『歌詞を大切にしたカノンから』

〜 バッハ導入へ向けて 〜

中嶋@管理人

日本語の高低アクセントを生かしたメロディやフレージングだけではなく、それがリズムにまで及んでいるという教材のご紹介です。その上、カノンで書かれた楽曲が多い!インベンションに入る前の子に使っている教材です。


かぶとむしがきょうだいで


日本語リズム旋律ハーモニー。すべてをよ〜く吟味して作曲なさっている先生の教材です。大学時代この先生の授業を受けてよかった・・・と、ピアノ講師成り立ての頃よく思いました。
この教材の中に入っている「よかったな」という楽曲。

yokattana

歌詞が生き生きしてます。
「よかったな」という日本語とリズムの一体感。この生き生きとしたリズムとフレーズを、子どもは歌から感じ取ります。この後、同じフレーズが左手で奏でられますが、この歌から生き生きとしたリズムとフレーズを感じ取った子は、左手でも同じように生き生きとした演奏をしてくれます。

使われているハーモニーもいいんです。いきなりインベンションに入ったのでは弾くので精一杯。
ハーモニーを感じる余裕もない。ところが、この楽曲は使われているハーモニーが聴き慣れた和音ばかり。

最初の4小節は TWTTXT|(注3)1小節にひとつのハーモニー、最後に終止のカデンツです。しかもすごいなぁと思うのが、ここまでの4小節、和音の構成音(注1)だけでメロディが作られてるんですよね〜。だから、すごくハーモニーがわかりやすい。・・・和音の構成音だけでこんな生き生きしたメロディが作れちゃうなんてすごい!

そして、中間部。歌詞が面白いんですよ。

「なくしたとー、思ったらー、かばんのなかだー」


生徒も嬉しそうに、「あるある!よくあるよぉ〜」だって。(私も、よくあるヨ) この中間部の面白い歌詞、すべて
属音(注2)です。楽曲の中間部が属音に支えられている楽曲って多いですよね。よかったな〜のリズムで、「ソソッソソー」。しかも、それが左右に出てくる。「かばんのなかだー」が先程の「ソソッソソー」の後ろで鳴っていたメロディに置き換わり、この歌の後ろで左が「ソソッソソー」と鳴るのです。このようにメロディが左右入れ替わりつつ、常に属音で支えられた音楽が中間部となっています。

鵜崎先生のブルグミュラー講習会でも思ったけれど、作曲家というのはその楽曲のイメージを構成に当てはめることが多々あるのですね。この曲の場合、中間部全体がドミナント(注3)の音楽です。
ドミナントが4小節続くことで、すごい緊張感が生まれます。そして、その後に「よかったな〜」とトニック(注3)でAに戻ります。ドミナントの音楽からトニックに解決することで、ハーモニーでもほっとした気持になれるんですよね。この曲、曲のはじめに「ほっとしたように」と書いてあるんですよ。

こんな風にとっつきやすい対位法(注4)が多々扱われているこの曲集ブルグミュラー程度の楽曲をスラスラ弾ける子に向いているんじゃないかと思います。インベンション前に、さささ〜っとこなしてしまう。ブルグレヴェルの子にとって、これらの楽曲譜読みはとてもラクなので、対位法を音楽的に演奏することに重点を置いたレッスンが可能です。

それにしてもほんっとよく出来た楽曲ばかり。ピアノ教材で、ここまで「歌詞」というものを大切に扱っている教材も珍しい。中村佐和子先生、先生の授業を受けられて本当によかった!


(注1)
♪♪♪ 和音の構成音 ♪♪♪

「ドミソ」という和音は、
「ド」と「ミ」と「ソ」という構成音によって成り立っています。
「ソシレ」という和音であれば、構成音は「ソ」「シ」「レ」です。

『よかったな』の場合、
「ソミッソドー」と、「ドミソ」の和音の構成音だけで
メロディが作られています。

(注2)
♪♪♪ 属音 ♪♪♪


その調の5番目の音のことです。
ハ長調であれば、「ドレミファソラシド」の5番目は「ソ」です。
ト長調であれば、「ソラシドレミ♯ファソ」の5番目は「レ」です。

(注3)
♪♪♪ トニック・ドミナント・T-W-X-T ♪♪♪


詳しくは
10月5日の記事に書いてあります。

(注4)
♪♪♪ 対位法 ♪♪♪


バッハが好んだ作曲法です。
深く追求すると、すっごくすっごく難しい話になり、
私もまだまだ・・・ってなトコなので、
ここでは簡単な説明を。

ピアノで言うなら、右手も左手もメロディということ。
そして、これらの旋律は「よかったな」でわかるように、
和音に支えれています。
作曲家は、ただ闇雲に旋律を重ねているのではなく、
和声(ハーモニーの流れ)の中で作曲しています。

身近なところでは、「カノン」。
子供の頃よくやりましたよね。
かえるのうたが〜きこえてくるよ〜
          かえるのうたが〜きこえてくるよ〜

バッハの曲は、これを1人で弾いているようなものです。
かえるのうたの輪唱を1人で弾くと面白いですよ。
是非お試しあれ!!