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1987.1.12 サウンド・ストリート

佐野: こんばんは、佐野元春です。みんな元気でやってますか?「元春Radio Show」、毎週この番組はNHKの小さなスタジオから、素敵なポップスやロックン・ロール届けてますけど、楽しんでもらってますか?さて、1987年、新年あけましておめでとうございます。今日は、年明け第2回目の放送ということで、先週に引き続いて、スタジオにはすばらしいゲストを2人迎えています。大滝詠一、そして山下達郎。「元春Radio Show」、今日はこのすばらしい2人のポップ・クリエイター2人を招いて「新春大放談」、その第2回目届けたいと思います。それから番組の方には、リスナーのみなさんからの年賀状、そして新年のメッセージたくさん届いてます。うれしいです、どうもありがとう。今年も頑張ります。番組の方への応援、よろしくお願いします。じゃあ「元春Radio Show」、いつものとおり「ブルー・マンデーをぶっとばせ」を合言葉に50分間、最後までリラックスして楽しんでくれればうれしいです。I WANNA BE WITH YOU TONIGHT!

佐野: 今日も先週に引き続いて、すばらしいゲストを迎えています。大滝詠一さん、そして山下達郎さんです。「新春大放談VOL.2」です。

山下: フフフ。

大滝: どうも、再び、

山下: どうも。

大滝: 明けましておめでとうございます。

佐野: 明けましておめでとうございます。今日は選曲、いろいろと迷いましたけれども、3者の新しいプロダクツ、古いプロダクツ織り交ぜてやりたいと思います。では、えーっと、まず一番最初に僕の曲かけさせてもらいます。ナイアガラ・トライアングルVOL.2から、これは達郎さんのリクエストありました。

山下: 私、この曲好きなんです、はい。

佐野: 「Bye Bye C-Boy」、佐野元春。

 曲:

佐野元春/Bye Bye C-Boy

佐野: ナイアガラ・トライアングルVOL.2から「Bye Bye C-Boy」、佐野元春でした。

大滝: これの好きな理由っていうのは?

山下: この、なんか、感じですね。

大滝: 感じ?岡本太郎じゃないんだからさ。

佐野: 僕ね、シャッフル・ビートはこの曲と、それから、「モリスンは朝空港で」って、やっぱりコーラスが、こう、ずーっとくる、同じタイプの曲があるんですけども。達郎さんほどじゃ、もちろんないですけど、僕もビーチ・ボーイズのペット・サウンドとか、

山下: なるほど。

佐野: あの辺は、

山下: その辺の意識なんですか、これ?

佐野: うん、そう。

山下: これと、もう1曲ね、やっぱり「VOL.2」に入ってる、もう1曲の方もすごい好きなんですよね。

佐野: あー。ナイアガラ・トライアングルに入れた曲ってのは、比較的僕の、こう、ポップ・サイドというか、

大滝: うーん。

山下: スウィートな部分をつめてますしね。

大滝: 原初的というか、佐野君の本来的なっていうか。で、山下君は不思議に、不思議でもないけど、すごく、こう、原初的なものとか、最初のものとかっていうのに、すごく反応する人なの。

佐野: あー。

山下: そうですかね?

大滝: なんか裸のものとか、あんまり、こう、なんか、いろんな、あのー、手垢が付く前のものっていうのに、すごく敏感な人なんですよ。だから、デビュー作というか、一番最初につくった曲なんでしょ、自分で?

佐野: えぇ、そうです。

大滝: で、そういうのを選ぶのがね。

山下: それは、今、初めて聞きましたけどね、僕は。

佐野: なるほどね。

大滝: なかなかね。そういう人なんですよ。アナーキーというグループが好きだったりとかね。

山下: あぁ、僕、すごい好きですね。

佐野: あー。

大滝: とにかく、そういう、あのー、ストレートなっていうか、最初につくったものとかって、なんか、ある種のストレートさがあるでしょ?

佐野: うん、それはわかる。例えば、達郎さんのボーカルですけど、ものすごく、こうエモーショナルな部分を大切にしているから、やっぱり、他のアーチストが歌うのでも、エモーショナルな部分がものすごく、こう、耳にくるんじゃないかな?

山下: 「うまい」、「へた」じゃないんだよね。その、素直さっていうのかな、そういうあれかな?わかんないけど。

佐野: 原初的なっていうので、僕が感じる、例えばバディ・ホリーのしゃくりあげるところとか、エディ・コクランの、あのー、息のひきつって、

大滝: うん、ひきつって。

佐野: とかね、ああいうのがやっぱり、ロックン・ロール・ミュージックの中の、何て言うのかな、原初的な、

大滝: うーん。

佐野: なにかこう、要素っていうのを、典型的なね、要素を感じるなー。

大滝: うーん。

佐野: やっぱり、今でも、例えばエディ・コクランの50年代のプロダクツ聴いても、やっぱり震えますもんね。

大滝: 震える?

