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1990.1.18 ミュージック・シティ

萩原: こんばんは、萩原健太です。ミュージック・シティ木曜日は、ヒット・ポップス・アンコール、1950年代から現在まで、さまざまな時代のヒット・チャートを賑わしてきた素敵なポップ・チューンをたっぷり詰め込んでお届けする45分間です。さて、今週も先週に引き続きまして、新春恒例、大滝詠一、山下達郎両巨匠をお迎えしての新春放談です。その第2弾ということですけどもね、いかなる話が飛び出しますか、その前に、まず1曲聴いてみたいと思います。大阪府枚方市の松野美由紀さんからのリクエスト、1957年に全米チャートで3位まで上昇しています。バディ・ホリー、「ペギー・スー」

 曲:

BUDDY HOLLY/PEGGY SUE

萩原: さて、2週目に突入しました新春放談です。大滝詠一さんと、

大滝: どうも。

萩原: 山下達郎さんです。

山下: どうも。

萩原: よろしくお願いします。先週はですね、4曲しか、この話の中でかけられなかったっていうんでですね、こんな事じゃいけないってね。今週は何曲かけられるだろうか?

大滝: 3曲にしようか。

山下・萩原:ハハハ。

山下: ひでぇなー。

萩原: えー、今週はですね、あの、先週は割と有名どころを、

山下: はい。

萩原: かけつつ、まぁ、メイン・ストリームの話をいきましたが、今回はですね、フィル・スペクター・フォロワーズ、

山下: いきなりそっち行っちゃう訳ですか?

萩原: はい。後半ですね。えー、ということでですね、そのスペクター・フォロワーの代表、

大滝: あのー、フィル・スペクターのサウンドが、如何にいろんな才能がある人達をね、開花させて、また、スペクター以上の人達がたくさん出てきたかってことで、

萩原: はあ、はあ。

大滝: またその一番手としてね、代表に選ばれた人がいるようですね。

萩原: そうですね。これがですね、素晴らしいです。とりあえずお聴きください。

 曲:

山下達郎/THIS COULD BE THE NIGHT

萩原: 誰でしょうねー?

大滝: これはいいね。

萩原: 素晴らしいですね。

大滝: うーん。

山下: なんで一番最初に僕のかけなきゃいけないの?

大滝・萩原:フフフフ。

山下: ほんとに。

萩原: この曲の成り立ちについて、ちょっとひとこと。

大滝: 成り立ち。

山下: 先週いいましたけど、76年ぐらいに、イギリスからフィル・スペクターの、そのー、6枚もののアンソロジーってのが、初めて全貌が出たんですよ。ロネッツとクリスタルズとボブ・B・ソックスと、えーっと、もう1枚なんだっけ?えーっと、

萩原: えっ?

大滝: ん?トゥデイズ・ヒッツとレア・マスターズ。

山下: あぁ、そうだ。それで、レア・マスターズの1・2ってのがあって、その2にこれが入ってたの、「ディス・クッド・ビー」の、

萩原: これは、モダン・フォーク・カルテットというね、グループのね。

山下: えぇ。

大滝: 小室等さんがやってたやつ?

萩原: いやいやいや、それは違う。

山下: それにえらい感動しましてですね、で、自分でやろうとやりたくなって。

萩原: というね。

山下: 「GO AHEAD」という78年のLPに入ってるんですけど。

萩原: もう、スペクターよりもスペクターっぽいサウンドでして。

大滝: そう。

山下: これは、エンジニアに吉田保さんという人がいまして、ミスター・エコーといわれてる人なんですけど、

萩原: フフフフ。

大滝: スペクターの3倍エコーが多い。

山下: 多いという人で。

萩原: ハハハハ。何もいわなくてもエコーが多い?

