甘い接吻
〜時代劇浪漫譚妖恋話−其之一〜
(Written by Peko さま)


 
シルフィスは奉公先の骨董品屋の店先で竹ほうきを手に掃除をしていた。この店に奉公するようになってはや6ヵ月。ここから遠くはなれた田舎町からやってきた時は不安でたまらなかったが、他の使用人たちはみんないいひとばかりだったし、この骨董屋の主人であるレオニスがなによりもよくしてくれたおかげでシルフィスは、この町で充実した日々を送っていた。
塵を一箇所に集め終わり、ほうきを動かす手を休め一息ついていると、店のなかから声がかかった。
「おーい、シルフィス。旦那さまがお呼びだ」
「はーい、今行きまーす」
シルフィスは慌てて店の暖簾をくぐり、ほうきを隅に立てかけると、着物の埃を払い店の奥へと消えた。
 
 

「シルフィスです。お呼びと伺いましたが」
「ああ、はいれ」
シルフィスは、すっと襖をあけ、膝をすすめる。きちんと襖を締め、奥に座る主の方に向き直ると居住まいをただした。この店の若旦那であるレオニスは、今日の店番は使用人たちにまかせていたので、落ち着いた紺色の着物を着流し、文机にむかってなにやら難しそうな書物を読んでいる所だった。レオニスは書物から目をあげると、襖ちかくにちょこんと座るシルフィスに視線をむけ微笑んだ。
「こちらへ」
とレオニスはシルフィスを手招く。シルフィスは何だろうと思って招かれるままにレオニスのとなりにまで近づいた。
「少しの間、目をとじていろ」
レオニスはこんなことを言い出した。
「???…はい」
シルフィスはレオニスの意図を理解できなかったが、それでもいわれるままに目をとじた。
すると、突然唇に何かがふれた。シルフィスはどきりとした。レオニスが触れているのだ。
「口をあけて」
どきどきする胸を抑えて、また言われるままに軽く唇をひらくと、その中に何か小さな物をほうりこまれた。口の中にほのかな甘さが広がり、おどろいてシルフィスは目をあけた。
「なんですか?これ」
レオニスはにっこりと微笑んで優しくシルフィスを見つめるとこう言った
「南蛮渡来の菓子で金平糖というのだそうだ。昨日、品物の買い付けにいったときにそこの御主人にいただいた。お前にやろうと思ってな」
レオニスは小さな小箱を手にしていた。箱のなかには色とりどりのちいさな粒がつまっている。シルフィスはその金平糖というものをしばらく珍しげにじっと見つめていたが、ふと顔をあげた。
「だめです、こんな高価なものいただけません。旦那さまが召し上がってください。」
「知っているだろう?私は甘いものはだめなのでな」
それでもその小箱をシルフィスは受け取ろうとはしない。
「大丈夫です。そんなに甘くないし、おいしいですよ。お一つ試しに…」
そう言った所、突然シルフィスはレオニスに顎をつかまれ、唇をふさがれた。
レオニスの舌が唇のすきまから分け入り、シルフィスの舌にからむ。シルフィスはとんとんとレオニスの胸をたたき、抵抗を試みた。だが、レオニスはシルフィスを離そうとしない。
「んんんっ…」
しばらくしてやっと唇が離れるとレオニスはにっと笑ってシルフィスをみつめた。
「甘いな…」
シルフィスは顔を真っ赤にして動揺した。
「だ、旦那さまっ!あ、味見なら御自分でなさってください……それに、だれかに見られたらどうするんですっ」
「別にかまわん。見つかったらすぐお前を嫁にもらうだけだ」
実はこの二人、この6ヵ月の間で、夫婦となる契りを交わすまでの仲になっていた。まだシルフィスが奉公の最中ということもあってまわりにはまだ秘密にしている。
そんなことを言われて、嬉しさのためか恥ずかしいのかさらにかぁーと赤くなって俯いてしまったシルフィスに、レオニスは顔をちかずけその耳元に囁いた。
「今晩は満月だ。月を愛でながら酒でも一杯やろうと思う。つきあってくれるな?…」
その言葉が意味する甘い秘め事に、シルフィスは身体が熱くなってくる。
「か、考えておきます…」
それだけ言うのが精一杯だった。シルフィスはレオニスの腕から逃れ、すくっと立ち上がると部屋から去っていってしまった。部屋に残されたレオニスはしばらく一人でくすくすと笑っていたが、ふとまだ手にしていた小箱に気づき、そこから金平糖をひとつつまむと口にほおりこんだ。それは先ほどの接吻と同じ味がした…。
 
 

おわり


 
作者の言葉

若旦那レオニスに影響されてこんなのかいちゃったよ。ただ文章力がないので、背景を時代劇っぽくかくのが難しくてできませんでした。想像力をたくましくして読まなくちゃわからん作品ですね。ちなみにこの作品の裏設定としてレオニス&シルフィスは隠密なのです。将軍さま(セイル)の。書けないので設定だけご紹介。
ところでこの話の続きだれか書いてくれません?(笑)


 
感謝の言葉

いつもいつもありがとうございます〜。おお、表だ(爆)。
続きってことは……ふふ、何を期待なさっているのです、Pekoさん。ふっふっふっふ(いいかげん笑うのやめたらどうだ私)。
ちなみに若旦那レオニスというのは、ある方が素晴らしく器用な手さばきで作られた、浴衣を着たレオニスの人形のことです。ちなみにシルフィスの人形もあります。チャットで話題になり、私は写真を贈って頂いてのけぞりました(爆)。まんまレオニスとシルフィスなんですよ。イベントでたぶん見かけられることでしょう。

さて、Pekoさんの意思を継いで(笑)、この続きを募集いたします。我こそはっと思う方はぜひ投稿してください。お待ちしております。

サブタイトルは勝手ながら私がつけさせていただきました。
 
 


 
 
 

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(注: 続きは夜創作です)
 

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