〜〜MBR-08とその時代〜〜





MBR-08シリーズの開発は2000年春に遡る。
臨時統合政府、海軍/陸軍は前年のエイリアンシップ墜落事件に
伴い、来るべき地球外生命体との戦闘に備えて兵器メーカー
各社に対異星人兵器の開発を秘密裏に発注した。
海軍/陸軍共同であったのは、将来的に各軍の対異星人
ブロックを宇宙軍として統合する予定であった事と、
落着したエイリアンシップの実体が人類の想像を
超えたものである事が明らかになっていくにつれ、
従来兵器のアップデートでは到底、解決できるものではなく、
いまだ解析途上に過ぎないOT技術を無尽蔵に投入しての
開発となる事が予想され、予算の効率化と広く技術を
募り、メーカー相互の情報交換を臨時統合政府が奨めたためであった。

かくして従来の兵器メーカーはもとより工業メーカーをも
巻き込んで対異星人兵器の模索が始ったのである。
当初の仕様要求としては次のようなものであった。

*地球の一般的な地形に対応した陸戦兵器であり、
都市を含めた地上への侵攻に対してこれを防衛し、
異星人が地球上に駐屯した場合には敵圏内に侵攻
することが可能であること。また副装備併用、
または無オプションで大気圏外での使用も考慮に 入れる事。
*身長10mの巨人兵士の搭乗した二足歩行兵器
(別資料、AWVS-0001と0002を参照のこと。
以後巨人兵器と呼称。)と同等または勝った移動能力を
有する陸戦兵器である事。
(実用化可能なOT素材、OT反応炉などの予測スペック表
2000-3-28版を参照の事)
*巨人兵器0001、0002を破壊できるだけの武装を備え
それに伴う索敵、照準システムを有すること。
(武装に関しては、現時点で実用化可能なOT応用兵器の
予測スペック表2000-4-9版を参照のこと。)
*なお仕様要求はASS-01(エイリアンシップ01、のちのSDF-1)
の解析に伴い、追加されることが予想されるため、各メーカーには、
急変する仕様要求に対応可能な柔軟性のある開発が望まれる。

なんともはや無責任な仕様要求があったもので、
発注元の軍側もいったいなにを作らせればいいのか皆目見当が
付かない状態であったことがよくわかる事例である。
同時期に統合軍次期戦術戦闘機(後のVF-1)の仕様要求が
示されているがこちらは従来兵器の延長であるだけに
多少は具体的な仕様要求となってる。
ちなみにこの仕様要求に示された巨人兵器0001は
2連ビームキヤノンをニ組備えた二足歩行兵器で、
(いわば監察軍方言のリガード)
0002は固定武装を備えない巨人用倍力服
(これは監察軍方言のヌージャデルガー)であった。
実際これではメーカー側も手の付けようがなく、
ASS-01の調査現場のすぐそばに位置する
復元巨人兵器実験用の大型演習場の一角に
建てられた会議室おいて、毎晩のように
調査結果報告と分析結果をメーカー技術者と軍関係者、
調査員達がディスカッションするという状況が数週間に渡り
続く事となった。

数週間の後、各メーカーが目指したのは前述のニ機種のフルコピー+a
であった。様々な生物学/工業学/戦術学/人類学にいたるまでの
考察がなされた結果は「あれで戦争してるんだから、こっちも
あれで立ち向かえるはずだ。」であった。実際、ASS-01から
得られた情報はあまりにも断片的であり、限られた時間のなかで
仮想敵である巨人の戦略や戦闘の実際、戦力の全貌を推測するのは
到底不可能であり、関係者を納得させるだけの独自のプランが成立しなかったのは
当然と言えば当然であった。
ここからそれぞれにメーカーがペーパープランを展開し、
0001に範を取ったグループはより大型化/大火力化へ向かい
やがてHWR-00系に収束し、0002を基礎としたグループは
倍力服のコピーとともに巨人そのものの身体能力の再現を基本として
開発を行っていった。これより2年間の間、幾多のメーカーが
ドロップアウト、相互の技術協力から合併、分裂を繰り返し、
仕様要求もまた猫の目のごとく変化したが、2002年に到り、
幾つかのおよそ実用化可能な現実的なプランがまとまっていた。

