Go to him」だって。

大滝: カミさんの口説き文句ですよ、これ。

山下: 何いってるの?

大滝: 違う?

山下: そこカット。

大滝: まずいな、おい。

山下: ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカって観ました?

大滝: うん、観た。あれも面白かったね。

山下: あれはロシア系ユダヤ人でしょ?あの頃の子供たちって面白いね。みんな16,17になって、大人のかっこしようとするでしょ。ちゃんと、帽子かぶって、(聞き取り不能)のズボン着てさ、あれがいつのまにか、結局若い人のかっこてのが別にできてきて、何かそうなっちゃたけど。

大滝: あの中で流れた、かのあの曲を、

山下: アマポーラですか?

大滝: えぇ、最近なんか、

山下: 私ステージでやってるんですよ、今。アカペラで。例のアカペラのシリーズで、今回はアマポーラを題材に。

大滝: それ、今日は?

山下: 今日はないです。

大滝: 生でやらない?

山下: すみません。生じゃできませんよ、アカペラは。今日はですね、アマポーラ1曲持ってきたんですよ。アマポーラもね、いろいろ、アマポーラってね、あれなんだって、この間、とうようさんのミュージックマガジンにでてたんだけど、30年代のジミー・ドーシーかなんかのヒットだってね、あれ。

大滝: ほーっ。

山下: だけど、コロンビアのA&Rマンで、スペイン移民のA&Rマンってのがいて、その人がつくったんだって、なんとかっちゅう。アメリカ制作の曲なんだけど、スペインの、

大滝: スペインぽいものね。

山下: ラテンの曲だとずっと思ってたんだけど、アメリカ産のスペイン語の曲なんだって。

大滝: 別にあれでしょ、ポーラっていう人が、世をはかなんで尼さんになったって歌じゃないんだよね?

山下: アマポーラってケシの花でしょ。

大滝: あっ、そう?

山下: だから、花のような君だっていうね。

大滝: いいねぇ。

山下: なかなかロマンティックでいいですね。

大滝: また、いかにも山下君が、いかにロマンティストであるかと、これが。

山下: 昔から好きだったんです、この曲。リカルド・サントスとかいろいろあるんですが、ロックンロール版で、スプートニクスのアマポーラ、これがいいんですよ、ロックンロールで実に。

大滝: 聴いてみましょう、なかなか。

山下: これを聴いてみたいと思うんですがね。

 曲:

スプートニクス/アマポーラ

大滝: この「チャラン」って終わるのが好きなの、すごく。

山下: 1962年のレコーディングだそうです。

大滝: やっぱ、いい曲っていうのは、アップテンポになっても、ゆっくりやってもいいんだね。

山下: このドラムの「トンツッツタンッツッツッツ」っていう音がだせないんですよね。

大滝: これがねぇ。

山下: 「ドイダダーンダッダッダ」これで、ドライブ感だでるんだもん、このギターだけで。

大滝: どうして、みんな最近ギター忘れたのかね?声をね、少し普通にしていいたい。やっぱり、ギターをかき鳴らして、歌を歌うっていうのが、ロックンロールの基本のような気がしてね。

山下: だから、ロックンロールはもう死んでるんですよ、きっと。

大滝: やっぱり?なんだ、俺たちゃ亡霊か、じゃぁ?

山下: だから、われわれのは、もう年寄りの戯言なんですよ。今ロックンロールだといってるけど、本当はロックンロールじゃないんですよね。

大滝: ないね。例えば、ギターをかき鳴らして歌うある種の昂揚感というか、恍惚感というか、そういうのと、キーボードをタッチしながら昂揚するのと本質的に違うような気がするね。

山下: だから、ギターっつても、今はギターの音がでる間に、星の数ほどエフェクターがはいって、やれ、コンプだリレーだなんじゃといって、ギターであってギターでないというさ。

大滝: ギターであって、ギターじゃない。

山下: それは、ギターのようで、ギターじゃないでしょ、ベンベン。

大滝: ベンベン。

山下: リード弾くにしても、カッティングするにしても、ギター1本持ってきて、アンプにぶちこんで、音だしたら、全然弾けなくなっちゃうという、このね。

大滝: 僕、あんまりそういう体験、バンドの体験が多いわけじゃないんだけど、例えば、みんながいろいろなものを、楽器を、自分がひとつ持ちあってというか、みんなが集まって、ジャーンっていっしょに音をだしたときに楽しかったとかいう体験って、今の人はあるんだろうか?

