うたたね〜セイリオアスとディアーナ〜」  片加 凪様

 コンコン!
「ディアーナ、いるかい?」
ある晴れた春の日。
ディアーナと王都で再会して、2度目の春。
「どうぞ、お兄様。」
この春でディアーナも成人。
(今年中には、婚約するのかもしれないな、私も、お前も。)
そんなことを思いながら、セイリオスはディアーナを見つめた。
近頃、すっかり大人びてきた妹。
あとどのくらい、この可愛い妹をひとりじめ出来るのだろう。

「たまには、ゆっくりおしゃべりでもしようと思ってね。」
「まあ、本当に!?嬉しいですわ、お兄様。」
そうして輝く、その顔が見たくて。
(シオンにまた、笑われるな。シスコンだと。)
自覚しつつも、それでも来てしまう。

ゆっくりと、兄妹の時間を楽しんで。
そうしているうちに、ディアーナの頭が揺れはじめる。
「ディアーナ、眠いのかい?」
「ううん…大丈夫、ですわ…まだまだ、お話、しますの…。」
そういいつつも、どんどんディアーナのまぶたは下がっていく。

(昔を、思い出すな…)
まだ、離宮にいた頃。
小さなディアーナが、夜こっそりと部屋に入ってきて。

「ねむれませんの、お兄さま…。」
まくらを抱えて、こそこそっと、同じふとんにもぐりこんで。
「ねえ、なにかお話ししてくださいませ!」
きらきらと、瞳を輝かせて。
「…しかたないなあ、ディアーナは。」

あの日々は遠いけれど、今も変わらずお前は輝いているね。
今はまだ、お前の眠りを守るのは、私の役目だ。
あと、もう少しだけ。
お前の騎士に、その役目を引き継がせるまで。

 

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