佐野: うーん。

山下: 声つくってないからね。

大滝: そういうことだね。

山下: やっぱり、クルーナー・ボイスっていうかな、それまでの30年代、40年代の音楽って、やっぱりアカデミックに、すごく教育された声だったのね。

大滝: 発声も含めてね。

佐野: うん。

山下: そういうのじゃないとこから、ロックって出てくるんでしょ?それでやっぱり、それを浴びるように育ってくるから、そういうことになるんじゃないのかな?

佐野: うん。50年代、例えばエディ・コクランの時代のレコーディングの現場っていうのはどんな感じなんですか?まず、あのー、1チャンネルか、2チャンネルのものなんでしょ?

大滝: えぇ、一発録りですよ。

佐野: 一発録りで。

大滝: で、特にね、あのー、もちろんリズム&ブルースの人達もそうだろうけど、白人のロックン・ローラーっていうのは、単純に言っちゃうと、かっこよさを、いかに自分はかっこよくて、女の子に「キャーキャー」言われるかっていうこと「だけ」を考えてやってたという。そうすると、あぁなるんだよ。

佐野: うん。

大滝: だから、あれがあの時代における、あのー、ああいうふうにやると女の子が「キャーキャー」言ったんだと思うんだよね。で、そういうこと「だけ」を考えてた人達だね。

山下: 多分そうでしょうね。

佐野: うーん。

山下: だから、そういうものの中から、あれだけのやっぱりさ、ものが出たというのがロックの面白いとこでね。

佐野: なるほど。あの50'sのロックン・ロールのレコード聴いて、僕、不思議に思うんだけども、だいたいがウッド・ベースを使ってます、ベースは?

大滝: うーん、ウッドとエレキとかあるけど、50年代は半々ぐらいかな。

佐野: 半々ぐらいですか?

大滝: うん、ウッドも結構あるんですよ。

佐野: はー、特に、あのー、シャッフルと2ビートの、こう、中間ぐらいのリズムを出すときと、

大滝: そうそうそう。

佐野: ウッド・ベースのリズムというのは、とても重要だなって感じですからね。

大滝: ウッド・ベースを、なんか、こう、「ビンビン」弾くんだよね、なんかね。

山下: エディ・コクランなんかはウッドでしょうね、もう、ほとんど全部ウッドでしょうね。

大滝: だから、カントリーとか、ヒルビリーとか、そういうスタイルのところから出て来て。

佐野: うーん。

山下: あれで録音悪いから、結局ウッドがほら、マイクで拾いきれてないから、音程とかはっきりしないでしょ。

佐野: うん。

山下: それがだから、ベース・ドラムと重組み合わさって、なんが「ゴチャッ」とした感じになってる、あれがやっぱりエネルギーになるんですよね。

佐野: なるほどね。

山下: 今みたいな、要するに、すごくデジタル・レコーディングで、1個、1個の音が分離はっきりすると、かえってそれがね、すごく力なくなっちゃうような、おんなじ演奏家にしたとしても。だから多分、エディ・コクランの、当時の50年代の演奏を、そのまま今のデジタル・レコーディングでやったとしたら、あれだけの力があるかっていうのがね、

佐野: 難しいんだな。

山下: すごく難しい。

佐野: あと、当時の例えば、セミ・アコースティック・ギターの、例えばブギのリズムなんかでも、とても微妙ですね。

大滝: うーん。

佐野: ウッド・ベースとドラムのベース・キックと、また全然違う、

山下: はっきり言って、ズレてんですよね。

大滝: フフフフ。

佐野: ズレてる。

山下: それがいいんですよ。

佐野: でも、気持ちのいいスウィング感が出て、ビートが出てね。

山下: あのー、日本の謡とかなんかはね、例えば、三味線で長唄とかやってると、いわゆる僕らがいってる「タイトさ」ってあるでしょう?

佐野: うん。

山下: 三味線のメロディーと唄があっちゃいけないんですよね。

佐野: うんうん。

山下: あうことを「なんとか」って言ってね、それはヘタな証拠なの。

大滝: そう。

佐野: はーん。

山下: 必ず、要するにその、唄のポイントと三味線が弾くポイントが微妙にズレてないと。

佐野: はー。

山下: なぜズレてないといけないかというと、そうしないと両方はっきり聴けないからというね。そういうのがあるから、それに似たようなとこでしょうね、きっと。

佐野: なるほどね。

大滝: ダビングなんかだと、あのー、完全に、こう、演奏をあわせていくっていうふうなね。

佐野: そう。

大滝: あとで、ひとつのものを聴きながら、他の演奏をすると、それにあわそうとするわけでしょ。

佐野: うん。

大滝: やっぱり、いっしょにやってるときはズレるわけですよね。だから今の人達も、最近気が付きはじめて、わざとズラそうとしたりしてるっていうようなことを考えている人もいるようだけど、

