料理とワインの店:BISTRO KRI-KRI
   

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  いぬけい  
     
 
左:MAY 右:十兵衛
撮影:岡崎伸彦
 
     
  ノラ  
     
 

 さて、ノラである。こちらはもっと切ない。
交流はたったの二ヶ月。ホワイととレッドの美しい猟犬だった。しかしガリガリにやせて毛は汚れ放題、おまけに事故にでもあったのか一本の足先が潰れていた。あきらかに捨て犬だ。村のどこかの家の飼い犬だったとの噂もあるが真相はわからない。

 とにかく飢えていた。見かねて一度エサをやってからは、うちから離れなくなった。身体中にひっついていた葉ダニをとってやる時もおとなしくじっとしている、というよりかまってもらえる有難さに身も心も震えているようだった。
 それでも立場をわきまえているのか決して家の中まで入ってこようとはしなかった。畑に行くときは、うれしそうにバイクの横にはりついて走った。 

 そして、やせてもかれても猟犬なのだろう、ノラは山に入ると人(犬)が変ったようになる。ササの藪だろうがクズの谷だろうが、とにかくガムシャラにつっこんでいく。それから猛烈な勢いで地面を掘る。モグラなどの小動物を探しているのだ。今こちらでガサゴソやっていたと思ったら、とんでもない彼方に尻尾の旗を立てている。これには山の犬を任じていたうちの犬もたじたじであった。
 またヤマドリやキジを容赦なく追い立てて、こちらをハラハラさせる。もう田舎でも大きな鳥は絶滅寸前なのだ。きっとそれまでノラは彼らを捕食して生きていたのだろう。

 ネアカな犬だったが、私たちが東京にもどる時にはさすがに悲しそうな顔をした。しかし狭い部屋に二匹もつれて帰れない。それにうちの犬がノラを毛嫌いしていた。私は急ごしらえの小屋を庭の片隅に作って、エサをたっぷりとおいた。

 ある時、家に着くとノラの姿がない。また山にでも行っているのかと小屋をのぞくとエサが山ほど残っている。
 シマッタ!
 私は夢中で駆け出していた。
「ああ、その犬だったさ。オラが行ったときにはまだ息があったじゃん。でも、どうしようもねえ、そのまま土に埋めただよ。こっちだって、つらいさ」
 涙が止まらなかった。

 私は今でもノラに謝り続けている。          

 
     
 
     
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