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1994.1.1 サタデー・ソング・ブック

 曲:

山下達郎/BORN TO BE WILD

山下: みなさん、新年あけましておめでとうございます、山下達郎です。えー、「サタデー・ソング・ブック」1月1日、元旦早々から、いったい何が始まるのかとお思いでしょうが。なんで「ボーン・トゥー・ビー・ワイルド」が、カラオケですよ、これは。なんで「ボーン・トゥー・ビー・ワイルド」のカラオケにのっけて、私が歌わなきゃなんないのか。そうです、今日は新春放談でございましてですね、もうスタジオにですね、大滝詠一さんと萩原健太さんと、お二人が、もういらしてます。大滝さん、新年あけましておめでとうございます。

大滝: どうも、おめでとうございます。「ボーン・トゥー・ビー・ワイルド」

萩原: ロックン・ロール!

山下: 萩原さん、新年あけましておめでとうございます。

萩原: おめでとうございます。いいですねー。

山下: 実はですね、今日はですね、なんと、新春放談10周年なんです。

大滝: ふん。

萩原: すごいですねー。

山下: そもそも1984年に、なんの気なしに大滝さんを正月にお招きしましてですね、

大滝: えぇ。

山下: グダグダと話しをしてですね、

大滝: あれから!

山下: あれから、もう。

大滝: 思えば。

山下: それが1984年なんですよ。

大滝: あら、まあー。

山下: 実に10年。その間1年だけやらない時がありましたけど、その他の9年分はやってるという。

大滝: ほー。

山下: たいしたもんでしょう?

大滝: 長寿番組だね。

山下: すごいですよ。なにが長寿番組だかわからないですけど。「新春放談」って、

大滝: あっ、そうか!

山下: なんで「放談」っていうのかっていうね、

大滝: 「放談」?

山下: えぇ。そういう質問まで来るぐらいですからね。

大滝: うーん。

山下: 「時事放談」っていうのを誰も知らない。

大滝: それはちょっとね。

山下: 「やっぱーりね、これはねー」と、あれは全然、もう誰もわからない。

大滝: またでたね。いいね。

萩原: 小汀利得さんですか。

山下: それでですね、今日は10周年ということでですね、なんかをやろうと。

大滝: それで「ボーン・トゥー・ビー・ワイルド」なんだ。

山下: 違うんだって。

大滝: フフフ。

萩原: ハハハ(拍手)。

山下: それで、

萩原: ロックン・ロール!

山下: うるさいなー、もう。えー、あとで詳しくご説明しますが、

大滝: ふん。

山下: 10周年なので、何かやろうと、

大滝: うん。

萩原: 新春ですからね。

山下: いうことになりまして。なんか、こう、カラオケなんかがいいんじゃないかと。おめでたくて。どこがおめでたいのかわかりませんけども。そしたらですね、「これをやれ」と言われましてですね、二人に。

萩原: そうですよ。

山下: 悪いやつらだよ、ほんとに。

萩原: だっていいじゃないですか、ねぇ。

山下: なんか、へんちくりんなアマチュア・バンドみたいじゃない、これじゃあ、ほんとに、もう。

大滝: いや、全然。

萩原: ねぇ、すっげーかっこいいですよ。

大滝: うん。これから、だって、あれだよ、コンサートこれで始めるとかさ。

山下: バカ言って。

萩原: 達郎さんのなんか、こう、明日が見えたような気がしますよ。

大滝: ここまで行ったら、やんなきゃだめだよ。「ボーン・トゥー・ビー・ワイルド」だもの。

山下: ここはどこ?私は誰?

萩原: ハハハ。

山下: ということで、1月1日の元旦早々から始まりました、山下達郎の「サタデー・ソング・ブック」、今日から何週間かの間、大滝詠一さんと萩原健太さんをお招きしまして、恒例の第10回目、10周年記念の新春放談でにぎやかに、恐ろしいな、先が思いやられますが、いってみたいと思いますが。えー、去年はですね、はっぴいえんどのボックスが出ました。いろいろ物議を醸し出しましてですね、いろいろあるんですけど、とりあえず、そのー、あれから、リマスターはちゃんとできました、通称「ゆでめん」、はっぴいえんどのデビュー・アルバムから1曲、「春よ来い」

 曲:

はっぴいえんど/春よ来い

山下: という訳で、改めまして、新年、みなさんあけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。えー、「サタデー・ソング・ブック」恒例、というか、私のレギュラー番組では恒例の、大滝詠一さんと萩原健太さんをお迎えしまして、新春放談。今年も2、3週間やってみたいと思いますが、全く台本も時間もタイム・キープもなんにもございません。行き当たりばったり話しをして、レコードをかけたくなったらかけるという、もう、放浪記のような番組でございましてですね、誰もわかんないか。

大滝: 林芙美子、違うか。フフフ。

萩原: フフフ、森光子。

山下: そういう意味でですね、去年はっぴいえんどのボックスというのが出ましてですね、4枚組。

大滝: 去年でしたっけ、これ?

山下: そうですよ。

萩原: 去年ですね、はい。

大滝: あー、なんかね。

山下: 1枚目先程聴いていただきました「ゆでめん」と通称呼ばれていますが、1枚目。それから「風街ろまん」2枚目、3枚目タイトルもなにもない「はっぴいえんど」。そして、あのー、1973年の9.21ライブ。

萩原: 達郎さんのデビュー・コンサートとなった。

山下: 実質的な、そうでございますね。

大滝: いやそうな顔したね、今。

山下: いやいや。

大滝・萩原:ハハハ。

山下: えー、なんですが、この、いわゆる1枚目は、いわゆるリマスターで、オリジナル・マスターなんですが、なんと「風街ろまん」はリミックスなってしまってるという。半分以上。変な、

大滝: あー。

山下: えぇ。

大滝: なーんか、ずいぶん昔のような気がする。

萩原: ハハハ。

大滝: だいたい、とにかく、まあ、ひとつお断りしておきたいですけども、24年前の音源でございましたから。

山下: そうですね。

萩原: あー、そうですよね。

大滝: 94年から、70年のころですか。

山下: 四半世紀という、あれですね。

大滝: えぇ。

萩原: あぁ、でもそうなんですねー。

大滝: そうなんですよ。

萩原: ほんとにねー。

大滝: でしょう?だから、けっこうですよ、25年っていったら。

山下: そんなもんでしょうね。

大滝: うーん。

山下: ところで、さっき、あのー、CMの間に話しをしてましたけど、

大滝: えぇ、えぇ。

山下: その「春よ来い」というのは、大滝さんの初めてのレコーディングだったんですって?

