*プロメテウスの半潜水機能についての考察。


 実のところ現在にいたるまでボトルザー戦以前に開発された兵器の
多くはその詳細が詳らかになっていない。戦乱の混乱と情報の損失から
開発の詳しい経緯、開発思想はもとより三面図すら存在しない場合も
少なくない。いまだ民間では現役に留まる名機「VFー1」ですら、
ボトルザー戦後は保守部品の増産のために稼動している機体から
再びパーツの図面が起こされたほどだ。ボトルザー戦は地球各地に
散在した兵器メーカーの本社から工場、地方の営業所にいたるまで
焼き尽くしたのである。文明はこの時一度滅んだとも言える。
 そこで本稿の本題であるプロメテウスである。

超大型空母 プロメテウス CVS-101

言わずもがな450機以上の戦闘機を抱える超大型空母にして
SDF-1マクロスの左腕であり通常原子力空母の最終世代である。
艦そのものはマクロスシティーにそびえるマクロス艦の一部
として今も子細に見ることができるし、地球に定着してからの
記録も残っているため構造と機能についてはよく分かっている。
一時はその存在すら疑問視された「キャッツアイ」「VF-X-3」等、
一連の「大戦前の幻兵器」群に比べれば遥かに明白な存在なのだが
 問題は多くの文献で語られている「半潜水能力を有す」と
いう部分である。 つまりこの船は沈むのである。これについては
上空、それも衛星軌道上からの索敵に対してのステルス性を狙った、
とされるのが一般的な見方となっている。とはいうものの、
当時の空母の運用形態は水中の目としての潜水艦、防衛システムとしての
イージス艦等を随伴して艦隊を構成している関係上、空母が潜水するなら
他の艦船も潜水させる必要がある。なにより潜水して(たとえアイランドだけを
水面に出したような深さの潜水であっても)巡航できなければ意味がない。
確かに喫水線以下を見れば船体の前後左右に潜舵らしきものは
存在するし、後に宇宙空間で使用された時もその防水性の高さが
非常に有効だったという報告も残っている。ただ沈むだけなら話は
簡単なのである。バラストタンクに注水して潜舵をひねって
前進すればどんな姿勢になるにしろ水面に没するのである。
しかしプロメテウスはそのあと水中でマトモに進むことが
できないのである。アングルドデッキを備えた左右非対称の甲板と
ホーンまがいの爪、と、およそ水中での移動を考慮しているとは
思えない構造だ。これを裏付ける資料が見つかっている。これは
ボトルザー戦当日、大平洋上にいたCVS-102ペルセウスの乗員の
残した記録によるものである。ちなみにペルセウスはプロメテウス級の
2番艦で一部の武装を除いてプロメテウスとほぼ同型である。
「、、、上空にVEFR-1(哨戒機)を二機上げ、本艦とでデータを解析している
ときでした、本艦の索敵可能域だけでもただ事でない数の機体が出現
しているのが分かりました。直後にそれをエラーとする大本営発表が
ありましたが我々は提督から内々にグローバルレポートを見せていだだいて
いましたのでなにが起こったのかは分かっていました。すぐに退避行動を
起こす判断をつけましたが、数分後に上空からビームの雨が始まりましたので
やむなくVEFR-1を残したまま就役以来初めての潜水行動に入りました。
艦は艦載機発進のためかなりの速度でしたので急速に減速し
ダイブしたのですが、減速が足りなかったのか船体がバランスを失い
(広く平らな甲板を持つ潜水体ゆえ姿勢制御がセンシティブであったらしい)
50度ほどの前傾状態になったため、手動で姿勢を取りなおしましたが
その間も船体のコントロールは不自由でした。
(このあと上空に残した哨戒機に言及のため中略)浮上して立て直すのが
手順だと思いましたが、断続的に入ってくる哨戒機からの情報では
とても浮上できる状況ではなく、沈み続けないようにするのが
ようやっとでした。すでに深度はマニュアルに示された緊急限界深度を
遥かに超えており、一部格納庫は浸水し始めていました。ただ逆に
その深さゆえときおり届くビームにも致命的な損傷を受けなかったようです。」
このあとペルセウスは急激に蒸発する海中をうつろに沈み続け、結果として
難を逃れ、後に改修/修復された後、月面上で放棄された建造途中の旧メガロード
船体と接続されマイクロス級一番艦、ヤジロベエの一部となった。
(しかるにCVS-102/103はボトルザー戦で失われたというのは
102に於いては正しくなく、戦後早い時期に艦籍が消滅したというべきである。)
またこの文献では潜水モードのマニュアルについても言及が有り、
「、、、あとで分かったことですがプロメテウス級空母に配付された
マニュアルの記述はダイダロス級のそれと全く同一であり、3隻ある
プロメテウス級(CVS101〜103)でボトルザー戦以前に潜水艦行動を
実際行った船もなかったということだそうです。」と括っている。
ここでプロメテウス級の開発前後についてわかっていることを記述してみよう。
前述の通り最後の通常原子力空母であり、これ以降の空母は現在の標準である
OT反応炉に変わっており、同様に半潜水能力もこれ以降の艦では廃止されている。
(もともと実用レベルの潜水機能を持つダイダロス級の発展系である
新ダイダロス級は航空機射出能力を有するがこれはあくまで高いSTOL性を持つ
VF/VA系に限っての運用であり、限り無く空母に近付いてはいるが、
純粋な空母とは分けて考えるべきであろう。)加えて前述の通り、開発、運用側も
プロメテウス級の潜水能力を実用と考えてはおらず、テスト稼動すら行っていない
