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1996.1.14 サンデー・ソング・ブック

山下: みなさん、こんにちは。ご機嫌いかがでしょうか?山下達郎です。毎週、日曜日午後2時からの55分間は、私、山下達郎がお送りいたします「ジャックス・カード・サンデー・ソング・ブック」の時間であります。東京FMをキー・ステーションといたしまして、全国34局ネットでお届けしております。明日は「成人式」でございますが、連休になりますかね。えー、今年二十歳を迎える方々、誠におめでとうございます。私とひとまわり、じゃねぇや、22も違う。へたすりゃ親子でございますね。えー、そんな歳が離れていても、最近は音楽が割と、言語として、それほどゼネレーション・ギャップがないというのは、大変いい時代だと思いますけれども。さて、それは、さておき、先週に引き続きまして、今週も毎年恒例、新春放談。大滝詠一さんをゲストにお招きいたしまして、四方山話。今週はですね、ナイアガラの初期のカタログが大滝さんの手によって、リマスターされましたので、「ナイアガラ・ムーン」、「ナイアガラ・トライアングル」、その辺が中心の話でございまして、いろいろと裏話、楽しくいってみたいと思います。今日も55分間、最後までどうぞごゆっくりお楽しみください。

山下: えー、という訳で、1月14日。えー、2週目でございますが、今日も新春放談、大滝詠一さんお招きしております。今日もよろしくお願いします。

大滝: よろしくお願いいたします。

山下: 先週はなんか、つらつらと「ラ・ラ・ラ・ラ」から、

大滝: 「ラ・ラ・ラ」がよかったね。

山下: ヘヘヘ。

大滝: 「ラ・ラ・ラ」が一番面白かったな。

山下: 「サマー・ミーンズ・ファン」までいきましたけどですね。

大滝: えぇ。

山下: 今週はですね、ぜひとも、去年、待望のナイアガラ、大滝詠一さんのカタログ、ナイアガラ・カタログが1枚、また1枚とリマスターを施されてリイシュー。解説書、ボーナス・トラック、えー、いろんなあれで、どんどん出ましたんでですね、ぜひ、それをひとつ、解説書に書かれていないような、もうひとつ踏み込んだ、

大滝: フフフ、何を言ってんだかね、まったく。

山下: ヘヘヘ、言いたい放題。調子に乗るなって。

大滝: これはずいぶん出ていませんでしたからね、そういう意味合いでは。

山下: そうですよ。

大滝: 「ソングス」も本当に長い、待望久しくね。

山下: 待望ですもん、だって。何はともあれ「ナイアガラ・ムーン」なんですけど、

大滝: うーん。

山下: えーっと、これはしかし、ノー・エコーなんですね、全部。今聴くと。

大滝: 全部ノー・エコーです、えぇ。自慢じゃないですけども。

山下: それって、なんか意図があったんですか?

大滝: エコー・マシーンがなかったんですね。

山下: ヘヘヘ。だけど、トラック・ダウンは、六本木のソニーだったじゃないですか。

大滝: うーん。なーんかね、あのね、エコーかけると、なんか違うもんのように聴こえてきたのよ。だから、毎日だから、ほら、福生でノー・エコーでずっと聴いてるから、

山下: その、やっぱり印象なのね?

大滝: 印象があるからさ、なんかエコーかけると、なんか無理矢理、あのー、変になんか、あのー、着飾ったみたいな感じの印象を受けたんですよ。

山下: ふーん、なるほどね。

大滝: うーん。

山下: これ、すごく今聴くと、あの頃からもそう思ってたんだけど、キャラメル・ママの演奏しているニュー・オリンズっていうのは、やっぱりイマイチどっか「バタ臭い」というのかな?「バタ臭い」って、もともと「バタ臭い」んだけど、どっか、

大滝: 洗練されてるよね。

山下: 洗練されてるでしょ。それが、福生のオフ・マイクの世界でやるから、

大滝: うーん。

山下: ちょうどよかったんじゃないかというさ、

大滝: ちょうどいいのよ。まぁ、それは確かにおっしゃるとおり。

山下: ねっ。あれが逆にほんとに「コテコテ」のさ、

大滝: あれがだから、ほら、あのー、だから、クラウン・ズタジオとか、ああいうので「カッチリ」したところで録ったものって、なんか、だんだん洗練されていくんだよね。

山下: えぇ。

大滝: だから、ティン・パン・アレイの方は、だからこう、都会的に聴こえるんだけど。別に福生のあれが田舎的っていうんじゃないんだけど、なんか、あの、得も言えない、

山下: 逆にあれがさ、関西ミュージシャンのコテコテの人達がさ、「ドッ」とあそこ行ったらさ、ものすごくさ、なんか臭いっていうの?

大滝: ウルフルズがやるとね、フフフフ。

山下: 今はだから、ほら、あれだけど、

大滝: あの当時のね。

山下: うん。

大滝: サウス・トゥ・サウスとか、そういう人達?

山下: そうそうそう。

大滝: はーん。

山下: そういう人達が、あの、ほら、スモール・ルームのさ、

大滝: うーん。

山下: 全部いっしょにあれしたら、きっとものすごくさ、

大滝: 汗がずいぶん、

山下: 出ちゃうでしょ?

大滝: 「じとっ」とくる感じはしたかもしれないな。

山下: だから、それが「ナイアガラ・ムーン」の、この独特な持ち味を出してるみたいにね、

大滝: あー、そう思いますね。

山下: 思うんですよ。

大滝: うーん。

山下: で、何しろウルフルズがカバーしてる、その「福生ストラット」ってのがあって、

大滝: うーん。

山下: えーっと、

大滝: これから始めたんですよ、レコーディング。

山下: そうですよね。

大滝: うーん。

山下: これ、覚えてるんですよ、よく。

大滝: いましたからね。

山下: えぇ。

大滝: ずいぶんお手伝いしていただいてるんですよね。

山下: いえいえ。

大滝: あのー、影になり、ひなたになり、ひなたになりですか?

