【イギリスのグランドピアノ】

イギリスではピアノの普及がとても早く進みました。
大バッハやエマヌエル・バッハは発展途上のピアノより、
チェンバロやクラヴィコードなどを好みましたが、
イギリスで活躍していたクリスティアン・バッハは違いました。
彼は、新しい楽器だったピアノフォルテに大きな興味を示したのです。

クリスティアン・バッハがロンドンで出版したピアノ協奏曲集やピアノソナタは、
「ハープシコードまたはピアノ・フォルテのための」という楽器指定を持っています。
また、1768年6月1日ミスター・フィッシャーというオーボエ奏者の慈善音楽会では、
ピアノ・フォルテでソロをしています。
クリスティアン・バッハはイギリス王室の音楽教師でした。
その上、バッハ=アーベル・コンサートというシリーズを主宰しており、
ロンドンでのコンサートに大きな影響力を持っていたのです。

そんな気風の中、
ジョン・ブロードウッドはツンペ型のスクエア・ピアノ製作を始めました。
そして、共同制作者であるアメリクス・バッカースやロバート・ストダートとともに、
イギリス式のグランド・ピアノのアクションを完成させていきます。

イギリス式のアクションはハンマーが鍵盤先端の方を向いており、
突き上げ式のアクションと呼ばれています。
 ・・・ハンマーが鍵盤の方を向いているものはウィーン式。
エスケープメント機構が備わっており、
 ・・・ハンマーが弦を打った瞬間、素早く元の位置に戻るための装置。
不快な倍音も減り、均衡した音質を得ることができるようになりました。
音域も拡大され評判を得たブロードウッドのピアノは、
1800年には年間400台も生産されたそうです。

このイギリス式アクションは現代ピアノに継承されています。
この構造だとハンマーを大きくすることができるそうで、
音量が大きく鍵盤が重くて深いのが特徴です。
ベートーヴェンのソナタは、
18番以降がこのイギリス式アクションのピアノで作曲されているそうです。

面白いことにイギリスでは音量の小さなクラヴィコードより、
音量の大きなチェンバロの方が好まれました。
そういった音の好みが、この力強いイギリス式アクションを生み出したのですね。