佐野: 一発録りにしちゃうとかね。

大滝: なんか、そうなったら一発録りでもう一回ね。こう、全員の「間」とか「呼吸」ね。フフフ、言うことがちょっとあれだけど。

佐野: 青森市のイヌガミカズタカ君から、こんなハガキが来ていて、僕はびっくりしたんだけれども、「最近洋楽、邦楽を問わず、サイクルがドンドン短くなって、2〜3年ですぐに生産中止、廃盤になってしまうレコードが多くなりましたね。刹那的な方向へ走っていく音楽シーンのこの中で、ほんとにすばらしい音楽まで使い捨てといっしょに消されていくのを見る度に、ロック・ファンとして、音楽ファンとして悔しさ、虚しさを感じてしまいます。このような不当な扱いに、僕たちは一体どうやって対抗していったら良いのか教えてください」ってことですけどね。

山下: グッ、どうぞ、先輩。

大滝: なんだよ?急にふるなよ!

佐野: でも、純粋にやっぱり、あのー、音楽ファンの疑問だと思うな。あまりにもサイクルが短すぎる。そのなにか、あまりにも製品化された音楽が加速度的に大量消費されすぎているというか、目に余るものがあるけど。

大滝: だからね、スケジュール帳、みんな捨てればいいんですよ、フフフ。

佐野: あー。

山下: これは結局、アメリカの音楽が、レコード以前のね、20年代、30年代、シート・ミュージックって、要するに譜面の音楽だった時代があるでしょ。

佐野: はい。

山下: あの頃に何万というスタンダード・ナンバーがあるでしょ。

佐野: うーん。

山下: 何曲残ってるかということを考えると、

佐野: うんうん。

山下: あの時代と、やっぱりよく似てますよね。日本で言えば、大正年間から昭和の戦争前までの、その、流行歌の歴史見てみると、今の何十分の1でしかないけど、やっぱり、当時の要するにね、レコードの購買絶対者層から考えると、信じられないカタログが出てたんですよね。

佐野: あー。

山下: でも、ほとんど残ってないでしょ。

佐野: うーん。

山下: それとおんなじようなものじゃないのかな。

佐野: なるほどね。

山下: だから、それは時代とか、そういうものはね、僕らが解決できるような問題じゃないかもしれないし。

佐野: ないね。では、この辺で、曲にいきます。えーっと、今度は達郎さんの新しい曲。これは発表はまだしてませんですよね?

山下: まだ出てません、ヘヘヘ。

佐野: えー、達郎さんが持ってきてくれました。この曲を、

山下: これは、あのー、フル・サイズじゃないんですけど、間奏終わって、ほんとは、もう、3番の歌詞が出てくんですけど、3番がカットしてあるあれです。

佐野: あー、でも、のちには完成品として出るんでしょ。

山下: 評判よければ、完成品で、

佐野: はい。

山下: 3番つけて、もう、詞もできてんですけどね。

佐野: はい。えー、達郎さんの曲、この曲を聴いてください。「僕の中の少年」

 曲:

山下達郎/僕の中の少年

佐野: 「僕の中の少年」、山下達郎。達郎さんの新しいプロダクツから聴いてもらいましたけれども、続いて、大滝さんの古い作品から、

山下: ハハハ。

大滝: フフフ。

佐野: ハハハハ。この曲聴いてもらいたいと思います。

大滝: 失礼いたしました。

佐野: えー、実際はこれ、一番最初にレコード、リリースされたときは、「はっぴいえんど」のレコードに入っていたんですか、それより以前?

大滝: いや、これは「大瀧詠一ソロ・アルバム」っていう、僕のソロ・アルバムの第1号だったんですけど、

佐野: はい。

大滝: 71年の12月にリリースされた中に入ってたんですけども、当時まだ「はっぴいえんど」在籍中だったので、ステージでよく曲がなくなって、この曲をよくやってましたけども。

佐野: はー。

大滝: えぇ。

山下: じゃあ、あれは、ソロのために元々つくった曲なの?

大滝: ていうか、あの辺は、そのー、

山下: 何ともいえない?

大滝: ソロっていうのが、非常に微妙なところで、

佐野: えぇ。

大滝: 僕としては、そのー、グループ内でみんなこう、ソロを別々に1回ずつ出して、またグループでもレコードがあるっていうふうな形のものかと思ってはじめたんですけど、

佐野: なるほど。

大滝: そしたら先にグループが解散してしまったっていうことで、僕のソロだけ「ポツン」と残ったっていうことなんですけど、半分「はっぴいえんど」っぽいんですけどもね。

佐野: うん。

大滝: でも、これはあのー、恥ずかしながら、作詞、作曲なんですよね。

佐野: そうです。

大滝: えぇ。

山下: いかにも諧謔的なその、

大滝: どうも、失礼をいたしました。

山下: プロテスト・ソングでございまして。

佐野: 詞を聴いてください。大滝詠一、「びんぼう」

 曲:

大滝詠一/びんぼう

佐野: 「びんぼう」、「大滝詠一ファースト・アルバム」から聴いてもらいました。

大滝: どうだっ!