山下: グッ、よくわかんない。

大滝: で、ずいぶんやってもらって。あんまりここに書かれてないんですけど、ずいぶん、あのー、やってもらいましたよ。

山下: これが一番思い出が深いんですよ、僕。

大滝: やっぱりね。

山下: えぇ。やっぱ、あの、「ロックン・ロール・マーチ」のイントロとかさ、

大滝: 「ロックン・ロール・マーチ」ね。

山下: えぇ。

大滝: 「ロックン・ロール・マーチ」の、じゃあ、あのー、まぁ、あっ、ホーンのアレンジをしていただいたんです、これが。

山下: あれは「雷神」っていうね、マーチがあるんですけど、

大滝: うーん、ありますね。

山下: それのイントロなんですけどね。

大滝: なんせ、あれですからね、ブラスバンド部でしたからね、あなたはね。

山下: 「元」です、えぇ。それが思わぬところで役に立ったというですね。

大滝: えぇ、いや、ほんとに、あんときも大シンバルも叩いてもらいましたしね、

山下: ヘヘヘ、ちょうど、そのー、要するに、ニュー・オリンズ・ミュージックっていうのは、そういうブラスバンド・ミュージックじゃないですか。

大滝: うん。

山下: だから、私のそのー、あれがお役に立ててね、

大滝: いやいや。

山下: 面白かったんですよ、だから、すごく。

大滝: 異常にあれは、おもしろく。あれでね、うまい具合に。

山下: ほんとに。

大滝: 去年、いろいろあれが、また旧譜が使われたりとかしてね。

山下: あー、そうでしたね。

大滝: テレビから流れたりしてきて、一瞬あのイントロがね、

山下: 「ロックン・ロール・マーチ」でしたもんね。

大滝: 「バー」っと出てきたりとか、なんか、うーん。

山下: どっちいってみようかな?どっちもいいなー。ふたつやっちゃえ。じゃぁ、まず、「福生ストラット」だ。

大滝: あっ、これからね。

 曲:

大滝詠一/福生ストラット

山下: えー、「おーまもりーにー」で、次が「にーりもまーお」になるのはなぜかっていうのが本人にもわからない。

大滝: いや、「にりまお」はひっくり返しただけ。

山下: あー。「イゴル・エイ・エイ」っていうのは?

大滝: それは全くわかんない。突然。

山下: これってさ、あのー、例えば「論寒牛男」だと、あのー、あれだ、「シャックリ・ママさん」だと、バディ・ホリーだとかさ、

大滝: うーん。

山下: いろいろあるけど。これってなんか、シンギング・スタイルなにか意識して?

大滝: 意識、なんなんだろうね?全くない。

山下: あの、キバるのはなんなの、特に途中で「福生行きの切符買って」?あれは何?なんか別に「地」っていうか、思わずってやつ?

大滝: なんなんだろうね?とにかく、単純に、要するに「福生に行った」ということと、まぁ、そのー、ナイアガラを始める?

山下: うん。

大滝: 「福生スタジオ」っていうのを、なんか、のテーマ・ソングをつくろうっていうことだけで。あとは、まぁ、そのー、ミーターズに「チキン・ストラット」とかさ、そういうような曲があったんで、その「なんとかストラット」っていうのを、ただつくろうっていうだけ。

山下: ふーん。

大滝: で、「ファンキー・ストラット」とか、いろんな「ストラット」があったから、だから「福生ストラット」をつくろうって。だから、歌はね、だから、オケができてからつくっただけなんだよ。

山下: これはしかし、僕の知ってる、あのー、曲の中でも、最も詞が短いやつのひとつですからね。

大滝: 要するに、まぁ、そういうね、

山下: えぇ。

大滝: 短いのを、こう、繰り返すという、あのー、短歌というか和歌というかね。

山下: フフフフ。

大滝: そういう、あのー、短いやつなんですよね。

山下: だから、ジェームス・ブラウンみたいな、要するに、ものとは違うね、

大滝: あー。

山下: 一応、意味論はあるんだけど、

大滝: うーん。

山下: 意味論的にもあるんだけど。でも、たった4行で、全部歌うっていうね。

大滝: 「福生行きの」、

山下: あのー、ヘンリー8世君みたいな世界ですね。

大滝: まぁ、そういうのもあるよね。

山下: セカンド・アズ・ア・ファースト、セイム・アズ・ア・ファースト(?)、

大滝: セイム・アズ・ア・ファースト(?)。

山下: そういうあれがありますが。だけど、今、あのー、ほら、ウルフルズがこれの「大阪ストラット」っていうね、

大滝: あー、「大阪ストラット」をね、やってもらって、

山下: やってますでしょ。

大滝: ホント、非常に、

山下: 伝統が受け継がれてますね、しかし。

大滝: いやー、ほんとうにありがたかったですけどね。

山下: ちゃんと。これって、

大滝: だから、

山下: すいませんね、僕ばっかり。

大滝: いやいや、とんでもない。

山下: これって、今でも覚えてるんですけど、ちょうどこのスタジオくらいの、そうだな、5メーターないですかね、一辺が?3〜4メーター四方の部屋ですよね。

大滝: うーん、そんなもんですね。

山下: スタジオがね。「45」っていうのはね?

