料理とワインの店:BISTRO KRI-KRI  
   

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 野ばら
 

 

 初冬の山を歩くと、すっかり色褪せた景色の中にときどきチラと赤い実が見える。野ばらの中で一番ポピュラーなノイバラである。
  かなり丈夫な実らしく、そうやって鳥からも寒さからも立派に生き抜いている。時にはあざやかな緑の葉まで残っていたりする。それで冬になればこの実をせっせと採って飾っている。


 ノイバラはとげがあるので床の間に使われることはあまりない。しかし、この時期に残ってくれているものはすべて愛しい素材である。かせた朱色が枝ものの間にほんの少し見えるだけで収まりも俄然よくなる。

 野ばらといえば最近、ドイツの聖トーマス教会合唱団というのが来日していた。頬を紅潮させた金髪の少年たちの面差しは、遠い日のウィーン少年合唱隊を思い出させる。

 小学校時代、私は東京少年少女合唱隊というのに属していた。その時、来日したのがウィーン少年合唱隊だった。私たちは花束を持って歓迎し、一緒に舞台にも立った。そのときの歌がシューベルトの「野ばら」であった。
 ウィーン少年合唱隊の衣装は白とマリンブルーであったように記憶する。私は濃紺のベレーに同色のスカートであった。

 この制服で映画会社のCMに出たことがある。少年が「ぼくも」とやり、私が「わたしも」と言う。そしてお父さん役やお母さん役も同じように言い、祖父母役もいたかどうか。とにかくずらっと並んで最後に「映画は松竹」とやる。ちょうど今、小津安二郎監督の生誕100年記念で盛り上がっているが、私が「映画は松竹」と叫んだ時にも小津監督の映画は作られていたのである。なんだか不思議な気持ちでテレビを観ている。

 合唱隊員であるという理由であろうか、私は佐野さんという女生徒と共に、通っていた小学校の朝の声となった。つまり、歌の録音テープを構内放送で流したのである。佐野さんは美声の持ち主であった。私も当時は美声か歌がうまいかしたのである。中学へ行ってからも聖歌隊に入って讃美歌を歌っていた。それなのにその後ひどい音痴になったのが我ながら不思議である。対人恐怖症やら拒食症やら、いろいろ忙しくしている間に歌うことをすっかり忘れてしまったらしい。今でもカラオケとは無縁の身である。

 花の時期にはおろそかにし実の時期にだけ目の色を変える私を、ノイバラも身勝手と思うのか時々チクッと逆襲される。今度から実を採る前に、みすぼらしいカナリヤが「野ばら」でも歌ってあげようか。大幅に音をハズしながら。(2003年12月13日)

 

 

ノイバラ  (バラ科) 北海道から九州まで、日当たりのいい山野のいたるところで見られる。落葉低木で高さは1〜2メートル。枝にはトゲがある。木は園芸種の台木に使う。


 

 
 
 
     
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