*DR-X-04/08 ビガース+クラウラー案
(現在のトマホークとアローと呼ばれた2種の機体。両腕を含むウエポンベイと
下半身と胴体、頭部を含むメインユニットをカセット式で交換できる機体。
04系は早い時期に量産が決定し、後に対空型/ミサイル特化型のディフェンダー/ファランクスを生む。)

*DR-X-06 センチネンタル案
(軽量、細身の機体ながら全身にミサイルベイを備えるのが特徴。長らくペーパー
プランとして基礎技術の確保が模索されたが後にVF-1計画と統合、
VF-1のバトロイドモードとアーマードオプションに大きな影響を与えた。)

*DR-X-07 クランスマン案
(現在のスパルタンに繋がるプラン。)

さて本稿の主題である08系であるが、04系とジョイント部を共通サイズとし、
状況に合わせて両腕とウエポンシステムを交換できる総合システムであった。
これは既得の技術で得られる最大火力を備えた重装型と
(倍力服を装備した)巨人により近い動作を可能とする両腕を備えた軽装型
(将来、巨人との接触があった場合に敵武装を鹵獲して早急にコピーあるいは
そのまま使用する可能性が真剣に考えられていたことも影響している。)
のニ機種であったものを仕様要求の絡みから半ば無理矢理に統合したためであった。
04/08系はその初期よりハイテク義肢/レジャー用AIロボットの開発に長けた各種日系
企業との技術提供を受けて、慣性制御システムの補助なしに自立し歩行、走行すること
を目指して開発が薦められたが、等身大の技術がそのまま10mクラスに応用できるはずもなく
初期の歩行実験体の開発は難航した。数ヶ月の改良と軽量化が行われたが歩行には至らず、
自然自立走行を諦め、慣性制御システムの導入に踏み切り、
この時点で安定した動作がえられていた中洲重工業製ドーム型4ピース質量相殺機2002を
補助動力としてようやく歩行に成功する。本来04/08系は同一のメインユニットをベースに
2種のウエポンシステムを持つ予定であったが、この歩行実験の延遅を見たビガース/クラウラー
両社は歩行ユニットの共有化を諦め、機動力を犠牲にしても決して倒れることのない04系と
重火器の使用制限と歩行の安定性の問題があっても機動性を優先した08系に
(歩行制御の電算システムに改良の余地が残っていたため08系は廃案とならなかった)
分化して開発が薦められた。結果、04系は歩行とは言いがたい鈍重な機体となったが
(実際にはMK-4への改良時に質量相殺機が新型となり大幅な機動性向上が見られたが
それでも04系の鈍重さはご存じの通りである。)主武装であるPBG-11(前述0001の主武装である
ビームキャノンをフルコピーのうえ大口径化したもの)が予想外の性能を発揮し
陸軍は早々に04系の採用を決定してしまう。特に2005年に行われた。
模擬戦闘では仮想巨人兵器(従来ヘリに慣性制御装置を搭載して0001と同レベルの機動力を
再現し0001と同等のビームキャノン*2を搭載したもの。ドローン。)2機を相手に、
ほとんど移動する事なく敵ビームを弾きながら数分で粉砕し、非常に高い評価を残している。

これに対して、08系は幾度かの設計修正と歩行ロム改良の末、2005年にようやく試作機の完成を
見た。04系と同一の原動機にくだんの慣性制御システムを併用、コクピットは胸部で、
緊急用に有視界のグラスパネルを持ち、通常は頭部に備えた複合レーダーシステム
(魚の目状のカメラアイ)と頭頂部の伸縮式キューポラの光学システムで視界を
得ていた。両腕となるマニピュレーターは義肢テクノロジーを駆使した高価なもので
試作された実体弾兵器(78mmアサルトライフル状の武装)のマガジンの交換すら
易々とこなした。ただ、機体重量の制限から04系ウエポンユニット使用時には右肩のロケットランチャー
と左肩のサーチライトを除去しなくてはならない上、走行速度は12km/hに制限されるなど
互換性の利点が形骸化しており、開発側も04系とは別の高速機動モデルとしての生き残りに
活路を期待していた。(これに合わせてトマホークはMK-5以降、08系との互換性を廃止して独立した
機体になっている。)というのも、この時点で08系単体では(当時としては非常に高速の)
時速60km/hを超える歩行速度を備えていたし、固定武装のロケットランチャーも
左右に3機ずつ、計6発をバランスを取りながら分割配置することで
04系には及ばないもののかなりの火力を有していた。また主武装としてPBG-11を
軽量、短縮して(プラズマコンデンサーを小型化、機体内部に分割装備、ビーム収束リングを
小径化、連続配置した。威力は2/3程度、射程は縮まったが、速射性に勝る)サブマシンガン型とした
ビームキャノンも携帯しており、正式採用に大きな期待がかけられていた。