大滝: えぇ、そんなもんです。

山下: そこにドラムから、ベースから、ギターから、全員押し込めて、

大滝: えぇ。

山下: アンプが鳴ってんだけど、基本的にギターとベースはラインで、

大滝: ライン。

山下: ピアノもバーカスペリ(?)で、

大滝: ライン。

山下: ピック・アップでラインで、

大滝: うん。

山下: まぁ、ドラムのためのブース?

大滝: ブース。

山下: で、総木ばりで、

大滝: ふん。

山下: 空調なし、

大滝: ふん。

山下: ってやつで、

大滝: で、あのー、木のいかだ組んだんですよ。

山下: あー、そうでしたね。

大滝: いかだを組んで、いかだの上にドラム・セットを置いたということもやりましたけども。

山下: これって、器材的には別に、ほら、そんなにベストな器材ではなかったですよね。スリーエムのテープレコーダーに、それから、

大滝: アンペックスの、

山下: アンペックスか。

大滝: アンペックスのアンプを使って。

山下: それで、ミキサーもパンポットっていうのが、真ん中と右、左に、

大滝: いや、一番最初はだから、あのー、ほんとに、ただのアンプだけなんですよ。

山下: あー。

大滝: それがよかったみたいよ。なんにもないんだから。

山下: ほー。

大滝: そのままで、

山下: あー、直つなぎね。

大滝: 直つなぎなの。

山下: なるほど。

大滝: これのよさって、それなのよ。

山下: は、はーん。

大滝: だから、オーディオ・マニアの人は、

山下: なるほどねー。

大滝: 必ず、こういう、なんか、なんにも途中通ってないっていう、なんか、

山下: 引き回しがないんだ。

大滝: うーん。

山下: 直なんだ、ラインが。

大滝: そうなの。

山下: テレコに。

大滝: だから、なんかエコーかけると、

山下: なるほど。

大滝: 全然違うようなものになったんで、やらなかったんですよね。

山下: だから、こんなにエッジがたってんだ、これって。

大滝: これが。

山下: なるほどねー。聞いてみなけりゃわからないなー。

大滝: いやいや。AM10というね。

山下: だけど、なるほど、そうか。「マイク直」っていうのはあるな、それは。

大滝: うーん。

山下: 田中さんって、田中シンイチさんってね、

大滝: ミキサーの人、フフフ。

山下: ミキサーがいて、あの人は、もう、そういう、ほら、卓通さないで、

大滝: うん。

山下: 全部やるでしょ。

大滝: うーん。

山下: 「それが一番いいんだ」つって、それを既に先取りしてたと、ハハハ。

大滝: ハハハ、たまたま、なんにも器材がないんで、レンタルだったから、たまたまそうなったということなんだけどね。

山下: なるほど。

大滝: うーん。

山下: それでは続きまして、「ロックン・ロール・マーチ」いってみたいと思います。

大滝: 「ロックン・ロール・マーチ」いきますか?

 曲:

大滝詠一/Rock'n Rollマーチ

山下: えー、後ろの方にヤンキーがいまして、「ゴー・ゴー」ってやってますけれどですね。

大滝: あのー、ソロがありますよ、コーラスだけ。

山下: ハハハ。

大滝: コーラスだけ抜き取った、

山下: しょうがねーなー。

大滝: あの「ゴー・ゴー」っていうのが、誰がやってるかっていうのを、このソロを聴くとわかると思ったから、今日抜き取って持ってきました。

山下: 嘘だー。

大滝: 聴きますか?

山下: 聴きます。

大滝: 聴きましょう。

 曲:

瑞穂リトル・リーグ/Rock'n Rollマーチ(エンディング・コーラス部分)

山下: やっぱり僕かな?

大滝: 君ですよ。

山下: ハハハ、「ゴー・ゴー」。

大滝: なにが「やっぱり僕かな?」だよ、フフフ。もう、ター坊、腹抱えてんの。「ヒー」なんつってるの。

山下: そういうの一手に引き受けてたからな。

大滝: 全部、ずいぶんやってるんですよね。あのー、埋もれてるんですけども。

山下: しょうがねーな、ほんとに、もう。

大滝: えぇ、これはおもしろいですよ。

山下: 僕、聞いたこと、今までなかったんですけど、どうして大滝さん、これ、ニュー・オリンズやろうと思ったんですか?

大滝: ニュー・オリンズにぶち当った理由?

山下: うん。

大滝: えーっと、いや、ロスに行ったことですよね。

山下: あー、それが、それがあれですか?

大滝: うん。それが、要するに、あのー、例えばデーブ・クラーク5の「アイ・ライク・イット・ライク・ザット」とか、

山下: うーん。

大滝: あのー、例えばアル・ハートの「ジャワの夜更けて」とか、なんかそういうので、アラン・トゥーサンっていう名前は、「ゲット・アフ・ライク・マイ・ウーマン(?)」とか、

山下: あー、うん。

大滝: そういう、あの、リドーシーとか、

山下: うん、リードーシーね。

大滝: そういうのを、こう、聴いてきたときに、「あっ、なるほど」って。アラン・トゥーサンっていうのは、どういうものだったか知らなかったから。

山下: ふーん。

大滝: で、「あっ、アラン・トゥーサンっていうのは、こういう人なのか」っていうことを、向こうでわかって。で、帰ってきて、ズラズラズラって調べたら、「あっ、あれもそうか、これもそうか」っていうことになって、これをちょっと。で、そのー、例えば、あのー、スペクターでドラマ叩いたアル・パーマーっていう人が、リトル・リチャードのドラムを叩いてたと。「待てよ」と。これはニュー・オリンズを研究しないと、ロックン・ロールの元は、まずあそこにひとつはあるなと。

山下: すぐ因果関係で見るのが大滝さん得意だからね。

大滝: うーん、そう思って、これはロックン・ロールをやるには、ニュー・オリンズをもっと研究しないとできないだろうっていうことで。

山下: ふーん。

大滝: だから、ロサンゼルスとニュー・ヨークはある程度、その、ロックン・ロールとか、リズム&ブルースとかっていうのは、大体は知ってたんだけど、ニュー・オリンズは知らなかったから。

山下: ふーん。

大滝: うん。

山下: それが、だけど、要するに、意識した最初である訳ですね?