大滝: うん、そうなんですね。あのー、「12月の雨の日」、「春よ来い」とか、なんか連続して、録ったと思いますけどね。

山下: ふーん。

大滝: 二日しかなかったんですよ、こん時のレコーディングはね。

山下: はっぴいえんど以前というのは、一切そういう、要するにプロフェッショナル・バンドっちゅうか、そういうものはないんですか?

大滝: えぇ、レコードになったことはないんですよね。

山下: ふーん。

大滝: だから、

萩原: ブルース・クリエーションに飛び入りしてたぐらいですよね。

山下: ライブですね。

大滝: そこで「500マイル」をプレスリー・スタイルで歌ったっていうふうに書いてありますけどね。

山下: 何なの、それ?

萩原: ハハハハ。

大滝: それ以外は、だからレコードになったのは初めてだったんで。

山下: あー、そうですか?

大滝: えぇ。

山下: なんか、出来あがりが恥ずかしかったんですって?

大滝: うん、あのー、曲が出来たときはにね、だから、「お正月といえばこたつを囲んで」とかいうのをね、なんか力んで歌うのはね、すごく、

萩原: ハハハ。

大滝: あのー、不自然だなと自分で思ったんですよ。

山下: だけど、大滝さんは、あれをああいう歌い方にしようと思ってつくった曲なんでしょ?

大滝: うーん、まぁ、そうなんでしょうね。

山下: フフフ。

大滝: フフフ。ただ、レコードになって、なんか歌入れてみて、歌ってみたら、すごくいいなとは思ったんですが、

山下: うん。

大滝: 何年か経って、やっぱり10年ぐらい経つと、なんかそのー、誰でも、ほら、あのー、知られたくない過去のようなものっていうのがあるとするじゃないですか。

山下: ふんふんふん。

大滝: そういうような気になったことがあって、

萩原: ほー。

大滝: そん時、聴いてなかったんですよ、しばらく。

萩原: はっぴいえんど?

大滝: うーん。で、聴いてみたらね、さほどでもなかった。

萩原: あー、思ってたほどね。

大滝: だから、不思議だよ、記憶って。

山下: 僕ね、大滝さんと今年でもう21年目にならんとするですけどね、お付き合いが。

大滝: えぇ、えぇ。

山下: 僕、昔はそう思ってなかったんですけど、最近っていうか、ここ5〜6年ね、大滝さんの音楽のことをいろいろと思い返してみると、大滝さんは明確にこの「はっぴいえんど」からソロ、ソロからロン・バケ、80年前後かな?

大滝: うん。

山下: の間で、歌い方が明確に変化している時期が何回かあるんですよね。

大滝: ありますね。

山下: だけど、大滝さんの音楽的な趣味とか、その、要するに嗜好とかいうと、そういう変化するっていうのは、割とね、今考えると意外な感じがするんですよね。逆に、はっぴいえんどやる時からさ、ロン・バケみたいな歌い方やってもよかったんじゃないかっていうかさ、

萩原: はー。

山下: 強引にね。

大滝: うん、それは考えたことあったけど、そのあとカレッジ・フォークとかいうことになってしまうんじゃないかなっていうふうにも思ったんですよね。

山下: ふーん、なるほどね。

大滝: とにかくだから、あのー、ロックっていうのは、だから、そのー、シャウトの歴史っていうのはあまりないんで、

山下: ふんふん。

大滝: 日本に。

山下: 日本にね。

大滝: だから、そのー、日本に、なんだ、声がひっくり返った。

山下・萩原:ハハハ。

大滝: あのー、ロックっていうのは、なんかシャウトの歴史なんじゃないかと。

山下: ふーん。

大滝: リトル・リチャードとか、そういうことも考えて、含めて。

山下: ふんふん。

大滝: で、そういうのが、今までにあんまりないんで、一度やってみようっていうふうに思って、こう、シャウトのつもりでやったら、不思議なことに浪曲みたいになっちゃったんですね、これが。

山下: ヘヘヘ。

大滝: だから、そのー、日本人のシャウトっていうのは、だから、どうしても、そのー、なんていうのかな?浪曲みたいなものが以前にあったっていうのに、こう、無意識になんか、そのー、その影を背負っていたっていうか、なんかそういうことを自分達でちょっと感じたですけどね。

山下: なるほど。

大滝: 自分の歌唱力の限界がそうなったんだと思いますけどね。

山下: 遠い分析ですから、なんとも。

大滝: えぇ。

山下: もう1曲いってみたいと思います。2枚目、

大滝: また私ですか?

山下: そうですよ。今日は大滝さんが、だって、新春放談なんですから。

大滝: あっ、そうなの?

萩原: ハハハ、「大滝詠一 is新春放談」なの?

大滝: 「is」なの?

山下: えー、2枚目の「風街ろまん」の、これ僕、好きな曲なんですけどね、「抱きしめたい」という1曲目の曲を、これをかけてみまようかね。

 曲:

はっぴいえんど/抱きしめたい

大滝: 地味だよ、こういう曲がいっぱい、こう、続くと。

山下: いいですよ。

大滝: あー、そうなの?

山下: 今、こういうのがいいんじゃないですか。

大滝: 1月1日だからねー、もうちょっと、なんか派手なのいったほうがいいんじゃない?

萩原: 大丈夫ですよ。

山下: いいんですよ、これが。

萩原: 「シュッポポー」ですから。

大滝: うん、「抱きしめたい」は、この時はよかったですね。なんか、あのー、1枚目の時は、なんか、わかんないままやった感じがしたんだけど、2枚目の時がね、自慢じゃないんですけど、この時に、なんか、まともな歌をすごく歌いたかったような気がした。

山下: うーん。

大滝: あのー、声が一番出た時だったですよ、私の。

山下: ふんふん。

大滝: これ以降はね、落ちる一方。

萩原: えっ、ここがもうピークなんですか?

大滝: これピーク。

萩原: ハハハ、そう?

山下: ほんとかな?

萩原: これ71年ぐらいじゃなかったですか?

