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1986.1.9 サウンド・ストリート

山下: みなさま、あけましておめでとうございます。山下達郎でございまして、本年は1986年となりました。思うまもなく、汽車は行くじゃなくて、年はとるという感じでございまして、みなさまもひとつ年を取り、私もひとつ年を取り、今年もよろしくお願いいたします。去年は、東京のみなさんには、コンサートが延期になりまして、誠に申し訳ありません。大阪も1月の初頭だったんですが、延期になりまして申し訳ございませんでした。レコーディングは順調に、おかげさまで進んでおりまして、もうすぐ完成の運びとなる予定でございます。それで、レコードが完成しました暁には、ちゃんとそれを新曲で、コンサートにのっけて、がんばってやりたいと思います、よろしくお願いしたいと思います。さて、ずーっと告知してまいりましたとおり、本年も、これで3回目になりますけど、大滝詠一さんをお招きいたしまして、山下達郎のサウンド・ストリートVS大滝詠一氏、なんだ?新春放談VOL.3でございます。あけましておめでとうございます。

大滝: どうも、またまたやってまいりました。

山下: もう慣れてきましたね、最近は、3回目ともなると。よくわかりませんが。

大滝: 図々しくやってまいりましたが。

山下: 今年はですね、ちゃんとあれですから、大滝さんがでますっていうのをしつこく11月の頭から言ってるんですよ。で、はがき、質問あったらくださいって言ったら、ちゃんとたくさん来ておりますので、これで何週間かやってみたいと思います。今回はもちますよ。去年は、実をいうとレコードが少なくて、

大滝: 大変だったね。

山下: 1曲かけろといってますので、まず1曲、大滝さんに気を使って。

大滝: 何ですか、今年は?

山下: またニュー・オリンズもので、今年はひとつ、クラレンス・ヘンリーでしょっぱなを、クラレンス・ヘンリーで新春幕開けをする番組って、どこにもないよ、ほんとに。

大滝: すごい。

山下: バット・アイ・ドゥ。

 曲:

クラレンス・ヘンリー/BUT I DO

山下: というわけで、こんな曲で新春第一弾をあけるのは、世界中広しといえども、この番組だけだということで、クラレンス・ヘンリーのバット・アイドゥで、去年と同じく大滝さんに気を使って、ニュー・オリンズもので始めてみましたが。

大滝: ありがとうございました。

山下: 最近はいかがでございましょう?

大滝: 私は今年は、でもいい年ですね、みなさんね。今年はあれでしょう?年明けそうそうに、山下君のアルバムを聴いて、今年が始まるってのは非常によい年なんじゃないですかね。

山下: まだ、そうそうに聴けるわけじゃないですよ。

大滝: 結局聴くことになるんでしょう、そのうちに。

山下: 自分のことを棚に上げて。

大滝: まさかでも、半ばってことはないでしょう、いくらなんでも。

山下: そんなことはありませんけどね。

大滝: ちょうどね、去年ださせていただいたときにシュガー・ベイブ10周年ということで、今年はナイアガラ・トライアングルVOL.1の10周年の年なんですよ。

山下: そうか、あれ76年だっけ?

大滝: そう。

山下: もう、あれから10年も経ってしまったんですね。

大滝: ちょうど、だから今、レコーディングやってた頃ですよ、10年前のね。3月の20日か30日にだしたアルバムなんで、今、一生懸命レコーディングの最中だよね。

山下: あの年、76年初詣行ったわ、明治神宮に。

大滝: あぁ、そう?君たちは12月で終わってたんです、わりあい。

山下: そうでしたっけ?でも、ター坊と村松君と3人で初詣行ってね、それでどうしたんだっけな、そうそう、そしたら、どっかの女の子がシュガー・ベイブの人でしょうって。

大滝: おっ、やったね。

山下: ファンなんで、頑張ってくださいっていわれて、喜んだりした記憶がありますが、23歳でしたよ、あっ22歳だった。

大滝: そうだろうね。

山下: 大滝さんは?