佐野: すばらしい。

山下: すばらしい。

佐野: シャウトしてる。

山下: 恐れ入りました。

大滝: 何を言ってんだ、フッフッフ。

山下: エコーがないんですね、この頃のレコードは。

大滝: この頃はなんかね、ないですね。

佐野: リミックスは吉野金次さん。

大滝: 吉野金ちゃんと初めてやったんですよね。

佐野: うん。

大滝: で、何のつもりでこういうのつくったか、いまだに訳がわかんないんですけどもね、

佐野: でも驚くほどベース・キックとベース・ラインが出てた。

大滝: あー、やっぱり、松本、細野、鈴木茂、

山下: すごかったんですよ。

大滝: 「はっぴいえんど」のメンバーでしたからね。

山下: 曲だって、目の前でやって、それで、このフレーズ出てくるんでしょ、即?

大滝: まぁ、ほんとに。

山下: 打ち合わせで、ただね。

大滝: いや、ほんとに。うん、そうそうそう。

佐野: はー。4リズムだよね、言ってみれば。

大滝: うん、天才ミュージシャン。

佐野: とても複雑なリズム。

山下: それだけやっぱり、あの、ほら、フレキシブルじゃなかったから、かぶせるたってさ、あとでやるとズレちゃうから、やっぱりその都度、ねぇ、かぶりとかもあるしね。

佐野: うんうん。

山下: かぶりって、要するに、ドラム録ってるとベースの音が入ってくるとか、アンプだから、当時は。そうすると、あとからできないからね、今と違って、ライン録りじゃないから。

大滝: そうそうそう。

山下: だから、そこで決めるしかないから、やっぱり緊張感とさ、ねっ、

大滝: それがいいんですよね。

山下: イマジネーションていうのを要求されるの、その場で。

大滝: ほんとに。

佐野: 当時のレコーディングの様子とか、こう、クッキリ覚えてます?

大滝: 覚えてますよ。こん時はね、あのー、寝っ転がって歌ってたんですよ。「えーっ」とか言って、もう目っ茶苦茶な歌が、最初ガイド・ボーカルに入ってて、歌詞がほとんどなかったんです、最初はね。

佐野: はー。

大滝: ただ「あーっ」とかね、こう、シャウトしただけなやつで。

山下: 歌のさ、要するにパターンとして、どういうもの目指したの?

大滝: これ?

山下: うん。

大滝: なんだろうね。

山下: 別に「非様式」なの、それは?

大滝: なんにもないの。

山下: 別にリズム&ブルースやろうとか、そういうのでもないんでしょ?

大滝: なんにもないの。要するにカントリー・ソングで、人の名前でね、向こうの人の、あのー、えーっと、ジム・リーブスかな?「ビンボウ」という人の名前なのね。

佐野: あー、あー。

大滝: 「ビンボウ・ビンボウ・ウォチュ・ゴナ・ウォリヨ」とか、なんかね、そういうカントリー・ソングなの。

佐野: うん。

大滝: それをなんか、掃除してたら聴いたからね。

佐野: うん。

大滝: 「これは『びんぼう』にしよう」と。フフフ。

山下: フフフフ。

大滝: こういう、非常に情けない発想なんだよな、これが。

佐野: 音から入ってきた、その「びんぼう」というののね、音声から入ってきたとはいえ。でも、詞をじっくり聴いてみると、やっぱり、そのー、テーマが出て来てる。

大滝: ちょうどね、岡林信康っていう人のバックをね、「フォークの神様」って言われた、そういう人のバックをずーっとやってたらね、

佐野: えぇ。

大滝: なんか、こう、やっぱりみんな「びんぼう」がどうのって、まじめにね、捉えてて。本当に見事なプロテスト・ソングだったと思うんだけども。なんかね、そういうような時期にあったから、こういう詞になったんじゃないかと思うんですけどね。

佐野: なるほどね。

大滝: うーん。

佐野: 最近ではメッセージ・ソングと言ったような、なんか言葉出てきて、

大滝: えぇ。

佐野: 出てるけども、僕は歌だったらば、そのー、メッセージというのはあらかじめあるものだと思うんですね。もし、分けるとしたらば、メッセージ・ソングという言い方よりも、むしろプロテストしてるか、してないか、っていうふうに僕は分けたい感じがする。そういった意味では、

大滝: 私はピューリタンですけども、

山下: ・佐野:ハハハ。

大滝: 何言ってんだかな?