山下: 僕はあるとは思うよ。ただ、それがロックンロールじゃなくて、ほとんどの場合、フォークへ行くか、なんかそういうあれでしょう。フォークはそういう精神的な部分は、まだ持ってるからね。で、わりとそのエレクトロニックというか、エレクトリックっていうか、エレキギターだから、エレクトリックな人たちはだんだん一人でやる方向に、カセットの4チャン使って、自分で一人でって。

大滝: 自分で一人でっていう人が、だんだん増えているような気がする。じゃぁ、日本の場合、フォークの人がロックなんだ。

山下: うーん、言葉の概念が難しいけどね。どうなんでしょうね。だから、ロックンロールという、ほんとの意味でのロックンロールって向こうにはありますよ、あると思う。

大滝: ヘビイメタルとか聴いてると、ロックンロールのずーっつと行き着いたはての姿という感じがするけどね。

山下: やっぱり、日本は特に最近そういうのがないね。

大滝: どうしちゃったんだろうかね?

山下: 僕最近すごく感じるんだけど、カバーが歌謡曲で増えてきたね、洋楽の。ワムのケアレス・ウィスパーのカバーとか、僕のアマポーラじゃないけど、増えてきて、エンジニアを向こうの人を使うとか、ニューヨーク行って録音するとか、ひところ流行ったんだけど、最近ちょっとなくなってきて、まただんだん、そんなのが増えてきて、そんなのって、何も必然性がないわけ。要するに、自分がニューヨークが好きだったからとかじゃなくて、ニューヨークに行った方が、スタジオ代安いとか、ちょっと遊びもできるとか、一応有名な人とできるとか。もっとくると、もう日本語で歌を歌ってる必然性って、そんなにないんだよね、今は。だから、一生懸命、日本語って、どっちにしろこういうメロディーにろりにくいから、どうやってのっけようかとか、「あなた」でも「あ」で始まって「なた」でいくか、「あな」「た」でいくか、それとも頭から「あなた」でいくかで、これでずいぶん悩んだわけでしょう。

大滝: その昔。

山下: そういうのも全然ないでしょ?非常にイージーに、日本語がありゃぁ、とりあえずそれでいいというね。

大滝: そういうことになってるね。

山下: だんだん、そういう具合になってきてる気すんだよね。それだったら、結局、完全に洋楽の追随っていうの、でも、洋楽の全然追随じゃない時期ってのもあったんだよね。日本は日本の、日本語による、なんかひとつの。

大滝: 日本人による日本語のための。

山下: それがもう、すごく希薄になってきたような気がするんですよね。

大滝: 希薄にはなってきてるように思うね。意味のない英語を中に入れて、日本語をめちゃくちゃにしてっていう、あれを面白がってたんだけども、あれで例えば、日本語が活性化するかと思ったんだけど、あのままスタイルとして確立されたかのごとくに思ってしまって、それを結局はみんな英語にしてるかもしれないけど、あまり面白い試みではないね。

山下: ないね、もうすでに。

大滝: 70年代にロックは英語でなければいけないっていう人たちがいて、僕らはでも、今声を少し大にして言いたいんだけど、ああいう人たちよりは、僕らが英語でうまくやれる自信は当時あったのよ、ほんとは。

