「ねえ、キール。ここ、わかんない。」
「ん?どれだ??…ああ、これはな…」
なんだかんだと文句を言いつつも、結局キールは、人がいいんだよ。
今日は、キールの部屋に押しかけて、わからないところ、片っ端から聞いてるの。
はじめは、「そんなのもわかんないのか?」とか言われたけど。
でもね、ちゃんと教えてくれるの。
ふたりで横に並んで、あーだこーだと、言い合って。
いつの間にか、窓の外は日が落ちてる。
難しい課題、前にして。だんだん頭が下がってきて。
「おい、メイ?寝るなよ?」
「うーん…わかってるわよ…」
まぶたが、重くなる。キールがなんか、言ってるけど…よく、聞こえない…
「おい、メイ!」
「うう、寝かせてよ…」
「ここでか!?おい、起きろ!起きろって!!」
そうして。
キールは、動けなくなる。
肩に掛かる、優しい重み。
「まったく…」
つぶやく言葉と対照的に、その顔は、とても優しいことを、メイは知らない。
「…風邪、ひくだろ…」
「うん…わかってるってば…」
寝言でつぶやくメイの顔に、キールはつぶやき返す。
「…全然、わかってないよ、お前は。」
俺の、気持ち。
もうすぐ、日が暮れる。
「…どうするかな…」
キールは、優しく微笑んで、幸せそうに眠るメイを見つめた…