山下: わかんない。

佐野: この「びんぼう」はほんとにプロテスト・ソングっていう感じが。

大滝: 恥ずかしながら。

佐野: では、その、達郎さんの旧譜の中から、

山下: ほんとにこれかけるんですか?

佐野: うん。僕、これリクエストします。えー、ピット・インでのライブ・アルバム「イッツ・ア・ポッピン・タイム」から、この曲です。「エスケイプ」

 曲:

山下達郎/エスケイプ

佐野: 山下達郎、ピット・インのライブから、アルバム「イッツ・ア・ポッピン・タイム」から、この曲を聴いてもらいました、「エスケイプ」。実を言うと、今日、選曲をずーとしていて、「曲何にしようか」、「ふるい物と新しいものかけていこう」と。その裏にまた、別のテーマがありまして。で、それぞれの、その、ひとつのプロテストを、ソングをかけようじゃないかという相談がありました。で、大滝さんが持ってきたのが「びんぼう」、そして達郎さんの「エスケイプ」。僕はね、この「エスケイプ」を聴いたときに、あのー、いいなと思ったのは、僕もやっぱり60年代のアーチストで言えば、例えば、ボブ・ディランだとか、

山下: はい。

佐野: ルー・リードだとか、そのー、フリークだったんですよね。彼らの、その、歌ってる内容から、今の、その、現在を知ったり、なにか、こう、歴史をひもといていったり、そういう作業をしてたのを覚えてるんですけども。んで、あのー、でも、その、プロテスト・ソングっていうのは、必ず、すごくいいテイストの、「センス・オブ・ユーモア」とね、

山下: うーん。

佐野: ユーモアと、それからほんとに誰でもが親しんで聴いてくれるポップ性と、それを持ち合わせないと、持ち合わせているプロテスト・ソングこそが、至上のプロテスト・ソングだと僕は思ってるんですけども、

山下: なるほどね。

佐野: その意味では、達郎さんの、この「エスケイプ」っていう曲、とても僕は気持ちよく聴ける。すばらしい曲だと思います。あのー、達郎さんは、「サウンド・ストリート」は何年間やってたんでしたっけ?

山下: 3年です。

佐野: 3年間。

山下: はい。

佐野: 一応、達郎さんの番組の「ウリ」は、達郎さん自身の言葉でいうと、どんな形だったんだろう?

山下: 要するに、「日本のステーションでかかんない曲をなるべくかける」っていう、それのみです。何十年というね、やっぱりロックに関わらず、歴史があるから、音楽って。

佐野: うん。

山下: それがあまりにも、やっぱり、出ないっていうかね、それをなんか、こう、同好会的な、なんか、慰めものにしちゃいけないっていう感じがすごい昔からあるから。

佐野: ふーん。

山下: で、まぁ、自分、ミュージシャンだし、それでできるもんだったら、そういうものを使おうと。それには、まぁ、とりあえずNHKでやらしてもらったっていうのはね、CMもないし、淡々とやるには非常にいいフィールドなのでね、それでやらしていただきましたけど、おかげさまで。やりたいことは、大体やりましたけど。

佐野: なるほど。あのー、ラジオのポップ番組、あるいはロック番組っていうのの重要性、それは僕らのようなね、活動している人間にとっては、とても重要ですよね。

山下: そうですね。

佐野: 例えば、ラジオでオンエアされなければ、この曲の魅力も伝わっていかないし。で、このテレビ・メディアを使って、大量にみんなに知らしめていくという形もとってないし、そういった意味で、日本に今、FMステーション、たくさん出てきてますけれども、あのー、大滝さんなんかは、どんなこと望みます?

大滝: やっぱりあのー、基本のね、非常に力強い音楽とかね。

佐野: うん。

大滝: あのー、ものすごく、まあ、それを新しめにいうんだったら、情報量の多いっていってもいいけども。そういうものをひとつ聴きゃあね、他の99聴かなくても、100の価値あるんですよ。

佐野: あー。

山下: 誰かミュージシャンの人が面白いこと書いてましたけどね、やっぱり「フィルターってのは必ずあるはずだ」と、それは昔は趣味だとかね、好き嫌いですんでいたっていうことがあって、「これは自分の好きな音楽じゃないから、これは聴かない」と、これも権利であるし、それだからといって、別に全然恥じることもないしね、知らないからといって、恥じることないけど、自分の、要するに、フィールドにあったもののフィルターというのを開けとけば、そっから流れ込んでくるものだけが自分の個性として、培われていくんだと。今、でも、そのフィルターがないから。要するに、言ったことが概して全部飽和してるでしょ。頭ん中が飽和してるから、

