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1987.1.5 サウンド・ストリート

佐野: こんばんは、佐野元春です。みんな元気でやってますか?「元春Radio Show」、毎週この番組はNHKの小さなスタジオから、素敵なポップスやロックン・ロール届けてますけど、楽しんでもらってますか?さて、1987年、新年あけましておめでとうございます。今日は、年明け第1回目の放送ということで、スタジオにはすばらしいゲストを2人迎えています。大滝詠一、そして山下達郎。そうです「元春Radio Show」、今日はこのすばらしい2人のポップ・クリエイター2人を招いて「新春大放談」、その第1回目届けたいと思います。どんな話が飛び出すのか、今から楽しみですけれども、「元春Radio Show」いつものとおり「ブルー・マンデーをぶっとばせ」を合言葉に50分間、最後までリラックスして楽しんでくれればうれしいです。I WANNA BE WITH YOU TONIGHT!

佐野: 今日はゲストに2人のポップ・クリエイター、すばらしいポップ・クリエイター迎えています。達郎さん、山下達郎さん、そして大滝詠一さんです。えーっと、まず達郎さんの方から、

山下: はい。

佐野: えーっと、去年一年間の自分の活動を振り返ってみて、いろんなこと聞いてみたいんですけども、LPは「ポケット・ミュージック」、

山下: はい。

佐野: それから、

山下: あと、アカペラが2枚出ました。

佐野: アカペラ2枚出して、

山下: 年に3枚も出てしまったという。おとどしから比べると、想像できないような奇跡の、ミラクル・イヤーでしたね。

佐野: はー。大滝さんはレコードは去年は?

大滝: えーっとね、一応出るには出たんですけど、

山下: ハハハ。

大滝: えー、

佐野: 大滝さん自身のシングルじゃなかったんですかね?

大滝: ていうか、「コンプリート・イーチ・タイム」っていって、「イーチ・タイム」の完璧盤という、まだ、あのー、過去を引きずって生きてましてね。

佐野: はい。

大滝: もう、早くも3年ぐらい前になりますところの、64年(正しくは84年)の3月に出た「イーチ・タイム」を、

佐野: はい。

大滝: 「コンプリートな形で」っていうことでね、

佐野: はい。

大滝: それで「コンプリート・イーチ・タイム」と。それから、そのまた10年ぐらいに溯りますところの、そのー、ナイアガラの、

佐野: 「CD BOOK」?

大滝: えぇ、第1期をまとめた「CD BOOK」というのが出まして、出るには出てるんですけども、おおよそ「出たのか?」という質問に対しての答えにはならないというような感じがいたしまして、

佐野: あー。

大滝: 新しいものに関しては、ずいぶん、ここんところ、自分でもあんまり聴いてないですね。

佐野: あー。で、自分のレコードではなくて、プロデュースの方は何枚かあったの?

大滝: プロデュースの方も、何年やってないですけども、去年やったもんのなかでは、まあ、クレイジー・キャッツの「実年行進曲」とか、

佐野: はい。

大滝: 一応、あと去年出たもので、三木トリローさんの大全集の、あのー、一応監修のお手伝いとか、

佐野: うん。

大滝: それから、フランキー堺とシティ・スリッカーズっていうね、やっぱりこれもクレイジーのひとつ前ぐらいの時代のもんなんですけども、それの監修とか。

佐野: うーん。

大滝: まぁ、そういうものが多かったですね。

佐野: あと、でも特筆すべきは小林旭さんの、

大滝: あー、小林旭さんのはね、実は去年じゃないんですよね。レコーディングは一昨年の6月なんですよ。

佐野: あー、かなりロング・セールスでしたね。

大滝: なんかだから、去年っていう感じが自分の中ではなくてね。で、それがありましたけど、そうですね、あれがとにかくなんか、小林さんはかなりね、大ヒットでね、めでたいことですね。

佐野: 今日の「元春Radio Show」、山下達郎さん、そして大滝詠一さんを迎えてますけれども、1曲目、達郎さんの「ON THE STREET CORNER 2」、

山下: はい。

佐野: アカペラ・レコードの中からこの曲を聴いてください。「アマポーラ」。

 曲:

山下達郎/AMAPOLA

佐野: 山下達郎「ON THE STREET CORNER 2」から、「アマポーラ」聴いてもらいました。続けて、大滝さんの作品の中から、小林旭「熱き心に」。

 曲:

小林旭/熱き心に

佐野: 大滝詠一作品、小林旭で「熱き心に」でした。このシングル・レコードのフリップ・サイドは何が収められているんですか?

大滝: これはなんか、あんまり関係のないやつで。

佐野: あっ、関係ないの。

山下: 大滝さんのじゃないんですか?

大滝: 私のシングルの場合はね、B面を解放区っていうか、僕はあんまり2曲書くのは好きじゃないのね。で、1曲でなんか完結させた形がいいんで、割合、あのー、前に「冬のリビエラ」書いたときもそうだったし、

佐野: うん。

大滝: 「イエロー・サブマリン音頭」もそうだったけど、

佐野: うん。

大滝: B面って、全然自分に関係ないのが入ってしまうんだ。

佐野: あー。

大滝: ほんとは別に、ある程度関係のあるような感じがいいのかなとは思ってるんだけどね。なんか急ぎで出ると、結局B面にものがなくて。

佐野: ふーん。

山下: これ、もちろん大滝さんが自分で歌ってるテイクってあるんでしょ?

