【ハープシコードV】

今回は大型のハープシコードについて。
演奏会などでよく見かけるチェンバロです。
この楽器についての最古の記述は14世紀末。
現存している最古の楽器は16世紀のものです。
この時代の主要な製作地はイタリア。
薄手で細長いという特徴があり、
なんと脚を取り外して卓上に置けるものもあったそうです。
1つの鍵盤に対し1対の弦。
たがいに反対に向いた2本のプレクトラムでこの1対の弦を鳴らしました。

17世紀に入ると、主要製作地はフランドル地方へ。
  ・・・・・オランダ南部、ベルギー西部、フランス北部にかけての地域です。
なかでもリュッケルス一家が有名で、
厚手のケースに特徴のある銘器が製作されました。
ハープシコードには1段鍵盤のものと2段鍵盤のものがありますが、
2段鍵盤を取り付けたのは、フランドルの製作者たちでした。

余談ですが、チェンバロの演奏会へ通うようになり、
「チェンバロにも発展の歴史があるんだ!」と実感した私。
考えてみれば当然のことなのですが、
ピアノが発展する以前の楽器、
という固執したイメージに捉われていたんですね。
時代によって楽器の大きさも変わりますし、
それに伴い響きの豊かさも変化していきます。
個人的には、響きすぎる大きなハープシコードより、
ちょっと小さめのハープシコードの方が好きです。
 ・・・・楽器編成にもよりますが。ソロはその方が耳に優しく感じます。

ところで、これから話を進める前に必要な知識をちょこっとお話したいと思います。
チェンバロの本などを読んでいると「何フィート」という言葉が頻繁に出てきます。
8フィートというのは鍵盤通りの実音のことです。
この半分の4フィートだと、その音の1オクターブ高い音ということになります。
8フィートの倍の16フィートだと、1オクターブ低い音。
これはパイプオルガンのパイプの長さからきている言葉です。
チェンバロは弦の太さや張力で音の高さを調整できるので、
弦の長さを示しているものではないそうです。

このハープシコード(チェンバロ)の新しい機能を見ると、
思わずエレクトーンを思い出してしまう私です。
ハープシコードにもエレクトーンのような装置があったんですね〜。
エレクトーンを始めて触ったとき、なんだこりゃ?と思ったコト。
鍵盤の実音より1オクターブ高い音や1オクターブ低い音を、
同時に鳴らすことができるんです。
エレクトーンは音色のほかに、そういう装置を使って音を作る。
ピアノでは考えられない装置です。

で、これと同じような装置がハープシコードにはあるのです。
17世紀はじめになると、
4フィート弦と8フィート弦の両方を鳴らすことができる装置が考案されました。
どういうことかというと、
上段と下段でフォルテとピアノを、弾き分けられるようになったということです。
実音だけのピアノと、4フィート弦も同時になるフォルテ。
これらは前回お話したストップの操作でコントロールします。

また、カプラーと呼ばれる機構が発案されました。
上下段鍵盤を連動させ、同時に二つの鍵盤に張られている弦を鳴らせるようになりました。
ハープシコードは、このようなストップ操作により音色を変えることができるのですね。

バッハのイタリア協奏曲をみると、
合奏(トゥッティ)とソロの対照を感じます。
チェンバロの上段鍵盤と下段鍵盤・・・のように当てはめると、
楽曲へのイメージがググッと広がると思いませんか?

ところで、これは余談ですが・・・。
リュッケルス一家が製作した2段鍵盤のほとんどは、
移調2段鍵盤だそうです。
いやぁ、これ驚きます。
上段と下段で鍵盤の配列が少しずれているんです。
例えば、上段C音の位置に下段鍵盤F音を置く。
下段鍵盤Fを弾くとC音が鳴る・・・という仕組みです。
なんとも弾きにくそう。(^-^;
でも、電子ピアノやエレクトーンにはこういう機能がありますね。
私はこういう鍵盤を弾くと頭が混乱して弾けなくなっちゃいます。
 ・・・・でもね、トン・コープマンがパイプオルガンを弾いている映像を見ると、
    弾いてる鍵盤と鳴ってる音が違ってたりするんですよね〜。
    こういう鍵盤で弾けないとパイプオルガンは演奏できないのかなぁ。