【クラヴィコードT】



クラヴィコードという言葉が初めて書物に現れたのは1404年。
15世紀半ばには、この楽器の図面が記録されています。

「よいクラヴィコードは、音が弱いということを除いては、
音の美しさではピアノフォルテに劣らないし、
ベーブンクやポルタートをつけることができる点で、
ピアノフォルテよりも優れている」(P.E.バッハ)

ピアノはハンマーが弦を叩きますが、
クラヴィコードはタンジェントと呼ばれる、
マイナスドライバーの先のような棒が弦を叩き上げます。
このタンジェントの材料は様々で、
木、動物の骨、鯨骨、真鍮などがありました。
鍵盤を押すと、てこの原理でタンジェントが上がり、
弦を打って発音させます。

この楽器、チェンバロと違って音の強弱がついたんです。
キーを強く押し下げると弦へのタンジェントの当りが強くなるので、
音量が大きくなります。
弱く押し下げれば音量が弱くなる。
これはチェンバロにはない大きな長所だったんですよね。

そして、もう1つの特徴。
P.E.バッハが言っている「ベーブンク」と「ポルタート」です。

先端にタンジェントをつけただけの簡単な装置だったクラヴィコードは、
てこの支点を中心に、ちょこっとだけ左右に動くのです。
このちょこっと左右に動く横揺れを利用して、
鍵盤を右か左に動かすと、タンジェントが弦に当たる位置が変わります。
当然音の高さが変わりますよね。
当時の演奏者は、この奏法で感情的表現を行ったのでした。
この奏法は「ポルタート」と呼ばれます。

そして「ベーブンク」。
これまたと〜っても魅力的な特徴なんですよ。
クラヴィコードでは指が鍵盤を押し下げている限り、
タンジェントが弦を突き上げて音が鳴り続けます。
そのとき鍵盤を押し下げている指の圧力を変えると、
鳴っている音に強弱が生じるのです。
ヴァイオリンでいうとヴィブラートのような効果ですが、
ヴァイオリンのヴィヴラートは音の高低によるものだから、
厳密に言うと、やっぱりヴィヴラートではないんですよね。
この奏法は「・・・・・」という点をスラーで囲んだ記号で示されました。
この記号が書かれていたら、
その曲はクラヴィコードのために書かれたのだとわかります。