大滝: 22歳だったの?へぇー。22歳っていうのは、あれだよ。はっぴいえんどの2年目だよ、俺。

山下: あぁ、そう?おんなじ様なもんだね。

大滝: そうなんだ。

山下: 大滝さん、あの時27?

大滝: わたし?うーん、そうだね。

山下: つうことは、今は……?ところで、まあ時間はたっぷりありますから、ゆっくり、また曲でもかけたりして、

大滝: いってみましょうね。

山下: 今度はランディー・アンド・レインボウズでいってみたいと思います。。

大滝: あぁー、いいですね、これも。

山下: また、大滝さんに気を使って。

大滝: ありがとうございます、ほんとに。

山下: シックスティーズ・ボーカル・グループ、トーキング系ボーカル・グループというあれでございまして、デニース。

 曲:

Randy & The Rainbows/Denise

山下: えー、ランディー・アンド・レインボウズの1963年の全米10位のヒット、その前が、バット・アイ・ドゥ、クラレンス・ヘンリーのこれは、1961年でございまして、全米4位の大ヒットでございます。ニュー・オリンズ華やかなりし、ファッツ・ドミノがまだ生きていたときの曲であります。

大滝: ああいう曲が4位の時代もあったんだね。

山下: そうです、泥臭い音楽だったですよね。まだアメリカのポップスが民族音楽だった時代ですから。

大滝: 民族音楽?

山下: ところで大滝さん、去年ですね、この番組に出ていただいたときにですね、シュガー・ベイブのCD出すとかおっしゃってましたよね?

大滝: ありましたね、ねぇ。

山下: 未だに出てないんです、これどうなってるんでしょうね?

大滝: これはですね、答えはもう用意してまいりましたけどね、あのー、あれです、まだ出さない人もいるから、それを待ってたんですけどね、同時期に。小判ざめシリーズっていうんだけど、そういうのを。

山下: あ、ありました、ありました。愛知県豊田市、前田こうじ君「去年の新春放談で、大滝さんが、シュガー・ベイブのCDが今年が終わらないうちに出ると言ってたんですが、どうなったんですか?」って、覚えてる人がいますね。

大滝: いますねぇ。あのー、やっぱり今年、この人たちは幸せな人だなと思いますね。山下君のレコードを聴いて、同時にシュガー・ベイブを知らない人はまたCDで聴けるっていう、今年はいい年なんじゃないですか。

山下: たくさんはがきが来てるんですけどね、えー、なんだって?あんまり専門的なやつは来週にしたいと思いますが、なんか面白いんですよね、この、あっ、これが面白いんだ。だいたいね、大滝さんに関する呼称というのが、いろいろあります。「新春企画、フィヨルドのご隠居、大滝詠一氏を迎えて係」ってのもありますし、「お正月には福生の神、詠一氏が来られるそうで」

大滝: もう、めっちゃくちゃだね、みんな。

山下: これは?名前が書いてない、すごいよ、これは。名前が書いてない。

大滝: 昔の人なんだろうか、新しい人なんだろうか?

山下: 若いでしょうね、きっと。

大滝: 若いと、なんか10年前に戻ったような気がするけどね、10年前にラジオの番組やってたときに、よくこういうはがきが来たんだよ。

山下: 文句は言えませんよ、自分が好んでつくったんだから、そういう人たちを。

大滝: 失礼しました。

山下: そうです。曲いってみたいと、また思いますが。今年は余裕ありますね、なんか。去年、おととしあたりは、なんかこう、もっと喋らなくっちゃいけないんじゃないか、もっと曲をかけなくちゃいけないんじゃないだろうかって、今年はなんかこう、かけたいときにかければいい、喋りたいときに喋ればいい、時間はたっぷりあるという。

大滝: 何ですか、次の曲?

