決戦・番外
〜薄原茜太刀〜
(すすきがはらあかねさすたち)
 
 
 夕映えに赤く染まった一面の薄。 
 ざわざわと風に揺れるそのただ中に、ノーチェは立っていた。 
 高く結い上げた髪に、簪の赤い玉が夕日を浴びてきらりと光る。 
「必ず来ると思っていたわ、隊長さん」 
 右手に抜き身の刀をさげたまま、ゆっくり歩いてきたレオニスは、十分な距離を取って立ち止まった。 
 深縹の袂がはためく。 
 得物は名刀、獅子心丸。 
 数々の修羅場を共にくぐり抜け、今日も既に、幾人も斬ってきた後だ。 
「あなたと手合わせできて嬉しくてよ」 
「……約束は守るのだろうな」 
「ふふっ、シルフィスのことになると、さすがのあなたも平静ではいられないようね。もちろん、約束は守るわ。ただし、私に勝つのが条件よ」 
 ノーチェは不敵に微笑む。 
「もっとも、きれいごとの剣で私に勝てると思ったら、大間違いだけど」 
「……」 
 レオニスが、無言のまま刀を構える。 
 その目はノーチェを見据えたままだ。 
 刀身が夕日に映える。 
「本気の勝負よ、レオニス=クレベール!」 
 ノーチェもまた、鞘を払った。 
 右手に小太刀。左手に巻菱。 
 レオニスを見返す彼女も、その実、目は笑っていない。 
  

 くのいち対剣豪。薄が原の対決、この顛末や如何に。 
 


 

    この番外編は、本編の出だしを和風にしてみただけです。登場人物の描写が和服になってます。 
    キャラクターデザインのゆうきあずささんが出された私家版CG集に、和服の隊長のCGがありまして、そこから連想したものです。 
    ちなみにこのCGは、去年の夏からずっと、私の仕事用パソコンの壁紙になってますー♪ 
    全体の感想として「隊長と互角なんて、ノーチェって強いんですね」というメッセージをいただいたのですが、 
    違うんです!互角じゃないんです! 隊長は騎士団の3分の1以上を一人で殲滅して、なおかつノーチェと五分なのです。 
    残りの3分の2は、ノーチェが一人で倒したわけではなくて、大部分はガゼルみたいに騎士同士で戦ったわけです。 
    (ガゼルはラスボス=ノーチェに会ってません) 
    ハンディが無ければ隊長が勝つのです。作者が言うんだから間違いありません(爆) 
      
    全編を振り返って、ディアーナの活躍がなくてごめんなさい。あと、ガゼルとイーリスも。 
    この時、ガゼルとイーリスを登場人物としてまったく使いこなせなかった私が、後にガゼル本とイーリス本を出すんですから、不思議なものです。 
 
 
 
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