大滝: だから、あれだよね。そのー、後半、日本の場合、スペクター=エコーになったのは、吉田保さんが悪いんだな。

(3人爆笑)

萩原: 大滝さんのレコードも、達郎さんのレコードもやけにエコー多いですもんね。

大滝: 私はね、ロング・バケーションあんまり多くないの。

萩原: あぁ。

大滝: なんか反省したらしいんだよ、保さんが。「どうもあれはエコーが多くなかった」って。それ以降、ものすごくエコーが多くなって。

萩原: かかっちゃって。

山下: そうです。

大滝: だから、ああいうのじゃないんですよ。ほんとのスペクターってのは、僕にいわしたら、全然エコーがないの。もう、ノー・エコーの人。

萩原: 先週最後にかけた、あのー、「フラレた気持ち」でさえ、

大滝: あれもない。

萩原: ない!

大滝: コーラスにかかってるだけで、他のもんはかかってるようには聴こえない、私。

萩原: でも、ブレークになると、ボワーっていうじゃないですか。

大滝: うーん、なんかでもね。

萩原: あのー、AMで聴くと、結構きますよね。ハードなリミッターかかった状態でのAMで、例えば「ビー・マイ・ベイビー」とかかかると、ベードラが「ドォー」っていったあとに、「ドォー」って、一瞬持ち上がってくるでしょう、向こうが。

大滝: うん。

萩原: あれが結構気持ちよくってですね。

大滝: でも、ナット・キング・コールのボーカルも、ものすごくエコーがかかってるよ、でも。

萩原: あっ、そうか。

山下: そうだね。

萩原: あれでも普通だと。

大滝: うーん。ああいうのがだから、アメリカのサウンドなんだよ、だから、基本的に。特別、スペクターが特別だったわけじゃないんだよね。ただ、ベースにかけたりとかね、ドラムにかけたりとかいうことは、なかったっていうだけのことであるように。

萩原: 僕がショックを受けた、「マイ・スイート・ロード」っていう、ジョージ・ハリスンのシングルがありましたけど、

大滝: うん。

萩原: あれも、じゃあそういう意味じゃあ、エコーで壁作ってたというより、楽器いっぱいならして、壁作ってたというところが、

大滝: そう、あれもあんまりエコー多くない。

山下: あれは変なレコードなんですよ。あれ、真ん中にエコーが出てないんですよね。

萩原: はーん。

山下: 両サイドに、なんつうか、2台使ってるんだと思うんだけど、右と左にエコーがあって、真ん中はないんですよ。

萩原: なるほどね。

山下: あれ、今でも覚えてますけど。

大滝: ドラムはノー・エコーだよね、あれ、確か。

山下: そうなんですよね。

大滝: あの。だからね、実はだから、スペクターをほんとに理解しようとすると、、如何にエコーをかけない部分を、どうするかと、かけてないところを聴くのが、やっぱりね、なかなか、ツウのところの。

萩原: 深いですね。いい話し聴いちゃったな。次いきますよ、次、フォロワーズ。

山下: はい。

萩原: 次、誰いきましょうかね?スタッフ関係からいった方がいいのかな?

大滝: どうぞ。

萩原: どうですか?

山下: なんでもいいですよ。どんどんいきましょう。

萩原: どこいきましょうか、どこ?

大滝: あれがいいんじゃないですか?これの続きでいくと、トレイドウィンズがいいんじゃないですかね。

萩原: あっ、トレイドウィンズね。

大滝: うーん。

萩原: えーっと、いきたいと思いますが、

大滝: 「ニュー・ヨークは寂しい街」というね。

山下: 名曲ですね。

萩原: これはあのー、フィレス・レコード時代の後期に割と、スタッフ・ライターとして、やってたアンダース&ポンシアというね、連中がでっち上げたグループっていうふうなことでよいのでしょうか?さて、そういう訳で、トレイドウィンズですけどもね、このトレイドウィンズが所属していたっていっていいのかな?レッド・バード・レーベルっていうの自体が、結構そういう意味ではフィル・スペクターの人脈が固まってるっていうか、

大滝: あのー、スペクターの師匠のリーバー&ストーラーが始めた、開設したところのレーベルなんですけれども、このトレイドウィンズをやっていたところの、アンダース&ポンシアっていう人達は、スペクターのもとで仕事をしていて、で、自分達がいい曲ができたというんで、この曲を自分達でスタジオで録音して、スペクターのところに持っていったんだそうです。そしたら、スペクターが、「そんなもんやってられない」ってんで、断って、それでその曲を持って、スペクターの下を去ったわけですよ。

