料理とワインの店:BISTRO KRI-KRI  
   

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牡丹
 

 

 牡丹といえば加山又造を想う。画伯の描く牡丹に陶酔して画集も買った。
 加山画伯が有名であるのに対し、私の知っている画家は無名である。彼は一時、 私が水墨画を習った人である。
 

 十五、六年前、私は水墨画を描いていた。ある先生の会に属して、他の会員といっしょ に展覧会に出品したりしていた。
  会員はプロ級の人もいれば昨日絵筆を持ったようなズブ の素人もいる。私はその中間辺りにいたと思う。
 そのうち先生が亡くなった。助手が跡を継いだが、私はこの人のやり方をあまり評価 していなかったので、会を止めるかどうか迷っていた。
 

 ある時、その助手について来たのがこの画家であった。自分の絵を壁に貼って助手と話 をしていた。大きな牡丹だった。そして実にいい絵だった。花は彩色がほどこされてほん のりと浮き上がり、葉には大地の滋養のようなものが表現されていた。
 翌週から助手がしばらく欠席した。展覧会のために中国へ写生旅行に行ったのである。
 その間、画家が会員の作品を見ることになった。助手は誰の作品でも黙々と手直しをして、 ひどいのになると原型をとどめないほどにしたが、この画家はアドバイスがほどんどで、 よっぽどでなければ筆を入れようとはしなかった。それを物足りなく感じる会員もいたが、 私は人に作り変えてもらうくらいなら出品しなくてもいいと考える性質なので、その時は 画家のやり方が大いに気に入った。


 そして助手が戻ると同時に退会届けを出した。郊外にある画家の教室へ通うことに決め たからである。
 ところがである。しばらくすると私はあることに気がついた。画家は生徒たちの前で絵 を描いて見せない。勝手に描かせた絵を見てアドバイスをするだけなのだ。
 黙々と作り変えてしまうのもひどいが、水墨画教室でお手本をまるで見せないというのも 問題であろう。生徒の真の上達、運筆の気迫の伝授ということにまるで腐心していない。

  一度提言してみたがニコニコと無視されてしまった。生徒たちまで不思議そうに私を見 た。彼らのその態度のほうが私には不思議であった。あんな素晴らしい牡丹を描く人の、生の筆致を見てみたいとは思わないものなのか。
 

 結局そこも止めて、水墨画への情熱は沈潜してしまい、私の牡丹は未生のままである。 (2003年4月29日)
 
 

 

 
牡丹  キンポウゲ科 中国原産の落葉低木。8世紀には渡来したが流行したのは江戸時代。 当時の園芸書に43品種の名が見える。繁殖は未生株かシャクヤクの台に接木する。  
 
 
 
 
     
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