料理とワインの店:BISTRO KRI-KRI
   

ホーム
  ご来店になる前に
  歴史
  お知らせ
  メニュー
  最近のおすすめメニュー
  おすすめワイン
  マスターのコーナー
  マスターの奥さんのコーナー
  おもろいお客さん
  花族
  畑情報 嵐のち晴れ
  地図
  更新情報
   

 
 
  ますたーのおくさんのこーなー  
     
  いぬけい  
     
 
左:MAY 右:十兵衛
撮影:岡崎伸彦
 
     
  犬と遊ぼう   
     
 

 犬を飼うことの一番の楽しみは、童心に戻れることではないだろうか。人間は成人すると時に応じて様々な仮面をかぶらねばならず、それをはずすことは自分にさえままならないものだからだ。
 

 ここに一人の男性がいる。意に反した仕事についてしまったため、昼間は無理してサラリーマンの仮面をつけている。家に帰れば帰ったで、今度は夫の仮面をつけなければならない。妻と仮面無しで向き合えたのはわずか数年の間だけだった。
  子供ができたので、その上に父親の仮面も必要になった。母親も同居するようになったので、コトはさらに複雑であった。

「さあ、いただきましょう。あなたビールは?」
「ああ、すこしもらおうか」
 と新聞をわきにおいて夫面をつける。
「おとうさん、今日フシギハッケン見たい」
「残さず食べたら、見てよろしい」
 とタコさしをクチャクチャしながら父面をつける。しかしどうして、自分の前にはタコしかないのだ。赤貝はどうした?あ、あんなところにある。トロはどこだ?
「あ、こら、トロなんか食べるんじゃない、子どものくせにゼイタクなヤツだ」
「やーねえ、あなたに似たんじゃない。春クン」
「そうよ、夏彦だって、こーんなに小さいときから、トロトロって。それより夏彦、二階のトイレ直してくれたの?」
「まだですよ、こっちだって忙しいんだ。母さんヒマなんだから自分でやってくれよ。ああっ、もう、っるさいなあ。わかったわかった、やりますよ。やりゃいいんでしょ」
 と息子面をつける。
「まあまあ冬子さん、男は外でいろいろ神経つかってるんだから。ねえ夏彦くん?」
 そうだ、今夜は妻の父親が食事にきていたんだっけと、あわてて婿面をつける。
「ハハハハ、やっぱり男は男どうしですねえ。お義父さん」

「ああ、そうだ。もしボクでよければ見てさしあげますよ。二階のトイレ」
「まあ、助かりますわ。夏彦じゃいつになるやら」
「なあに、ボクだって死んだ女房にゃ、いつも叱られていたクチですよ」
「そういえば亡くなった主人も腰の重い人でしたわ」
「しかし、男は腰の重いうちがハナだ」
 やがて妻が言わなくてもいいことを言いだす。
「そうだ、ねえ、今夜泊まってったら、お父さん」
 夫面でにらんだが、あいにく妻はテレビを見ていた。
「そうですよ、そうなさればいい。にぎやかになって春彦もよろこぶ。ハハ」
「まあ、それじゃおビール、もう少しおつぎしましょうか。あ、秋子さん、あたしもコップちょうだい。今夜は酔っちゃおっと」
 何を言い出すか、まだ喪もあけとらんというのに。息子面でにらむが、母親は顔をのけぞらせて笑っているところであった。
 どうも怪しい。さては二人でおやじを殺したな。しかしどうしてタコなんだ。オレがかせいだ金だぞ。しかもオレは歯が悪いんだ。タコばかり食えるか。
 

 
     
 
     
    「日々これ疑問」も読む
     
    ページの一番上へジャンプ