萩原: はー、なるほどね。

大滝: 実にだからね、そういうケースって随分あったそうですね。

萩原: なるほど。

大滝: だから、あのー、アンダース&ポンシアの、このトレイドウィンズっていうグループ名をね、適当につけて、アルバムがあるんですけど、この曲だけモノなんですよ。で、音が悪いのやっぱり。さすがにデモ・テープ。

萩原: あっ、なあるほどね。そのまんまの形で使っちゃってるんですね。

大滝: 第2弾から、ものすごくいい音なんだけど。だから、これはデモ・テープで、「師匠できました」って持っていった。「そんなもん出せない」っていわれた。

萩原: いらないって。

山下: これは名曲ですよね、ほんとに。

萩原: じゃあ、その辺の事情をね、しっかりかみしめながら、涙を浮かべて聴いていただきたいと思います。1965年に全米チャート32位まで上昇しています。ザ・トレイドウィンズ、「ニュー・ヨーク・イズ・ア・ロンリー・タウン」

 曲:

TRADEWINDS/NEW YORK IS A LONELY TOWN

萩原: この曲はね、その昔デーブ・エドマンズがカバーしましてね、「ロンドン・イズ・ア・ロンリー・タウン」ってのがあって、

山下: 「ロンドン・イズ・ア・ロンリー・タウン」いいですね。

萩原: なんか、やってくださいよ、達郎さんも。「東京・イズ・ア・ロンリー・タウン」

山下: 「東京・イズ・ア・ロンリー・タウン」?

萩原: うん。やって。やる?

山下: しょうがないな。

大滝: やるべきでしょうな。

萩原: ねぇ、やっぱりここはね、ひとつ。

山下: やりゃあいいんでしょう、やれば。

大滝: おっ!

萩原: おっ!

大滝: おっ!年頭にあたって、宣言がありましたよ。

山下: 「年頭に」って。私はなんなの、ほんとに?

萩原: 楽しみだな。今年もありそうですからね、楽しみにしてたいと思いますが。じゃあ、次はウォーカー・ブラザーズ。でました。

大滝: これはもう、山下さんが。スペクター体験の。

山下: いやいや、これはやっぱり、あれですよ。イミテーションとしては、これほどのイミテーションはないでしょうね。要するに、大滝さんがいってる意味での、エコーのさ、その、何ていうのかな、拡大解釈っていう意味ではね、エコー=フィル・スペクターっていう意味での、その、スペクターのイミテーションとしては、これ以上のものはないでしょうね。

萩原: あのー、よくできたパロディっていったら悪いけど、あのー、要するに、本物、例えばほら、向こうのブランド物を、日本の人がニセモノ作ったりするじゃないですか、だけど、向こうの物では作ってない形の物もこっちでは出てて、それが非常によくできてるとかね、オリジナルよりも。それに近いものが。

山下: でもね、ひとつだけいえばね、イミテーション越えてるんですよね。

萩原: うん。

山下: というのは、そのー、レパートリーの選び方が多種多彩で、そのバカラックとかね、いわゆるその、スクリーン・ジェムズのライターとか、それからランディー・ニューマンとかね、ボブ・ディランとか、ジャック・ブレルとか、そんなのまでいっちゃって、それを全部スペクターにしちゃってるというか、エコーのあの、びしょびしょのエコーにしちゃってるというのは、意味では、すごくプロジェクトとしては、非常に秀逸なアイディアで、アレンジもほとんどイギリスの、そのレグ・ゲストという人がアレンジしてるんだけど、そのリズム・セクションもある意味では、なんつうのかな、アメリカのミュージシャンよりも、そのー、表情が豊かっていうのかな、特にブラスとか弦とかね、すごくいいんですよね。

