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さて、陸橋の上の男がイソさんを馬鹿にして至極わかりやすり言語を発した時、プッツーンとものすごい音がしてイソさんのカンニンシテヤ袋のオが切れたそうでございます。
「なんやて、もういっぺんゆうてみい」
こういう時に大阪弁はスゴ味があります。男は突然、テレビでしかきいたこともないような大阪弁のタンカをきいて口をパクパクやっていたそうでございます。もしかしたらコヨリ結びで舌がこんがらがっていただけかもしれませんが。
さてイソさんは、売られたケンカは買うのがナニワ男の心意気や、トーキョーの若造になめられて都庁のそばで生きていけるか(カンケーないですが)と、真っ赤な顔で立っておりました。もちろん、今度は怒って赤い顔になっているのでありました。
「やめてっ、お願いやめてっ!」
やおらカップルの女の方が男の前に立ちはだかり、カン高い声でくり返したそうです。その場面はまるで映画のひとこまのようだったとは、後になってその辺りに住まいいたす青テント族の方に聞いたことでございます。
あまりの騒ぎに青テント族以外にも、外国人はくるわ、今までどこに潜伏していたのかと不思議になるほどのたくさんのカップルが来るわで、にぎやかなことおびただしかったと申します。もし、黒装束の方が大挙して顔をお出しになっていたら、それはノゾキの先生たちでございます。
今度はイソさんは真っ青になりました。他人さまの目には、まるで自分が悪漢のように映っていることがわかったからであります。カップルはひしと抱き合って被害者を装っております。こういう時中年は損をしたします。いや、ホントの話。
イソさんはその後どうしたのか、なにも言ってはくれません。でも多分、以下のようなことではなかったかと想像しております。
「ちゃうて、ちゃう。おれはなーんもしてへん。通りすがりに見ただけや」
とイソさんが言い、群集は、「やっぱりチカンよ」と囁く。
「ほんまにちゃうて。ちゃうてちゃう。チャウチャウ犬ちゃうで」
「あら、コワレてる。やーねえ」
なにが怖いって、群集ほど怖いものはおまへん。
その事件の後、イソさんは野球帽を目深にかぶり、カップルを見るとさっとビルの陰に隠れるようになったそうでございます。なんともはや、お気の毒なことで、ハイ」
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