大滝: そうなんですよね。

山下: 細野さんもそうなんでしょ、でも?おんなじとこでしょ?

大滝: だから、まぁ、2人同時に、

山下: 2人同時に始めましたもんね、

大滝: ロサンゼルス行って、

山下: いきなり。

大滝: 帰ってきて、ハワイのホテルで、2人で「うーん、やっぱりニュー・オリンズだな、ロックは」みたいなことを言ったんですけどね。

山下: へぇー。それが細野さんは、いわゆる「トロピカル路線」に行き、

大滝: うーん。

山下: 大滝さんは「音頭」になるっていうね。

大滝: まぁ、ここが、

山下: ここがやっぱり、

大滝: 右、左に別れてしまいましたね。

山下: だけど、結局、でも、元はおなじですもんね。

大滝: うーん。

山下: だけど、先もおなじっだて感じもするけどね。

大滝: なんとなく、それは、大昔に、石浦新造っていう「はっぴいえんど」のマネージャーが、「細野と大滝は逆の円をたどって、・・・」

山下: ハハハ。

大滝: 「最終的には、また、スタートがおなじで」っていうようなことはいわれたことあるんだけど。

山下: だけどね、あのー、大滝さんキングでソロ・アルバム出したでしょ?

大滝: えぇ、出しました。

山下: あの時は、要するに、どっちかいったら、五目味的な世界じゃないですか。

大滝: うーん、半分半分だね。

山下: それこそ、ロックン・ロールもあるけど、メローなのも割とあって、メロディアスなものもあるけど、なんつうのブルース・コードのやつもあるっていう。

大滝: うーん。

山下: だけど、これのアルバムって、見事なまでにさ、スリー・コードの世界で、

大滝: うん、やりました。

山下: ほとんどあれでしょ?

大滝: うーん。

山下: だから、それって、かなり確信犯的に始めた訳でしょ?

大滝: ベルウッドのファースト・アルバムを批判されたからですね。

山下: へぇー、なんで批判されたんですか?

大滝: あのー、中途半端だって。

山下: へぇー。

大滝: で、あのー、どっちかに徹底、どっちかに徹底たって、

山下: フフフ。

大滝: メロディアスに徹底したら、ただ、「はっぴいえんど」がそのままの状態だったでしょ。例えば「乱れ髪」だとか「水彩画」の、「水彩画の町」なんて、例えば「空いろのくれよん」の続編で使ってる訳だから。

山下: そうですよね。

大滝: そっちにだけ行けば、ただ単純に「はっぴいえんど」のをやるだけになるから、そうすると、ノベルティみたいなものは、あのー、松本君の世界にないわけだから、

山下: ふーん。

大滝: そっちを、もう「うららか」だとか「びんぼう」とか、そういうのを、もう、1回徹底したものをつくってみようというふうに思ってたのと。ニュー・オリンズのと、まぁ、「これならスリー・コードでロックン・ロールの基本だからいける」と。じゃあ、マイナーなコードは一切使わないで、

山下: うん。

大滝: もう、あたまっから、マイナー使わなきゃ、一般の人は誰も聴いてくれないことは百もわかったうえで、

山下: ふーん。

大滝: だって、これって、もう、「サイダー’73,74」つくってるんだから、もう既に。

山下: そうですよねー。

大滝: この「ナイアガラ・ムーン」は。

山下: 確かにね。

大滝: だから、何が一般の人が聴いてくれるかっていうことは、百もわかったうえで、

山下: ふーん。

大滝: スリー・コードに、これは、なんか、やらねばならないという、ある種の、ような使命感が。

山下: あのー、非常にだから、今から考えるとね、僕、80年前後にすごくそういうこと突然思ったんだけど、この「ナイアガラ・ムーン」って、僕、たまたま行き当たって、100%かかってるんですよね。このアルバムにね。

大滝: うん、やってもらった。

山下: それこそ、滝の音(すみません、ここテープの回転ムラで少し飛んで聴き取れません)まで録ってきてる訳だから、

大滝: やっていただきましたね。

山下: だけど、これってすっごい特異な体験なんですよ、自分にとってはね。

大滝: うーん。

山下: こんなに、要するにスリー・コードでさ、押し切ったレコードってないの、日本に。

大滝: ないんですよ。

山下: で、しかも、要するにだけど、コテコテじゃなくて。

大滝: うん。

山下: だから、コンセプショナルなアルバムで、こんなに要するにスリー・コードで、押し切ってるアルバムって、他にないんですよ。それがしかも、自分が一番関わってるプロジェクトなんですよね。

大滝: うーん。

山下: だっていうのがね、自分にとってはすごく特異な体験で、これの意味合いって結構大きくてね、僕にとってはね。

大滝: あー、そう。

山下: きっと、あれなんだよ。こういうのって、本来、肉体表現で自然に出てくるもの、恣意的って言うの?

大滝: うん。

山下: に展開してるっていうところがすごく変わってるんですよね。

大滝: そこが限界なんだよ、私の。

山下: そうなのかな?

