料理とワインの店:BISTRO KRI-KRI  
   

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サギソウ

 久しぶりにサギソウの心洗われる白にお目にかかった。野草好きの庭先でのことである。説明を聞くまでもなく、鳥の白鷺に似ているからつけられた名だ。
 白鷺といえば、山梨でもよく見かける。繁殖期には群れを成して騒々しいと聞くが、私の場合は多くても二三羽、通常は一羽を目撃するだけである。じっと水面を睨んでいる姿は飄々としていて味わいがある。昔から画人や陶工、塗師が写し取った輪郭の小粋さもそのままだ。やがて頭上を両足をそろえて飛んでいく。これがまた律儀で神々しい。人間はこうはいかない。サギと書いたら詐欺を想像するほど穢れてしまっているのだから。

 知人が犬を散歩させていたので構っていると、軽トラックの屈強な老人が声をかけてきた。「おー、おー、犬くれ」。私たちはすぐに歩き出したが、知人が捕まって何か言われていた。後で聞いたら「バーべキューにするからよ」と冗談とを通り越した暴言だった。
  どこの社会にも困った御仁はいようが、この人はその上をいく。かつて私たち夫婦は土地をだしに、なけなしの貯金を騙し取られた。被害者は他にもいる。みな都会から来た人たちだ。勝手が分からず困っていると助け舟を出すようなふりをしてお金や物を巻き上げる。その筋へ届け出ようと思うが、相手が巧妙で証拠の品が無い。その上、村人間の利害関係もからんで事は簡単にいかない。田舎に執着するなら騙される方が悪いと諦めるしかない。
 それにしても老人の強運さには舌を巻く。無免許で50年も運転しているのだ。何をやっても捕まらない運命らしい。家もどんどん繁栄する。新築は成る、子供はせっせと増える。今では孫たちが、被害者である私たちを悪人を見るような目で見る。日本の田舎は未だに奇妙な時空の中にある。

 私たちの最初の借家は老人のほぼ隣であった。借家はその後壊されて更地になっている。更地の奥に家が一軒あって、そこの御長男が少し前に首吊り自殺をした。親孝行で有名な息子さんだったが、ご母堂が亡くなられて暫らくすると力尽きてしまった。いろいろ事情はあろうが、正直に生きた結果がそれなのだろう。一軒おいて隣の家との対比が哀れである。そう言えば、ご遺体の発見者は老人の息子であった。二階から、かの二階の異常を察知した。現実はドラマより劇的で示唆に満ちている。
 今日も村道で詐欺師とすれ違いながら、思わず天を仰ぐ。神々しい鳥はちらとも姿を現さない。(2007年8月15日)

 

サギソウ ラン科 日の当たる湿地に生える多年草。美しいのでよく栽培される。高さ20〜30センチ。分岐せず直立する。 

 
 
 
     
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