萩原: なるほどね。

山下: 録音もいいし。

萩原: あの、スコット・ウォーカーこと、スコット・エンゲルさんの声もね、

山下: いいですね、好きです。

萩原: 私実に。

山下: 今聴くとマイク結構吹いてますけど。

萩原: ビル・メドレーに負けてないという。なんか、やっぱイギリスのグループっていう印象あるけど、元々はでも、アメリカの連中で、

山下: アメリカ人ですね、えぇ。

大滝: 西海岸の人ですよね。

萩原: で、これからかける曲はなんと、

大滝: うーん、イギリスに行く前にね、あのー、西海岸で、ゴールド・スターで、アレンジがジャック・ニッチェで、ドラムがハル・ブレインという、まるでスペクター・セッションそのものですよ。だから、これをイミテーションじゃなくて、スペクターがやらなかったところの、スペクター・サウンドなんですよ。

萩原: なるほどね。

大滝: それを最初にやってた人達だから、これはイミテーションとは言い難いんですよね。

山下: なるほどね。なんてったって、デビュー曲がバリー・マン&シンシア・ウェイルで、

萩原: そうですね。

山下: 解散シングルがバリー・マン&シンシア・ウェイル、「ウォーキング・イン・ザ・レイン」ですからね。

大滝: 実に、だからその辺は、まっとうした人達ですよね。

山下: なるほど、正統派というべきなんでしょうね。

大滝: 全く、全く。

萩原: なるほど、聴いてみましょう。ウォーカー・ブラザーズで「ラブ・ハー」

 曲:

WALKER BROTHERS/LOVE HER

萩原: いわれてみればっていう。

大滝: ライチャスの5倍はエコーが多いんだよ、これ。

萩原: なるほどね。

大滝: だから、そういう意味では、ライチャスはないと言い切ってもいいくらい。

萩原: でも、ある意味では、あのー、ほら、スペクター・サウンド=エコーになったのってのは、スペクター・フォロワー達の活躍に負うところが大きい。

大滝: 当たり。特に山下さんの。なーんだかな。

萩原: ハハハ、またー。

山下: 私は今日は一体何なの?

萩原: でも、あんまり人のせいばっかりにできないですよ、大滝さんも。

大滝: いやいや、私も悪い。一番悪いのは、吉田保さん。クックック。

萩原: ハハハ、ひどいなー。

山下: でも、「ナイアガラ・ムーン」みたいなのもありますからね。

大滝: あるね。私はノー・エコーのレコードもあるからね。

萩原: あー、そうですよね。

大滝: 全部がスペクターじゃないんだけど。なんだ、いいよ。フォローしてくれなくても。

萩原: もうね、極端な人達が集まっちゃてますからね。

大滝: 心やさしいね、しかしね。

萩原: 続いてのフォロワーはですね、

山下: はい。

萩原: ボブ・クリューになるのかな?

大滝: ボブ・クリルも、ある意味合いでのフォロワーではありましたけど、あのー、あの時代にいわゆる影響を受けなかった人ってのは、まず皆無であったという方がいいでしょうね。

萩原: そうですね。

大滝: うーん。

萩原: なるほどね。やっぱりでも、それだけ、あのー、当時のアメリカの音楽界でのショックってのは、大きかったってことでしょうね。

大滝: で、63年で、ぽって消えちゃったっていうのが、また、62年,3年でスペクターは消えたんですね、ある意味合いで、シーンから。それがまたちょっとミステリアスなところ。

萩原: あの、ビートルズの登場ってのも大きいんですよね。

大滝: 登場と同時に消えたんですよ。

萩原: そうですね。

大滝: で、ビートルズが、あのー、1964年の2月の、えーっと3日でしたっけ、11日か14日か、あのー、ケネディ空港に降り立つんですよね。初めてアメリカに登場したときに、降りてくるタラップの横のところに、フィル・スペクターがいるんですよね。写真が写ってるんですよ。

萩原: うん。

大滝: なぜかと思ったら、イギリスからいっしょに乗ってきたんだって、その飛行機に。

萩原: ハハハ、なるほどね。

大滝: そうらしいよ。

萩原: 結構ドラマチックなものがありますね。

大滝: なんかだから、あそこでスペクターからビートルズへ、ポップスの主役の座を、なんか受け渡したというか、バトンタッチをしたというか、そういうなんか象徴的なものがありますよね。

