料理とワインの店:BISTRO KRI-KRI  
   

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 彼岸花
 

 

 『 しーろい花なら百合の花、きーろい花なら菊の花、私を泣かせる花ならば、ああ、真っ赤な港の彼岸花 』
 浅川マキの彼岸花である。
 

 秋のお彼岸には決まって赤い彼岸花が咲く。今年のように異常気象の夏を経ても、やっぱり彼岸花はお彼岸に咲いていた。そんなところにあったのかと思うような場所にニョキッと立っている。毎年その赤さにドキッとして目をそらしてしまう。尋常な色とは思えないのだ。あちらこちらと散見して後、やっと気持ちも慣れて視線が落ち着く。
 彼岸花は花期が長いようで、10月に入ってもまだ咲いているのがある。さすがに色は褪せ、花びらをいくばくか散らし線もずっと細くなっている。それでも秋風に負けずやはりニョキッと立っている。なかなかに強情な花らしい。


 その強さに淺川さんを重ねて見てしまう。もうずいぶんお会いしていない。親密だったわけではない。個人的な会話はほとんどなかったのではないか。嫁ぎ先の家族が親しかった、というただそれだけの間柄なのである。しかしもし相性が良ければ、もっと親しくなれるはずの場所でもあった。それが挨拶程度の関係にしかなれなかったのは、お互いどこか邪魔な石を抱えていたのだろう。

 その邪魔な石が近年なくなってきた。年齢といえばそうだろうが、それより、あの声に惹かれていたと気づいたからだろう。朗読という形でささやかに声を出すようになってはじめて、彼女の声の偉大さを知ったのかもしれない。それは天性と努力がしっかりと織り合わさった芸術品である。その前には何事も些細なことである。

 紹介されるまで、私は浅川マキという歌手を知らなかった。そして長い髪と黒い衣装の女性だということも。実は、私もそっくりな格好をしていたのである。「ゆるせない」と浅川さんは冗談に言ったが、それは私も同じであった。「どうして?」と。しかし考えてみれば、いつの世でも黒の中にしか生きられない人間というのはいる。そしてだからこそ、今でもこうして気にかかるのだろう。同じ暗黒の中の、同じ尋常ではない真っ赤な血・・。

『 あたしを泣かせるあいつなら、ああ、今ごろどこかの港町 』(2003年10月7日)

 

 

彼岸花 ヒガンバナ科  別名曼珠沙華。曼珠沙華とは梵語で"赤い花"という意味。花の時に葉はない。6枚の花びらと6本の長い雄しべ1本の雌しべ。有毒植物。


 

 
 
 
     
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