大滝: うん。だから、これを肉体的に、あのー、表現できる人は、プレスリーだとか、ジョン・レノンだとか、そういうような人は、100年に一片の人が、これを肉体的に表現してたら、スーパースターになってるんだと思うんだ。

山下: うーん。

大滝: だから、例えば、あのー、「レッツ・オンド・アゲイン」なんかどう逆立ちしても、植木さんの「スーダラ節」1曲には、もう、全然かなわないんだ。

山下: あー。

大滝: だから、これがだから、植木等のような100年に1人のスーパースターがやってりゃ、すごかったんじゃないの?

山下: なるほど。だけど、そういうスーパースターはさ、ここの後ろの、例えば、アイデア?「お守りに」を「にーりもまーお」にをさ、

大滝: うん。

山下: 言うようなイマジネーションとは、ちょっと違うもん。

大滝: あー。

山下: 多分、「歌う人が別のキャラクターであるべきだ」っていう世界でしかないんじゃないのかな?だから、これはもう、なんか、孤高っていうか、異端っていうかさ、すごく過激ですよね、これ。

大滝: だから、あのー、「みんながわかってくれるだろう」というふうには思わなかった。将来、何年経っても。たぶん、なんか、

山下: 確かにね、だけど、世間一般の言い草は、あれだよね。やっぱり、時代が時代だし、ピンク・レディ前夜だし、キャンディーズとピンク・レディの間ぐらいの時代でしょ、これ?

大滝: そうそう、75年だからね。

山下: ねぇ。まぁ、超異端ですね。そういう意味ではね。

大滝: うーん、まぁ、「超」まではつかないけど、まぁ、「異端」の程度じゃないですか。

山下: フフフ。いや、もともと大滝さんの存在つうもんがですね、

大滝: 既に異端ですからね。全くおっしゃるとおり。もう、「いたのかいないのかわからない」っていうふうになると思いますよ。自分で言っときますけど。

山下: いなくても「いたん」とか、わかんないな。

大滝: フフフ、何言ってんだか。

山下: 「トライアングル」いきたいと思います。

大滝: 「トライアングル」いきましょう。もう、20年前になりました。

山下: これは、やっと、待望のあれですよ。

大滝: ちょうどね、だから、「ナイアガラ・エンタープライズ」で、私が社長になって20年。

山下: ふーん。

大滝: 75年の12月なんですよ、「ザ・ナイアガラ・エンタープライズ」ってのができたのが。

山下: なるほど。

大滝: だから、シュガーベイブとか、「ナイアガラ・ムーン」なんかは、まだ「ナイアガラ・エンタープライズ」ができてなかったんだね。私もだから、まだ前の会社の「一雇われプロデューサー」だったんですよ、そういう意味では。

山下: ふーん。

大滝: で、ようやく自分で社長になって、「ナイガラ・エンタープライズ」を創って、この「トライアングル」をやる時には、アーチストがいなかったっていう、

山下: フフフ。

大滝: 非常に楽しい状況だったんですよね。

山下: なるほどね。

大滝: えぇ。

山下: これはね、意外とディーテルよく覚えてるんですよ、僕、いろいろなことやった、

大滝: うん。

山下: あれで。

大滝: これはだって、基本的に君のサイドは君が100%プロデュースしたんですからね。

山下: そうなんですけどね。だけど、そのー、割と、これもちゃんと、だから「ドリーミング・デイ」にしろ、「パレード」にしろ、全部福生のスタジオですから、

大滝: やってましたよね。

山下: えぇ。だから、それは、なんだ、何て言うのかな?

大滝: 私は毎日副調にいて、ミキサー卓に座ってましたよ。

山下: やっぱり、だから、これ、変な話ですけど、オリジナル・ミックスでなきゃダメだったんですよね。

大滝: そうみたいね。

山下: ねっ。これ、なんでしかし、そう考えてみると、80年前後って、こういうの必死にリミックスして、あれしようとしたんでしょうね?

大滝: うーん、

山下: それがいいって、みんな信じ込んでたみたいなとこありません?

大滝: いや、それってだから、そうやって、あのー、「はっぴいえんど」の時も、おなじもの感じたんですよね。

山下: あー、ハハハ。

大滝: あのね、で、イヤー、恥ずかしかったんでしょ。

山下: あー、そうなのかな。なるほど。

大滝: だから、そのー、非常に原初的な形で出てる訳じゃないですか。

山下: えぇ。

大滝: それが服を着だした時に初めて「恥」をわかる訳でしょ。

山下: うん。

大滝: だから、そのー、出だしはやっぱり「はだか」な訳ですよ。

山下: うーん。

大滝: 多分その、「むき出し」で出てきてるものが、ちょっと着るものを着始めたんで恥ずかしかったんじゃないですか。

山下: なるほどね。

大滝: で、今はもう、20年、25年経って、あのー、別に原初的に「最初は裸だったんだ」ということを、そのまま出して、もう一度なんつうの?あのー、ありのままの歴史をもう一回構築しようということになったんじゃないですかね。

山下: ふーん。まぁ、その、とにかく、何かけようかな?何はともあれ「幸せにさよなら」に、

大滝: 「幸せにさよなら」の、じゃぁ、あのー、「ウルトラ・スペシャル・ミックス・バージョン」というのを、

山下: なんだそれは!

大滝: かけましょうか?

山下: なんだそれは!

 曲:

ナイアガラ・トライアングル/幸せにさよなら(ULTRA SPECIAL MIX VERSION)

山下: なるほど。

大滝: えー、というんで、これはあのー、3人で歌ったシングル・バージョンは、歌の順番はだから、あなたから始まって、

山下: えぇ。

大滝: 銀次で、私っていうのを、まるで替えたんですよ。

山下: あべこべになってる訳?

