料理とワインの店:BISTRO KRI-KRI  
   

ホーム
  ご来店になる前に
  歴史
  お知らせ
  メニュー
  最近のおすすめメニュー
  おすすめワイン
  マスターのコーナー
  マスターの奥さんのコーナー
  おもろいお客さん
  花族
  畑情報 嵐のち晴れ
  リンク集
  地図
  更新情報
   

 
花族
 
 
 
マンネンロウ
 

 今年は一月になってから強風に度々襲われ、庭の木々、特に椿の類が葉も蕾も吹き飛ばされて悲惨なことになっている。その中でマンネンロウだけは微動だにせず花まで咲かせている。クネクネとした枝と針山のようにびっしりとつくあの葉が風を撃退するのだろうか。とにかく大地の女神ガイアが寝乱れた顔でも出したかのように力強く広がっている。紫の髪飾りをいっぱいつけて。

 マンネンロウとはローズマリーのことである。ギリシャのある島で、私はこのローズマリーをはじめて見た。
 舟で知り合ったギリシャ人家族に誘われて立ち寄った島だったが、他の島々と比べると見るべきものは少ないように思われた。だから一番印象に残っているのはその家族の姿なのである。
  船乗りの父親は留守だった。日本へも立ち寄るらしく、娘たちは父親直伝の日本語を披露してくれた。しかしすべてがあまり品のよくない単語だったので説明したり訂正したりしなければならなくて、それが一苦労だった。

 家に残っていたのは母親と二人の娘、それに兄であった。彼は港で荷役の仕事のようなことをしていたが、あまり忙しい仕事ではないらしく、いつもブラブラしていた。陽気なギリシャ男にしては、ちょっとシャイな性格だった。なかなかのハンサムであったが片目に少し障害があった。それは決して美貌をそこなってはいない、というよりむしろ魅力的でさえあったが、彼自身はとても気にしていた。私は、そのままで十分素晴らしいのだから気にすることはないと、身振り手振りで表現した。
  その島には、同じ障害をもった男性が少なからずいたが、こちらは陽気な部類で、私たちを恋人同士と勘違いしてか、口笛を吹いたり踊ったりして囃すのだった。

 日本に帰ると、その兄から荷物が届いていた。細々した物の中にローズマリーの枝が入っていた。宛名の最後には「ココロイタイ」とローマ字風に書かれていた。
 お返しを送ろうと差出人のところを見たが、なんだか判然としない文字が並んでいた。島の名前と家族の名前を英語で書いて送ったが、どうなったことやら。
 

 さて母親と娘たちはというと、二週間ほどの滞在中ずっとキッチンにいた。朝からにぎやかにおしゃべりをしていて、食事の用意やら片づけやらが終わっても外へ出ないのである。たまに出るかと思えば庭からローズマリーかセージの葉を摘んできてお茶にするのであった。お茶うけはパンである。食事と食事の合間にまたパンなのだ。オリーブオイルをたっぷりと塗っていくらでも食べる。私もトライしてみたが、ハーブティーはメンタムくさいとしか思えず、パンにオリーブは端から苦手であった。今ではどちらも大好物なのが、時間の経過のなせる業とはいえ面白い。

 私にとってのローズマリーとは、明るい日差しの中の太ったガイヤたちの、あの屈託のない笑顔そのものなのである。(2005年1月22日)

 

 

 

マンネンロウ  シソ科 地中海沿岸原産の常緑低木。よく枝分かれし叢生する。花は薄紫で長さ1センチあまり。葉は表面が白っぽく対生。
 

 
 
 
     
    目次
    ページの一番上へジャンプ