佐野: なるほど。

山下: なにがいいか、悪いかすらもわからなくなってきちゃう。

佐野: では、曲続けていきたいんですけれども、僕のアルバム「カフェ・ボヘミア」から、えー、これはもうストレートに僕は抗議しています。「99ブルース」

 曲:

佐野元春/99ブルース

山下: フフフ。

佐野: 「99ブルース」、佐野元春 with The Heart Landでした。

山下: これいいですね、なかなか。

佐野: どうもありがとう。あのね、いろんな要素をごちゃごちゃに混ぜてみたの。

山下: 大滝さん好みですよね。

大滝: フフフ。

佐野: 一番苦労したのはね、あのね、えーっと「いつもほんとうに欲しいものが手に入れられない……、99ブルース」て、その次に、次への歌詞への橋渡しで、「フゥー」って入れるんですよ。

大滝: うん。

佐野: これがなかなか決まんなかった。

大滝: ふーん。

佐野: この、高音の方で、よく、昔のブリティッシュの人達が「フー」って入れてたでしょ?感情の高まりを。

大滝: ふん、ふん。

佐野: あれがね、どうも型どおりになっちゃうんですね、何回もレコーディングしても。

山下: フフフ。

大滝: あっ、そう?

佐野: だから、その型を自分で破れるまで、何回もこれ、レコーディングしました。

大滝: 「オー・イェー」に何度も時間かける人だからな。

山下: あー、でもそれが一番難しいんだよね。

佐野: うん。

大滝: そうかもね。これはでもね、すんなり聴けて、すごくよかった。いろんな歌詞がね、なんかこう、下の方でうごめいているんだけど、一応表面上、ずーっと、ドライブしていくでしょ。

佐野: うん。

大滝: こういうやり方が好きだな。

佐野: あー。

大滝: やっぱり16年ぐらい前に、フォークのプロテストの人達ができなかったやり方だよね。

山下: ・佐野:うん。

大滝: それをね、すごく感じてね。

佐野: あー、どうもありがとう。あのー、そのCDによる、「ロック・クラシック」盤が今、少しずつ出てるみたいですけれども、あのー、大滝さんなんかは、こんなレコードは是非CDにして欲しいっていうのはあります?

大滝: いやー、ほとんどCDなんてのは、たくさん曲が入るわけですからね、もうありったけ、あるもん全部入れちゃっていただけると、非常に私としてはありがたいんですけどもね。

山下: ボックスですか?

大滝: で、あのー、ソフトが少ないのもね、非常にいけないんですよね。で、どうしても単発でしか出てこないから、いろんなものを聴けるようになるといいと思うんですけどね。

佐野: なるほどね。

大滝: ひとつまあ、オリジナルをね、いろいろ考えていくうえで、いろいろあのー、前回にもいろいろ出てきたんだけれども、

佐野: うん。

大滝: これから、例えばほら、外人のミュージシャンを使うとか、ミキサー使うとか、いろいろそういうことで。で、これから自分で、どういうふうなね、曲づくりを、対外国とか、対日本でもいいし、例えば自分自身のことを考えて、オリジナル、以前考えていたオリジナルっていうのと、違うか、違わないかとかね。まぁ、どうしてそういうテーマになったというと、あのー、リバプール・サウンド、ビートルズがものづごく大ヒットしたときにね、イギリスの中では、ものすごくたくさん雨後の竹の子のごとくに、いっぱい出たんですよね、バンドが。

佐野: はい。

大滝: で、あのー、最近、ビデオ見返すとね、すんごいたくさんいるのね。知らないような人達がみんないるんだけども、全員ビートルズの真似してる訳。

山下: ・佐野:あー。

大滝: かっこうから、歌詞、歌い方、内容、全て、フリ、あれだけいっぱいいたのかと思うくらいね。だから、我々が知ってるというのは、まぁ、ビートルズに対抗する意味合いからも、いろんな、ローリング・ストーンズとか、デーヴ・クラーク5とか、割合個性的な人達だったんだけど、でも、いわゆる個性的でない、没個性の人達がもう、いっぱいいたのね。

佐野: へぇー。

大滝: だから、そのー、よくほら、日本人は、例えばそのー、ポップスをね、「西洋音楽をまねして、オリジナルつくって」っていうよりも、よくそのー、「自分達のオリジナリティーに目覚めよ」云々なんていうことを、

佐野: よく言う方がいますね。

大滝: 時々外国から、いまだに、16年経ってもまだ我々も言われるけども。ああいうのを見てるとさ、ビートルズが売れたから、みんな真似した人たちが、イギリスにいっぱいいた訳。だけど、イギリス出の人たちを、イギリス人が真似するのがよいのか、

山下: うんうん。

大滝: ちょっと問題あれだけども、他の人たちだから、イギリス以外の国の人たちだから、ビートルズの真似をするのがいけないのかさ、いろんな人たちをも巻き込んだからこそ、ビートルズは偉大だったのかさ、

