料理とワインの店:BISTRO KRI-KRI  
   

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カンナ

 近くにカンナが咲く道端がある。舗装路脇に細長く植物が植えられているが、自治体が管理しているようには見えない。誰かが植えて楽しんでいるのだろう。アジサイやムクゲ、アベリヤなどの合間にカンナ、ヒルガオ、タンポポ、ダイコンソウが乱れ咲く。手入れの良い年もあれば雑草がはびこる年もある。近頃は雑草が勝っている。植えている人の体調がすぐれないのかもしれない。
手入れが悪いと弱っていく植物もあるが、カンナだけは毎年大きな茎を立て、それに見合う立派な朱色の花を見せてくれる。楽しみに待っているというより、立派さに驚いてつい目が行ってしまう。

 記憶があいまいでカンナちゃんだったか、カナちゃんだったかわからないが、同じ児童劇団にそのような名前の女の子がいた。
オーディションにも何回が一緒に行った。母親を含めて四人で食事したこともある。私はカンナちゃんが苦手だった。オーディションの控室で待っている間、すぐ寝てしまうからだ。大きな頭が私の頭にゴツンゴツンと当っても、カンナちゃんは目を覚まさない。当る度にいつも微かに汗の匂いがした。それほど眠っているのに、「○○カンナさん」と呼ばれるとウソのようにさっと立ち上がって「はいっ」と返事をする。短い台詞を言ったり、悲しい表情をするときも物怖じせずに演技する。半分プロのような子供だったが、私と一緒の時に大役がつくことはなかった。端役ばかりで私とどっこいどっこいだった。
テレビドラマで花壇の前にたむろする役のとき、ひょっとしたらカンナちゃんと一緒だったかもしれない。そのとき私は人工の花を摘んで根ごと抜いてしまう失態をやらかしたが、カンナちゃんに負けずに演技をしようと踏ん張ったせいであろうか。常に「演技がおっとりし過ぎだ」と言われていたから。
カンナちゃんはお母さんが必ず送り迎えをしていた。私が劇団を替わってからは連絡を取らなくなった。オーディションでも顔を合わせなかった。そのうちこっちも受験することになって劇団どころではなくなった。
児童劇団出身で活躍する人も結構いるが、カンナちゃんは違ったのだろう。テレビにも映画にも出てこなかった。寝不足になるほどお稽古していたのだろうに、親の熱心が勝ると嫌気がさすのかもしれない。我が家もそれに近かったが。

 最初の児童劇団には青年部もあって、そこの男優さんに可愛がってもらったことは書いたが、あの人も映像にはついぞ現れなかった。「ドモ叉の死」で主役をやったくらいの人だから舞台はずっと続けていたと思う。子供心にも味わいを感じる役者さんだった。
 才能があるのに世に出ない人が沢山いるということだろう。好きで続けていても生活は苦しいし、アルバイトに励んでいる間に運が逃げてしまうことだってある。惜しいことだ。
主人と私が仲人をしたカップルに燐光群という劇団で芝居をしていた男女がいた。どちらも個性的な俳優で応援していたのだが、つい最近会ったら二人とも俳優業は止めていると言う。男性の方はそれでもまだ裏方をして劇団に関わっているが、女性は会社勤めのようなことをしているようだった。まだ若いからこのままで終わるとも思えないが、今はめぐりあわせがそうなっているのだろう。

 母がどうして私の劇団を替えたのかは謎のままである。カンナちゃんのお母さんをやっぱり苦手にしていたのだろうか。それともドモ叉の俳優さんとほのかな交流でもあったか。年下の男性に人気のあった母だから、ついそんな想像をしてしまう。(2013年8月25日)

 

カンナ カンナ科 多様な種類がある。花の形が独特の宿根草。

 
 
 
 
     
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