山下: 僕もあるよ。

大滝: 初めてじゃないんだけどね、こういうこと言うのは。

山下: 英語でやろうと思ったら、ほんとに簡単なんだもん。

大滝: なんだけど、それでも「お前達はなんで日本語で、のりにくいのでやるんだ!」なんて言われながら、これをやらなければいけないんだっつんで、なんかやってた。まあ、年寄りの戯言なんでしょうな、これが。

山下: そういう問題意識は、もうないでしょ。そんな感じがするんですよね、僕は。

大滝: ないですかね?今のところ、要するに、手が詰まったんで、とりあえずカバーでお茶を濁そうというところなんじゃないの。

山下: 結局、洋楽には逆立ちしてもかなわないっていう挫折感というか、

大滝: それは言わない約束でしょってとこかな。

山下: 俺はないよ、そういうの。それは商売としてみれば、向こうの方が英語圏だから、インターナショナルで、200万枚も何枚も売れるけど、日本人が、要するに生きてる人間の、日本人のためにつくる音楽で、ちゃんとしたものをつくろうと思う努力はあったわけでしょ。そういうのすらも、だんだん消えてきて、これでいいのだろうかという。すごく流行の移り変わりが激しいでしょ、音の傾向も。

大滝: あまり聴いてないからな、このごろ。変わってる?

山下: 激しいんですよ、ごろごろ。

大滝: 遠くから見ていると、全然変わらないように思うんだけどね。

山下: だから、専門の錯覚ってあるんだよね。一日中そこにいると、ものすごく、例えば、運送屋の人は毎日運送業やってるから、、ロープがけはあいつより俺の方がうまいとか、そういう話題いくでしょ?スタジオミュージシャンだったら、昨日誰の編曲でレコーディングしてとか、コミュニティーの会話ってのがあるわけ、話題が。それが、高みでずっと見ると、別にすごくちまちました、重箱の隅のような会話で成り立ってるようなとこがあるわけでしょ?なるべくそういうちまちましたテリトリーにいても、なるべくそういうのに陥らないようにするとか、そういう努力がもうちょっと、なんかこう広い目で、目というか養うけど、そういうのが、どんどんなくなってきてるから。どんな気がする?

大滝: どうしてかねぇ?まあ、こまいこととか、狭いとこは好きだからね、みんなね、わりあいに。

山下: いい意味で言えば、それで生活できるようになったですよね、お金がとれるようになったでしょ。

大滝: それかな。

山下: 職業になってきたでしょ。

大滝: また、じゃあハングリーとかいうのがでてくんのかな、これが?

山下: それはいいことでもあるんだけどね。

大滝: 「艱難辛苦、なにがしをたまにす」というのもあるけどね、だめだね、これが。やはり、だめだね、気が弱い証拠だね、昔話が多いのはね。

山下: 今年は、暗いですね、話の話題が。

大滝: そうかねぇ?僕は結構明るいよ。

山下: ところで、この間ディア・ハンターやったでしょ、テレビで。

大滝: やってたみたいだね、テレビで、マイケル・チミノ。

山下: 大滝さん観なかった、テレビのやつ?

大滝: あれね、テレビはものすごく短縮版なのよ。あれ、ものすごく長いんで、僕はレンタル屋さん行ってね、コピーをしてあるんで、後で観ようと。

山下: 私はいかった。

大滝: なんでいかったの?

山下: キャント・テイク・マイ・アイズ・オブ・ユーのシーンがあるでしょ、ビリヤードしながら。

大滝: これは山下さんが怒るわけだ。

山下: ビリヤードしながら、キャント・テイク・マイ・アイズ・オブ・ユーを歌うシーンがあるんですよ。僕ね、あれビデオにとって、観てなくて、その次のサウンド・ストリートの録音があって、あれは途中にキャント・テイク・マイ・アイズ・オブ・ユーがでて、どうしてこうしてと、家に帰って観たら、見事にないの、そこが。私はいかったね、それには。