ようだ。これと対称的なのが同時期に開発のダイダロスであるが、こちらの潜水能力は
非常に高く、海中でも見た目とは裏腹に安定したパフォーマンスを発揮している。
開発は旧日本エリアの八洲重工業造船で、ダイダロスの造船技術がそのまま
プロメテウス級の船体構成に流用されたとされている。実際、プロメテウスの
喫水線以下はほぼそのままダイダロス級のそれであるし、推進システムほか
動力も全く同一である、いってしまえば途中までダイダロス級を建造して
上だけ空母にしたのがプロメテウス級なのである。(ちなみに
冥王星フォールド事件後に建造された後継空母、シナノ級2隻は船体/動力ともに
完全な新設計となっており、潜水機能も有しない別の艦船である。)
 そこでここからは筆者の憶測であり、あくまで推論でしかないことを
あらかじめ断っておく。まず結論からいえば、「プロメテウス級空母はダイダロス級の
3番艦〜5番艦だった。」である。この結論に至った理由はいくつかある、前述の
ダイダロス級との共通性、実用性のない潜水機能。そしてもう一つの理由として
デストロイド系とVF系の開発の経緯を示してみたい。
 当初、来るべき異星人との戦闘に向けて何を主力兵器とするかの議論があり、
その結果として大別して3系統の兵器を開発することとなった。一つ目は
回収した監察軍方言のグラージ/リガードを出発点とした火力主体の
大型兵器=モンスター系。2つ目は監察軍方言のヌージャを出発点とした
倍力服相当の能力を持つ人型の兵器。
そして後者はさらに2分化し固定武装装備のデストロイド系と軽装で武装を
持ち替え可能な汎用性の有るバトロイド系。そしてバトロイド系は航空機と
結びつき、VF系 に発展する。これら3系統に絞って開発が行われたのだが
ちょうどダイダロス/プロメテウスの建造が具体化した頃、
当初本命とされたVF系は数年に渡り開発メーカーを換えながら全く完成の見込みがつかず、
いわば保険として開発されたデストロイド系が先に実用レベルに到達していたのである。
つまり先の見えないVF系兵器の為に巨大な入れ物を建造することを躊躇し、
見込みのついているデストロイド系の入れ物を代わりに建造(または当初、
空母で建造していてもいざという時にデストロイド系の入れ物に転用可能な
ものを建造)したのではないかというのが筆者の論旨である。
これを裏付ける資料として長引くVF開発に対して年度末の予算会議では
VFの実用性と対費用についての会議が必ず会期延長で行なわれた記録が残っており
一時期はVF計画継続事体が問題視されていたことが理解できよう。
このほかダイダロスに関してはダイダロス戦隊とでも言うべき大規模な部隊編成の
計画記録が残っている。これは増産したダイダロス5隻(まさに本論はこれによる)を
空中戦艦化し、足の短い(というかVFと比して全く航続距離のない)デストロイドを
場所を選ばずに降下させようというのだ。いま考えれば荒唐無稽というほかなく
非効率の極みであるが、当時は慣性制御システムの開発過程であり、実際のそれより
遥かに大きな効果が期待されていたのである、また「空中ダイダロス計画」の
前座として「ミズーリ空中戦艦化計画」があり、こちらは実際に
「全米ライフル協会、全米退役軍人会」と呼ばれる
民間団体の資金提供によって推進され、モスポール状態の戦艦ミズーリが現実に離床し
戦力として艦籍を回復している。ちなみにこの計画は慣性制御システムの研究開発を
民間資金で進めるための政策で旧戦艦の「ミズーリを統合軍旗艦としよう!」を
合い言葉に、関係団体からの資金を募ったもの。幾多の人命と多額の資金とひきかえに
慣性制御システムの進歩が得られ、システムの量産にも成功したが、ミズーリそのものは
ようやっと離陸したものの形式的に艦籍を与えられたのみでそのまま店晒しにされた。
ボトルザー戦の直前にあわてて予備役として艤装が行なわれ、再び離床しボトルザー戦
の数時間をビームの嵐のなかを逃げ回った。蛇足ながらミズーリが順調に空中戦艦化した暁には
続いてニュージャージーを航空機戦艦化(航空戦艦ではなく、自身に翼を増設して航空機化する
計画)する「NJ号計画」が予定されていたが、システムの暴走でミズーリの船体の前半1/4が
126名の命と共に虚空に消滅した段階で立ち消えとなった。かように艦船の空中要塞化
がにわかに現実を帯びた時期が有り、これを持ってデストロイドを運用しようとしたわけである。
実際のダイダロスの艦首大型ハッチが最大開口すると艦船としては全く実用性のない
艦底の高さまで下ろせる構造となっているのはこの計画が考慮されていたためにほかならない。
(もしダイダロスが艦船として砂浜などに艦首から接岸すればそれは海岸に打ち上げられたと等しく、
二度と動けなくなる。)結果としてこれら計画はVF系が実用化され、予想以上の汎用性を
発揮したため見送られ、ダイダロス3〜5番艦は空母化されたのであろうというのが
筆者の結論である。

追記:本論では言及されていないが空中戦艦ミズーリは戦後宇宙戦艦化されヤジロベエの
指令ユニットとして接続され、艦籍を消失したという説有り。地球復興の影の立役者である
ヤジロベエの数奇な運命に関してはまた別稿にて。

〜〜モデラーズコモンセンス誌2048年8月号「特集・幻のプレ大戦兵器」より抜粋。






注:例によってただの妄想だからくれぐれも本気にしないように。
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