「そっとつつまれている」  片加 凪様

 今日は、休日。幸いにも天気は上々、出かけるにはもってこいの日だ。

「さて、と。急ぐか。」

 今日ガゼルは、実家に顔を出すのだ。
 家では妹二人をはじめとして、近所の子ども達が、首を長くしてガゼルを待っている。
近所の子ども達みんなに慕われている「お兄ちゃん」なのだった。

 待っているのは、ちびさん達ばかりではない。ガゼルの祖父母も、両親も、上の兄達も
皆、ガゼルを待っている。大家族のガゼルの一家は、そろって一人離れて暮らすガゼルを
心配しているのだ。

 たくさんの人に愛されて、たくさんの人を愛して育ってきた、ガゼル。
 だからこその明るさ、だからこその、優しさ

 家では、帰ってきたガゼルを家族が温かく迎えた。

 心尽くしの料理。
「ほら、もっとたくさんお食べ。」
「もう食べらんないって!うまかったよ!!」

 抱きついてくる妹たち。
「お兄ちゃん、遊んで!!」
「ああ、わかった!遊ぼうぜ。でも、その前に、片づけ手伝ってからな?」
「はーい!」

 食事の片づけも、家族で分担してやって。合間には久しぶりの会話を楽しんで。
「どう?訓練のほうは順調なの?ほんとに騎士になれそうなのかい?」
「あったり前だろ!!オレを誰だと思ってるんだ?」
「なに生意気言ってる、コイツ!!」
「あ、いてえよ兄ちゃん!!」
 小突きあいをしたりして。
 そのあとは、ちゃんと、約束通り、近所の子も交えて外で遊んで。

 そうして夕方になって、家族と別れ、ガゼルは戻る。
 今の彼の場所、騎士団へと。

「つらくなったら、戻ってもいいんだよ。でも、その前に、やれるだけは
やりな!あとで、後悔しないようにね。結果良ければすべてよし、
そこまではやれるだけ、踏ん張ってみな!!」

 家族の励ましを背に、ガゼルは日々訓練に精を出す。
 目指すのは、隊長のような立派な騎士。
 いろんな人のあたたかさに、そっと包まれて、今日も一日が始まる。

「よし、今日も一日頑張るぜっ!!」
 

ガゼルの部屋に戻る   凪さんの部屋に戻る   創作の部屋に戻る