大滝: 71年。こん時がね、ピークでね、自分でもすごくなんか、なーにをやっても、うまくいきそうな気がした時期でしたね、歌に関しては。

山下: なるほど。

大滝: ただ、そのー、歌の曲調が自分に合ってるとは、どうも、いまひとつ思えなかった。

山下: そうなんですか?

大滝: これはあってたけども。

山下: あー。

大滝: 全部が全部、なんか、あのー、自分のもんじゃないような気がしたけど、声は出た。

萩原: でも、これ、このアルバムは「風街ろまん」ってのが出た時に、あのー、なんか、「ひらけたなー」って、聴いてる方としてはありましたよね。

大滝: うん、僕は個人的にそう思ったんだけど。でも、他のメンバーもいるからだけど、「風街ろまん」はやっぱりあれですね、「風をあつめて」のアルバムとして、評価されたじゃないですか。これが、あのー、「ニュー・ミュージックのもとだ」っていうふうなひとつの流れがあるんですよ、一方的に。

山下: そうかな?このアルバムは結局、やっぱり、あたまの2曲がもう、すべてだと思うな、僕は。

大滝: うん、なんてぇのかな、個人的な感じでね。歌を歌いたい人とか、なんかそういう曲が好きだっていう人はそうだけど。あのー、例えば、そのー、摩天楼だとかさ、すごく、言葉がすごい「風をあつめて」って、なんか、すごく、こう、きらめいてんのと、

山下: うん。

大滝: なんか、そのー、都市を集中的に歌ってるし。

萩原: あー、なるほどね。

大滝: それから、なんてーの、さりげない、細野さんの、あんまり、こう、どういうの、今までの歌謡曲にあるような情念とかいうのはなくて、あっさりしてて、

山下: 乾いた歌のね。

大滝: 乾いたあれとか、サウンドのそれとか、とにかく、松本の詞も含めて。

山下: ふーん。

大滝: で、だって、これ、フォークの人達とか、ああいう人って、すっごく評価されたの「風をあつめて」って。

山下: うーん、そうですよね。

萩原: あー、そうですよね。

大滝: なんで「風をあつめて」をやらないんだって、ステージいくと、いつも言われたもん。

萩原: 吉田拓郎さんとか番組でよくかけてましたよね。

大滝: そうでしょう。

萩原: うん。

大滝: だから、やっぱりね、あのー、それはそれで評価として、語らないとね。

 曲:

はっぴいえんど/風をあつめて

山下: すごく、僕、高校生でしたけど、「風をあつめて」、すごく失礼な言い方かもしんないけど、僕はフックいくまでの、なんか展開がどうしてこうなるのかなって。

大滝: だから、ユーミンなんか、みんなこうじゃない、だって。結局。

山下: うーん、そうかな。

大滝: だから、なんか、いくまでのあそこのA、Bのパターンがなんか、こう、あのー、ある種、なんていうの、Bの方に重きを置いたAみたいな感じの、

萩原: あー、迷走するパターンですか?

大滝: 最初なんじゃないの。

山下: なんとなくですけど、なんかロックン・ロールじゃないなって感じがします。

大滝: うん、ロックン・ロールじゃないでしょ?だから、ニュー・ミュージックの基なんですから。

山下: なるほどね。

大滝: ねっ。ロックン・ロールは「ボーン・トゥー・ビー・ワイルド」だもん。

萩原: やっぱり、ロックン・ロールは「ボーン・トゥー・ビー・ワイルド」

山下: ちくしょう!

萩原: やっぱり、それはね、

山下: 今日はですね、

萩原: 最初のふたつと「颱風」ですよね。

大滝: ハハハ、まだ言うか?

山下: このアルバムはね、この「風街ろまん」っていうアルバムは、僕はその時から思ってたんだけど、あたま2曲大滝さんでしょ?

大滝: うん。

山下: で、おしり3曲、大滝さんなんですよ。

大滝: ですね。

山下: 結局、大滝さんでサンドイッチされてるアルバムなの。

大滝: うん。

山下: 結局、だから、印象っていうのは、どこまでも大滝さんなの、僕はね。

大滝: あなたはね。

山下: うん。

大滝: 私はない。狂言まわしだったんじゃないかっていう気がしないでもないですね、フッフッフッフ。

萩原: あー。でも、あのー、

山下: だけど、結局はあれでしょ、今日は全然、期せずして「はっぴいえんど」の話しになりましたけど、大滝さんの、やっぱり、さっきの「ゆでめん」の、あのA面の1曲目の「春よ来い」っていうのはね、ひとつ、要するに、そういう、日本語のフォークとロックと言われてた時代の、要するに、日本のロック・バンドのさ、シンギング・スタイルのさ、半分ぐらいのさ、勢力をさ、歌い方決定した部分ありません?

萩原: あー、それはありますよね。みんなあんな歌い方になっちゃってですね。

山下: 要するに「あいうえお」はっきり言わないっていうかさ、くちごもって歌う。

萩原: ハハハ。

大滝: うーん。

山下: 相当、だから、僕なんかも無意識のうちにやっぱり、そういう歌い方してましたもんね、始めのうち。

大滝: あれはね。

山下: うん。

大滝: うーん。まぁ、あの70年代、だから、遠藤賢司なんかもそうだったし、

山下: そうですよね。

大滝: そういう、なんか、ロックっぽくやろうとするとなると、なんか、ああいうふうになって。で、それをロカビリーの頃の人と、やっぱり共通項があるっていうふうに小林克也さんに言われて、

山下・萩原:はー。

大滝: それで、一番最初はね、ひっくり返ってみると、外人が歌った日本語ってあるじゃない、大昔に。

山下・萩原:ふんふん。

大滝: で、日本人でっていう意味合いでいくとね、ディック峰さんが異常にすごい。

萩原: あー、そうですね。今聴いてみてもそうです。

山下: うーん。

大滝: それでね、あのー、「人生の並木道」ってあって、「泣ーくな妹よ、妹よー泣くなー」がね、あれがね、濁音なんだよ。

山下: うん。

大滝: 要するに、あのー、なんてーのかな、あそこまで、鼻濁音がずーっと、今は濁音が主流になってんだけど、ディック峰の時から(ここで「人生の並木道」がバックに流れる)、その、いわゆる、例えば「人生の並木道」を演歌だとするとすると、濁音で歌われた演歌なんだよ。

山下: なるほど。

萩原: 鼻濁音じゃない?