佐野: あっ、あるらしいですね。

大滝: どっかで聞きました、そういう話を?

山下: さっき聞きました、ハハハハ。

大滝: フフフフ、ダメかとぼけても。

山下: なんでそれ、持ってこなかったんですか?

大滝: いや、ちょっとあまり、ちょっと恥ずかしいんでね。

山下: 聴きましょうよ、それ。

大滝: あのー、なんてぇのかな?最初の部分は、割合自分なんだけど、途中から完全に小林旭意識してつくったっていう、僕は職業作家でもないのにね、そういうふうにつくり方したの初めてなんですよ。

山下・佐野:うん。

大滝: 相手に合わして。で、そこを自分が歌ってるところがあるんですけども、全然サマになってないの。ああいうもんなんだね。

山下: それがおもしろいんじゃないですか、フフフ。

大滝: みんなに笑われるよ、それ。

山下: 聴きましょうよ、今度、それ。

大滝: だからね、なんか、曲をつくる時っていうのは、別に「自分用」にとかね、みんな、つくっている人もいるのかもしれないんだけども、無意識で「自分用」につくってるんですね。

山下: うん。

大滝: うん、初めて気が付きましたよ。職業作家の人は偉いね、ホントに。

佐野: ということは、今まで、例えば松田聖子さんですとか、いろんな人に、こう、シングル書いてますけれども、

大滝: うーん。

佐野: それの、大滝詠一さんが歌ったテイクというのは必ず、

大滝: あります。

佐野: 残されているんだ。

大滝: だから、要するに、彼、ないし彼女たちが歌う前に歌っているものというのが必ず残ってるんですよ。

佐野: で、その、例えば、テープなりテイクを、相手のシンガーに聴かせて、で、「だいたいこのようなイメージで歌ってくれ」というような注文をするんですか?

大滝: うーん、ただ、テープが相手に渡った以降はどういうふうになるのかというのは、私はあんまり感知しない。

山下: 歌入れには参加しないんでしょ?

大滝: 歌入れは、うん、あんまり積極的には。ていうか、あとはもう、好きに歌ってもらうのが一番いいし、あんまり僕の歌を聴かない方が、なんかいいんじゃないかっていう気がするんだけどね。

山下: でも「リビエラ」だとかさ、「風立ちぬ」なんかステージでやったことあるじゃないですか。

大滝: 1回だけね。

山下: えぇ。

佐野: うん。

大滝: あれ1回しかやったことないんですよ。まだ、だから「熱き心に」を1回やったことないんで、で、1回だけは歌うことにしてるんですよね。

佐野: うーん。

大滝: なんですけど、まあ、ステージがないんでね。なんか、そのへんはあれなんですけど。

山下: クックック。

大滝: あまり笑わないでください。

佐野: さっきも「熱き心に」の7インチのB面の話、フリップ・サイドの話出ましたけども、

大滝: えぇ、はい。

佐野: そのフリップ・サイドについてちょっと聞きたいんだけれども、達郎さん、やっぱ、今まで何枚も、こう、7インチ出してますけれども、

山下: えぇ。

佐野: そのー、フリップ・サイドだけにしか、こう、

山下: 入れない曲。

佐野: 入れない曲っていうのは、これたくさんある訳でしょ?

山下: えぇ。僕はあんまりないんですけどね。

佐野: そうですか。

山下: えぇ。あのー、死ぬ、曲を殺すのがいやなんで、

佐野: あー。

山下: あのー、日本の場合はね、悲しいかなB面はB面でしかないんですよね。

佐野: うーん。

山下: だから、例えばB面に入れた曲をLPに入れないっていうことになると、その曲、必然的に「死ぬ」んですよね。

佐野: うーん。

山下: やっぱり、ある程度の思い入れをしてる曲だから、

佐野: うーん。

山下: それがすごくもったいなくて、なんとかなんないかなと。昔、フィル・スペクターがそれで、エア・プレイ稼ぐためにね、B面にはね、ただのインストゥルメンタル入れて、A面しか結局使い物にならないような形にしてね、A面の集中オン・エアを図ったようにしようかなとも思ったんだけど、それじゃあ、あんまりでもね、みっともないし。そこで考えたのがビーチ・ボーイズのカバーだったの、僕の場合はね。

佐野: あー。

山下: それを3枚続けたかな。

佐野: うん。

山下: あとはライブ入れてみたり、いろいろやってますけどね。

佐野: うーん。で、書き下ろしの、その、例えば、B面の曲、

山下: えぇ。

佐野: それはたいてい、のちの何か、例えば「達郎グレイテスト・ヒッツ」、

山下: えぇ。

佐野: あるいはそういうコンピレーション・アルバムのなかに、こう、入れてる?

