だが、いくら待ってもメニューがこない。キッチンに合図を送る。 「メニューがきてないんだけど」 「それがメニューです」と答えが返ってくる。それならそれでなぜ最初にそう言わない、カノジョが本を開いて「ほーんとだあ」とシャレている。カノジョさえ良ければ、ま、いっか。 それからあなたは書かれているへんてこな名前を必死で解読しようとする。「ねえ早く決めよ、これとこれ」カノジョの方が迅速かつ楽天的だった。
くりくりは1966年、「ル・クレジオ」という名で店の歴史をスタートさせる。 営業は、マスターの父母、妹二人、婿二人が携わっていた。その頃マスターは放浪の旅の最中で、アフガニスタンあたりにいた。 当初はブティックを併設、マスターの妹がブテッィク部分を担当した。ちなみに父の方は昔、開進堂というところで天皇陛下のお菓子を作っていた。 マスターがもどると、古物商免許を取得し古陶磁の販売や世界の民芸品も手掛け、ついでに海外旅行のツアーをなども企画した。まだインド、イランへの旅が希だった頃のことである。その後、改装を経て「くりくり」と改名、現在にいたる。 古物商の方はただいま休業中。本人が古物になったせいだとは、口の悪いお客さんの弁である。