萩原: なるほどね。

大滝: どうぞ。

山下: いや、まあ今の日本のバンド・ブームみたいなもんじゃないですか。

萩原: おー。

大滝: なんだ、なんだ。委員長がいるよ、委員長が。

萩原: いやいや、いやいや。赤ランプ。

山下: あー、そうか。ハハハハハ。

(これって、「イカ天」のネタですかね?健太さんは審査委員長でしたっけ?)

大滝: 復活、復活。なんだか、訳わかんないな。

萩原: まあ、あのー、確かにそういう意味では、でも、あの消え方が伝説を、伝説が伝説を呼び。

大滝: そうそうそう。消えると、なんか伝説になるのね。

萩原: 大滝さん、

大滝: どうして俺だけならないんだよ。

萩原: なってる、なってる、もう。

大滝: そのまま消えちゃって。

萩原: 伝説ですよ、伝説。

大滝: しょうがないな。

山下: 特にビートルズ以降のバンドっていうのは、クラブ・バンドでしょ。

萩原: うん。

山下: で、要するに、バンドだから、小編成だから、スペクターのはどんなに真似しても、やっぱりほら、ビリー・J・クレーマーとかね、そういう人達てやってるでしょう、結構。だけど、ああいうのは、絶対作れない訳、オーケストラじゃないから。それもあるんですよね。

萩原: なるほどね。でも、そうやって、いなくなってしまったスペクターがもう1回出てくるっていう時に、ビートルズが絡んでいるってのが、またなんか、こうね。

大滝: これが不思議な、歴史の皮肉だよね。

萩原: というわけでですね、その前にですね、その影響をいろんな人が受けてた時期の曲ということで、まあ、ボブ・クリル・プロデュースっていっていいのかな、

大滝: 特に「ビー・マイ・ベイビー」のイントロを、こういうふうに解釈したっていうのが、すごいと思うんですけどね、私は。

萩原: なるほどね。その辺チェックして聴いていただきたいと思います。フォー・シーズンズで、「ラグ・ドール」

 曲:

THE FOUR SEASONS/RAG DOLL

萩原: なかなか凄いものがありました。

大滝: 後半、スペクター自分で仕事やらなくなってね、いろんなプロデューサーに仕事ふるんですけど、これのプロデューサーだったところのボブ・クリルって人に、もうあのー、プロデュース頼んでるんですよ。

萩原: フィレスの時代に?

大滝: えぇ。で、ロネッツが歌ったりしてるというね、そういうこともあるんで、まあ、単純にフォロワーとはちょっと言い難いんですけど、まあいろんな広がりがあったということでしょうかね。

萩原: あー、なんかフィル・スペクターって存在には、なんかいろんなもんがくっついちゃってるんですね。周りのスタッフのものとか。

大滝: まあ、我々が適当にこう、くっつけて、強引な伝説をつけたと、作ってしまったといえないこともないんですけどね。

萩原: なるほどね。複雑なところですけどね。

大滝: なかなかに。

萩原: ちょっとこれ、あのー、脈絡という意味では、なんか突然かもしれませんが、

大滝: 突然ですね。

萩原: これちょっとお願いしますよ。

山下: 自分が聴きたいもんだから。

萩原: そう。大滝さんがですね、テリー・デイを持ってきてくれて、

大滝: 雑音が多いんですけどね。えー、スペクターがニュー・ヨークで、修行時代をつんでたのが、60年代初期で、それでロサンゼルスに渡ってですね、最初の頃、いろいろ仕事するんですけども、その時にやった仕事のひとつなんですよ。で、テリー・メルチャー、テリー・デイというのは、ドリス・デイの息子なんです。

萩原: はいはい。

大滝: だから、芸能一家の、

萩原: 芸能一家の!