山下: 必ず入ります。

佐野: あー。大滝さんの場合どうです?B面だけに、

大滝: 私はシングルを放棄してから、はや何年になりますし、

山下・佐野:ハハハハ。

大滝: で、まあ、これもね、繰り返し話をしてることなんだけど、スタジオを自分で作った時にね、45スタジオっていう、「フォーティ・ファイブ」っていうのは45回転で、シングル盤、僕はもう、限りなくシングル盤っていう盤自体に愛着をものすごく持っている男で、それに関してはみなさん同じ愛情があると思うんだけど。まあ、みなさんにも負けない程度のものを持っているっていうふうに思うんだけども。その、ナイアガラからシングル・ヒットを出したという、その、あまり強い印象がほとんどないのと、

佐野: うん。

大滝: だから、もう、かなり前にね、シングルに関しては考えるのやめてるんですよ。

佐野: ふーん。

山下: 大滝さんは、でも、僕の知ってる限りでは、シングル盤とLPに関して、全部ミックスが違ってますよね。あの「ロング・バケーション」別にして。

佐野: あー。

大滝: あれ以前は全部そういうことやって、

山下: ねっ。

大滝: ふたつのパターンをね。

佐野: うん。

大滝: 全部、だから、シングル盤はLPと違って、みんなミックスを変えたりするもんだと、

佐野: うん。

大滝: B面を特別にするんだとかいうようなやり方を、最初の前5年でやってたんですけども、

佐野: うん。

大滝: 後5年の方では、シングル盤もLPもおなじような、おなじものを入れるっていうか。それから、シングルは両A面的なものにしていこうみたいな、ふたつやってみましたけども、なんかどっちにも落ち着かなかったですけど。

山下: 佐野君の場合、例えば、ほら、今度のね、LPに入れたミックスとシングル・ミックス違う訳でしょ。

佐野: うん、違います。

山下: だとしたら、例えば、そのー、あと3年経ってさ、自分でエア・プレイする時、どっちが、やっぱり好きだとか、嫌いとか、やっぱり出てくるでしょ。

佐野: うん、出てくる。それは、やっぱりね、日本でレコード・リリースしていて問題感じるなというのはね、7インチっていうのは、やっぱり、その時代でもう、忘れ去られていってしまう。

山下: うん。

佐野: だから、7インチだけリリースしたらば、その曲はもう、忘れ去られてしまうんじゃないかという恐れがあるんですね。

山下: そうですよね。

佐野: ちゃんと、このLPという形で残しとかないと、あの曲は、例えば6年後の音楽ファンに聴いてもらえないんじゃないかっていう恐れがあって。だからどっちかって言ったら、まあ、LPをいつも、こう、聴いてくれてればいいなと思いますけどね、6年後、7年後。

山下: なるほどね。僕ね「ライド・オン・タイム」という一番ヒットした曲があってね、それテイク違えたやつがLPに入ってるんですよ。全く新しい録音でね。

佐野: うん。

山下: だけど、今聴いてみると、6年経ってるんですけどね、どうしてもシングル・テイクの方がいいんですよね。やっぱり、最初のガッツがあるのね、その曲つくって、最初に録音する時の。

佐野: うん。

山下: だからどうしても、最近、そのー、なんかこういうゲスト番組とかでね、そういう曲かける時は、必ず「シングルでかけてくれ」って言って、オファーしちゃうようになっちゃうんですよね。一応、ベスト物のLPに入っているから、それは努めてシングル・テイクを入れるようにしてるんだよね。

佐野: なるほどね。

山下: だからそれで使ってやれますけど、そういう問題がね、最近すごく考えるようになっちゃってね、

佐野: なりますね。あのー、アルバムつくる時、じゃあ、アルバム全体の、何というか、音の感触というかね、やっぱり統一感持たせたい。で、7インチ、僕、去年は3枚連続して出したんですけど、1枚、1枚、そのー、曲にあわせてミックスも、こう、違えてきたので、これ並べてみるとバラバラな感じがあるんですよ。

山下: ハハハ。

佐野: だから、LPはLP用にまたリミックスして、LP独自の音の感触を持たせるべきだなと思ったね。そういうこともあるかな。

山下: うーん。難しいな。

大滝: シングルに関しては、みなさん揺れてますね。

山下: うん。

佐野: えぇ。

山下: 結局、確定したものがないんですよね、日本ではね、シングルに関してはね。

大滝: 昔はあれでしょ?LPからストレート・カットというか、

山下: えぇ。

大滝: または、もっと大きく言うと、シングル盤のレコーディングしかなかった訳だよね。LPができる前っていうのはね。

佐野: うん、そうそう。

大滝: で、それからいろんなことがあって、リミックスとか、いろんなバージョンとか、ロング・バージョンとか、ショート・バージョンとか、なんとかかんとか言いながら、ずーっとここまで来て、どういうふうになっていくんですかね。

山下: そうねー。

佐野: 今、特に、12インチの、ディスコ向けのミックスですとか、あるいは、そのバージョンを、1曲のバージョンを変えることによって、例えばイギリスのZTTレーベルなんてのは、ひとつの考え方を持って、1曲を、こう、たくさんのバージョンを出してますけども、

山下: 7インチ、LP、12インチね。

佐野: なんとかミックス、なんとかミックス、適当な名前付けてね。

山下: なんとかミックスね。テレビ用も全然違うテイクだったりしてね。

佐野: うん。

大滝: 昔の私のCMみたいだね。

山下: そう。ほとんどトレバー・ホーンの先を行ってたという、大滝さんの場合は。

大滝: フフフ。

佐野: うん。

山下: そう考えてくるとね、でも、結局ユーザー用にね、例えばFMのロング・プレイかかるとこは12インチで、それから、ショート・プレイのヒット・パレード番組の場合にはLPプロモーション用のストレート・カットで、

