料理とワインの店:BISTRO KRI-KRI  
   

ホーム
  ご来店になる前に
  歴史
  お知らせ
  メニュー
  最近のおすすめメニュー
  おすすめワイン
  マスターのコーナー
  マスターの奥さんのコーナー
  おもろいお客さん
  花族
  畑情報 嵐のち晴れ
  リンク集
  地図
  更新情報
   

 
花族
 
 
 
ヒオウギ
 

 11月の炉開きになると、茶席には椿が登場する。小さな花々を拝見するチャンスが多か った名残の茶の後に、胡銅の花入れなどに真に生けられた椿の大きな姿に接すると、ああ、 また炉の季節なんだなあと、つくづく感じ入ってしまうのである。椿一厘も凛として身が 引も締まるものだが、照り葉の枝や色づきはじめた木の実などをそえても変化があって 面白いものである。


 12月に入ってしばらくは谷間の季節である。炉開きというハレの舞台は遠のき、かといって正月という華やかな日もまだ少し先である。そんな時のお茶こそ、本当は一番興味深い。取り合わせの妙が楽しめるのはこういう狭間の時期だからである。お茶人の器量が問われる頃とでも言おうか。
 

 茶道具の取り合わせは横へ置いて、床の間の花はどうだろう。椿はまず使われるとしても、脇役が変る。自然と末枯れた風情のものになる。その中でも珍重されるのは「ぬばたま」であろう。ぬばたまとは、うばたま(烏羽玉)に同じ。ヒオウギの実のことである。
「烏羽玉の」といえば、「黒」「夜」「闇」、さらにはこれらの関係のある、「暗し」「月」「夢」 「寝」「こよい」などにかかる枕詞であることは既にご存知のことと思う。


 その名を冠した実を、陽と陽の間の陰に使用する。それも陽に近い陰ではなく陰中の陰、 もうどこにも逃げ場のない真っ暗闇。と、思いきや、あまりに極まりすぎて、そこはかとなく陽気の反発もある。その微妙なバランスには神秘性さえ感じられる。誰がいったいあの実にそのような名をつけ、誰が最初に茶席に使用したものであろうか。

 個人的にも「黒」に縁のある筆者は、まさにわが世の春、ならぬ冬。ほれ込んだ挙句、借家の庭にヒオウギを植えて楽しんでいる。朱夏には輝くオレンジの花をつけ、いよいよ玄冬ともなれば、黒き「烏羽玉」なのである。
 昨今では、「姥玉や」などと自嘲ぎみに言ってみるも、それさえ何だかはんなりと聞こえるところが、ちと嬉しい。

(2002年11月25日)
 
ヒオウギ  アヤメ科多年草 一日花。
葉の形が、檜の薄い板で作った檜扇に似ているところからの名前。 
 
 
     
    目次
     
    ページの一番上へジャンプ