試作機の能力に気をよくした陸軍は08系に8機の追加試作の許可を与え、さらなる改良を
指示した。正式採用は決定したかに思われた。
が、そこへ現れたのが07系、いまで言うスパルタンであった。
実はプランが想起された2002年から2005年までの間、07系はお笑いぐさの
計画と見られており、とても実用化か可能だとは誰も信じていなかったのである。
「時速100km/hを超える機動性。マニピュレーターにOT超硬素材を用いて物理攻撃をメインウエポン
(要するに殴ったり突いたりすること)とする」など当時の開発関係者は
首を傾げる内容であり、特に歩行に関して並々ならぬ苦労をした04/08系
技術者にはなおさら冗談にしか見えないものだったのである。
政治的にもビガース/クラウラー両社は人型ロボットに関する技術のほぼ全てを
掌握しており、これ以外の企業が重心の高い人型歩行システムを一から構築できるとは
考えられない情勢だったのである。実際2005年
に公表された完成予想図を見たほとんどの技術者は「これは走るどころか
一歩も踏み出せないだろうし、踏み出したが最後、ひっくり返った亀の如く
手足をバタバタさせるのが関の山。」と口を揃えて語ったものだった。
確かに07系の下半身は見るからに可動範囲も狭く、重心も高いため
とても高機動を期待出来るような外観ではないことに加えて、
その開発が人目を避けるように行われたこともありこのような
風評を呼んでいた。なかには「07系は一般向けに各種デストロイドを
隠蔽するための(とても信用できないデタラメな)フェイク情報らしい。」
と いう噂まであり、半ば本気で信じられていた。

そんな07系試作機がトレーラーに乗せられ、模擬戦闘のために大型演習場に
現れたのは2008年2月のことであった。
これに受けて立ったのがすでに改良型となっていた08-MK-2(追加試作7号機)であった。
これは胴体腹部にレーザー機銃を追加した実用モデルで、
歩行ロム強化で速度は70km/hまで向上し、
背面バックパックには化学燃料併用のジャンプ用スラスターを装備し
平面上だけではなく上下方向にも豊かな機動性を誇る
量産直前の完成モデルであったのである。
ビガース/クラウラー両社はこの模擬戦を正式採用前のセレモニーと考えていたし、
見物に来た各社の技術者も質の悪い冗談であることを確かめるべく集まったというのが
偽らざるところであった。ちなみに未確認情報ながら模擬戦にあたり不心得者が
08と07でどちらが勝つかの賭けを密かに行おうとしたところ、
1869対6となり賭けが流れたとの噂も聞かれている。

当初この模擬戦は戦闘ヘリ改を仮想敵としたスペック比較で行われる予定であったが
07系開発者の申し入れを08系開発者が受け入れ、軍関係者がそれを承認したため
直前になって 直接の格闘戦の形式に変更された。実弾こそ用いないものの
いきなり実戦さながらの模擬戦となったのである。
模擬戦は数分で終了した。スタートから予想に反して高速で移動を開始した07は
08のビームマシンガン(模擬レーザー照射装置)の掃射を軽々と交わしつつ接近。移動しながら
クロー攻撃を放ち、08のマシンガンを無力化した。メインウエポンを失った08に
07は更なる攻撃を加えようとしたが08はスラスターを吹かして上空へジャンプして回避。
が、空中での積極的な姿勢制御ができるわけでもなく放物線を描いて落下するのみ。
すみやかにターンを終え、砂塵を上げながら落下点に向かう07に、
08は残りのロケット砲弾(模擬弾)を発砲するが07はガンクラスター機銃でこれを撃墜。
(一説には事前の協議でその余裕からか08側のロケット弾の使用を08開発者自ら禁じ手と
したのだが、パニック状態に陥ったパイロットが これを無視して
使用したと言われている。)一度着地した08は再び大きくジャンプして間合いを
広げようとするが。時速100数十キロで疾走する07は落下点に余裕をもって到着、
落下してくる08の右足を粉砕して模擬戦を終わらせた。これを冷ややかに見ていた
07の主な開発者6人は歓喜の声を上げる事もなくニヤリと笑ったと言われている。