大滝: で、この後この人は、バーズとかポール・リビアとレイダースとか、プロデューサーになる訳ですけども、

萩原: はいはい。

大滝: その人が自分でソロ・シンガーを、フィル・スペクターがプロデュースしていたという、非常に珍品です、これは。

萩原: 珍品ですね、これはね。

大滝: うーん。で、なおかつ曲がですね、クリスタルズの「アイ・ラブ・ユー・エディ」という曲のアンサー・ソングです。

萩原: なるほど。

大滝: 男性版という訳ですね。

萩原: だんだん新春放談っぽくなってきましたね、曲が。

大滝: いいのかしら。

山下: こうじゃないと、やっぱり。

大滝: 申し訳ない。

萩原: じゃあ、ちょっと曲紹介お願いします。

大滝: じゃあ、テリー・デイで、「アイ・ラブ・ユー・ベティ」、「アイ・ラブ・ユー・エディ」どっち?

山下: 「アイ・ラブ・ユー・ベティ」

大滝: あっ、「アイ・ラブ・ユー・ベティ」

 曲:

テリー・デイ/アイ・ラブ・ユー・ベティ

萩原: いやー、珍品でした。

大滝: どうですか?

萩原: よいですね、これね。

大滝: よいでしょう、結構ね。

萩原: ただね、僕、テリー・メルチャーのボーカルって、あんまりだめなんですよ。

大滝: 下手ですね、はっきりいってね。

萩原: その後、イクイ・ノックスとかね、つくって、自分のソロ・アルバム出したりしてましたけどね。

山下: ブルース&テリーなんかね。

萩原: もう、どうしましょうかっていうようなね、ところありましたけどね。

大滝: やっぱ、向こうでも2世だと、何もせずにレコード出るとかいうことあるんでしょうけども、ナンバー1になるには、やっぱり実力が必要ということなんでしょうかしら?

萩原: なるほど。うーん、ね。えー、日本の2世タレントの方も頑張っていただきたいと思う今日このごろ。

大滝: フォローばっかり。なんで2世タレントのフォローまでしなきゃいけないの?

萩原: ハハハ。よくわからない?

大滝: 義理があんの?珍しいな。

萩原: ないないない。

大滝: フォローが癖になってしまった萩原健太さんってとこですけどね。

萩原: いえいえいえ、そんなことはないですよ。でも、あのー、スペクター・フォロワーズってことでね、フォローじゃないですけど、フォロワーズなんですが、

山下: このフォロワーズといっしょにされたら、私困りますよ、はっきりいって。

大滝・萩原:ハハハ。

山下: どうでもいいけど。

萩原: でも、今日取り上げられなかったね、人でもいっぱいいますよね。

大滝: 例えば?

萩原: ほら、あの、ブライアン・ウィルソンって人も。

大滝: あぁ。

山下: あぁ、そうだよね。

大滝: あれはもう、かけるの忘れたね、そういえば。

萩原: まあ、これはあのー、普段僕のレギュラー・プログラムで、「もう止めろ」といわれるまで、かけてますから。

大滝: 「やめろといわれても」

萩原: そうそうそう。

大滝: えぇ。

萩原: まあ、大丈夫だと思いますが。あの人の場合は、例えばあのー、「Why ・・・ fall in love」とかね、あれとか、まあ、

山下: あれハル・ブレインですからね。

萩原: 「ドント・ウォーリー・ベイビー」もね、まあ、ある意味では、

大滝: 「ビー・マイ・ベイビー」の、まあ、ある種のね、そういう曲だといわれてますけど。

萩原: なんか、そういうところで、やっぱり独自に、こう、再構築している人ですよね、フィル・スペクターのね、影響。それから、あとはフィル・スペクター自身っていう、大きい人ですね。

大滝: あの人は真似下手だね、一番ね。やっぱさすがに自分で作った人って、真似が下手かね?

萩原: あのー、ラモーンズに見限られたって話は凄かったですね。

大滝: ほんとに、末期は哀れだよね。宮本武蔵も末期は哀れだったらしいけども。

萩原: いや、まだ、まだいるんですから、フィル・スペクターは。

大滝: 関係ないか。

萩原: また復活することはないんでしょうかね、あの人は?

