料理とワインの店:BISTRO KRI-KRI  
   

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アオキ
 

 小さいときから見知っているつもりの植物でも結局はよく見ていないなんていうものが沢山ある。私にとってはこのアオキがその一つだ。子供時代、本郷の家の裏側にあったはずだ。そこは薄暗く、低木や羊歯類がわずかに生息し、猫が通る以外家人もめったに足を運ばない狭い通路だった。小学校に入って間もなく飼っていた文鳥を猫に捕られ、後日その通路で残骸を見つけて以来、私には忌まわしい場所になっていた。だからアオキがあったとしても見ていない。だらりと垂れたような葉と、血のような赤い実が視線の端をかすっただけである。
 

 それが数日前、公園ではじめてアオキの花を見た。ガクが変化したような形の花びらは先がとがり濃い小豆色をしていて、なかなかお洒落なのである。かたまって房となっている状態はどちらかというともっさりしているけど、近づいてよく見ればそんな小さく可愛い花をつけているのであった。

 以前、アオキを味噌の保存に使うと人に聞いたことがある。確かミソブタと言っていた。味噌の表面に敷き詰めるとカビを防げるというのだ。当時は味噌を作るなんて考えたこともなかったが、山梨に通うようになってから三度ほど味噌作りを経験した。隣の老夫婦が作るときに、うちの分も一緒にと手伝わせてもらったのだ。最初に筵を敷いて大豆と酵母を混ぜるのだが、私はこの匂いを嗅いで気分が悪くなってしまった。ひ弱だと笑われたが、それ以外のことも、たとえば大豆を挽くとか、井戸で大きな容器をいくつも洗うとか、とにかく大仕事の連続で、とうてい老夫婦にはかなわないのである。
 

 三度のうちの一度はあるカメラマンが一緒だった。取材に来て主人と意気投合し、借りられる畑を世話してあげることになった。味噌も作りたいというので、隣人に材料を多めに用意してもらった。さて無事に味噌はそこの蔵におさまり、一年、二年と待つわけだったが、どうした具合か途中でカメラマンが自分の分の味噌を引き取ってしまった。出来上がった時に一緒にと思っていたので憤慨していたら、今度は畑が放棄状態だと持ち主から苦情がきた。
しかし時が経ってみれば、田舎生活の約束事や物事の悠長な推移に嫌気がさしてしまったのだろうと同情も出てくる。妻帯者だったが、まだ若かったので無理からぬことである。こちらにも田舎を理解させてあげられなかった悔いが残る。結局そのまま音信不通になってしまった。
 さて件の味噌だが、人にあげたら「これは悪くなっている」と言われガックリとした。表面にカビが生えたので取り除いたのだが、匂いがまだ残っていたのだろう。ミソブタを使えばよかったのかもしれない。私たちもそれ以来味噌作りは止めてしまった。ほろしょっぱい味噌の話である。(2010年3月30日)

アオキ  ミズキ科 高さ2〜3メートルになる常緑低木。花は径7ミリ。花弁は4個。雄シベ4個(雄花には雄シベなし)。雄花と雌花は別株につき、円錐花序をなす。

 

 
 
 
 
     
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