料理とワインの店:BISTRO KRI-KRI  
   

ホーム
  ご来店になる前に
  歴史
  お知らせ
  メニュー
  最近のおすすめメニュー
  おすすめワイン
  マスターのコーナー
  マスターの奥さんのコーナー
  おもろいお客さん
  花族
  畑情報 嵐のち晴れ
  リンク集
  地図
  更新情報
   

 
花族
 
 
 
マメガキ
 

 借りていた農家のすぐそばに小さな空き地があって、そこにマメガキの木が植わっていた。地味な木だから普段はまるで意識しないのだが十一月頃になると、小さな柿の実に目がいく。空き地には当然所有者はいるのだろうが、荒れ果てて木の枝も伸び放題、それをいいことに一枝二枝失敬して生け花に使わせてもらっていた。昔は、このマメガキの実から柿渋を取って利用したらしい。
 

 茶席で時々、安南と称する茶碗が出てくるが、これが高台の中に柿渋のようなものがべったりと塗ってある。焼成温度が低い焼き物なので水漏れを防ぐために使用したのであろう。それが今では味わいの一つになっている。
 手元にもいただき物の小さな安南茶碗がある。湯呑みかぐい飲みぐらいの小ささである。その割に茶が点てやすいので、うちの茶箱点前にはよくこの茶碗が登場する。

 マメガキからの連想で、ガキ大将のことを書こう。と言っても、私が小さい時には目ぼしいガキ大将というのはいなかった。概ね女子の方が大きく力もあったから、男子よりえばっていた。私もその例にもれず、口は立たなかったがよく足が出た。スカートめくりなどされると、さっと相手の足に蹴りを入れる。私は徒競走だの水泳だのが早く足に力があったので、男子がよく泣かされていた。なんのことはない私がガキ大将ではないかと思われるであろうが、とんでもない。学級委員などしていたせいか、強きをくじき、弱きを助ける、月光仮面のようなお姉さんだったのだ。今でもそのクセが消えずに、変に正しいような事を主張して煙たがられる。そのくせさっき書いたように、荒地とはいえマメガキの枝を失敬したりするのだから、たいした正義の味方である。

 先日、育った文京区の本郷へ行く機会があって、久しぶりに東大の中やら、以前の家の周辺やらを歩いた。紙芝居を見た帰りに通った本郷館がまだそのまま残っていたので驚いた。木造のかなり古い下宿屋で今でも使用されているらしい。子供の私がその木造を愛でたわけではない。木造など珍しくなかった。ただ大きさには圧倒された印象がある。今見ると、歴史の彼方からすーっと現れた幽霊のように儚く美しい。取り壊しの話もあるとかで、今会えたことが僥倖にさえ思える。ついでに言えば、その前にある旅館鳳明館の森川別館というのも佇まいが昔のままであった。何の用だったか覚えていないが、この旅館を訪ねたことがある。声をかけるとき緊張したのを覚えている。当時の子供には立派な玄関だった。

 目を閉じると、森川別館から出てきた子供の私が、そのまま本郷館に吸い込まれていった。(2008年11月30日)

 

 
マメガキ  カキノキ科 古く日本に伝わり、植栽されたたり野生化している落葉低木。12メートルくらい。花は小さな黄白色。葉は花や実の割りに大きく普通の柿と同じくらい。
 
 
 
     
    目次
    ページの一番上へジャンプ