大滝: いや、どうでしょうね?

山下: いや、無理でしょうね。

萩原: もう無理?

山下: うん。もうこの3年間の、私はこの契約の形を見ていますと、

大滝: あれっ?

山下: 全く不可能ですね、これは。

萩原: あー、そう?もう自分で仕事する、

山下: 結局カタログを、自分のもとに置いとくことにしか興味がないです。

大滝: 唯一でも、再生するチャンスはあると思いますね。

萩原: というのは?

大滝: あのー、東西ドイツが統合されるときに、真ん中で演奏できんのは、あの人しかいないって、

萩原: 壁ですか?

大滝: どうこれ?壁。だめ?

萩原: でも、壁がなくなっちゃうっつうことでね。

山下: おあとが、

大滝: なくなるんだよね。だからなくなるんだ、やっぱり、最後に。

萩原: なんだ、もう。最後か。

山下: オチがつきましたね。

萩原: まずいですね。それでですね、番組にもリクエストが来てた曲なんですが、

大滝: えぇ。

萩原: その、あのー、フィル・スペクターっていうのは、フィレス時代にね、シングル盤をリリースすると、B面はインストにするっていう戦略をとってた人で、

大滝: もう、アメリカン・ポップス界の江川といわれて、はや何年で、手抜きの王者で。

萩原: これあのー、なんでしたっけ?最初は何のときにB面がいっぱいかかっちゃったんでしたっけ?

大滝: ん?

萩原: えーっと、スペクターのシングル出して、

大滝: えーっと、「ゼアーズ・ノー・アザー」、クリスタルズの一番最初の「オー・イェー・メイビー・ベイビー」ってのと、「ゼアーズ・ノー・アザー」ってのは、B面だったんだけど、B面がたくさんかけられて、そっちの方がヒットしちゃったんで、分かりいいように、「B面をインストにした」というふうにいってますけど、多分手を抜いたんだと思いますけどね。

萩原: なるほどね。この曲は、あのー、大滝さんのね、ファンの方なら、

大滝: えぇ。

萩原: みなさんご存知。

大滝: 3人くらいの方にはわかっていただけるんじゃないかと思いますけど。

萩原: これはやっぱり、ちょっと大滝さんから紹介してください。

大滝: これですか?えーっと、だから、ほとんどB面ってのは、なんかセッションで、取り合わせの曲だったらしいんですけど、この曲だけは、ちゃんと譜面を書いて録ったのではないかと、

山下・萩原:はーん。

大滝: ジャック・ニッチェがしっかりアレンジしているのではないかと思われるところの曲でございますけども、

萩原: はい。

大滝: えー、スペクターさんの、当時主治医であったところの人の名前をとった歌で、「ドクター・カプランズ・オフィス」、どうぞ。

 曲:

BOB.B.SOXX AND THE BLUE JEANS/DR.KAPLAN'S OFFICE

萩原: 思わず曲に合わせて、大滝さんが喋りだしてましたけどもね。

大滝: 失礼しました。危うくバイバイといいそうになりましたけど。

萩原: こんなに長く聴いたのは、初めてのような気がしますけど。

大滝: ほんとに。ラジオで全部かかったの初めてじゃないですかね。

萩原: そうかな?

大滝: えぇ。

萩原: 邪魔も入らずに。邪魔っていっちゃあいけないんだ。申し訳ないこといってしまいましたけどね。えー、というわけでですね、スペクター特集は、これにて新春放談は終わりになりますけど。

大滝: 随分やりましたね。

山下: フフフ。

大滝: 最初にかかった曲がよかった。

山下: 今日は何もいうまい。

萩原: というわけで、まああのー、フォロワーズってことで、で、どうですか、スペクターの今後といいますかね、そのー、再評価も含めて。

大滝: うん、どうでしょう?

山下: いやー、これは困りましたね。スペクターの音楽は、ほんとに永遠不滅だと思いますけどね。今の私の出なかったCDのボックスのことを考えると、むかっ腹が立つというかね、ほんとに。最後には「パールハーバーがどうした」とかいい出しましたからね。

萩原: あっ、そう?