山下: 次の曲はですね、何でしたっけ?あっ、そうそうそうそう、またちょっと古い、古いって、来週も再来週も、古い曲しかかかんないんですよ。いいんです。エコーズでいってみたいと思います。

大滝: エコーズね、いい流れじゃないですか。ランディー・アンド・レインボウズ、エコーズとね。

山下: 厚く、次薄くというね。ベイビー・ブルー、ベイビー・ブルー。

大滝: エコーズは非常に、今リプロでアルバムも出てるんですよね。割合好きな白人ドゥー・ワップ系の、気使っていただいて、ほんとにありがとうございます。

山下: すいませんね、1961年、この辺多いですね。

大滝: 多いね。

山下: 全米12位まであがりました、エコーズのベイビー・ブルー。

 曲:

エコーズ/BABY BLUE

山下: えぇ、なんとはなしに聴いてしまうエコーズのベイビー・ブルーでございまして。さてですね、「山下さん、大滝さんこんばんは。ところで僕は大滝さんに質問があります。それはナイアガラ・トライアングルVOL.3の構想についてです。僕は桑田佳祐さんと植木等さんを呼んで、日本一の歌詞の聴き取り難解トリオを結成し、VOL.1の時にできなかった、『ホンダラ行進曲』のカバーに再挑戦してみるとか、初めて、矢野顕子さん、大貫妙子さんといった女性と組んでみるとかが面白いと思いますが、どうですか。大滝さんの構想も聞かせてください」、鹿児島県川辺郡、松清まさゆき君。

大滝: ありがとうございました。貴重なご意見で、

山下: 答えようがないね。

大滝: 答えようがないですね、桑田君は歌詞が難解だと思いますけど、植木さんははっきりしてますよね。

山下: はっきりしてるよね。

大滝: 僕も最近はそうじゃないと思う。もう、普通の人、普通のおじさんになりましたから。

山下: そうですか?この間、NHKの東京ローカルっていうかな、各地にローカルあるんだけど、6時代って各局独立のあれでしょ、リクエストタイムとかあるでしょ。で、なんとかっていう、わりとよく喋るアナウンサーがいて、東京のわりと名物男っていわれてる。それで、大滝さんの何をかけたんだっけな?なんかかけたんですよ、ロング・バケーションから、エンディングがえらい長い曲なんですよ、なかなか終わらない曲。ジャーンと終わってピアノが延々引っ張って、なかなか終わんなくて、

大滝: 君は天然色じゃないの?

山下: 違う。

大滝: 違うの?

山下: B面の曲。

大滝: そんなん、あったっけ?あっ、わかった、カナリア諸島にて。

山下: そうそうそうそう。それで、あれA面だよね?

大滝: あれB面。

山下: B面?じゃ、いいんだ、あってる。それでね、それ終わったでしょ、「なんだこの曲は!待ちくたびれちゃったよ」って。

大滝: ずいぶん率直な人だなぁ。

山下: 「どういうつもりで、この人はこういうレコードつくってるのかな」、そんなの、そこで怒ったってしょうがないと思うんだけどな。

大滝: 実にあれだろうね、さびしい音楽体験してきた人なんだろうな。いろんな曲が世の中にあるっていうのを、非常に少ない情報で生きてきた人はさびしいね。でもいいじゃん、いいっていうか、よく待ったね、その人、辛抱強い人だよ。あのね、よくラジオで出たときには、あそこ絞られちゃうんだ。もう、終わったと思って、さっと。「えー、カナリア諸島でした」なんて言われてね。

山下: でも、いろんな考え方があってね、途中で絞る人は知ってたから絞るわけでしょ、

大滝: えっ?

山下: 曲を知ってるから絞るわけでしょう。

大滝: 知らないの。

山下: 知らないの?

大滝: あるんですよっていったら、「あっ、そうですか?」って言って、急にあげたりする人がいるんだ。

山下: なかなか難しいとこだね。

大滝: 難しいとこなんだけどね。絞ってもらった方がいいときもあるんだよね、流れの中で。楽しい人だね、そういう人は。NHKにもいるんだ。

山下: よくわからないけど。

大滝: また呼んでもらえないかな、ゲストで。ピアノのエンディングだけ長いやついっぱいつけていくんだよ、それに。で、テープ持ってきて、かけてくださいって。

山下: しかし、大滝さんさ、1回終わってまた始まるっての、あまりないね。

大滝: 私ね?