佐野: うん。

山下: で、LPは要するに「商売で」っていうようなものなのかしらね。

大滝: あー。

佐野: まぁ、あのー、番組でもいろいろなレコード、僕自身聴くんですけれど、どっちかと言うと、イギリスの、そのー、アーティスト、あるいはプロデューサー達は、よく、こう違った、ディファレント・バージョンをよく出していますね。

山下: 出しますよね。

佐野: ていうのは、聴き手側の方でそういったディファレント・バージョンに、それぞれ価値観をちゃんと見てるんじゃないかな、楽しいという。

大滝・山下:うん。

佐野: 特にロンドンの方の、イギリスの方にその傾向が強い。

山下: そうね。あのー、あんまりいい例じゃないけど、例えば、イエスの「オーナー・オブ・ア・ロンリー・ハート」って曲があってね、

佐野: うん。

山下: それを最初に聴いたのはね、12インチなんですよ。

佐野: はい。

山下: 歌が入ってないやつだったの。

佐野: はいはい。

山下: 演奏の切り貼りでいくやつで、それから、要するにストレートなシングル・バージョンを聴くと、すごく違和感があるんですよね。

佐野: あー。

山下: それはなんか、だから、僕なんかが、あまりにもカテゴライズにね、執着し過ぎてるせいかもしれないけど、これはもう完全に違う音楽なんですよ、僕にとっては。

佐野: うん。

山下: それをおんなじ曲とは、とても思えなくて。なんか、その、とにかくレコーディングっていうのは、さっき、曲の間にも言ったけど、今は一発録りの時代じゃないでしょ。ビートルズみたいに、一発で録って完成品という時代じゃないから、それを要するに、リズムを録って、なにをオーバー・ダブしてね、シンセをオーバー・ダブして、「この音色が好きだ」とか、そういうことを重ねていって、例えば「AからBへいくとこに何をつくるか」とか、そういう要するに、なんか、一種の編曲をですね、的なセオリーの中での、要するにベストなものを見つけていくのが、まぁ、いわゆるストレート・カットの普通の7インチな訳。

佐野: うん。

山下: それをだから、そこで、僕なんかは意識的に完成してるような気がしてね、それをなんか努力して、どうやって壊そうかというのがね、なんかナンセンスな気がしちゃったんですよね。

佐野: あー、なるほどね。特に今、例えばレコーディング・スタジオ、現場見てみると、いろいろな、やっぱりハードや機械が発達してきて、

山下: えぇ。

佐野: むしろ、その演奏をしているアーティストよりも、むしろエンジニアの方が、より、こう、クリエイティブな、なにかアイディアを出したくなってくるというかね、

山下: うん。

佐野: 例えば、ZTTから出てくる一連のディファレント・バージョンにしても、その演奏者のプロダクツというよりも、エンジニア・プロダクツの感じが強い。

山下: そうみたいね。

佐野: エンジニアの作品なんだということを、自分たち自ら主張しているというか。

山下: 音楽的な内容よりも技術的な内容を、こう、売り物にしてるっていうかな、そういうような感じがね、してしょうがないね。

佐野: うーん。

大滝: しますね。

山下・佐野:うーん。

山下: どういう具合なエコー処理がされてるかとかね、そういうようなものが売り物で。だから、質が変わってきたのかな、昔とはね?

佐野: なるほどね。それでは、えーっと、今日は山下達郎さん、そして大滝詠一さん、ゲストに迎えてますけれども、えー、僕の曲も聴いてください。去年リリースした「カフェ・ボヘミア」の中から、これもね、7インチであらかじめ出したんですけども、ミックスが違う曲です。「シーズン・イン・ザ・サン」、佐野元春with THE HEARTLAND。

 曲:

佐野元春 WITH THE HEARTLAND/SEASON IN THE SUN

佐野: 佐野元春 WITH THE HEARTLAND、アルバム「カフェ・ボヘミア」から「シーズン・イン・ザ・サン」聴いてもらいました。

山下: 違いますね、やっぱり。

佐野: うん、ずいぶん違う。これはLP用に、もっとレンジを広くして録ったんです。で、エンジニアはアラン・ウィン・スタンレーという人なんですけれども、今までやったものとしては、デキシー・ミッドナイト・ランナーズとか、

山下: はー、はー。

佐野: エルビス・コステロとか、とにかくこの、

山下: そういう音してるわ、やっぱり。

佐野: うん。なんかね、こう、バンドが、こう、「ポン」とやってきたものを自然な形、フォルムでまとめていくタイプのエンジニアかな。

山下: なるほどね。いわゆる過激なタイプのエンジニアではないですね、要するに。

佐野: うん。フォルムでまとめていくところが、すごく気に入っちゃってね。

山下: なるほど。

佐野: うん。えーっと、エンジニアの面で言えば、達郎さんは海外のエンジニアで言うと、一緒に仕事したことありますね。

山下: 僕は、えぇ、ちゃんとトラック・ダウンまでお願いしたのは、ソロでデビューする時にジョー・ヨルゲンセンていう、その人はフュージョン専門の人で、リチャード・ティーとか、エレック・ゲイルのLPとか、当時の、あのー、あの辺のスタッフ関係のフュージョンもののインストゥルメンタルものはほとんどやってた人だから、その人にお願いしたんですけど。

佐野: うん。そん時はどうでした、今振り返ってみると?