大滝: 鼻濁音じゃないんだよ。

 曲:

ディック峰/人生の並木道(途中まで)

山下: という訳で、えー、ディック峰さんで、これは古賀政男さんの作曲ですな、

萩原: Kの音とかすごいですね。

大滝: これね、まずね、その前にね、外人が歌ってみるみたいでしょ?

山下: そうですね。

大滝: なんか、藤原芳江が歌うというか、そのー、完全に純粋ジャパニーズという感じではないのがひとつと、あのー、まぁ、ビラコンで「故郷を捨てた甲斐がない」、「甲斐がない」になっているから、既にもう、あのー、そこで濁音で歌われてるし、

山下: で、ここが、

大滝: 健太氏のまたひとつの意見があって、

山下: はい。

萩原: 「泣くな」の「く」がね、

大滝: 「く」が。

萩原: 無声音ぽくないですよね。「泣くーな」ってところが、

大滝: 昔は、藤山一郎さんがそういう発声してはいけないという、例のパターン。

山下: はいはい。

大滝: 「泣ーくな」っていうふうに歌わず、「泣ーくな」っていうふうに(ここ文字ではわかりにくいんですが、前者は「く」を突き出すようにして歌っています)、こう、流れで歌えっていうのは、以前、みんな当時、普通、あーだったのに、もうこの人は「泣ーくな」って、どっちかっていうと、破裂音が、

山下: 突いてるんですね。

大滝: 出てるっていう。もう既に、歪んだ日本語が、もう、ね、この当時、

山下: とっくにあったと。それをもっと前に行くと、また更にあると、

大滝: あると。

山下: いうことでしょうね。

萩原: あるでしょうね。

大滝: 当然あると。だから、その当時、その時代時代の歪み方があるだけであって、その歪んだのは、別段70年代、我々が始めたのでもなきゃ、

山下: 専売特許ではないと。

大滝: ロカビリーが初めてでもないと。

山下: なるほど。

萩原: いやー、お正月って「ギャーギャー」こうシャウトしてもいいじゃないかっていう感じでしたけどもね。

大滝: だからね、このー、我々、山下君と僕なんかも、今や少数派となったところの鼻濁音派ではあるけど、

萩原: うんうん。

大滝: 「はっぴいえんど」の時は、僕は全部濁音にしてますからね、自慢じゃないですけど。

山下: なるほどね。

萩原: 意図的にやったんですか、もう?

大滝: 意図的です。全部意図的です。

萩原: ビート出そうみたいな。

大滝: うん、全部意図的で、あのー、ソロになってから鼻濁音入ってるけど、「はっぴいえんど」の時は、全部濁音でやっております。

山下: やっぱり日本語はのりにくいと思いましたか?ああいう、

大滝: あのね、だからね、今にして思えば、あのー、「ロックは日本語にのるか」っていうテーマにね、

山下: うん。

大滝: なんでこんな易々とのせられてしまったのかと思って、

山下: ヘヘヘヘ。

大滝: すっごく自分が悔しい。

萩原: あー、そうですか?

大滝: くやしーね、バカなことしたねー。

萩原: あー。

大滝: でも、なんでか、なんか、みんなそう思ってたというか、みんなツバ飛ばして話してたよね。

山下: 話してましたね。

大滝: なんでこんなくだらないことをね。

萩原: うーん。

大滝: 「蛍の光、窓の雪」のね、

萩原: ハハハ、スコットランド民謡。

大滝: スコットランドの国歌とも言われるようなあれを、「蛍の光、窓の雪」って歌ってること自体に、何の疑問も差し挟まずに、

山下: フッフッフッフ。

大滝: ロックと日本語はどうかなんていうことを、

萩原: そうですよね。

大滝: なんで考えてたんだろ?どうして何も言ってくれなかったんだろうか、先達は?

山下: いや、だって、それ。

大滝: あーあー、

山下: という訳で、

萩原: ヘヘヘ。

大滝: もう、24年間無駄にしたなー。

山下・萩原:ハハハハ。

山下: いや、これからですよ。

萩原: そんなことはないですよ。

山下: そんなことはないですよ。来週、その辺はじっくりいくとしまして、なんか1曲、湿っぽくなりましたんで、

大滝: 湿っぽくなった?

山下: 明るいやつをかけたいと、

大滝: 明るいやつ。今年、あのー、1月21日に出ますところのですね、

山下: そんなに早く出ちゃうんですか?

大滝: もう、早く。

山下: あー、そうですか。

大滝: もう、急いでるんですよ。

萩原: 今のうちにかけないとね。

大滝: 今のうちにいかないと。で、ビートルズが、とにかく世界的になって、30年、60年だから。

萩原: はい。

大滝: それを記念しましてですね、えー、ビートルズの歌を日本人が歌おうという、

萩原: ハハハ。

大滝: 「蛍の光」を歌ったのと同じような努力をした、

山下: クックック。

大滝: あのー、僕らとほぼ同じような年齢の方々がいらっしゃってですね、その名を「東京ビートルズ」と申しました。

萩原: ヘヘヘヘ。

山下: 何も言えない。

大滝: えー、アメリカに、

萩原: これはもう、完全に同時代的ですね、ビートルズと。

大滝: 全く同じ。ビートルズが出た時に、同時に出て、あのー、

山下: あの頃は、だから、ねっ、クレイジー・ビートルズ、東京ベンチャーズとかね、そういうのありましたね。

大滝: そのあとにあったようですけどね。この東京ビートルズは見事で、野球チームの東京ジャイアンツが、以前、ニューヨーク・ジャイアンツがあったのを、その「東京ジャイアンツに、お前らしろ!」と言ったのと同じことをですね、ビートルズの東京版ということで東京ビートルズっていうことをやりまして、

萩原: ハハハハ。

山下: それは、いわゆる、ビクター・レコードが考えたんですか?