山下: うん。

大滝: イン・ザ・ムードでも、

山下: カモン・レッツ・ゴーとか。

大滝: そうそうそうそう。

山下: どうなんだ?

大滝: 山下君の場合は、コンサートのときはよくあるね、なんちゃって。

山下: すいませんね。

大滝: 最近どうなのかな、あのての曲っていうのは、なんか少ないね。

山下: 終わって始まるの?最近ありますかね。

大滝: 終わって長いのってのも、多分ないんだよ。そのアナウンサーが怒るくらいだからさ。最近ものすごくあっさり終わっちゃうんじゃないかな。

山下: フォーミュラっていうか、形式化されてるでしょ。

大滝: しちゃったね。ジャーンとエンディングで終わるか、エフォー(?)するか、フェードアウトするか、ふたつしかもうないんだね。

山下: 僕、ライド・オン・タイムって曲があってね、あれ歌から始まるんですよね、「青い」って始まるでしょ。あるシンガーソングライターの人がね、僕の知り合いに「この曲手抜きじゃない、イントロがないもん」って言ったんですよね。これほんとの話なんですよ、でも。

大滝: 面白いね。

山下: だから、必ずヒットソングっていうのは、イントロがあって、歌いだして、間奏があって、あれしなきゃいけないだよね、その人の頭の中では。

大滝: そうなんだろうね。

山下: いろんな物の考え方があるなと、思ったんだけどね。

大滝: イントロがないっていうのがいいね、その考え方が。

山下: イントロがないのが、手抜きだっていうのがさ、すごく、

大滝: 「イントロがない=手抜き」いいね、その結びつき方が。日本の原動力だと思う、そういう考え方は。

山下: 曲いってみたいと思います。

大滝: いこう。

山下: この次は、ペトラ・クラークでいってみたいと思います。

大滝: いいねぇ。

山下: ユー・ド・ベター・カム・ホーム。

 曲:

ペトラ・クラーク/YOU'D BETTER COME HOME

山下: 私がペトラ・クラークの数多いレパートリーの中でも、最も好きな曲で、

大滝: うーん、でてるね、山下君がでてるね、これは。

山下: イギリスのバリー・マン、トニー・ハッチの曲です。

大滝: なるほどね。

山下: 65年のヒット曲、ペトラ・クラーク、ユー・ド・ベター・カム・ホームでした。ところで、最近レコードは買ってますか?

大滝: レコードは時々。でもこの頃、聴くようになりましたね、ようやく。

山下: そうですか。

大滝: ビデオの方もちょっと一段落して。

山下: ビデオね。

大滝: だいたい、7:3くらいの割合で、音楽が増えてまいりましたから、これから徐々に、

山下: 1周しましたね。

大滝: 一回り、だいたい、だいたいしました。

山下: どんなの聴いてるんですか、最近は?

大滝: その時々に、例えばレコード会社のディレクターで、若いこがいて、クリス・モンテスが好きだということになると、ひと晩かかって、クリス・モンテスのベストのテープをつくるとか。それで、ついでに僕も聴いちゃうと。

山下: なるほど。

大滝: で、僕のテープ、彼には片面だけクリス・モンテスを渡して、片面には何もはいってなくて、僕のテープには、片面にペトラ・クラークがはいってるという。なぜか、クリス・モンテスとペトラ・クラークってのは、A、Bの感じがあるんですよね。

山下: そうですよね。なんか、A&Mとワーナー・ブラザーズだけど、なんとなくこの、あれですな。

大滝: 続けて聴くとよくてね、で、秋口にのんびりしているときには、非常に両方とも景色にあうんですよね。

山下: なるほどね。しかしあれだね、若い人っていうとおかしいけどさ、20代前半の人で、結構そういう人が好きな人がいて、そういう人用に、なんかテープつくってやったりするとですね、なんとなく再発見したりするんですね。

大滝: いや、それが一番の楽しみですね。若い人がいないと、やっぱり淋しいですね。いる頃にはいっぱいありましたけどね。

山下: なんですか、それは?私は、もうお世話になりましたよ。

大滝: いえいえ。

山下: あのライブラリィには、ほんとに、まったく。

大滝: ほんとに再発見、同じものを聴くと、聴き方がものすごく違ってくるっていうのが、ありませんか?