山下: 非常に、あのー、ノーマルな、いかにもニュー・ヨークのミドル・オブ・ザ・ロードな、エンジニアらしいエンジニアリングですね。

佐野: あー。

山下: で、当時の、だから、ボブ・クリア・マウンテンがパワー・ステーション入る前には、メディアでね、仕事したんですけど、

佐野: えぇ、えぇ。

山下: その頃もそういうミックスだったですね。

佐野: あー。

山下: だから、それがまあ、76,7年のアメリカの、特にニュー・ヨークの一般的な風潮だったんじゃないのかな。

佐野: なるほどね。

山下: その頃は、もうオーケストレーションの音楽ばっかりでしたから、フォー・リズム、もしくはファイブ・リズムにブラスとストリングスというね、そういうあれだから、それにやっぱりあってたんでしょうね。

佐野: うん。昨今では、日本のアーチストもよく、海外レコーディングというのは、こう、よくやられてますけども、

山下: えぇ。

佐野: だいたい、例えば、エンジニアにしても、その参加してるミュージシャンにしても、そのアーチストと本質的にあまり関係ないところで、

山下: うん。

佐野: こう、レコードができあがってる部分もあるけど。達郎さん、例えば、今後また、海外のそういうエンジニア、あるいはプロデューサーと仕事する時には、自分の、その、音楽的なキャリアとこう、深く結びついたところで「必然的にこの人だ」というチョイスはやっぱりしていく訳でしょ。

山下: 当然でしょうね。

佐野: 今後は考えられるんですか?

山下: いや、僕はなるべく日本人とやりたいです。

佐野: あー、というのは?

山下: あのー、結局、アメリカなり、イギリスなりっていうね、例えば、ハード・ウェアの技術っていうか、コンソールの技術とかいうものも含めて、まだまだかなわないところがあるんですけど、なんとか負けないような日本のノウハウをつくりたいというね、

佐野: あー、なるほど。

山下: それはもう、すごく些末なことで、例えば、あのー、金管楽器のリミッター入れないで録るとかね、そういうような、すごく些末な違いがたくさんあるんですけど、そういうことも含めて、例えば、僕らがね、今まで日本語のフォークとロックみたいな形で、大滝さんなんかが始めてから、もう15年以上経ってるんですけど、

佐野: えぇ、経ちます。

山下: 最近すごく、その、外人のプレーヤーつかったり、アメリカ人なり、イギリス人なりのプレーヤーで録音してくる例ね。特に、歌謡曲がすごく多いんですけど、

佐野: うんうん。

山下: それでも突き詰めていくとね、僕すごく、この間ある人のライブ見て、全部外人だったんですよね、バックがね。

佐野: あー。

山下: すごく複雑な思いにとらわれて、

佐野: なるほど。

山下: 「これだったら、別に日本語じゃなくてもいいじゃないか」と思ったんですよね。

佐野: なるほど。

山下: だったら、「今まで日本語で、こういう洋楽のメロディーにのっけてきた努力、一体どうなってるんだろう」って。ドラマーなり、ベーシストなり、日本人がね、そうやって、今まで必死になって肉体に定着させようと思ってやってきた努力、それがね、お金の力で、外人の、要するに、その、パワーとね、イマジネーションも確かに優れてるんですけど、そういうもので、あっという間に払拭されちゃうわけですよ。

佐野: なるほど。

山下: で、僕なんかの感覚で言えば、ほんのちょっとの差でしかないものを、結局また開いていくのかなっていうね、すごく怖いようなものがあって。だから、僕はできるだけ日本人のスタッフでやろうかなというね、

佐野: なるほど。

山下: 特にリズム・セクションはね。

佐野: なるほどね。例えば、ニュー・ヨークにいた時に、トーキング・ヘッズというグループがいまして。で、彼らは彼らなりのアプローチで、その、ホワイト・ファンク・ミュージックを自分でつくってた訳なんですけれども、そこにレコーディング、あるいはそのステージに、黒人のアーティストたちを、例えばリズム隊、あるいはパーカッショニストとして、安易に入れたということで、ニュー・ヨークの辛口の音楽評論家達から非常に酷評されてた。あのー、なんて言うのかな?自分たちで、そのー、ホワイト・パンク・サウンドをつくりあげていくなかで、黒人達のリズム感覚だとか、感受性だとか、そういうのを入れて。で、自分たちのサウンドだということで、前面に押し出したそのやり方に批判が集中したんですよね。

山下: 僕はそれに関しては、別にそんなに悪いことだとは思わないですけど。

佐野: うん。

山下: 少なくとも言語おんなじですからね。アメリカなり、イギリスなりの同一言語圏でね、やっている意味では、それなりのコミュニケーションとれるし、それはインターナショナリズムに別に全然抵触することじゃないし、

佐野: うんうん。

山下: ただ、僕らが行く場合には、まず言語の問題があるし、まず「あかの他人」でしょ。

佐野: うん。

山下: 1回も会ったことない人とやる訳ですからね。だったら、何のためにおんなじドラマーでやってね、バンド志向でやってきたかというようなことが、全部意味なくなっちゃう訳でしょ。