大滝: えぇ、ヘヘヘ。

山下: じゃぁさ、全部自分っていうのを聴きたいな。

大滝: あるんだよ。

山下: それ。全部大滝さんっていうのもあるんでしょ?

大滝: あるんだけどね、

山下: これおもしろそう。

大滝: 君のはいいね。

山下: あっ、そう?

大滝: うーん。来年にしよう。

山下: こんど、それ、来年持ってきてくださいよ、全部。

大滝: うん、来年やろう。

山下: 全部自分のって聴いてみたい。

大滝: 全部自分ってあるんだよ。

山下: へぇー。

大滝: 言うと思ってたんだ。

山下: ヘヘヘ。

大滝: フフフ。でも、これ2つかけるとね、ちょっとね、おんなじ曲2曲はうるさいから。

山下: そうね。じゃぁ、来年の、

大滝: 来年にしましょ、もし覚えてたら。

山下: いいなー。それでですよ、

大滝: はいはい。

山下: えーっと、あの、なんだっけ?この「ナイアガラ音頭」のシングル・バージョンとアルバム・バージョンってのが入ってるんですけど、

大滝: えぇ。これねー、この前リミックスして思ったんだけど、

山下: えぇ。

大滝: えーっと、どういう録り方をしたかというと、えー、リズム・ボックスと、

山下: えぇ。

大滝: 私のつたないピアノと、それを福生のスタジオで布谷さんと、リズム・ボックスとピアノだけで布谷さんの歌を録ったの。

山下: はーん、あれ全部「あとかぶせだ」ってのは聞いたことがある。

大滝: そう。で、歌を最初に、リズム・ボックスと、まず歌を最初に録って、で、邦楽の人達を呼んできて、

山下: えぇ。

大滝: で、邦楽を、そのリズム・ボックスをはずして、

山下: ははーん。

大滝: 歌だけ聴かせて、歌にあわせて邦楽を録った訳。

山下: ほー。

大滝: で、邦楽を全部抜いて、リズム・ボックスをメインにして洋楽を録ったのよ。

山下: はー。

大滝: それでほら、ミックスの時に初めて、自分も聴いてなかったのを、ミックスの日に「今日初めて発表します」って言って、ミックスチャーでやった時に、だから、あーた「今世紀最大の傑作だ!」って、ソニーのスタジオで怒鳴ったんだよ、ハハハ。

山下: いや、すごいと思ったもん、あれ。

大滝: あん時初めて、だから、右、左が、今なんかはこんなもん、なんにもおもしろくもおかしくもないだろうけどね。当たり前に聴こえるかもしれないけど、

山下: はー。

大滝: 76年、初めて両方、邦楽と洋楽が「バーン」と出てきた時はね、びっくりしたんだよ。

山下: あのね、違和感がないのがすごかった。

大滝: フフフ、なんだよ、それ?

山下: いや、普通、だって、「三橋美智也と寺内タケシの共演」ってあったりしたじゃないですか。

大滝: うん、するする。

山下: それの持ってる違和感ってすごかったんですよ。

大滝: あー、なるほどね。

山下: たしかに、じょんがら2人でやってるんだけど、

大滝: うーん、やってる、やってる。

山下: それ「似て非なるもの」なんですよ。

大滝: うーん。

山下: で、そういうのがこれ、全然ないの。僕は生まれて初めて聴いたものだったの、邦楽と洋楽がクロス・オーバーしたの。

大滝: はーん。

山下: 大滝さん、「そんなの当然だ」と思うかもしれないけど、僕そういう経験それまでなかったから、それすっごいショッキングだった。

大滝: ふーん。

 曲:

布谷文夫/ナイアガラ音頭

山下: こっちからこっち、ビリー・プレンストンでさ、

大滝: うん。

山下: とミーターズで、

大滝: そうそうそう。

山下: こっちからこっちっていうのは、純邦楽になってるんだ。

大滝: 邦楽、純邦楽なんだ。

山下: これは、

大滝: だから、純邦楽の人はだから、西洋のオケは一切聴いてないの。

山下: あっ、そうなんだ。

大滝: うん、歌に合わしたの。だから、特にリズム・ボックスも聴かせてないから、

山下: そうなんだ、だから、

大滝: 完全に歌だけに合わした純邦楽だったんだよ。

山下: なるほどね。

大滝: うーん。

山下: いや、どうやって録ったのか今まで聞いたことなかったんですよ。

大滝: そういえばね、

山下: そうやって録ってたんだ。

大滝: そなんだ。マルチを聴いて思い出したんだよ。

山下: いや、俺、「この邦楽の人達、どうやって録ったんだろうな」って、あの、洋楽はわかる。

大滝: うん。

山下: リズム・セクションは。

大滝: うん。

山下: 邦楽の人達はこのオケでよくさ、この、

大滝: そうそう。で、洋楽に邦楽の人を呼ぶと、やっぱりすごく上がってて、緊張して、

山下: そうですよね。

大滝: それで、「オン・タイムでリズムとらなきゃいけない」みたいなことで、かえってズレるっていうことが、当時あったじゃないですか。

山下: へぇー。

大滝: この邦楽ってのは、だから、リズムはこう、刻めないもので、

山下: えぇ。

大滝: 要するに、こう、分割するのが近代だとすると、古代は大まかに捉えるっていうのが古代だから、このミクスチャーをやろうというふうに考えたんですけどね。

山下: そもそも、「音頭」っつうのをやろうと思ったのはいつからなんですか?

大滝: だから、これがほら、言いませんでしたっけ?ラジオに、

山下: えぇ。

大滝: あのー、

山下: あーっ!