大滝: のようですね。

山下: はーん。

大滝: GSがいないんで。

山下: その沿革は、そのライナーノーツに書いてある訳ですね。

大滝: 書いてあります。

山下: ハハハハ。

萩原: 詳しいですからね。

山下: おもしろそうだな。

大滝: 東京ビートルズに関しては、その東京ビートルズの専門家が書いてますし、

萩原: うん。

山下: はー。

大滝: 僕は、あのー、明治維新からの、

山下: なるほど。

大滝: いや、仏教伝来からの、

山下: 位置づけですね。

大滝: その長い歴史を書きました。

山下: そんなもんかよ、ほんとに。すごいね。

大滝: これはもう、

山下: 東京ビートルズひとつ聴くのにも、やっぱり仏教伝来から勉強しなきゃいけない。

大滝: 仏教伝来から、こう聴かないとですね、またあのー、「25年損したー」っていう若者が出てくるかもしれないんで、

萩原: あー、そうですよね。

山下: なにはともあれ聴きましょうよ、東京ビートルズ。

大滝: そうですか?

萩原: これは、やっぱり。

山下: 僕はレコードは、実を言うと聴いたことないんですよ。

大滝: 聴いたことないの?

山下: えぇ、エキサイト・ショーで2回見たことがあるのと、

萩原: ハハハハ。

山下: あとは、ジャズ喫茶で接近遭遇して、「東京ビートルズか」って、その時お金なかったから、600円でしょ、「いいや。今日600円もったいないから」って見なかったの、それ。

大滝: もったいない。

山下: 見りゃぁよかった。でも、中学2年ですからね、その時。

大滝: もったいなかったね。

山下: 最末期ですよ、だから、東京ビートルズの。

大滝: あー、なるほどね。

山下: 僕、小学生の時だったから、だって、東京ビートルズ。

大滝: まぁ、そうだよね、そう言えばね。

萩原: 僕はなんかのオムニバスみたいな、コレクションみたいなので2曲ぐらい聴いたぐらいですね。

大滝: 聴きましたね、えぇ。かけませんでしたっけ?新春放談初?

山下: いや、初です。

大滝: あらっ!これはすごいですよ

萩原: なにいきましょうかね、ほんと?

大滝: やっぱり、なんと言っても、あのー、「ツイスト・アンド・シャウト」です。

萩原: フフフフ。

大滝: これ以外のものはないです。

山下: 聴きたい。

大滝: えぇ、これがもう、日本のロックの解体新書にあたるものだと、

山下: いや、名前はだから、噂には聞いてるけどね。僕は東京ベンチャーズのソノ・シートってのは持ってるけど。

大滝: 持ってんの?

山下: うん。完全にベンチャーズものですけどね。

萩原: それもまた、すごいですねー。

大滝: 後半、メンバーが交錯したという噂のある東京ビートルズの……(ここ聞き取りできません)聴いてみましょうか?

山下: ぜひ聴かせてください。

 曲:

東京ビートルズ/ツイスト・アンド・シャウト

山下: えー、なんにも言えないな、これ。お知らせいれて、そのあとにしましょう。

大滝: うん。

山下: えー、山下達郎のサタデー・ソング・ブック、恒例の新春放談。大滝詠一さんと萩原健太さんをお迎えして、3人でやっておりますが。大滝さん、今年、前もトニー谷、橋幸夫、アストロノウツ、

大滝: まぁ、クレイジー・キャッツから始まって。

山下: あっ、クレイジー・キャッツ、コンピレーションものの大家と、今やなってしまいましたが、その、

大滝: これはもう、最後を飾るでしょうね。

萩原: 最終兵器ですか?

山下: ほんとかい?まだ出てきそうな感じがする。

大滝: いやー、これは究極でしたよ。

山下: はい。それで、東京ビートルズというのは、そもそも何なんですか?私は名前は知ってますよ、それは。

大滝: うん。

山下: で、今のレコーディングはあれなんですって?バックはスタジオ・ミュージシャンですって?

大滝: スタジオ・ミュージシャン。

山下: 本人達は歌だけですって?

大滝: 歌だけ。で、アレンジは、あのー、寺岡真三さんという、その頃、ビクターの橋幸夫なんかもほとんどアレンジしていた、一番仕事の多かった人。

山下: ほー。

大滝: それでバック・ミュージシャンなんかは、そのー、そういう橋幸夫なんかやってたいつもの人達だと思われます。

山下: 訳詞は漣健児さんですね、おなじみの。

大滝: 漣健児さん。

山下: レコーディングは何年なんですか、これ?

大滝: レコーディングは64年の、だから、あのー、ビートルズなんかが出たのは、1月ぐらいだったけど、これが2月か3月か、なんか、

萩原: ほー。

大滝: まぁ、だから、あとを追う形で、

萩原: 割とすばやい形で出てるんですね。

大滝: 2,3,4のどっか。

山下: それは、要するに便乗商法なんですか?

大滝: うん、そのとおり。

山下: ふーん。

大滝: というよりも、基本的にだから、あのー、戦後という、また、言い方させてもらうんだけど、ローカル・カバーをとにかく、なんてぇの?向こうでヒットしたものを、現地で誰かがカバーするっていうのが、アメリカの音楽の世界戦略でもあった訳ですよ。

山下: ふんふん。

大滝: だから、アメリカでヒットしたものはイギリスでもカバーしてる人がいるし、

山下: してますよね。

大滝: ドイツでもいるし、

山下: えぇ、いますよね。

大滝: で、日本でもいるっていうのの、その流れがずーとあったんですよ。

山下: フフフ、なるほどね。

萩原: これは九ちゃん、ミコちゃんの、じゃぁ延長線上として、

大滝: そうそうそう。

山下: 基本的にはそうなんですね?

大滝: 以前はだから、江利チエミが「テネシー・ワルツ」を歌うだとか、そういうのも含めて、そのー、外国の歌を日本人が歌うっていうようなのは、ずっとやってきた訳ですよ。

山下: だけどちょっと待ってくださいよ。そのー、まるでトゥナイトみたいな聞き方しますけどね、

大滝: あー。

萩原: ハハハ。

山下: あのー、誰も演奏しなくて、ボーカルだけだとおっしゃいましたけど、

大滝: えぇ。

山下: 僕、だって、東京ビートルズってジャズ喫茶で看板見ましたよ。

大滝: あっ、なんかバンドはあったんですって。

山下: へぇ。

大滝: で、そのあとも自分達でも演奏もしたけども、このレコーディングだけは、あのー、バック・ミュージシャンで、スタジオ・ミュージシャンでやって。

山下: へぇー、すごいですね。

大滝: で、これ、全曲入りのCDなんですけどね、1200円。

萩原: ハハハ。

山下: 要するに、

大滝: 東京ビートルズの全部入れたんですけどね。

山下: 何曲あるんですか?