大滝: 可哀相にな。

山下: あれなしには、あの映画の時代性なんにもないわけ。

大滝: そういうのは難しいみたいだね。

山下: なんか、最近すごい多いんだってね、テレビでやる映画って、そういうトラブルが。

大滝: テレビでやる場合は、どうしても、平均的に映画ってだいたい長いもので2時間位あるでしょ、1時間半位だったらいいけど。で、2時間枠だと90分、1時間半しか実際放映時間がないわけで、どうしても20分から30分のカットは、もうやむをえないわけなんですよ。でも、20分も30分もカットしたら、やっぱりかなり違うんじゃないですか。LPをA面の1、,2曲位から、もう最後を聴いて、はいわかったでしょと言われるような、1番重要なA面のラストからB面の頭へ行くっていう、その展開がカットされる可能性があるわけですよ。やはり、テレビで観る場合には、そこを非常に注意してみないと。で、もっとあるのは、放送局によっては、カラーの送り出しの調整が違うんですよ、オリジナルの色と全然違うものというのが、よくでるんです、これはしょうがないことなんですけど。でも、あの色でなければ、どうしようもないというのは、いっぱいあるんですよね。

山下: そうですよね。われわれがカッティングに一生懸命やるのと同じだからね。

大滝: そう、そう、そう、そう。

山下: それは、オムニバスで、どっかのファミリークラブの10枚組で1万円みたいなレコードにいれられたら、それは違うものだっていう。

大滝: ことになってしまうんだよね。

山下: それと同じことがあるよね。

大滝: だから、できるだけ映画館で観るか、オリジナルを買って観るか。でなければ、目の穢れという人もいますからね、ああいうものを観るのは。

山下: なんか、ここの館で一番クレームが多かったのって、家族ゲームってあったでしょ。あれ、僕観てないんだけど、なんか最後の一番ラストシーンの一番いいところが全部切ってあるんだってね。

大滝: 食事のシーンだね、横に並んでやるシーンを切ったっていってたんだけど、監督がそういうふうにしたっていうんでしょ。

山下: あぁ、そう?へぇー。

大滝: 腹を立てて、カットされるんでというんで。

山下: あぁ、そう?なるほど!わかるような気がする。

大滝: まあ、若い頃にはよくあったという。そういうのもわかんないことないね。

山下: なんかかけましょうかね。

大滝: なかなかいいね、これが。

山下: なにかけましょうかね、ジーン・ピットニーかけましょうかね?

大滝: 好きだなぁ、ジーン・ピットニー。

山下: この間かけたんですけどね、好きなんですよ、最近。

大滝: ジーン・ピットニーが?いいんだよ、この人は。

山下: エブリ・ブレス・アイ・テイクが好きなんですよ。

大滝: いいねぇ。

山下: これ、スターン・アッペルバーンでしょうかね、アレンジ?

大滝: そうだと思う。

山下: 多分そうでしょうね。

大滝: なんか最近、エブリ・ブレス・ユー・テイクっていう歌もあるね。

山下: あれはもう絶対これですよね。

大滝: エブリ・ブレス・テイクってのはロマンティックだね。

山下: 「あなたのする息」というのを「EVERY BREATH YOU TAKE、I ONLY HAVE EYES FOR YOU」という表現があるでしょ。

大滝: それもいいねぇ。

山下: そういうのが、なかなかたいしたもんですね。

大滝: 山下君のステージを思い出しますけど。

山下: なにをいってるの、というわけで、ジーン・ピットニー、エブリ・ブレス・アイ・テイク。

 曲:

ジーン・ピットニー/エブリ・ブレス・アイ・テイク

山下: というわけで、ごたく話をするとあっという間に45分が過ぎます。来週も引き続き、新春放談パート2でございます。大滝詠一さんにおいでをいただきまして、よろしくお願いしたいと思いますが、今週はここまででございます。最後はジェイ・アンド・アメリカンズ、ディス・マジック・モーメントを聴きながら今週はお別れでございます。それではみなさん、来週までごきげんよう、おやすみなさい。

 曲:

ジェイ・アンド・アメリカンズ/ディス・マジック・モーメント

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