大滝: ほら!ラジオの、その、伊藤銀次のファンっていうのが、「もう、大滝詠一のラジオはやめろ」と。

山下: ふんふん。

大滝: 「伊藤銀次の『銀ちゃんのどーんとやってみよう』・・・」、「欽ちゃんのどーんとやってみよう」というののパロディーなんだけど、当時、萩本欽一さんのね。で、「欽ちゃんのどーんとやってみよう」っていうテレビがあって。で、それのパロディーで「『銀ちゃんのどーんとやってみよう』」っていうのにしろ」と。

山下: うん。

大滝: で、ついては、「欽ちゃんのどーんとやってみよう」は最後、三波春夫さんの「にこにこ音頭」とかいうやつだったっけ?

山下: うん。

大滝: だから、「ナイアガラだから『ナイアガラ音頭』にしろよ」っていうのが、75年の7月ぐらいにハガキが来たんで、

山下: あった、あった。

大滝: で、75年の12月に布谷さんのそのー、ピアノ、歌を入れたのをつくって。ハガキを読むと同時に「もうつくったぞ!」っていうのを発表した訳。

山下: ふーん。

大滝: だからその、そこまで、だから、ハガキあっためていた訳。

山下: ふん。

大滝: で、ハガキを読んで、「もうつくりました」って言って、自分のラジオの「GO! GO! Niagara」でそれを発表した訳。

山下: 「瓢箪から駒」だね、しかし。

大滝: そういう意味ではね。だから、全然私の意図じゃないのよ。

山下: あっ、そう?それがでも、

大滝: この辺とか、だから、そういうのが多いよ。

山下: それがライフ・ワークになっちゃったんだ、でも。

大滝: ライフ・ワークというもんでもないんだけど、その、「音頭の大滝」っていうのを、なんかやめてもらえないかなと思うな。

山下: 考えたら、ここんとこやってませんね、でも。

大滝: えっ?

山下: 音頭。

大滝: えーっとだから、「イエロー・サブマリン」が終わって、いや、「二十一世紀音頭」やりました。

山下: あー、そうか、そうか。

大滝: えー、「植木等的音楽」で、「二十一世紀音頭」、三波春夫さんと植木等さんの、

山下: うーん。

大滝: あのー、ボーカルをついに、ねぇ。よろしくおっしゃってましたよ、三波春夫さん。

山下: それいってみましょうか?

大滝: 「二十一世紀音頭」?

山下: えぇ、それいってみましょうか。

大滝: いってみましょう。忘れてませんから、私は、音頭は。

 曲:

植木等 with 三波春夫/新二十一世紀音頭

山下: もう、エンディング、ほとんどリトル・リチャードとジェームス・ブラウンの掛け合いみたいに、

大滝: もう、まさに、まさに。もうね、会ってね、話しちょっとしただけで、もう1回目からこうだった。3回歌ったけど、ずーっとこう。

山下: はー。

大滝: すごいよ。

山下: 我々がいくら躁病だといっても、とても足元にも及びませんね。

大滝: かないません。及びません。やっぱりね、「100年に1人」の人達は違うわ。

山下: 70前後でしょ、2人とも、だって。

大滝: ねぇ!

山下: すごいなー。何にも言えないや。

大滝: 何にも言えないね、これは。ほんとにすごい。

山下: なるほどね。

大滝: だからまぁ、あなたがおっしゃったように「ライフ・ワーク」のつもりはないんだけど、なんか、あのー、「音頭」と言われると、やらざるをえない、なんかハメに陥ってしまうかという。

山下: そうか、でも、そこの、そのファンのハガキがなければ。

大滝: なければないんだけど。でも、やっぱり、そこでそのー、「スーダラ節」、プレスリーとビートルズの間に「スーダラ節」があったということを、そのー、再び思い起こしたんですよね。

山下: フフフ。

大滝: で、まぁ確かに「愛餓を」、まぁ「愛餓を」は松本だけど、その「はいからびゅーちふる」だとか、そういう「颱風」だとか、そういうのを、まぁ「はっぴいえんど」のなかでやってた訳でしょ。

山下: うん、確かにね。

大滝: 諧謔部門は私一人でやってた訳だから。

山下: うん。お笑いの人じゃなくてやってる人って、いなかったんですよね。

大滝: 当時はね。

山下: ねぇ。確かにね。

大滝: なかなか、でも、ああいう、なんか難しい時代でそういう、なんかユーモアを散りばめるっていうのは、結構難しい時代だったんですよね。

山下: 大滝さんが全部それは、細野さんの諧謔精神とか、みんなの諧謔精神とかを代表してやってた訳なんだよね、それは。

大滝: 結果的には、なんかそういう部門の代表みたいなことだったんでね、まぁ、やってたんだけど。

山下: うーん。で、渡辺満里奈さんの音っていうのは、まだできないんですか?

大滝: あー、できあがりました。なんか1曲聴きますか?ついでだからね。

山下: えぇ、なんか聴かせてくださいよ。

大滝: じゃぁ、なんか聴きましょう。じゃぁ、なにがいいっすかね?あのー、「いちごの片想い」のカバー。

山下: へぇー。

大滝: えぇ。

 曲:

渡辺満里奈/いちごの片想い

山下: なるほど「トゥナイト・ユー・ビロング・トゥ・ミー」、

大滝: えぇ、「トゥナイト・ユー・ビロング・トゥ・ミー」で。

山下: 「いちごの片想い」、

大滝: えぇ。

山下: ペイシャス&プルーデンス。ひたすらしかし、「今もなお」ってやつですね。

大滝: 「今もなお」?

