|
One boy, my special boy お兄様のことは大好きですわ。 わたくしのこと、大事に思っていて下さるのがとってもよくわかる。 でもわたくしだって、もう子供じゃないんですのよ。 「ディアーナ、まだ初恋の王子様のことが好きなのかい?」 初恋の王子様のことを忘れたりなんかしませんわ。あれは素敵な思い出ですもの。 そう申し上げたら、お兄様ったら、なんだか妙な顔をなさっていましたわね。 「好きな人ができたのなら教えてほしいな」 そうおっしゃる時のお兄様の目はとても優しい。 だからわたくし、本当はすぐにお兄様にお教えしたかったのに。 お兄様が喜んでくださるように王女らしくなろうって、がんばってお勉強もしましたのよ。 そうして今は、お勉強よりも、初恋の王子様よりも、そしてお兄様よりも、大切なものができましたの。 でもお兄様にも教えてあげない。まだしばらくは秘密ですわ。 誰にも邪魔はさせませんの、たとえお兄様でも。 わたくしはガゼルが好き。ガゼルも好きだって言ってくれたの。 この気持ちは、他のものにはかえられない、ただあの人だけへの特別な気持ち。 大好きなお兄様。お兄様にも祝福していただきたい。それはわたくしのわがままなのかしら。 ガゼル、わたくし待っていますわ。わたくしたちが祝福されて結ばれる日を。 あなたが立派な騎士になって、わたくしの手を取ってくれる日を。
俺だって、何にも考えてなかったわけじゃない。 ディアーナは、本物のお姫さまだ。本当だったら、俺なんか口も利けないような雲の上の人なんだ。 だからきっと、ディアーナの相手にはふさわしくないって誰かに言われるだろう、そう思ってた。 隊長にディアーナとのこと聞かれた時、王家が第一の隊長だから、とんでもないって怒ってるんだと思った。 「ただ友達でいたいだけなら、誰も何も言わないが」 どうしてか、隊長は悲しそうっていうか辛そうっていうか、そんな感じだった。 俺は馬鹿だから、これからどんなことが起きるのか、正直言ってわからない。 不安じゃないと言えば嘘になる。 でも駄目なんだ。だからって、この気持ちを止めることなんかできないんだ。 「それなら、最後まで貫けるのか」 言葉にされて、ようやくわかった。俺は諦めたりしない。何があっても。 そのせいで自分が不幸になっても、周りのみんなが不幸になっても、俺はディアーナを諦めたりしない。 願うのは、ただ一つ、あいつの幸せだけ。 俺が身を引けばあいつが幸せになるなんて思わない。 たとえ二人で逃げたって、あいつを幸せになんかできやしない。 きっとディアーナに釣り合う立派な騎士に、いや、立派な男になってみせる。 好きだ、ディアーナ。誰よりも、何よりも、お前を大切にしたい。 幸せになろう、二人で。
冬コミ用に私が書いたレオシル創作の中にガゼルディアの話が入っていまして、そこからイメージして作ったものです。 だからいきなり隊長が出てきますが、本編の方にそういう場面があるんです。 これだけでも独立して読めるようにしたつもりですが、できれば本編「騎士の歌」も読んでくださいませ。 でもやっぱり、なんだか説明的ですね。反省。 |