お料理とワインの店 BISTRO KRI-KRI
   

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  いぬけい  
     
 
左:MAY 右:十兵衛
撮影:岡崎伸彦
 
     
  ルーディ  
     
   その犬と会ったのは、やはり新宿の中央公園であった。ほっそりとしたビーグルで、あふれ出てくる生命力にどう対処したらいいのか戸惑っているような風情の、愛らしい仔犬だった。我が家のドーベルもまだ仔犬の域を脱していず、飼い主同士が目礼する間もあらばこそ、ニ匹でタッタと走り出してしまった。追いかけるドーベルは必死の形相なれど、大きな耳を空中に舞わせたビーグルは顔がなんだか笑っているようだった。その姿に見ほれて、つい呼び戻すのを忘れていると、突然の罵声である。「ババア、ババア」。えっ、ババアって誰?]芝生の端にダンボールを敷いていた人が仁王立ちになってこちらを睨んでいる。あ、私なのね。「すいませーん」と慌ててそれぞれの犬を呼び戻そうとしたが、先導者は笑ったまま突風のように過ぎていく、後続はなお必死になってドドドと人でも何でも乗り越えていく。仁王立ちはますます激昂し「ババアッ、ババアッ。バッ、バッ、ババアーッ」。こっちにも伝染して「い、今、やってんだろがーーっ」。  
     
   やがて嵐は収まって、「ハアハア、ルーディといいます」「ゲホゲホ、十兵衛です。よろしくお願いしますわ」とまたぞろ品の良い女性にもどって挨拶を終えたことであった。

 間もなく十兵衛が通っていた深大寺までお誘いして、それからは仲間たちと跳びまわる日々が続く。
  ご主人が連れてくることが多く、大柄な男性と華奢なビーグルの取り合わせは週末の深大寺には欠かせない姿になっていた。その後、ご主人はドッグランを作る運動に尽され、夢の実現は、すぐそこ、2002年11月末に迫っていた。それなのに、そこに、ルーディはいない。
 
     
   事故で死んだのだ。首の骨が折れてほぼ即死状態だったという。11月9日午前10時過ぎ、大好きな深大寺でのことだった。私は仲間からの悲痛な電話でそのことを知った。やわらかい毛の感触と、あの時の笑顔は、この先もずっと私の心に張り付いたままだろう。

 翌日、深大寺で荼毘にふされたルーディは、そのまま同所に眠ることとなった。3才になってまだ十日ほど。あまりに早いお別れであった。

 ルーディ、ルーディ、ドッグランを待ち切れなかったルーディ、もし本当に風になったのなら、遠い野山へ駆けてお行き。決して、決してご主人の心に留まってはいけないよ。あなたの愛するご主人を立ち直らせるために・・・。
 
 
     
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