山下: あります。

大滝: ありますねぇ。

山下: これを言おうとしてたんだとか。

大滝: こういう、あれだったのかとかね。最近、なんか感動したのってあります?

山下: そうですねぇ、最近はですね、この間のチャック・ベリーのメンフィスを聴いたんですよ、僕は。

大滝: メンフィスね、うん。

山下: あれは、あんなことをやっていたんだというね。ベースが「ドンダコエケッコー」って、あんなん全然気が付かなかったけど。10年ぶりくらいなのね、チャック・ベリのメンフィスなんて聴いたの。

大滝: なるほど。

山下: ギターは全然何にもやってないんだよね、ギターは「ジンジンジン」ってやってるだけで。ジョニー・リバースのメンフィスとか、ロニー・マックのメンフィスとか「ジョンジョゴジャンジャジャ」って、あんなこと全然やってなくて、あのフレーズは実はベースがやってて、それを結局、あれなんですよね、ロニー・マックがああいう具合にアレンジしたんで、あれで定着したんでしょうね。

大滝: なるほどね。

山下: 多分そうでしょうね。間奏も全然あんなんじゃないですもんね。

大滝: うーん、全然違うね。ロニー・マックの方が、いかにもチャック・ベリーらしいよね、いわゆるね。

山下: らしいね、そうそうそうそう。だから、メンフィスはチャック・ベリーの中でハバナ・ムーンとか、ああいうのと同じで、全然なんか異色なんだよね、むしろ。だから、ロニー・マックがあれをやったときに、それをあえてチャック・ベリースタイルっていうの、スイート・リトル・シックスティーンスタイルでいくという、あの辺のあれがしゃれてるの。

大滝: その解釈がよかったんだよね、それの方が。チャック・ベリーじゃない方が、チャック・ベリーらしかったという、このなかなかに面白いものがあるね。

山下: そうなんだね。結局メンフィス・テネシーって、チャック・ベリーの前作品の中じゃ、そんなにヒットしてないんだよね、自分のやつとしては。

大滝: あんまり、そうだね。

山下: あれはなかなかね。

大滝: すごいね、すごいもんがある。

山下: 最近あったんですよ、強烈にこうだったっていうのがね。あったんですけど、ちょっと今思い出せないでね。曲をかけてる間に、思い出したいと思うんですけど。なんかありますか、最近?

大滝: 私もね、ロイ・オービソンがね、はぁーっと思ったね。で、この人もう、どんな歌だったっていっても、この人なんだよね、同じ声でさ、同じスタイルで。まあ、そこに確立するまでは、多少の何年かのあれはあるんだけども。で、嫌な人は嫌だろうなと思うんだよね。で、いい人はいいだろうなと思うんだな、当たり前ちゃ当たり前だけど。

山下: 日本語になっていない。

大滝: なっていなかったなぁ。で、最後、すごい歌いあげる人なんだけどね。この人のライブってのを初めて聴いたんですよ、出てたんでね、最近やったものらしいんだけれども。

山下: レコードが出てるんですね、今。

大滝: 出てんだよね。で、昔の曲なんだけど、このライブがね、もうなんか、たまらなくなるくらいに、涙もの。

山下: ちょっとそれを聴いてみたいと思いますが、ロイ・オービソンのライブのレコードが、なぜかコンパクト盤というか、シングル盤の2枚組、4曲入のEPで発売されまして、レーベルがなんとZTTで、イギリスのあの、トレバー・ホーンのレーベルで、そこでロイ・オービソンが出るというセンスが素晴らしいんだけど、そのレコードからライブのクライング。

