甘い接吻
〜時代劇浪漫譚妖恋話−其之三〜
(Written by Peko さま)


 

「旦那さま…起きていらっしゃいますか?」
襖の向こうから、遠慮がちな声がしたかと思うと、すっと戸を開けてシルフィスが顔を覗かせた。床に就きながらも灯りをまだ消さず書物を読んでいたレオニスが起き上がる。
「どうした…こんな夜更けに」
シルフィスは戸をしめ、部屋にはいってくる。その姿は着物を一枚きているだけのいわゆる寝間着姿だった。
「あの…今晩、お側においてくださいませんか…」
レオニスは突然のシルフィスの来訪とその申し出を不審に思い、読んでいた書物を閉じ脇において居住まいを正し、シルフィスの方に向き直った。
「どうした、なにかあったのか?」
そして心配そうにそう問いかけシルフィスの顔を覗き込んだ。やさしい青の瞳にみつめられ、俯いていたシルフィスは顔をあげると思い切ったようにこう言った。
「今日の昼間、メイに誘われて寄席にいったんです。今日は暑かったでしょう?だから涼みに今はやりの怪談話を聞きにいこうって。でも…実は私だめなんです、そうゆうの…。それでも、誘いを断れなくって聞いてしまったんです。ほんとうに怖かった…。」
しだいに話をするシルフィスの瞳が潤んできた。
「それで…夜になって暗い部屋にひとりになったらまた怖い話を思い出してしまって…、それに眠っても怖い夢をみそうだったし…」
だんだん声が小さくなってくるシルフィスの言いたいことをレオニスは察した。
「……で、ひとりでは怖くて眠れないのでここにやってきたと」
こくんと頷くシルフィス。レオニスはそんなシルフィスがかわいくてたまらなくった。
「わかった、こちらへおいで」
レオニスはやさしく微笑んでシルフィスに手を伸ばす。シルフィスがレオニスの懐にすっぽりと収まる。レオニスがその身体に腕を回すと、抱いた細い肩が小さく震えていた。
「よっぽど怖かったのだな」
「ここに来るまでも辺りは真っ暗だし…とても怖かった…」
シルフィスはきゅとレオニスに抱き着く腕に力を込め、その胸に顔をうずめた。
レオニスはそんなシルフィスの背中をあやすようにぽんぽんと軽くたたいてやる。
「よしよし、もう大丈夫だ。私がついている…」
「はい…でも旦那さま…夜が明けるまでこうしていてください」
抱き着くシルフィスの白いうなじが目につく。腕のなかで何かに怯え、小さく震えるシルフィスは十分過ぎる程レオニスを刺激した。
レオニスはくいっとシルフィスの顎に片手をかけ上をむかせると、深く口づけた。そしてもう一方の手をシルフィスの腰にかける。しゅるりと腰紐がとかれる音がしたかと思うと、シルフィスの身体はそのまま寝具へゆっくりと押し倒された…。レオニスは、はだけた着物の中に手を忍ばせ、やわらかなふくらみを包み込むと、その胸元に顔をうずめる。
「あっ…旦那さま…」
「シルフィス…朝までこうして抱いていよう。そうすれば怖いことも思い出さないし、怖い夢も見ないですむ、いいな?」
「はい……ぁはっ」
レオニスはシルフィスが他に何か考える暇を与えない程、激しくシルフィスを愛した…。
 
 

シルフィスがレオニスから開放され眠りについたのは、もううっすらと夜が明け、シルフィスが怖がるものがなにもない朝になってからだった。
 
 
 

おわり
 
 


作者のコメント
また書いちゃったわ、若旦那もの。今度は裏にしようと頑張ってみたけど、こんなものに
しかならなかった…やっぱりこの設定で書いていくのは難しいかも。

 
感謝の言葉

な、なんかシリーズ化してるぞおい……(笑)。
なかなかに評判がよろしいこの時代劇編レオシル。これからもっともっと増えたらどうする?私はうれしいだけだけどね(笑)
私も書きたいけど書けないよ〜。知識ゼロだから……(爆)。
しつこいけど、続ける?誰か続き書いてくれますか?くすくす。
ありがとうございました!


 
 
 

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