佐野: うん、なるほどね。エンジニアリングの話でいくと、大滝さんはずっと、吉田保さんとコンビを組んで長いと思いますけど。

大滝: 保さんとは、まぁ5年か6年ぐらいですか。その前の5年が自分で一人でやってて、

佐野: えぇ。

大滝: その前の5年が、吉野金次さんとか、

佐野: えぇ。

大滝: そういう、初期の頃の人達で。僕は72年に一応、あのー、グループで、「はっぴいえんど」でロサンゼルス録音というのをやりましたんで、一応、あのー、何て言うのかな、

山下: 「はしり」ですね。

大滝: えぇ、えぇ。

佐野: 一番最初だったかな、海外録音ということでは?

山下: 一番最初じゃないですか?

大滝: 最初じゃないですか。で、森山良子さんとか、テンプターズさんとか、スパイダースさんとか、そういう人達は海外録音の先駆、タイガーズさんもありましたしね。

佐野: はい。

大滝: タイガースの人達はビー・ジーズの歌を歌ったりとか。そういうのじゃ、歴史上では彼らが先駆だと思うんですけど、我々の場合は、一応、ロサンゼルスへ、憧れの音を、ビーチ・ボーイズがつくっていた、そのスタジオだとがいうことで、それだけでもなんか打ち震えて、オルガンかなんかを持ってくると、「これはよくブライアンが使ってる」とかいうと、それだけで、もうすごいなっていう。

山下: やっぱ、そういう憧れってあったんですか、当時?

大滝: ありましたよ。ただし、ただ、そういうような意図をもって海外に行った訳じゃなくて、

佐野: うん。

大滝: ものすごく、たまたま、偶然の発想でね。たまたま、そういう観光旅行みたいなのが、レコーディングになっちゃったっていう、非常に意図がなくてやっちゃったレコーディングだったんだけど、そういうことありましたけどね。ただ、その頃はね、日本の録音技術なんていうのも、全然、例えば、そのー、山下君は、例えば、ニュー・ヨークのこういう音をとか、佐野君はイギリスのこういう人達、ニュー・ヨークのこういう人達っていうような、選ぶとか選ばないとかっていうような時代じゃ、まるでないんですよ。もう、ほんとに暗闇のなかを、こう、手探りで歩いていくっていう状況だったから、今となってはある程度、こういうようなことも言えるけどもっていうような感じで、やってる最中はまるでもうね、まるで「闇の中」というか「五里霧中」というか、そういう感じでしたけどね。

佐野: 72年「はっぴいえんど」。

大滝: 72年。

佐野: 意図はないといっても、でも、プロデューサーにヴァン・ダイク・パークスを据えるということは、

大滝: それ、1曲だけね。1曲だけ、あのー、僕が曲ができなくて、なんか、最後みんなでなんかつくろうみたいなところに、「ポッ」と飛び入りで来て。それで、それが、こう、なんか、セッションみたいになって。それがほんとに、すごい曲というか、我々、今までつくっていた、やっぱりだから、その、バースが来て、三冠王とって、阪神が優勝するみたいな感じで。

佐野: ハハハ。

大滝: ヴァン・ダイク・パークスが「ポッ」と入ってきて、我々が3年ぐらいやってた、なんかオリジナルの、まぁ、サウンドとしてのある程度の究極の姿っていうのかな。いわゆるオリジナリティに溢れた、誰もがなんか、認めてくれるようなオリジナリティに溢れたものが、やっぱり、そのー、バースの助っ人でできるというところが、

佐野: はい。

大滝: いまだに、

佐野: なるほど。

大滝: ちょっと、そういう、傾向があったんですけど。それが最後のアルバムになったんですけどもね。

佐野: 海外のミュージシャンの交流ということで言えば、「フィヨルドの少年」で、

大滝: あー、「フィヨルドの」

山下: 「少女」

大滝: 「少女」、えぇ。

佐野: あっ、「少女」で。

大滝: あれで、そういうよなことがありましたけどもね。

佐野: ギタリストまでということですかね?

大滝: そうですね。やっぱり、なんか、こう、今、単純にああいうようなギターを弾ける人が日本にたくさんいてくれれば非常に楽なんですけどね。

佐野: うーん。

大滝: 山下君は「弾ける」と豪語してましたけどね。

佐野: はい。

大滝: それは確かにその通りなんですけど、

山下: 言いましたかね、そんなこと?