大滝: 4曲。

萩原: ハハハハ。

山下: なんだよ、それ!あっ、たった4曲しかないんですか?

大滝: 4曲しかないんですよ。で、ソノ・シートなんかは、自分達で演奏したソノ・シートはいっぱいあるんですよ。

萩原: ほー。

山下: いや、僕見たことあります、それ。

大滝: スタジオ・ミュージシャンでやったのは、たったの、この4曲だけ。

萩原: ふーん。

大滝: だから、歌だけなんですよ。

山下: 東京ビートルズをやるという話は、僕は随分前、何ヶ月前から伺っていた、高田文夫さんはね、それで盛り上がってて、

大滝: うーん。

山下: どうして、それで東京ビートルズなんですか?

大滝: 東京ビートルズが、どうして東京ビートルズかって言うと、だから、トニー谷の時もそうだったんですけど、昔、私の「GO! GO! NIAGARA」っていうラジオをやってた時に、偶然レコード室で見つけたもんなんです。

山下: ふーん。

大滝: トニー谷もそうだったけど、東京ビートルズもそう。

山下: ふーん。

大滝: で、「GO! GO! NIAGARA」ではかけたことあります。

山下: フッフッフッフ。

大滝: で、その時の受け方、その他、まぁ、ずっと記憶に残ってて、

山下: そういう伏線があるんですね。

大滝: ある。

山下: なるほど。

大滝: だからもう、それはもう既に10年以上も前の話。

山下: うーん、なるほど。

萩原: 「抱きしめたい」とかすごいですけどね。

大滝: 他の曲もなかなかですよ。

萩原: あのー、サビで転調するじゃないですか、ビートルズは。

山下: うん。

萩原: だけど、メロディーはそのまんまなんですよね、東京ビートルズもね。

大滝: うーん。

萩原: でも、コードが転調してないんだよね、確か。

大滝: フッフッフ。

山下: かけます、それも?

大滝: 「プリーズ・プリーズ・ミー」はね、あのー、腸捻転になる準備をしておいてください。

山下・萩原:ハハハハハ。

大滝: 「抱きしめたい」は、まぁ、とりあえずいいところですね。

山下: じゃぁ、そっちの腸ねん転の方、聴かしてください。

大滝: あっ、じゃぁ、「プリーズ・プリーズ・ミー」の方聴いて。で、2コーラス目のあたまの、あのー、ビブラホーンに注目してください。

山下: はい。

萩原: ビブラホーン!

大滝: なぜか、ビブラホーンが「プリーズ・プリーズ・ミー」に入っているっていうのがね、

萩原: どういうこった。

大滝: これが、あのー、この特徴ですから。

山下: こわそー。俺、このあいだ、ボルテージでよじれてもう、二度といやだと思ったのに、ほんとに。

大滝: じゃぁ、「プリーズ・プリーズ・ミー」をかけてください。

 曲:

東京ビートルズ/プリーズ・プリーズ・ミー

山下: わかったような、わかんないような、ハハハ。

萩原: すごいですね。

山下: すごいね。

萩原: これはすごいなー。これは商品として成立していたんですかね。

山下: 売れたんですか、これ?

大滝: いや、だから全然売れません。

山下: はー。

大滝: だから、まぁ、とにかく、このレコード会社は、だから、若い人達のレコードをつくるのをちょっと怠ったというよりも、吉田メロディーというのがガンとしてあって、吉田恰好がいっぱいあって、その、もう、10年以上もナンバー1をずっとキープしてきた、ナンバー1.2をキープしてきた会社なんで、

山下: うん。

大滝: それでずーっと行けるっていうか、まぁ、どこの会社にもあるじゃないですか。

山下: そうですよね。それでまだ、橋幸夫さんとか、バリバリな訳でしょ。

大滝: そう。まだ、橋幸夫ナンバー1な訳だし、そのあと吉永小百合も出てくるし、

山下: そうですよね。

大滝: もう、いっぱいいるんで。なんだけど、その、まわりじゃ、なんかそろそろ、どうも、若者がうるさくなり始めてるらしいんで、うちにもなんかひとつやろうということになって、急遽やり始めたのが会社側の戦略らしいんですよ。農協牛乳ですかね、これ。

萩原: でも、これやっぱり、あれですね。もう、なんか「人のふり見て我がふり直せ」っていうことをね、

山下: いや、でも、

大滝: だからね、「はっぴいえんど」ってこんなもんだったんだっていうふうに。あのー、全く同じもんだったって思ってる。最初はほんとにゲラゲラ笑ってたんだけどね。それで、なんか、涙が出てきたうえに、なんか、最後悲しくなっちゃってね、自分としては。

萩原: はー。

山下: ふーん。

大滝: あー、こういうもんだったのかと、うん。

萩原: 多分ね、でも、今、

山下: 「おもしろうて、やがて悲しき」

大滝: 「やがて悲しき」

萩原: 今ね、日本でラップやってるやつらとかいるじゃないですか。

山下: ほとんど同じだな、こりゃ。

萩原: 20年ぐらいすると、やばいですよ、かなり。

大滝: そのー、なんてーの?程度の差こそあれね、やっぱり、結局こういうことなんだと思うんだよ。

山下: いや、だけど、確かにそうかもしれない。

大滝: そうでしょ。

山下: ほんとに深刻に考えると、深刻にっていうと変だけど、確かにそうだね。

大滝: そうでしょ?

山下: 必ず繰り返す。これのサイクルが、

萩原: そうですよね。

大滝: ということはね、だから、明治維新にアメリカ人から、りんごの作り方を教わった人達もこうだった訳。

山下・萩原:うーん。

大滝: だから、あのー、

山下: 鹿鳴館もそうだったし、

大滝: そう。SLっていうか、蒸気機関車を運転する人達の映画もあるよね、運転手さんの。

山下: ありますね。

大滝: イギリスから、とか、なんか、人が来て、教えて、外人から教わってる映画とか、古い映画であるじゃないですか。

山下: うーん。

大滝: 必死だったんですよ。

山下: なるほど。

大滝: だから、全然、あのー、「戦後は終わった」どころか、明治維新は全然終わってないというよりも、常に維新の繰り返し。

山下: なるほど。どうしてそうなんでしょうね、でも?