 曲:

ロイ・オービソン/クライング

山下: いやぁー、素晴らしい。

大滝: ほとんど山下達郎のコンサートという感じがしましたけどもね。

山下: なにをいう。僕はロカビリーでは、誰が何といおうとロイ・オービソンがナンバーワンなんですよね。

大滝: ロイ・オービソンは、とにかくだから、いろんなよさがあるけど、最後の張り上げるところもあるけども。だから、あそこが嫌だって言う人は嫌だろうなと。

山下: そうでしょうね。

大滝: で、いい人はとにかく、もしあれをやらなかったら、オービソンじゃないと言ってしまうんだよね。

山下: そうです、そうです。これ最近のライブなんですかね?

大滝: だから、もしこの声がまだ出ているとすれば、健在でしょう。

山下: たいしたもんですね、素晴らしいですね。

大滝: 小林旭という感じがしますけどね、私は。ロイ・オービソンを聴くと、なんか。

山下: なんですか、それ?

大滝: いや、とにかく、やっぱりこれは、すごいものがあるね。

山下: 拍手があったかいですよ、とにかく。「HOW WAS I ALRIGHT・・・」とくるね、このあれがいいですね。

大滝: 知ってるって感じがあるからね。

山下: これも61年の曲でしたよ、全米2位です。

大滝: そうですか?やっぱり、あの辺ですね、中学1年でしたけど、こればっかりだけど。

山下: 私小学校の……、もう3つ、4つ早く生まれてればよかったですね。

大滝: で、ロイ・オービソンと山下君というのは、やっぱり前々からそうだけど、共通点があって、ロイ・オービソンが歌えるのは、あなたしかいないんですよ。

山下: なんですか。シングス・ロイ・オービソンって出して、売れないだろうな。

大滝: 私は買いますから。つくってください。

山下: 僕はでも、これを聴いて思い出したんですけど、さっきビデオの話しましたけど、ミュージック・ビデオたくさん見ましたけどね、一番感激したのは、エバリー・ブラザースのロイヤル・アルバート・ホール。

大滝: 私も、泣きましたよ。

山下: 泣きましたよ、ほんとに、わたしゃぁ。あれはなんというか。

大滝: あれはなんだかねぇ。あれはあのー、まあ勝手に、おじんの郷愁だと言われようとも、男のロマンチシズムっていうのは、どういうものかっていうことをね、わかるには。

山下: ありますねぇ。それで、またバックがね、アルバート・リーとかが、ちゃんとよくわかってやってるところが、これがまた泣かせるんですよね。

大滝: 若い連中がね。

山下: 絶対、このあちゃらかな男を出さないっていうね。

大滝: あちゃらか?

山下: 「Till I kissed you」やるのでも、ちゃんとフレーズ知ってる。

大滝: 知ってるんだよね、昔のは。

山下: これがねぇ、もう。あれ出てるんですかね、日本で?

大滝: 出てる。

山下: あれは絶対ね、でもね、あれはエバリー・ブラーザーズが好きな人が、

大滝: だから、その時代の体験がある人がかなりだと思うけど、ない人にも、通じると思うけどね。

山下: 私は別にありませんよ、はっきりいって。

大滝: 私も生で見たことはありませんよ、一度もね。

山下: 原体験ありませんからね、後から聴いてるだけなんですから。

大滝: ということは、じゃあ可能性は非常にあるんだよね。

山下: ありますよ。

大滝: あれが好きだね。

山下: あれがやっぱり、音楽の美しさというか、

大滝: 思うね。

山下: パワー・オブ・ミュージックというか。こういう口幅ったいことを言ったりしますがね。

大滝: 男のあり方です、あれ。力強さもあるんですよ、あの人たちは、すごく。

山下: そうなんですよね。あそこが、また紆余曲折を経て、バラバラになって、

大滝: そうなんだ、喧嘩して、別れて。兄弟で、骨肉の争いをして、それでまた、そこへきてっていうことになると、ひとつの人生を見る思いだし、兄弟ってことでいくと、別に男同士とか、そういうことじゃなくて、男女も含めて人間愛というか、そういう非常に大きく見えるんだよね。あれはなかなかいいですね。

