『「タッチこのすばらしい手」を読んで』

寄稿者:中嶋@管理人


 

賛否両論ある本ということで、じっくりと読んでみました。章ごとに私が感じたことを書いていきたいと思います。

///第1章について///

とてもわかりやすく手の機能について書かれてあると思います。また、それぞれの機能がピアノを弾く上でどのようなときに使われるのか、といった点にも触れているため大変面白く読むことができました。感覚で学んだものを言葉による知識として認識できたことは、生徒に言葉で具体的に伝えることができるということです。賛否両論あるとはいえ、この本を勧めたくなる理由がわかったような気がします。ここにある知識は医学知識のない私には十分にも感じられたのですが、「説明が不足している気がする」と医学知識のある知人が言っていました。もともと知識がないので、どういった点が足りないのかわかりません。しかし、足りない部分があり、それがピアノを弾く上で役に立つ知識なのであれば、どんどん自分の中に取り入れていきたいと思います。医学的に間違いはないと知人が教えてくれました。ピアノ講師として「あの奏法はこういう動きだったのか」と裏付けされるようなもので、「そんな動きはピアノを弾く上でしないぞ」といったところはなかったように思います。特に脱力に関する記述が意識しやすい文章で書かれています。(p56)

///第2章について///

まず最初に「ピアノ学習者にとて必要最低限の要点」ということで箇条書きされています。これはピアノ講師にとっては当たり前の記述ですが、こういったことを意識せずに弾いている学習者や初心者にとってはありがたい記述だろうと思います。第2節にピアノを弾く基本的な姿勢について触れてありますが、最初の脱力した基本姿勢(脱力というと語弊があります、完璧に脱力した状態ではなく(それではピアノが弾けない)、腕のバランスがとれた状態)を作る方法が書かれています。脱力をどう生徒に教えていったらよいか悩んでいる先生もいらっしゃるのではないかと思います。また、脱力なんていったら腕がだらんとして弾けないじゃないか、と思われる方。そう、正確にいうと「さまざまな筋肉や関節のバランスが取れた状態」なのですね。こう言われるととてもしっくりきます。自分が脱力できていると、なかなかうまく表現できないものですが、こうやって書かれると納得とともに、教え方の引き出しが増えます。特に大人の生徒さんはイメージしやすいのではないでしょうか。

この後、タッチや手首の旋回についても書かれていましたが、特に違和感を感じるところはありませんでした。しかし、手首の旋回の部分に楽譜と記号でたくさんの例が書かれているのですが、奏法の知識があまりない人が読み、手首に負担をかけているのに気づかないままその通りに練習する可能性があるかと思います。脱力についてはこの前までの段階で、かなり丁寧に記述されていますので、この部分で完全に脱力を身につけていれば問題ありませんが。大人の生徒さんを教えていて思うことは、自分が脱力していると思っていても脱力できていないことが多々あるということです。初心者が文字のみの情報で独学でやるのはお勧めできません。

///第3章について///

ピアノを弾く上で意識すべき筋肉を知るのに、とても有益な運動だと思います。また、「不必要な運動は極力さけること」「全身を常に楽な状態に保っていること」などについて何度も注意を促してあります。これは非常に大切なことで、この点に気を付けていれば腱鞘炎などになることはないでしょう。しかし、私もやってみたのですが、かなり慣れない動作が多くあります。夢中になっているうちに、どこかに力が入ってしまう可能性があります。また、記述だけでは伝わりにくい運動もあり、「本当にこうでいいのかな?」という箇所もありました。やはり文字には限界があります。「こうでいいのかな?」と記述内容がよく理解できない場合は、やらない方がいいと思います。

///最後に////

第2章の記述は使用例として書かれていることで、練習方法が書かれているわけではありません。しかし、これを読んで練習する人もいるでしょう。この第2章と第3章を読んで思うことは、文字には限界がある、ということです。傍で正しい方法を知っている人が見守っていてくれる中でなければ、初心者や脱力を知らない人にとって、これらの方法を身につけるのは難しいでしょう。

ピアノ講師にとっては当たり前の動作であり、それを医学的にどういった動作なのか分析してくれているということで、想像しやすくたやすく理解することができます。しかし、生徒にとってはそうではありません。実際、初心者の生徒がこの本を読んで「手首の旋回ってこういうことですか?」と聞いてきましたが、とても無理のある動きをしていました。どれほど無理な動きをしない、大げさな動きにならないと記述されていても、その動きがどういうものなのか具体的に想像できない人にとっては、言葉からのみ想像するしかないので間違った解釈をする可能性があります。写真を多く取り入れている著書ではありますが、実際の動きを見てみないとわからないものです。

独学でやっていらっしゃる方にはお勧めできません。しかし、脱力についてよく指導してくださる先生についている生徒さんや、ピアノ講師には是非お勧めしたいです。生徒さんには、この本を読むだけでなく、ついている先生に相談しながら、この本で得た知識を実際のものと照らし合わせることをお勧めします。ピアノ講師の方々は、ここで得た知識を存分にレッスンで生かすことができるでしょう。