「ねえ、ガゼル。じゃんけんしよ。」
突然、メイがそんなことを言った。 「はあ?」 オレにはさっぱり、理解できない成り行きだけど、メイはとにかく急かす。 「ほら、いーから!3回勝負ね?」 「勝負って…何が?」 「はいはい、いくわよー、じゃーんけーん」 オレの言うことはまったく無視。
「はい、あたしの勝ちね。はい、2回戦。じゃーんけーんぽいっ!」 ちょきとちょき。 「あーいこーでしょっ!」 5回ほどあいこをくりかえしたのち、軍配はオレにあがった。 「むう。1対1ね。じゃ、ラスト!じゃーんけーんぽいっ!」 「ぱー」と「ちょき」。パーを出したのは、オレだから… 「よっしゃー、あたしの勝ちね〜。」
「いったい何なんだよ、突然。」
「・・・・もしかして、これ、チョコレートか?」
「うん、そだよ。一応、手作りなんだからね!」
「で、じゃんけんがいったい何の関係があるワケ…って、お前!
しかも、どーみてもバレンタイン用にラッピングされた、ケーキとおぼしき箱。 「だって、負けたじゃん。」
勢いよく言ったオレの前で、メイはべーっと舌を出して、言った。
メイがシルフィスと仲がいいのはわかってる。わかってるけど。 「なんで女同士でチョコやったりするんだよ?!」
そういって去っていこうとするメイを、オレは慌てて引き留めた。 「お前なー、オレはお前の恋人、だろ?」
…そういうの、選ばせた、とは言わないぜ、普通… 「もー。しょーがないなー。」
「・・・」
残されたのは、頬のくちびるの感触。 「・・・ま、いっか。」
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