じつは07系の移動は歩行というには語弊のあるものであり、
(ちょうちんブルマと揶揄された)ドーム状の股関節部がそのまま12ピースの質量コア
を備えた大型の慣性制御機になっており、慣性制御を左右前後への移動にまで、
積極的に用いた機動システムだったのである。従って脚の動作は
機動にほとんど関係しておらず、(ブレーキと武器使用の足掛かりには関係している。
ちなみに開発途上の資料を見ると胴体下には足の代わりに事務用イス状のコロを装着して
長らく実験が繰り返されていたようだ。)同時に不整地でも地形の影響を受ける事なく
高速で走行が可能なものだった。これは人型歩行技術を封殺され、
ノウハウを得る事ができなかったセンチネンタル陣営の苦肉の策だったのである。
もちろん主機の発生する動力のほぼ全てを機動のために消費され、大火力のビーム兵器や
レーザー兵器はとても搭載不可能な機体となったがすでにこの時期には
従来兵器とOTテクノロジーを組み合わせたOT実体弾系兵器が次世代の主役となることが
予想されておりビーム兵器が禁じられることが開発の障害になることはなかった。
かくして07系は後日、正式採用が決定され、後に対空砲座の追加と機構的に不安定であった
複合銃眼システムを有視界+独立ガンカメラに改め、量産の運びとなった。
対して08系は試作機+8機の追加試作型を最後に正式採用されることもなく開発保留のまま
ボトルザー戦を迎える事となった。この後、9機の試作機のうち1号機は再び申し入れた
07との模擬戦において開始直後に爆発事故を起こし消失している。
噂ではにわかに機動性を上げるべく慣性制御装置をオーバーロードしたためであるとか
背面スラスターをいきなり臨界使用したためとか、安全の確認できていない新型プロペラントを
用いたためである等、諸説あるが今となっては真相は闇の中である。2号機はアラスカ統合軍本部
に展示され穏やかな最後を遂げたが、3、4号機は延遅するVF-1バトロイドモードの開発の
叩き台として原型をとどめない加工を受けたのち、使い潰された。
(結果VF-1の歩行システムは07系と08系のハイブリッドシステムとなっている。)
5、6号機は正式採用をあきらめきれないビガース社によって非公式に開発を継続したが日の目を
見る事はなかった。また量産8号機は前述5、6号機の部品取りに用いられた後、長らく格納庫に放置され
不可動状態であったが、2009年VF-1発表前の情報リークとしてエクステリアをFRPで擬装された
状態でこれ見よがしに市街地を繰り返し輸送され、密かな話題作りに貢献した。

追記:先日、08系の試作0号機がマクロス艦内で発見され一部歴史研究家の話題となっている。
これは8機の追加試作ののちマクロス艦内へ巨人が侵入した場合のシミュレーションの
為にビガース社から借り出され、艦内を歩き周らせた後、動力系のトラブルが発生し、
回収修復を待つうちに、冥王星フォールド事件に巻き込まれ、そのまま未確認区域に
放置されていたものらしい。ボトルザー戦前の地球の工業技術を知る良い史跡として保存を求める声が
上がっているが、筆者も強くこれに同意する。


〜〜モデラーズコモンセンス誌2025年6月号「特集・デストロイドとその興隆25年史」より抜粋。

ロドリゲス注:マクロスゼロは考慮にいれてません。公式設定とも無関係な捏造ですので
御理解のほどを。

作例解説:使用キット 1/100トマホーク、1/100ガウォーク*3、1/144HGUCジムコマンド
 1/72ガウォークの一部パーツ。元デザインはパーフェクトメモリーの初期稿のから。
 採寸的にはMBR-04-MK-4 と互換性を維持。サフ吹き、未彩色。

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