料理とワインの店:BISTRO KRI-KRI  
   

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サンショウバラ
 

 山中湖に別荘を持っている知人からサンショウバラの若木をいただいた。別荘は野草に囲まれ山菜やキノコも豊富である。それが災いして当初は不届き者に悩まされたそうである。近頃は鹿が庭を荒らすそうだ。つい先日も庭のトラノオを食べつくされたと歎いていた。沢山あったミョウガも半分は消えた。
 一度泊まりに行ったことがあるが、その時は裏山でルイヨウボタンを見た。ヤマシャクヤクも多いと聞いて、さすが富士山麓は違うと思った。
 サンショウバラとは葉がサンショウの葉に似ているからだそうだ。サンショウの木なら我が家の周辺にもゴマンとある。若葉や実が食用になるのは当然として、幹まですりこ木として利用するそうだ。まったくもって無駄のない木であるらしい。

 サンショウといえば鳥にサンショウクイというのがいる。先だっても群れを見たばかりだ。華奢な鳥で、「ひりひりひり、ひりひりひり」という美しい鳴き声がサンショウの辛い表現で使う「ぴりり」に似ているというのでついたとか。

 継父は粉山椒が好きであった。食卓にはかならずこの容器が置かれていた。無くなると母が浅草まで買いに行った。ウナギに付き物だが、しょっちゅうウナギを食べていたわけもないから、酒のつまみや味噌汁、香の物に振りかけていたのだろう。私は粉山椒や唐辛子を使わせてもらえなかった。他にもコーヒーはダメだとか食に関していろいろ決まりごとがあったが、不思議とビールだけはちょびっと舐めさせてくれた。
 継父には叩かれてばかりいたと記憶しているが、今考えると、ビールの事といい両国の花火で肩車をしてくれた事といい、彼は彼なりに愛情を注いでいてくれたのだろう。
 なさぬ仲の男親と女児であることから間違いを心配する大人たちがいたが、継父に限っては一切そのような心配はなかった。一度として変な目で見られたことも無く、むしろたまに酔って訪ねてくる実父のほうが誰彼見境無く触るので要注意であった。

 母は粉山椒を行商の人からも買っていた。この人は調味料やら台所の細々した道具やらをかついで売りに来ていた。菓子類も持っていたと思う。頑強そうな年配の男性だったが私はこの人が嫌いだった。母に変な目つきで笑いかけるように思えたからである。それでその人がいる間、ずっと母の後ろでにらみつけていた。差し出される飴に目もくれず、彼が荷物を背負って路地を出て行くまで母のそばを離れなかった。母は私の心配を知ってか知らずか、時々振り返って可笑しそうに笑った。男も一緒に笑いながら目は睨み返していた。実際、商売の邪魔だったろう。可愛げのない子供だとも思ったろう。私は彼が帰っても置いていった粉山椒をにらみつけ、継父が使っているときには手元を又にらみつけた。

 ところが男が急死した。事故にあったらしいと隣のおばあさんが母に言っていた。私は自分がにらみつけたから死んでしまったような居心地の悪さを覚えて、しばらく落ち着かない日々を過ごした。(2009年7月12日)

 

 
サンショウバラ バラ科 富士山、箱根周辺に自生する落葉低木。よく分枝する。径3cmくらいの球形をしたトゲのある実は頭部にがく片が残り、形がおもしろい。」

 
 
 
     
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