大滝: フフフ、そういうような時ですね。あそこ、不思議にね、フィンランドって、未だにああいう、あのー、スプートニクスの「霧のカレリア」みたいな、ああいう、あのー、バンドばっかりというか、そういうグループが非常に多いんですよね、不思議に。それがおもしろいと思ってやったんですけども、ただ積極的な云々というのとは、また、ちょっと違うと思うんですけど。ただ、ごめんなさい、ちょっと長くなって申し訳ないんだけども、

佐野: はい、どうぞ。

大滝: 例えばだから、そういう、アフリカのビート入れるためにアフリカの人とか、もっとこう、強いビートが欲しいためにね、黒人の人達と一緒にやるとか、そういうようなことっていうふうに普通、海外のセッション・マンとかっていうと、みんなそういうふうになる訳なんだけど、

佐野: うん。

大滝: 別に北国の人呼んできてもね、みんな必ずしも海外とかいうと、ヨーロッパとか、あのー、南国とかっていうふうに言わなくたってね、別に北国の人でも海外の人とねセッションするっていうような考えがあってもいいんじゃないかっていう、少し、まぁ、ちょっとひねくれた考え方で、

山下: フフフ。

佐野: なるほどね。

大滝: やってみただけです。

佐野: 今日は「新春大放談」ということで、それぞれ、大滝さん、それから山下達郎さんに、今、かけたいレコードを持ってきてもらいました。えーっと、まず一番最初に僕から、かけさせてもらいます。

大滝: それは、例えばなんか、思い出があるとか?

佐野: バッキンガムス?

大滝: うん。

佐野: バッキンガムスは、えーっと、この番組でずっと「グッド・オールド・ソングス特集」、「オールディーズ特集」やってるんですけども、やっぱり、僕個人の好みとしては60年代中盤から、67,8年に至るまでのバンド・サウンド、ニュー・ヨークの、特に、ニュー・ヨークのバンド・サウンド、あるいはロサンゼルスのバンド・サウンド、イギリスから来たバンド・サウンドが好みです。で、その中でもバッキンガムスは僕のフェイバリットの内のひとつなの。で、曲を聴いてください。バッキンガムス、「スーザン」

 曲:

BUCKINGHAMS/SUSAN

佐野: バッキンガムス、「スーザン」でした。ちょうど「ミドル・オブ・シックスティーズ」のポップ・プロダクツを代表するような、

山下: いいですね。

佐野: 途中のサイケデリックな感覚が。

山下: カラオケにガッツがありますね。アナログ・レコーディングですね。

佐野: うん、バッキンガムズ。あと、僕のフェイバリット、この頃のグループで言うと、例えばクラッシックス・フォーとか、

山下: いいですね、アトランタですね。

佐野: はい。

山下: 真の意味のサザン・ロックですね、ハハハ。

佐野: ハハハ。その山下達郎さんが、今日もってきてくれた、ドゥ・ワップですね、これは?

山下: はい、ドゥ・ワップです。最近一番好きなドゥ・ワップです。

佐野: フィフティズ。

山下: ホワイトのドゥ・ワップですけど、

佐野: キューピーズについて、あのー、何か教えてください。

山下: 資料ないですけど、一応これヒット曲なんです。全米で60位ぐらいまであがりましてね。

大滝: 何ですか?

山下: 大滝さん詳しいでしょ、この辺?

大滝: いいや、詳しくないけど、レコードは持ってる。

山下: 日本盤出たんですよね、これ、確か。

大滝: ほんとに?

山下: えぇ。

大滝: あー、見たことある、ジャケット。絵でしょ?

山下: 絵です。

大滝: うーん。

山下: あのー、ニュー・ヨーク・ホワイト・ドゥ・ワップだと思います。

佐野: キューピッズ、「ブレンダ」

 曲:

THE CUPIDS/BRENDA

佐野: キューピーズ、「ブレンダ」。達郎さんのドゥ・ワップ・ミュージックに対する愛情は、もう、リスナーのみなさんの方がよく知ってると思いますけれど、

山下: 音悪くてすみませんでした。

佐野: これは50何年ぐらいのレコードですか?

山下: これは59年かな。

佐野: 59年。

山下: えぇ。ちょっと今日、資料持ってこなかったから、あれですけど。

佐野: はい。「オン・ザ・ストリート・コーナー」、えーっと、去年「VOL.1」の方を、また変えて出して、それで続けざまに「VOL.2」出ましたけども、今後、これはずっとシリーズとして続けたい?

山下: できればやりたいと思います。ただ、ライブがコンスタントにやってないとできないもんなので。

佐野: えーっと、それでは続いて、大滝さんの推薦のドリフターズ、「ゼア・ゴーズ・マイ・ベイビー」ですけれども、この「ドリフターズ研究家」としての大滝さんも、

大滝・山下:フフフフ。

佐野: リスナーのみなさんの方がよく知られていると思いますけれど、

大滝: そうですね、クレイジーも研究しているから、ドリフターズも研究しようかっていうことで始めたんですけども。えーっと「トップ・ガン」って映画観たんですよ。

佐野: えぇ。

大滝: あのー、で、まぁ、内容はどうってことはないんですけども、途中で、バーで女の子を口説くシーンがあるんですよね。

佐野: えぇ。

大滝: そこで「フラレた気持ち」っていう、あのー、ライチャス・ブラザースというか、なんでしたっけ、若いグループでは?2人組の、

山下: ダリル・ホールとジョン・オーツ。

佐野: ホール&オーツ。

大滝: ホール&オーツね。そういう人達がカバーしてるところの曲をね、歌うと、最後の「サビ」んとこで全員が大合唱するっていう、よく考えてみると、やっぱり、前々から僕は思ってましたけども、リズム&ブルースって演歌なんですよね、

