料理とワインの店:BISTRO KRI-KRI  
   

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ユキヤナギ
 

 冬の長い山梨でユキヤナギの花が見られるのは4月も半ば過ぎである。
 我が家のユキヤナギは植えてまだ3年だというのに、すでに大株になっている。よほど土地に合ったのか、元来強い植物なのか。おそらくは両方だろうが。
 さてその大株が11月にはすべての葉の色を変える。黄色から真紅までグラデーションが見事なので、思いっきり沢山切って家の中に飾ってみた。
 そのうち葉が枯れてパラパといくらでも落ちるようになった。捨てようとしたらちらほらと小さな緑の芽が見える。そのまま風呂場にあるバケツに入れておいた。力尽きてしまうだろうと思いきや、クリスマス前にいっせいに花を咲かせた。ピンクがかった種類のユキヤナギのはずが、真っ白に、それこそ雪のように。

 話は飛んで、桜である。
 もうずいぶん前になるが、ある冬のこと、知人のカメラマンが実業家に写真を頼まれた。導かれた豪邸の庭には温室があって、そこに桜が植えられていた。ガラス越しに見る満開の桜の美しさは凄まじいものだったそうである。

 おそらくソメイヨシノであったろう。元々が異質の花である。生れもクローンなら、寿命も短い。花の白さは怖いほどだし、散る姿はこの世のものとも思われない。
 不自然なものが時として美しいことを我々はよく知っている。お能の世界が正にそれであろう。幽霊、生霊、 万物の精などが、追い詰められていく姿は儚くも美しい。

 さてお風呂場に戻ろう。、あふれんばかりに咲くユキヤナギに圧倒されて、こちらは手を出すこともできない。来る日も来る日も湯船からじっと見つめている。湯気の中で彼らはいったい何を思っているだろう。今生最後の春とでも覚悟しているのだろうか。
 切りさえしなければこのように良心の呵責を覚えることはなかった。
  いや、花が咲いてしまったからそう思うだけだ、ともう一人の自分が囁く。あの時さっさと捨てていたら葛藤はなかったのだと。
 いっそ、こんな時期に咲くのは異端であるぞと、お能のワキのようにジャカジャカと数珠でも揉もうか。

 もう一度花を見る。花はただ花、考えているわけもない。私にしたところで、明日になれば何事もなかったようにまた別の花を切る。
 キリストだったら何と言うだろう。(2009年12月26日)

 

ユキヤナギ バラ科 中国原産の落葉小低木。日当たりの良い乾いた場所を好むが、川の岩間などにも見られる。小さな花が無数につく。

 
 
 
 
     
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