山下: そういう世界なんでね、ちょっと、

萩原: ヴァン・ダイク・パークスみたいな人ですね。

大滝: まだ恨んでるんですね。

山下: アメリカのほんとに、あのー、すごいおおげさなあれですけど、うがった見方ですけど、やっぱりベトナムから、ずーっと来たアメリカのそういう世相っていうのを、すごくこのー、後ろに背負ってるみたいな感じしますけどね。ドラッグとそのー、なんていうのかな?時代のね、そういう物を。そういう、こう、なんか精神病理学的な、そのあれを、見えますけどね。怖いですね、だからアメリカって、逆に。

萩原: なるほどね。結局こもっちゃってる訳ですからね。

山下: だから、ポップスってのは、本来すごく明るいもので、なんていうのかな?ネアカっていうかな、ポジティブっていうか、そういうようなものだけど、つくってるこういうね、こういうような、要するにほら、ティーンエイジ・ポップスでしょう?ガール・グループで、そういうものすごく、こう、音楽つくってる人が、そういう性格だってのがすごくギャップがあってね、それもなかなか。どうですかね、先生としては?

大滝: うーん、難しいね。ECの統合以上に難しい。

萩原: また。

大滝: やっぱり?私はそこに。

山下: 逆にだから、そう夢を見なくて、夢を見られないっていうかな、そういうものにもうね。ただ音楽の絶対的な、優美真偽的な意味での音楽としての価値は残ってるけど、ポップスという意味でのね、そういうものは、もうなんかガラガラと崩れたというか、ここ1〜2年の交渉過程で。

萩原: なるほどね。

大滝: あぁ、そう?やっぱりあなたも壁が崩れた訳?壁の崩れる年だったんだよ、これは。

山下・萩原:ハハハ。

山下: そうかもしれない。

萩原: でもあのー、フィル・スペクター確かに、ほんとに素晴らしい作品残してるから、やっぱりそれを知ってる人間は、「素晴らしい、素晴らしい」といい続けるだろうけど、その作品自体に、なかなか知らない人が触れられないっていう状態が続いちゃうと、またなんか、その神話みたいなものがね、必要以上に膨れ上がっていっちゃってっていうような感じも。

大滝: だからね、最近プロ野球でも監督論が随分出てきてるけど、そうじゃなくて、やってるのは選手だってのと同じように、あのー、こういうのってのも、楽曲が素晴らしいんだよね、結局。

山下: そうですね。

大滝: 人がどうだっていうことじゃないわけよ。最後に残るのは、楽曲なわけ、実は。

山下: そうですね。

大滝: そこが一番のポイントじゃないかなと思いますよ。だからスペクターがどうしようが、

山下: そうですね。

大滝: 私は何も関係がない。

萩原: でもあのー、だからこそ、その作品に割と楽に触れられる状態に、

大滝: なっててほしいね、常に。

萩原: なっててほしいですね。

大滝: それはほんとに。

萩原: ということでですね、このボックスがほんとに、ここにあるんですよ。ハハハハ。

大滝: 早くだからね、陽の目を見る日を、見られる日を。

山下: 欲しいですね。

萩原: えー、願いつつですね、新春放談は来週に続くということでですね。

大滝: まだあるの?

萩原: 来週ありますから。お願いしますよ。

大滝: いいんでしょうか?すみません何回も。

萩原: というわけでひとつよろしくお願いしまーす。

 前回、今回のフィル・スペクターの特集は聴き取りが難しかったので(フィル・スペクターのことが全然わかっていないということでしょうね)、先日発売されたレコード・コレクターズの5月号、それから、1993年の1月号の2冊を読みながらの作業になりました。特に93年1月号は、購入時ほとんど何のことかわからなかったのですが、テープを聴きながら読んだので、大変勉強になりました。考えてみればこの作業って、「みんなに喜んでもらえれば」と思ってはじめたんですが、自分が一番タメになってるような気がします。深淵なるナイアガラの滝壷に少しでも近づければいいのですが…。

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