大滝: これですよ。

山下: ふん。

大滝: これが、

山下: はい。

大滝: わかっちゃいるけど、やめられないんでしょうね。

山下・萩原:ハハハハ。

萩原: これはやっぱり、すごい。

山下: クックック。

大滝: これが。

山下: いやー、だんだん新春放談らしくなってまいりましたね。

大滝: そうですかね。

山下: あのー、今日の1曲目に「ボーン・トゥー・ビー・ワイルド」がかかりましたけど、一体あれは何だとお思いになったと思いますけどね。

萩原: ハハハ、そうだ、忘れてた。

山下: 今回は10周年なので、ぜひですね、なんか面白いことやろうと。

萩原: うん。

山下: で、大滝さんは最近、もう、ほとんど表に出てらっしゃらないし、なんか大滝さんに歌を歌わせようじゃないかっていうことを考えましてですね、

大滝: どうもそういう魂胆だったらしいんだよね。

山下: カラオケをやろうかと。日本のカラオケだと、どうにもなんないんで、あのー、気ぃ使ったつもりなんです。で、実はですね、アメリカっていうのも、今、一大カラオケ・ブームなんですよ。

萩原: うん。

山下: それで、私たちの友達で、萩原健太さんの同級生というか、大学のお友達でですね、宮地君というのがいまして。これ、コレクターで有名な人なんですけど、この人がパイオニアLDCっていう、レーザー・ディスクの会社のアメリカ支社に行ってましてですね、アメリカ用のカラオケっていうのを作ってる訳ですよ。

萩原: うん。

山下: これは、まぁ、要するに、レーザーディスクで50枚ぐらいある訳ですが、まぁ、500曲以上。これをですね、なかなか、やっぱり、アメリカのカラオケなんで、とんでもない曲がたくさんあるんです。

萩原: フフフ。

山下: 日本のカラオケでは考えられないような選曲で。これを使って、えー、大滝さんになんかやってっもらおうかなーと思ったんですけども、なかなかこのー、首を縦に振ってくれないと申しましょうか、

萩原: ハハハ。

山下: あのー、ですね。

大滝: 俺は大宮伝助(?)じゃないんだからね、横ばっかり振ってる訳にはいかないんだから。

山下: それで、まぁ、しょうがないので、えー、ちょっとだけ。それ来週にしましょうね、もう時間ないもん。

大滝: うまいねー、また、振り方が。

萩原: 引っ張りますね。

大滝: ここまで引っ張って。

萩原: 引っ張りますよね。

大滝: ここまで引っ張って、翌週にまわすか。

萩原: フフフ。

山下: つうことなんで、えー、来週にしようということなんで、なんか1曲かけようと。で、まぁ、今日はなかなか、それなりにですね、

萩原: はい。

山下: 面白いあれだったんで、

大滝: お正月から。

萩原: ねぇ。

山下: すごいですねー。1月1日の放送でこれですからね。

大滝: 明治維新の話だからね。今年がどういう年になるかが、ちょっと面白い気がしますね。

萩原: はー。

山下: なかなか混沌としますね。

萩原: やっぱり、斎藤美奈子(?)に要注意ですかね。

大滝: 何を言ってんだかね、君は!

萩原: あー、そうか。

山下: よくわかんねーな。

大滝: 10年前、10年間始まった訳でしょ?

山下: はい。

大滝: で、10年で、でも、いろいろ聴いて、その時々のを聞き返してみるとね、

萩原: はい。

大滝: なかなかその年を反映しているんですよ、結果的に。

山下: 確かにそうですね。

大滝: うん。同じようでいて、また、しかも元の水にあらず。

萩原: おー。

大滝: 何度も、また同じこと言うね、俺も。

山下: フッフッフ。

萩原: なるほど。

大滝: カモ・セーロ(?)。全然わかんないけどね。

山下: わからないっつうの。

大滝: まいったな。やめよう、こういうパターンは。

山下: じゃぁ、萩原さんもなんか1曲出してくださいよ。今日の最後。

萩原: えっ、あっ、今日の最後ですか。

山下: だいたい、去年買ったオールディーズもので、ゴソっとお二人さんとも、持ってきていただいたんですが、

萩原: ちょっと、でも、あのー、みなさんとダブらないように持ってきたんで、

山下: いや、いいですよ、そんなの。なんでもいいんですよ。好きなやつやってください、あなたの。

萩原: そうですね、これにします。

山下: なんですか、それ?

萩原: ミッチー・ライダーとデトロイト・ホイールス。

山下: 珍しい選曲ですね。

萩原: どうですかね?

山下: いや、いいですよ。ボブ・クリル、フランク・   でしょ?

萩原: あのー、僕、これアルバム持ってなかったんですよ。

山下: ほー。

萩原: これ「アイ・ホープ」っていうボブ・クリルの曲が入ってて、これがなんかいい曲だったんでね、結構、

山下: へぇー。よく、しかし、そういうものをさ、いちいち細かく聴きますね、あなたも。

萩原: えっ?

大滝: 私も持ってるよ。

山下: 買ってるだけじゃなくて。

萩原: ねぇ。

大滝: 「アイ・ホプ」はね、結構意外にいいのよ。

山下: へぇー。

萩原: そうなんですよ。

大滝: 俺は、でも、シングル持ってる。

萩原: そうなんですか?