山下: やっぱり、金とってやるっていうか、そういうことをひとつ超えてるところがあるね。

大滝: あるね。でも実はそこなんだよね、お金をとってやることの一番の意義ってのは、そこを超えられるかどうかというところだな、これが。

山下: なかなか難しいところですね。

大滝: 次にいきましょうかね、そういう時は。

山下: 次は何でしたっけね?あっ、そうだ。ロイ・オービソンのクライングに続くのは、これは大変なんですが、こういう人だったら多分大丈夫という。

大滝: この人も、やっぱりあれですね、途中でなぜこう、シャウトしなければいけないかとか、なんでファルセットにしなければいけないんだって、会ったら一度聞いてみたいんだけどね。

山下: 必然性が全くないというね。

大滝: 彼の中でどういう必然性があって、ああいうふうな歌唱法に、自分でしたんだと思うんだよね、誰にも、ああいうこと教える人はいないよ、いくらなんでも。

山下: あれはでも、ウェスタン・ヨーデル。

大滝: うん、途中でね、

山下: なんの話をしているか、全然わかんないですね、これでは。かけてからいきましょう。デル・シャノン、アイ・ゴー・トゥ・ピーセス。

 曲:

デル・シャノン/I GO TO PIECES

山下: ところで、この曲はシャウトはしてますけど、ファルセットはでませんでしたね。

大滝: ありませんでしたね、失礼いたしました。

山下: デル・シャノンって人は変わった人で、これは。でも、シングス・ハンク・ウィリアムスなんてLPがでてるくらいだから、カントリーからでた人でしょうね。

大滝: だけど、あんまり、なんかあわないんだよね。カントリーソングそのものってのは、なんかいまひとつフィットしないというかね。

山下: あれでしょ、オリジナルでいわゆるスリーコードのロックンロールっていうの、チャック・ベリースタイルであるとか、バディー・ホリースタイルであるとか、そういう形の曲はないでしょ。全部、C→Amといく、マイナー、わりと哀愁メロディーでしょ。

大滝: いくね。メンフィスをカバーしたりはしてるけどね、せいぜい。必ずなんか、マイナー・コードがどっかに入るという、珍しいタイプの人なんじゃないかな。

山下: そうだよね、だから日本で受けたんでしょうね。

大滝: 受けたんだろうね。

山下: 街角シリーズとかね。

大滝: そうそうそうそう。

山下: Am→C→F→Gといくパターンですかね。

大滝: あのパターンだよね。

山下: ベンチャーズもそうですかね、最初はね。ベンチャーズはでもさ、初期はマイナーメロだもんね、ずっと。

大滝: Am→G→F→Eね。

山下: 何をいってるか、ちっともわかんないでしょうね、これ。

大滝: そうでしょうね、失礼いたしました。

山下: だけど去年はがきが来たんですよね、去年の何週間から後に、何にもわからなかったけど、面白かったっていう人もいましたしね。何にもわからなかったから、つまらなくて、ふざけるなって人はいなかったんですよ。

大滝: それも淋しい感じがしますけど、ただ、思ってるだけで、いわないだけなんじゃないですか。

山下: まあそうでしょうね。そういう人は切るんでしょうね、スイッチを。適当なことをいったりして。とりあえず大滝さんに対して、質問とか、そういうものは来週にやります。来週は、大滝さんの持ってきてくれたレコードをいってみたいと思います。再来週は、今週はつれづれでございますんで、再来週はまたバカ話をいって、映画の話とかそういうのも、映画を観てる人なのでそういう話を聞いてみたりと思ったりしますが、次なんでしたっけ、次?えーっと、あぁ、ジーン・ピットニーですよ。

