料理とワインの店:BISTRO KRI-KRI  
   

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ウメ
 

 

 二月の二十五日は菅公の忌日である。北野天満宮では菜種御供が催される。別名梅花祭。
 私はこの北野で生まれた。白梅町椿寺という所である。この美しい町名が祟って、本人はいたって地味、咲かずじまいである。
 

 当時、俳優の父が京都在住だったので彼の地で産湯をつかった次第だが、父母の離別で東京に戻ってしまい残念ながら幼い頃の京都の思い出はない。
 

 そのかわり長じてから、しばらく京都に住んだことがある。父の師である毛利菊枝という先生の元へ弟子入りしたのである。しかしうまくいかず、一年で京都を後にした。その私を東京で待っていたものは、母の失業という重い現実であった。
 間もなく文学座の試験を受けることになる。毛利先生から杉村春子先生への推薦状もいただいて。それなのに試験会場に行かなかったのである。
 また少しして、舞台芸術学院の願書を母が取ってきた。私を女優にするということが母の悲願であったから。今度は試験を受けたが、入学金が家にはもうなかった。こうしてやっと女優という枷から解き放たれることとなった。
 

 それなのに今頃になって人前で朗読などしている自分を顧みるとき、この残滓はいったい、と首をひねらざるを得ない。
 
 山梨の借家には白梅の木が三本ある。「サクラ切る何とか、梅切らぬ何とか」をよい事に、花つくとみればせっせと切って部屋に飾っている。切るだけが手入れではない証拠に木形が年々変則になってはいるが、枝振りには野趣があってひとさまに差し上げると喜ばれる。
 

 花つきも良い分、実もたくさんできる。大家さんが取りにきて農協へ納めているが、梅の相場が安い年は地面に落ちるにまかせている。これを拾っては梅干や梅酒作りに精を出す。しかし、梅干などそれほど減るものでもなく、近頃はとんとご無沙汰である。大家さんも老齢になりほとんど取りにこなくなった。大きく香りのよい実だけに、もったいないことである。
 

 さて、今年もそろそろ開花の季節。恥多き我が半生の一朶を見上げてみようか。 (2003年2月10日)

 

 
ウメ バラ科。中国原産の落葉高木。木の肌がざらざらして凸凹が多く、ウメノキゴケや着生ランなどがつきやすい。実は食用として価値が高い。
 
 
 
     
     
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