大滝: うん。ダイナ・ボイスのオリジナル。

萩原: 「アイ・ホープ」ってね、初めて聴きましてですね、

大滝: これがね。

萩原: なかなかいい曲だなと思いましてですね。

山下: えぇ。

萩原: これで、ぜひ、お願いしますよ。

山下: じゃぁ、これで、今日はいってみたいと思います。

大滝: 「アイ・ホープ」ね。

萩原: やっぱ、今年をね、

大滝: 今年をのぞもうと。

萩原: そうそうそう、そういうことです。「ボーン・トゥー・ビー・ワイルド」で始まり、「アイ・ホープ」

大滝: 「ボーン・トゥー・ビー・ワイルド」で「アイ・ホープ」

山下: なんだよ、今日は、そういうあれでやると思ったから、1曲目に「ボーン・トゥー・ビー・ワイルド」持ってきたのにさ、なんだよあれは、ほんとに。来週はいいや。

大滝: 失礼いたしました。

山下: ほんとに、もう。じゃぁ、これは、あれですね、ミッチー・ライダーとデトロイト・ホイールス、デトロイトが生んだブルー・アイド・ソウル・バンドですな。

萩原: はい。

山下: 「アイ・ホープ」

 曲:

ミッチー・ライダーとデトロイト・ホイールス/I HOPE

山下: モロ、リーバー&ストーラーという感じですが、これは実は、ボブ・クリルの曲で、プロデュースだという。こういう感じだったんですね。録音がベル・サウンドだから、ニュー・ヨークで録ってる訳ですかね。

萩原: もう、スプリングスティーンですよね。

山下: ほんとにそうですね。こういうの聴いて育ってたんでしょうね、きっとね。

萩原: でしょうね。

山下: こういう歌い方もできる訳ですね、このミッチー・ライダーはね。

萩原: これまで、ベスト盤しか持ってなかったんでね、この人達は。

山下: うーん。

萩原: 今回3枚ぐらい、3枚か4枚ぐらいCDが、

大滝: 出ましたね。

萩原: ドカって出たんで。

大滝: えぇ。

山下: このボブ・クリルっていう人は相当変わってた人らしくてね、このあいだ、あのー、クリスマス・アルバム、ニュー・ヨークで録ってきたでしょ?

萩原: はい。

山下: その時のコーディネーターやってた、ジミーってのが、チャーリー・ガレロのアシスタントなんで、ボブ・クリルの話とかたくさん知ってるんですけどね。スタジオが火事になったんですって、フォー・シーズンズのレコーディングやってる時に。

大滝: うん。

山下: ぼんぼん燃えてるのに、「ちょっとあと3分待て」って、みんなに。「今、最高のテイクが録れるんだ。もうワン・テイクやってくれ」っつってね。

大滝: 火事に言ったの?

萩原: ハハハハ、すごいなー。

山下: そういう人らしいですけどね。

萩原: やっぱり、プロデューサーってのは、それぐらいないといけませんかね。

大滝: まぁね、すべからくね。

萩原: うん。

大滝: うーん。

山下: という訳で、そろそろ1週目のお時間、この続きは、また来週で。なかなか、えーっと密度の濃い、「はっぴいえんど」から、

大滝: なんか、地味になっちゃったなー。

山下: どうしたいんですか、大滝さんは?お正月だから?

大滝: お正月だもの、派手にいかなきゃね。

萩原: パーっとね。

山下: パーっと、じゃぁ、あれですね、

大滝・萩原:来週も1曲目、「ボーン・トゥー・ビー・ワイルド」にしよう。

萩原: そうしましょう。

大滝: 決めた。

山下: おねげーでごぜーますだ。

萩原: そうしましょう。

大滝: 決めましたね。今年はこれでいこう。

萩原: 我々が出ている間は、あれがテーマ・ソングっていうやつでね。

大滝: そうそう。「ボーン・トゥー・ビー・ワイルド」

萩原: はい。

大滝: うん、そうしましょう。

山下: しーん。

大滝: 来週もがんばってやってくださいね、山下さんも。

山下: つう訳でお送りしまいりました「山下達郎サタデー・ソング・ブック」。恒例の新春放談、元旦の新春放談なんて何年ぶりでございますが。えー、大滝詠一さんと萩原健太さんをお招きしましてですね、いつもは大滝さんも萩原さんも、特に萩原健太さんは、自ら、自分が司会をしてですね、人の話を聞くという。聞くのと聞かれるのと、どっちがいいですか?

萩原: いや、どちらとも言えないですけどもね、それはね。今日は楽しいですよ。ほんとに。

山下: 好きなレコードをかけて、来週もあれしてください。

萩原: はい。

山下: 来週もひとつよろしくお願いします、おふたりさんとも。

大滝: よろしくお願いしまーす。

萩原: お願いします。

山下: それでは次は1月8日の土曜日になりますので、またお楽しみに。来週も新春放談、続きです。それでは、来週のこの時間まで、みなさんごきげんよう、さよなら。

 この週は参りました。曲は結構かかりましたが、短かったり、途中でフェード・アウトしたりで、かなりの文字量になりました。次回もこんな感じみたいで、ちょっと憂鬱です。1回分ができると、「予習」と称して、次回放送分を「とおし」で聴くことにしています。当たり前の話ですが、この「とおし」の作業は50分程度で終わるのですが、「活字おこし」をするとなると、かなりの時間を費やします。最近、妻への配慮(妻のために言っときますが、決して「やめろ」といわれている訳ではありません。念のため。)から自宅ではあまりこの作業を行っていなくて、もっぱら職場の昼休みを利用しています。食事後の45分くらいを利用しているため、あまり時間がないのと、昼寝することも多くて、なかなか作業が進みません。ただ、今週1週間は妻がいないため、頑張りますね。
 ただ、昨日大滝さんの12年ぶりの新曲を録音してしまったので、どうなることやら…。この12年ぶりの「幸せな結末」ですが、サウンド的にはこれまでのナイアガラの流れを汲んでいると思いますが、詞については、これまでのナイアガラの流れとは一線を画しているような気がします。というのも、大滝さんは今から約10年前、音楽雑誌「ROCKIN'ON JAPAN」のインタビューで次のように話しているからです。

渋谷:(前略)「君のこと愛してる」って言うの。
大滝:あ、そりゃ言えない。死んでも言えない(笑)、バーカみたい。何それ?あるのそんな言葉、世の中に(笑)。歌の中でもとにかく言えない。大っ嫌いなのああいう言葉(笑)、みっともないし、情けない。歌でそういうのがあっても「誰だ、こんな詞書いたのは、バカヤロウ(笑)。こんなこと俺が言うわけないだろ」みたいなさ。

 また、別の部分では、「『君』がいやだ」とか、「自分の詞っていうのは、ある程度チャカした感じじゃないと絶対に歌えない」など話しています。そういうところを考えてみると、今回の「幸せな結末」の「今なら言える素直になれる」という詞は、ひょっとしたら、大滝さんの本心かも?でも、私が一番詞で驚いたのは、「幸せな結末」というタイトルが詞の中に入っていることでした。大滝さんの歌の中に、その曲のタイトルが入っているのって少ないですよね。

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