料理とワインの店:BISTRO KRI-KRI  
   

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セツブンソウ
 

 今年の節分はひっそりと一人で豆を撒いた。豆まきに限らず行事は一人でやることが多い。主人があまりその類に関心が無いからである。暦上の行事もさることながら、我が家は個人的イベントも無い。私の誕生日も素通りだった。ちょっとさびしいかなと思って翌日シュークリームを買ってきて犬と食べた。まあ、それはそれで良いものであったが。

 母の誕生日は二月三日、節分の日であった。だからというわけではないだろうが、行事の好きな人だった。祭も狂がつくほど好きだった。壁のカレンダーには誰彼の誕生日や命日、祭の予定がぎっしりと書かれていた。花火も重要な項目であった。隅田川はもちろん諏訪の花火まで毎年出掛けていた。間には七年に一度という諏訪大社の御柱祭まで見逃さない。宿の予約を取るなど数年前から楽しみにしているのである。
 そんな諏訪好きの母を霧が峰から諏訪湖へのドライブに誘ったことがある。母と主人の他に、当時ちょっと交流のあった若手の作家が一緒だった。若手といってもすでに本を何冊もだしている売れっ子で、この人は車やバイクに目がなかった。その日もオフロードバイクでやって来た。
 

 霧が峰の景色を楽しんだ後、一気に諏訪まで下りる林道のコースをとった。我が家の車はいすゞのビックホーンという四輪駆動だった。4駆ブームの極々はしりの頃で、女性がこのような車を運転するのはまだ珍しいことであった。路上で停車していると人が顔を覗きに来たりした。大型も牽引も運転できると言うと目を丸くされたものである。
 高速道路では四駆同士が出会うと合図を送りあったり、しばらく前後して走ったりした。そのようなことはほんのわずかな間に消えてしまったと思う。この二、三十年で、バスやダンプ、タクシーなどに女性ドライバーもめっきり増えた。時代の早さは驚くばかりである。
 さて珍しい女性四駆ドライバーであった私は、ハンドルを持つと人が変わるというタイプで、デコボコ道を見るとアドレナリンが噴出する。霧が峰でも作家の後を追ってびゅんびゅんと山道を下った。少しでも男に遅れを取るのは悔しいと、どこかで思っていたのかもしれない。
 あっという間に平地へ着き、ふと助手席を見れば母が真っ青な顔をしている。乱暴な運転に酔ってしまったのだ。これはさすがに申しわけなかった。道中、ついぞ横の母に目を配ってやることがなかった。後部座席の主人の方は乱暴運転には慣れたもので、飼い犬とじゃれあっていたそうだが、その声さえ耳に入らなかった。
 
 母が逝ってしまってから、セツブンソウの鉢を何度か買ったがどうしてもだめにしてしまう。きっとあの時とおなじように、自分勝手な水遣りをやらかしているに違いない。運転のほうは大分おとなしくなったと思うが。(2010年2月20日)

セツブンソウ  キンポウゲ科 樹下の湿り気の多いところを好む。地下深くに径1から1.5センチほどの塊茎が一つある。種子をまくと2年後に花をつける。

 
 
 
 
     
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