料理とワインの店:BISTRO KRI-KRI
   

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左:MAY 右:十兵衛
撮影:岡崎伸彦
 
     
  笑う犬  
     
 

 アリストテレスが「動物のなかで笑うのは人だけである」と言ったかどうか知らないが、一口に笑いと言ってもいろいろあろう。可笑しくて笑い、はにかんで笑い、喜んでも笑う。
  動物の中では猿が笑うことはよく知られている。あれは、拒絶とか防御とか恐怖の歯をむく表情がやがて優位のものに対する「おべんちゃら」になり、最後には相手のきもちをなごやかにする手段になったものらしい。犬はどうだろう。笑っていると思える場面を目撃する飼い主も多いのではなかろうか。喜びを体中で表現して、つい相好まで崩れるものらしい。

 ちょっと横にそれるが、喜んだついでに物まねまでする犬がいる。うちのハヤテはニワトリの鳴きまねがうまかった。オットが教えたのである。ドライブで興奮するハヤテに、「ほらほら、散歩だ、うれしいな。コケコッコー」。ノセられて後部座席を上ったり下りたりしながら「ワひゃワっひゃー」。オットが手をたたいて喜ぶものだから、だんだん上手になって最後にはずいぶんニワトリに近くなった。以来、緑が近づく度に「コケコッコー」である。道行く人は驚ろくし、中にいる人間はもううるさくてうるさくて。十兵衛を飼うことになったとき、私がオットに釘をさしたのは言うまでもない。「もう変なこと教えないでよね」
 結局ハヤテはこれしか口真似はできなかったが、いつだったかテレビで「ちょっと頂戴」と言っている犬を観た。どうせ教えるならこういう方が実際的である。


 さて笑いの方に戻ると、どんな犬でも走るときは笑っているように見えるものだ。実際喜んでいるわけだし、走るという動作のためにくちびるが後方へ引っ張られて、こういう表情になる。それ以外にも急に飼い主が帰ってきたときなど、嬉しさと優位のものへの服従とがあいまって激しく尻尾をふり歯をむき出して笑う。だいたい犬は同じ動作で二つの信号を出せる動物である。尻尾は攻撃にも歓喜にも振る。歯をむきだすのも同じである。

 ハヤテは車で待たせることが多かったせいか、窓やドアを開けると条件反射のようにニッとやった。
 とにかく何処へ行くのにも車で連れて行った。ハヤテは助手席でナビをする。
「ハイ、左から不審なる大男接近中。色はグレーにホワイト、顔は毛で見えず。年のころ男盛りの四、五才とみた。連れてるニンゲンやせたメス。こっちは四十七、八くだり坂。あっ、ますます接近ワワンのワン」  
 デパートの駐車場では制服のおじさんが待っている。
「見ろよマア、コ汚いアメ車だね。おまけにマアでっかいこと。ここは幅2メートル以上は無理なんだけどねえ。マア音もすごいよ、どっか調子わるいんじゃないの?こんなとこでエンコなんかされたら迷惑なんだよ。あー、入ってきちゃった。ららら、パワーウィンドーも調子悪いの?買い換えたほうがいいよね」
 ぶつぶつ言っているうちに、なんとか窓が開く。おじさんは「いらっしゃ・・・」と言いかけて、うちの車みたいに口がしまらなくなるのである。ハヤテが助手席で歯をむいていたからだ。
「あ、この犬、笑ってるだけです」と言っても、もう遅いか。      

 
     
 
     
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