大滝: ジーン・ピットニーですよね。

山下: 今日はなんか、だんだん歌い上げの世界に・・・、去年大滝さんがきたときに、「EVRERY BREATH I TAKE」かけたでしょ。あれが評判がよくってね。やっぱり、ああいう曲は感動を呼ぶんですね、若い人でも。やっぱりあの、コンビネーションというか、ドラムとその、

大滝: ドン、ダカダカダン。

山下: ジャガジャ、ジャガジャガといったアゲインのフレーズとかね。

大滝: スター・アップル・バームね。

山下: あれが感動を呼ぶんでしょうね。

大滝: 呼ぶんだろうね。それは非常に心強いですね、そういう話を聞くと。

山下: うれしいですね。ということで、今年も大滝さんを迎えて、ジーン・ピットニーは、もう歌い上げの極致、

大滝: 極致!歌い上げの極致、

山下: バリー・マンの曲でございまして、

大滝: これもやっぱりなんか、山下達郎のコンサートという感じがしますね。

山下: 何をいってるの、アイム・ゴナ・ビー・ストロング。

 曲:

ジーン・ピットニー/I'M GONNA BE STRONG

山下: 完全にバリー・マンが、クライングの曲からヒントを得てつくったとしか思えないという、ジーン・ピットニーも、それでなりきってやってるとこがまた、すごいですが。アイム・ゴナ・ビー・ストロングはいつのあれかな、資料がだんだんでかくなってくるんですよね。

大滝: エンディングがほんとにクライングとまるで同じで、最後の2、3秒くらい聴いてたら、どっちの曲かまるでわかんないという。

山下: ありました。64年、全米9位と。だから3年後につくった曲ですね、クライングのね。

大滝: なるほどね、そんな流行ったの?

山下: これは最大期のヒットでしょう、ジーン・ピットニー。バリー・マンがシンシア・ウェルと組んで3作目くらいなんですよね、確か。

大滝: すごいね、しかしね。

山下: というわけで、そろそろ時間だそうでございましてね。

大滝: あらまぁ。

山下: またこの続きは来週、来週は大滝さんのインスト関係の話で、再来週はですね、僕ついにエバリーの、この間、昔ほら大滝さんと2人でNHKでエバリー・ブラザーズやったじゃない。

大滝: はいはいはい、やりましたね。

山下: エバリー・ブラザーズとフリット・ウッズ。あれのテープを探し出してきましたので、再来週はそれでちょっといってみたいと思いますね。

大滝: 聴いてみたい感じが。

山下: リバイバルで、すごかったんです、聴いてみたら。

大滝: すごかった?

山下: とてもね。

大滝: 怖いものがある。

山下: 涙なくては聴けないというものでございまして。

大滝: 男のロマン。

山下: とりあえず、今日の最後は、僕はどうしてもこの曲が聴きたくて、お正月に。持ってなかったので、大滝さんにお願いして持ってきていただきました。エルビス・プレスリー、エンジェル。

 曲:

エルビス・プレスリー/ANGEL

山下: というわけで、エンジェルと、あの息の抜きかたが、全く大滝さんだという、エルビスのエンジェルを聴きながら、まず第1週目、本年第1回目の山下達郎のサウンド・ストリートは、この辺でお別れでございます。来週も大滝詠一さんをお迎えいたしまして、いってみたいと思います。来週もよろしくお願いします。

大滝: よろしく、お願いいたします。

山下: それでは、はがき待ってます。ただ、大滝さんに関する質問等は今からだしても無駄です、はっきりいって。あしからずご了承ください。それでは、来週のこの時間まで、みなさんごきげんよう、おやすみなさい。

 あれほど年代とかを覚えている大滝さんが、自分のアルバムの収録曲を間違えています。カナリア諸島はA面ですよね。ひょっとすると、カナリア諸島がB面に入ったロンバケが存在するのでしょうか?何か情報をお持ちの方がいらっしゃいましたら、ご一報ください。
 さて、次はみなさんお待ちかね、歴代の新春放談の中でも、最高に面白かったとの呼び声高い、86年第2回です。乞うご期待!!

 瀬戸克信様、校正情報ありがとうございました。

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