Naturally yours

 寂しくないなんて嘘、あなたに本当は会いたかったの……。

  必ずそこに行けば君に逢える……。

 そっとディアーナは猫のガゼルを胸に抱いて王宮を抜け出た。それは今は婚約者となった騎士ガゼル=ターナとの内緒のデートの為。お忍びの先は広場。王宮の皆は知っていて知らんぷり。

 ディアーナは広場で先に待っている銀髪の青年に手を振る。その表情はとても嬉しくてたまらなくて。
 銀髪の青年はディアーナに気付いて立ち上がる。
 猫のガゼルがみゃーんと鳴く。

 青空の下で気持ちのいい風が吹く。ディアーナは五月の心地いい風を頬に受けながら青年に話しかける。
「ガゼル、待ちました?」
「別に?こんなもんだろ?」
 さり気ないこんなやり取りがとても嬉しくてディアーナは微笑む。

 そっとガゼルがごく自然にディアーナの手に自分の手を絡めてくれた。
「ふふっ」
 ディアーナが笑う。
「何だよ?」
「だって、ガゼル。ずっとこうやって手を結ぶのだって照れまくってましたのに」
「……」
 いやーな思い出したくもないことをディアーナに指摘されてガゼルは黙り込む。
 それが可笑しくてディアーナは愛らしく微笑んだ。

「ふふっ、ガゼルが迎えに来てくれることもわかってましたもの……」
「え?」
「だってあの頃もわたくしたちこの広場で会ってましたもの。毎日ごく普通に……」
 だから不思議、あなたもわたくしも今ではこんな風に大きくなって。
 明日は結婚式、ガゼルとの。

 遠くにいてもずっと安心していられた。
「必ず迎えに来るからな!約束する!」
 泣き出す自分に必死に約束してくれた幼いガゼル。

 ごく自然に微笑み合う、二人。

「だから寂しくありませんでしたのよ……」
 その言葉に少しだけ強がりがあることにガゼルは気がついたけれど。

 ごく自然に出会って恋をしてそんな普通の幸せ。
 だけどそんな幸せこそ、奇跡なのかもしれないね……。
 Naturally-.


    山崎茜さんからいただきました。
    ファンタジー調で愛あふれる物語に仕上がってます。さすが!
    ディアとガゼルにも、セイルとシルフィスにも、幸せになってほしいです。
     

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