料理とワインの店:BISTRO KRI-KRI  
   

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ノリウツギ

 数年前にノリウツギの小株を植えた。場所が悪かったのかいつの間にか雑草の中に消えてしまった。懲りずに今度はミナヅキを植えた。ミナヅキはノリウツギと同種、ノリウツギが全部装飾花になったような花をつける。こちらは幸い、去年今年とだんだん大きくなっている。ただし花が地面に倒れたままである。株が小さく茎も細いところへ、花だけは立派なのをつけるものだから這い蹲ってしまう。早々に切り取って家に飾るが、花柄が泥にまみれている姿にはなんとも物悲しいものがある。
 

 糊といえば、茶室にしている二畳部屋に障子をつけてもらった。畳の日焼けを少しでもふせぐためである。障子の枠は知人の手作り。障子紙は自分で貼らなければならない。これが至難の業だった。紙の幅が障子の桟の幅と合わないから上手に継ぎ足しをして糊をつけなければならない。結果は言わずもがな。畳の日焼けはふせげるようになっても、みっともなくて茶友など呼べるわけがない。

 継父は器用な人だった。文京区の本郷にあった家は障子が多かったので、年末になるとすべてきれいに貼り替えていた。私もはがしたり洗ったりと手伝わされたが、紙貼りだけは一度もやらされたことはない。
 また継父は身だしなみにうるさい人で、母はえらく苦労していた。洗濯物のわずかなシミや皺も許されなかった。ハンカチ一枚にも母は丁寧にアイロンを当てていた。それでも気に入らないと継父がやり直した。ズボンなどあっと言う間に洋品店のようにピンとした。
 私がアイロンがけを命じられることもあった。何度もやり直しをさせられて泣きながらアイロンをかけた。皺を消すと新たな皺ができた。皺が消えるとアイロンの跡が残った。
 今でも私はアイロンがけが嫌いである。夫が着るものに無頓着なのをいいことに、夫のものにもめったにアイロンをかけない。継父はひょっとしたら今ある姿を見越して、案じてくれていたのかもしれない。

 同じ頃、糊ババという老女がいた。誰かが「糊ババ退治に行くぞー」というと、子供たちは「オーッ」と坂を駆け路地を曲がって垣根にへばりつく。節穴からのぞけば着物の裾を広げた老女がニタリと笑って糊を舐めるというのだ。実際に舐めている姿を見た者などいない。それでも老女が何か縁側に持ち出すと子供らはギャーっといっせいに逃げ出す。いつの世も子供は妖怪を作り出す天才である。気の毒なのは老女であった。
 一緒に逃げていた幼女も今では老女に近い年代になった。(2008年7月31日)

 

 

 
ノリウツギ ユキノシタ科 全国の山地に普通にある落葉低木。若枝は赤褐色で、紙にまぜる糊をとるので糊空木の名がある。
 
 
 
 
     
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