ABU 444 と Cardinal4の比較分解図はこちらです。

ABU 444(佐久間邦雄 所有)

マルチプライヤーリールの印象が強いABUですが、Cardinalに代表される
スピニングリールにも味わいのあるモノが少なくありません。

ABUのスピニング第一号機はRECORD 500だと言われています。
1950年代の初めに登場したRECORD 500はすでにリアドラグシステムを
搭載し、シリーズはその後600、700が作られました。

RECORD名のスピニングリールは1954年のRECORD700が最終ですが、
そのRECORD 700の次期モデルとして登場したのがABU444です。

初期型はそれまでのRECORDを踏襲したブルーグレーのハンマートーン仕上げ
でしたが、1959年からは写真のブラック&ベージュのツートーンになります。

極めて美しいそのスタイルとクロムメッキ処理された金属パーツが
アールデコ的な雰囲気を醸し出していますね。
今だったらグッドデザイン賞は間違いないでしょう。(笑)

この時点ですでにクリック式のスムーズなリアドラグを備え、
ハンドルはノブのみですが可倒式、ラインローラーも回転式、スプールは
プッシュボタンによりワンタッチで着脱可能など後のCardinalシリーズに
受け継がれる優れた機能をすでに備えていました。

内部構造はCardinalのウォームギア方式とは異なり、Mitchell(ミッチェル)
に近い構造ですが、Mitchellのシステムである遊星ギアは備えておらず、
至ってシンプルなメカニズムです。

それでいて不思議なことにCardinalより回転時のブレは少なく感じます。
ABU444はその後1965年に444Aとしてマイナーチェンジし、同年には
Cardinal66も発表され、 日本でのスタンダードである
Cardinal44が1969年に登場した後もしばらく生産されていました。

ABUという大メーカーのもう一つの側面を伺い知ることができる
傑作リールだと思います。
(ABU 333が存在しますが、444の大きさ違いではなく444の廉価版です。)