佐野: うーん。

大滝: 単純に。で、演歌とか、リズム&ブルースっていうのは、女の人を口説けるんでしょう、きっと。

佐野: うーん。

大滝: そういう意味合いでは。

山下: うん。

大滝: 例えばだから、「愛を告白する」っていうのと「口説く」っていうのはちょっと違いますよね。そういう意味合いで、「口説く」っていう表現に、なんかリズム&ブルースってあうんじゃないのかなっていうふうに、なんとなく、その映画を観て、思ったんですね。

佐野: なるほど。

大滝: で、そういうところで、「これが演歌なんじゃないか」っていうふうに思って、この「ゼア・ゴーズ・マイ・ベイビー」を聴いてもらえると、なんとなく、他にもたくさんありますけども、こういうような曲も「日本の演歌の元になってるんじゃないか」っていうふうに思えるんじゃないかと思って、なんとなく。

佐野: なるほど。ドリフターズ、このグループの曲と初めて出会ったのはいつぐらいなんですか?

大滝: えーっと、カバーでしたね。ディオンの「ルービー・ベービー」とか、一番最初は「マン・アンド・ハニー」ですか、プレスリーのやってるやつ。だから、僕はもう、いろんなグループとか、いろんな曲に出会ったのは全部プレスリーです。

佐野: あー。

大滝: すべてプレスリーに、もう、帰結しますけど。

佐野: なるほど。

大滝: プレスリーはなんか、演歌じゃないような気がしますけどね。ドリフターズはなんかね、そういうような感じが力強く、「トップ・ガン」を観てそう思うという、この「こじつけの大滝」らしいところだよね。

山下: これはベンEキングがドリフターズ入って初めてのヒット曲ですからね。

大滝: 「ゼア・ゴーズ・マイ・ベイビー」がね。それで、あのー、ストリングスがそれまでドリフターズには、それまでのリズム&ブルースにあんまり入ってなかったんだけども、こうストリングスが入ってるんですよね。このストリングスの入り方が、いかにも演歌を感じさせるんですね、これが、不思議に。

佐野: あー、なるほど。

山下: 「スタンド・バイ・ミー」と変わらないと。

大滝: うーん。

佐野: なるほどね。

大滝: 「スタンド・バイ・ミー」が、今、そう言えば、

山下: ベスト10に入ってる。

佐野: 入ってきてます。

大滝: ベスト10に入ってるっていうのがね。

山下: すごいですね。

大滝: だから、そういう意味合いでいくと、三橋美智也の「達者でな」がね、今、日本のチャートの10位に入るっていう可能性が1パーセントもないってのが、

山下: 寂しいですね。

大滝: すごく寂しい感じがするんだよね、私は。

佐野: なるほどね。

山下: 全くですね。

大滝: 関係なかったかな、これ?

山下: そのとおりです。

佐野: さっき、大滝さんは「リズム&ブルースは演歌と似ている」ということを言いましたけど、

大滝: えぇ。

佐野: 僕もどっかの本で、「ロックン・ロール」と、それから「リズム&ブルース」の違い、どういうところにあるかって書いてあって。で、ロックン・ロールというのは一人称のある一人が、ロッカーが、その自分の思いの丈を一人称で語っていく音楽じゃないかって、

大滝: なるほど、うん。

佐野: リズム&ブルースの場合は、やっぱり、基本的には「ブラザー&シスター」、

大滝: 相手がある、対象があるわけですね。

佐野: えぇ。

大滝: あー、なるほど。それはおもしろいな。

佐野: ですから、より大きな、みんな同胞的な愛を、こう、訴えかける音楽がリズム&ブルースなんじゃないかって。

大滝: それは言えてるねー。

山下: それは「ブルース」と「リズム&ブルース」の違いでよく言われますけどね。

大滝: あー、そうなの?

山下: えぇ。ブルースは非常に一人称だけど、リズム&ブルースっていうのは、基本的にボーカル・グループのものが多いから、そういうコール&レスポンスというかな、

大滝: そうね、相手がいる、さっきのね、山下君のバラード好きな「ブレンダ」なんか聴いてても、相手がいるよね。

山下: そうですね。

大滝: 相手に語りかけてるっていうか、歌いかけてるっていう感じがしますね。

佐野: なるほどね。

大滝: うーん。これはなかなか深かったな。

佐野: それでは、大滝詠一さんのリクエスト、ドリフターズ「ゼア・ゴーズ・マイ・ベイビー」、今夜はこの曲を聴きながらお別れです。また来週も、「元春Radio Show」、「新春大放談」ということで、大滝詠一さん、そして山下達郎さんにゲストに遊びに来てもらいます。またよろしくお願いします。

山下: こちらこそ。

大滝: よろしくお願いします。

佐野: おやすみ。

 曲:

DRIFTERS/THERE GOES MY BABY

 大滝さん、達郎さん、佐野さんの3人による「新春放談」は15年に及ぶ歴史の中でもただ1回だけです。この3人のときは、健太さんが加わったときの3人に比べるとまじめに音楽の話をしているという気がしません(別に健太さんが不まじめという訳ではなくて)?健太さんとの3人の場合、大滝さんか、達郎さんのどちらかが(達郎さんの方が多いけど)、「アルバムはまだか」とか追求されることが多いですよね。
 さて、番組の冒頭でも話がありました「熱き心に」のデモ・テープですが、ぜひ聴いてみたいですね。来年の新春放談にでも再来年用にリクエストしましょうか。

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