佐野: うん。

大滝: これをなんか、この前ビデオ見ててさ、思ったんだけど、

佐野: なるほど。

大滝: みなさんどうかしらね、このジェネレーションの違いからいって。

山下: 難しい問題ですね、それはね。

佐野: いや、僕なんかはもう、あのー、こと音楽、ロック・ミュージックだけではなくてね、いろいろな社会現象含めて、やっぱり、東京で起こってること、パリで起こってること、ロンドン、あるいはオーストラリア、あるいは同胞のアジアの街々、あるいはアメリカで起こってること、その都市で起こってること、だいたい似たようなものなんですよ。ものすごく、こう、同じような見方で、社会を見てる、世の中を見てる、世界を感じている若い連中たちがポツポツといる。それは国籍とかね、それから男女だとか、年齢とか、そういうこと関係なくね。だからそういう、以前ポリスが「シンクロニシティ」というテーマでアルバムつくりましたけども、そういった、そのー、精神上での「シンクロニシティ」が活発に世界中を飛び回ってる時代なので、僕は、あのー、その大滝さんの提出した問題については、ナンセンスだと思うな。

大滝: うーん。

山下: 私はそういうことあんまり考えたことがないので、

大滝: まるで?

山下: うん。僕はもう、徹頭徹尾、今後に関しても僕はインターナショナルな活動する意志もないし、

佐野: うん。

山下: 意欲もないし。ただ、要するに、作品のクオリティーがそれにね、接近するものをつくりたいとは思うけど、僕は基本的に日本人が聴く、日常に染みていく音楽というかな、

佐野: うーん。

山下: いってみれば、「ドメスティックな観客を対象に、それが一番重要に思ってくれるような音楽のために、奉仕しようと思う」って、それ1点のみでやってるから、

佐野: うん。

大滝: なるほどね。

山下: だから、それを例えば、自分がね、仮にプロデューサーになったからといって、海外へ、例えば、ミュージシャンなり、アーティストなりを送り込もうというような計画をするとすると、これはもう、こういうような場でね、言ってるようなこととは全然違う部屋が出てくるから、それこそ1000ページの契約書のね、問題から始まらなきゃなんない訳で。ただ、僕が、先週も言ったように、音楽っていうのは、例えば、小津の映画観たのとおんなじで、ある一点を超えた真実というのは万国共通なのね。これはもう、すごい使い古されてる言葉だけど。そういう意味では、もうパリだって、ロンドンだって、ニュー・ヨークだって変わりゃぁしない、ただの人で。

佐野: うん。

山下: それで、そういう突き抜けるもので人間を説得することは必ず可能だから、それをするために日本人のミュージシャンの力量がどの程度あるかっていうのは、僕は非常に希望的な観測は持ってます。

佐野: うん。

山下: で、それはほんの些細な差でしかないけど、その些細な差を越えるのは、まず、すごい大変なの。でも、できないことじゃないんだけど、それをやることが、結局、向こうの人から見て、どういう具合な形で見えるかっていうのがね、すごい僕にはわからないから、だから、昔の、例えば、ミッキー・カーチスさんの時代なんてのは、ちょんまげ結ってね、「サムライ」というバンドで出てってみたり。今でも、やっぱり向こうで、ある程度の、一定程度の評価されてるのは、例えば、琴を入れていくとか、

佐野: うん。

山下: 日本のそのね、非常に「ジャパニーズ・カルチャー」を前面に打ち出して、

佐野: うん。

山下: いってる訳で。もっと日本人っていうこと関係なくて、インターナショナルなね、ミュージシャンとしての評価受けてやってる人は一人もいないと思う。

佐野: うーん。

山下: それが、僕はだから、どれだけ解決できるのかどうかわからない。これ全然答えになってないかもしれないけど。

大滝: いや、なってるよ。

山下: あのー、けど、わからないけど、それはやっぱり、もっと日本の、その、音楽だけじぁなくて、日本のカルチャーをね、国内で、日本人のカルチャーっていうのをつくらない限り、それを飛び越えて、今度、インターナショナルになる訳だから。そういう、要するに、段階的な論法でしかできないと思うから。特に文化はね。文化は要するに、文化が一番土台じゃないから。

佐野: うん。

山下: その下にあるものに乗っかってるだけのものだから、すごい希釈なものでしかないから。だから、それをしっかり固定するために、例えばだから、ミュージシャンのグレードあげるとか、例えば、日本語で歌う音楽を、すごくナチュラルなものにするとか、これ洋楽のメロディーにね、乗っけてくるという努力をみんなでした訳でしょ。だから、それがどっか、あさって行っちゃってる、行くんじゃないかっていようなね。

