音色(2)
〜 バランスによる音色の変化 〜

今回はバランスによる音色の変化についてのお話です。様々なケースが考えられますが、まずは基本的なハーモニーで実験してみましょう。


音楽は横の繋がりでできていますが、とりあえずそれは置いておいて、この1和音だけで実験してみることにします。考えられるバランスは無限にありますが、とりあえず3種類ほど試してみましょう。響きを感じるために、必ずダンパーペダルを踏んでください。

1)すべて同じ音量で弾く。
2)ソプラノだけを2倍の音量で弾く。
3)バスだけを2倍の音量で弾く。


まずは、自分でどのような音色に感じるか・・・。たくさんたくさん響きを聴いてください。2と3の実験は、2倍の音量でその音だけを強く弾くと思うより、それ以外の音をピアニシシモで弾く・・・と思って弾く方がいいかもしれません。明らかにその音だけ浮き立って聞こえるように弾いてください。ただし、そのとき注意して欲しいのは、汚い音にならないようにということです。押し付けて弾かずに響きを解放させるつもりで弾いてみましょう。この実験は、とてもとても楽しい実験なのです。響きに包まれるような気持ちで弾いてください。

それぞれ特徴があったのでは・・・と思います。1)は、ぼやけた感じ。2)は、1)に比べてかなりクリアな音色に感じます。そして3)は、2)の冷たさにくらべ温かさを感じますね。特に私は、2)と3)に温度の違いを感じます。みなさんはいかがですか?

もちろん考えられるバランスはこれだけではありません、2倍だけと言わず、微妙なさじ加減を考えると、音色の数は無限です。でも、まずはこの3種類を今練習している曲でいろいろ試してみてください。ちなみに、私はこんなときに、この3種類を使用します。

1)ぼかした和音にしたいとき。ソフトな音色が欲しいとき。まるで霧に包まれたような雰囲気を演出することもできますし、他の音を惹き立てることもできます。pで使うことが多いです。もちろんp以外でも使いますが・・・。

2)クリアな音が欲しいとき。冬のこごえるようなハーモニーを演奏したいときなども、このバランスを使います。また、突き刺すような刺激のある響きが欲しいときにも、このクリアなバランスを使います。pでもfでも、結構頻繁に使うバランスです。

3)バスの響きは、とても大切。ということで、常にこの響きは感じていたい音ですが、特に幅のある音楽にしたいときは、この音を重みのある深みのある音で演奏します。また、温かい温度を感じたいときもバスを響かせるように弾きます。もちろん、重みのある力強い音を演出したいときも、バスは重要です。こちらもpでもfでも使います。

では、ここで少し具体的な例を・・・。単純に話を進めるために、左の伴奏だけの例を2つ挙げようと思います。まずは、ブルグミュラーのアラベスク冒頭です。



ここはpで演奏される、すごい緊張を感じるところですね。遠くから何かがやってくる。何なのかはわからない。このスタッカートとpからくる緊張感は、4分の2拍子という拍感によって最大限に生かされます。では、この緊張を感じる音色。どのような音色で演奏しましょう?この場合考えられるのは、1の指のバランスです。2種類やってみましょう。一方はすべての音を同じバランスで。もう一方は1の指だけを強く、それ以外は極力弱くというバランスで。

正直どちらのバランスがよい・・・とは言い切れません。2拍子を感じ、スタッカートを間延びさせずに短く切って緊張感を保っていれば、どちらのバランスでもよいと思います。ただ、緊張感を出して演奏しやすいのは、1の指をしっかりと保ち、他の音は極力弱くする方だと思います。こうすれば容易にpになりますし、キリリとした音色により緊張感のある音楽に感じやすいのです。

では、すべての音量を同じにしたらどうなるでしょう?例えば、この部分を霧の向こうに包まれたミステリアスな緊張感にしたかったらどうでしょう?極力弱い音で、短いスタッカート。そこにタッタッタッタッという音がどこからともなく聴こえてくるのです。そして、3小節目でちらちらと姿が見えてくる。姿がはっきりと見えてくるにしたがって、音色をクリアにしていく・・・。面白いでしょう?ただ、こちらはかなぁり高度なテクニックですね。

次にブルグミュラーの「むじゃき」を見てみます。



ここでは、2小節目の和音に注目してみましょう。さて、どういう音色にしましょう。私が思いつくバランスを2つ挙げてみますから、是非ご自分に合った音色を見つけてみてくださいね。(もちろん、これ以外にもたくさん考えられると思いますよ。)

1)1拍目の1の指だけを出し、続く2つの和音はすべて同じバランスで。
  この音色は、最初の音だけクリアに表現し、残りの2つはぼかしてデクレッシェンドという表現です。1拍目のハーモニーが豊かに響き、2,3拍目でデクレッシェンドしていきます。

2)すべての和音をぼかしたバランスで。
  これは、右手のC音(ド)を響かせるためのバランスでもあります。右手のC音だけでなく、縦の線で響きを持ってきたいのであれば1)の方法がいいでしょう。そうではなく、メロディの響きを引き立たせたいのであれば、この方法がよいと思います。

2曲とも左のバランスのみを取り上げましたが、これらは右手の音と重なり合うことによって、さらに響きが変わってきます。また、ソプラノとバスだけで中の音を無視しては、ハーモニーが台無しです。この中の音をどのように響かせるかでも、音色ががらりと変わるのです。たくさんたくさん実験してみてください。そしていろんな音色に出会ってください。そこにピアノの楽しさが半分以上秘められているのでは〜なんて感じるほどです。(言いすぎ?)