山下: 「スティル・ナウ」ですね。

大滝: 「スティル・ナウ」。えー、「滝の音は 絶えて久しく なりぬれど なこそ流れて なお聞こえけれ」と。

山下: フフフフ。

大滝: なんだよ、それ?フフフフ。

山下: なるほど。

大滝: いや、お正月だから百人一首ちょっと詠んでみた。

山下: いやー、そうですか。

大滝: うーん。

山下: 3月21日発売。

大滝: 発売です。

山下: アルバム・タイトルは?

大滝: アルバム・タイトルは「未定」、

山下: なんだ。

大滝: っていうアルバム・タイトルにしようかなと。

山下: ハハハハ。

大滝: いや、いろいろ考えたんだ。「見本品」とかさ、「ウルトラ・レア」とか、いろいろ考えたんだけどね。

山下: クックック、しかし、

大滝: 「見本品」ってのがいいんじゃないかと。

山下: 「ミニマム・ビッド」っていうのはどうですか?

大滝: フフフ、「ミニマム・ビッド」。「スティル・ナウ」もいいかもしんないな、フフフフ。

山下: いいですね。所詮、大滝さんがプロデュースしたやつは、やっぱり大滝さんですからね。

大滝: 何なんだよ、それ?どういう感想なんだよ?

山下: いやいや。

大滝: 言葉詰まってるね。

山下: ハハハハ。

大滝: 相変わらずね、褒めるのは苦手だから。

山下: すいませんね。

大滝: いえいえ。

山下: でも、今年はあれですね。3月21日、渡辺満里奈さん出て、

大滝: えぇ。

山下: そうすると去年よりは、あのー、なんつうのかな?幸先がいいといいましょうかね。

大滝: 「いい」っていう感じで、あのー、申し訳ないけど、なんか出そうな気がしますけどね。

山下: んー、気長に待ってましょうね。

大滝: 待っててください。

山下: みんな、全員書いてることおなじですから。

大滝: あー、そうですか?

山下: えぇ、1曲でもいいから曲を出して欲しいな。

大滝: じゃぁ、あのー、あれです。1曲シングル出しましょ。

山下: グッ。シングル出すなんて予定があるんですか、じゃぁ?

大滝: あるかもしれませんね。最初、裏かいてシングルっていうケースはありますよ、言っときますけど。

山下: うーん。

大滝: あんまり言いたくなかったんだけどなー、ほんとは。まあ、そういうふうなこともあるかもしれないし、

山下: うん。

大滝: えー、10枚組みのボックスの新譜っていうのも考えた。

山下: フフフフ、ほんとかよ。1枚に1曲でしょ?

大滝: えっ!なんでわかるの、それ?やめてよ、それ。

山下: だてに23年付き合ってないんだから。

大滝: あっ、そう。でも、最初からボックスものの新譜っていう人はいないからね。

山下: だけど、わかりました。あのね、

大滝: うーん。もう飽きたね、こういうのも。

山下: 80年代の中期にはですね、

大滝: 毎年やってるからな、このパターンなー。

山下: 80年代の中期にって、また今年もこれかって思いましてた。僕ね、だんだんね、わかりました。よくわかってきました。あのー、

大滝: なんか、でもいつもわかってるよ。ハハハハ、ねっ。

山下: 少なくとも新春放談に、毎年こうやってやってもらって、

大滝: ふん。

山下: で、こうやって受け答えしてもらっているうちは大丈夫なの。これはもう「俺はもう、そろそろ新春放談くたびれたからさ、いいや」って言ったら、もう、これは絶対に出ないと思った。

大滝: いや、俺はレコードはやめても、新春放談は来るよ。

山下: なんなんだよ、それ!

大滝: だって、しゃべりの方が本職だもん。

山下: しょうがねー。

大滝: だって、音楽は本職じゃないもの。しゃべりは本職、自慢じゃないけど。

山下: 還暦祝いしましょう、新春放談で。

大滝: 呼んでちょ。

山下: ハハハハ。

大滝: 頼むから。

山下: ひとつ今年もよろしくお願いします。

大滝: よろしくお願いいたします。

山下: お送りいたしてまいりました「山下達郎サンデー・ソング・ブック」、今年も新春放談、大滝詠一さんをお招きいたしまして、えー、先週、今週2週間にわたって、お届けいたしました。いかがでしたでしょうか?今年は去年よりも、いろいろ話題が豊富でありましてですね、やっぱりサシでやると、ちょっと突っ込んだ話ができますので、これも今年で11回目。来年で12回目になりますが、還暦になるまでできるかなという感じでございますけれども、いかがでしたでしょうか?来週はですね、「リクエスト特集」お届けいたします。私の2月10日になりましたけれども、ニュー・シングル、メリッサ・マンチェスターとのデュエットの、前から申し上げておりますけども、来週の冒頭にお聴かせできると思いますので、お楽しみに。来週もセイム・タイム、セイム・チャンネルでおめにかかります。来週のこの時間まで、みなさんごきげんよう、さよなら。

 この放送の前後の私の環境といいますと、前の年の8月末に結婚し、10月1日から姉妹都市を結んでいる韓国の金海市へ研修生として派遣されていました。まずは前半3ヵ月の語学研修を終え、年末に一時帰国。1月中旬の実務研修直前という時期でした。実務研修は2ヵ月の予定だったんですが、この放送を聴いてからというもの、3月21日が楽しみで仕方ありませんでした。韓国では毎日「ロン・バケ」を聴きながら、帰国の日を指折り数えていました。早いものであれから2年が経ちました。この2年間ほど充実した期間は過去にありませんでした。これからもこの調子でいけたらいいなと思っています。
 さて、この「新春放談の歴史」もいよいよ佳境に差し掛かってきましたが、次回は先延ばしになっている1987年にとりかかります。この年は私もそうでしたが、聴き逃した方も多いようですので、なるべく早めにアップしたいと思います。お楽しみに。


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