佐野: なるほどね。僕自身で言えば、その、自分のソング・ライティングの基本考えてみるとね、やっぱり、自分の周りの友達だとか、自分の愛しい人だとか、日本で起こってることとか、東京、もう身近で起こってることだとか、そういったものをテーマにして、そして、それらを曲にまとめて、コンサート・ツアーで回って、日本の若い連中たちに、こう、歌ってる訳だけど、それが僕のソング・ライティングの基本。だから、東京抱えている問題、あるいは日本抱えている問題、あるいは愛の問題だとか、人生の問題だとか、そのテーマをそのまま、例えばニュー・ヨークに持っていっても、それは通じるものでもないし、

山下: うん。

佐野: また、通じさせる必要もないから、僕もやっぱり、そのー、もし、ひとつだけ可能性があるとしたら、例えば海外で、自分の音楽のキャリアを伸ばしたいという希望があれば、全くアプローチを変えて、

山下: でしょ。

佐野: うん。ゼロから、全く違う、その、プロダクツをつくるという、

山下: それしか考えられない。

佐野: それしか考えられないですね。

山下: もう僕なんか13年やってるからね、それこそ僕が22,3のときに大学生だった人が、例えば熊本へ、郷里帰ってね、子供もって、コンサートに来る。やっぱり、そういう人のためにやりたいんだよね、僕は。

佐野: うん。

山下: それをさ、見も知らないさ、ロサンジェルスの観客のためにさ、そういうことを犠牲にしてまでやる、僕、意欲もないっていうことなのね。ハワイ公演とか、香港公演とか昔あったんですよ。

佐野: えぇ。

山下: その辺のがね。でも僕は、そうすると、やっぱりステージ構成から変えなきゃだめでしょ?

佐野: うん。

山下: まず、演奏してさ、「Good evening」って言うのがね、「Next song I'd like play for you なんとかかんとか」って言うのがね、

佐野: うん。

山下: そうすると、僕らなんかがさ、ずっとやってきたコンサートのルーティーンと違うわけでしょ。

佐野: 違います。

山下: そうすると、音楽も違ってこなきゃなんないし。そういうこと考えると、これはすごく大変なことだと思うんですよね。それで、でも、得るもの確かになんかあるかもしれないけど。でも、失うものと得るもので、やっぱり量りかけたら、僕、失うものがまだ大きいなと思うから、やりたくないという、すごい陳腐な発想しかないんだよね。

佐野: うん。達郎さんもまた、自分のレコード聴いてくれたファンの人達を大切にするからだと思うんですけれども、そのー、例えば達郎さんがレコーディング・アーティストとしてデビューして、ひとつひとつ積み上げたファンとの約束みたいなものがあると思うんですね。その約束を、全部ブロークして、ブレイクして、あのー、海外でやるということは、これはちょっと無理がありますね。

山下: ありますよね、えぇ。

大滝: 今、だから問題提起したのは、これ、僕らは16年前にその問題を根源に抱えてスタートしたんですね。で、といってこれは結論が出る問題なのか、出ない問題なのかはわからないんだけども、その都度、その都度もう一回みんな考えてることってのは、その都度あると思うし、

佐野: ある。

大滝: 時々、またいろんな考えが少しずつ入ってくるかもしれないけども、そういうような考えを、あからさまにするっていうことは、その人たちの次、何をつくるかっていうのに、大きくかかわってるかなと思ってね。

佐野: なるほどね。

大滝: それで質問をしてみたんですよ。

佐野: なるほどね。

大滝: えぇ。

佐野: 新旧取り混ぜた「ナイアガラ・トライアングル」でお届けしています。

大滝: 「トライアングル」でね、あー、これで実現できた。

佐野: もうやらないんですか、「ナイアガラ・トライアングル」は?

大滝: そういう聞き方しないでくださいよ、私に!

佐野: 重要な質問ですね。

大滝: ちょっとー。やっぱり、山下達郎、佐野元春以上の才能には巡り合えるとは、私は思いませんね。

山下: 最後はヨイショで終わりました。

大滝: チャンチャン。

佐野: 終わりました。

大滝: フフフ。

佐野: 「元春Radio Show」、新春スペシャル、えー、新春大放談、

山下: 大丈夫かな?

佐野: 大滝詠一さん、そして山下達郎さんを迎えて、ずっとしゃべってきましたけど、楽しんでもらえたでしょうか?それでは、一番最後は、やはり大滝詠一さんのこの曲で締めたいと思います。

大滝: 曲なしでテーマにぶつけた方がいいよ。締めはもう1回録りなおそう。

山下: フフフ、いいの!

大滝: ねっ、パッと。いいよ、曲は。

山下: いいの!ダメなの。

佐野: 大滝詠一、バチェラー・ガール。

大滝: ダメ?なんだよ。

 曲:

大滝詠一/Bachelor Girl

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