「背中」  片加 凪様
ずっと、追いかけてきた背中がある。
大きくて、凛として、かっこいい背中。
「男」の背中。
それは、レオニス隊長の、背中。



オレ、ガゼル=ターナがレオニス隊長に出会ったのは、偶然だった。
今にして思えば、近衛の隊長は、街を巡回中だったのだ。
オレはまだまだガキで、病気で倒れた母ちゃんひとりも支えられなかった。
それを、助けてくれた、隊長。
その時から、オレの人生の目標は決まった。
「あの人のようになる。あの人のように強い男になる」と。

ほとんど無理矢理、騎士見習いになって、隊長の下に押しかけた。
隊長に剣を教えてもらえるのが嬉しくて、毎日が楽しかった。
少しでも近づきたくて、隊長を真似してさらしを巻いてみた。
隊長が着てるのと似てる紅い服を、着てみた。

でも、この頃、気がついた。
「外見だけ真似してても、ダメだ。」と。
 

剣の腕の強さだけじゃなく、心の強さも、騎士になるには…
そして、隊長のような「男」になるには必要なんだと、気がついたから。

そろそろ、オレはオレの「強さ」を見つけたい。

隊長に出会ったときは母ちゃんひとりも守れなかったけれど。
今度は…今度「大切な人」が出来たときには、自分の力で守れるように。
頑張っていこう、オレは、オレの道を。

ま、それでも、隊長がオレの目標であることに、変わりはないけど、な。

「隊長!手合わせしてくださいっ!!」
 

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