料理とワインの店:BISTRO KRI-KRI
   

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  ますたーのおくさんのこーなー  
     
  いぬけい  
     
 
左:MAY 右:十兵衛
撮影:岡崎伸彦
 
     
  犬、山に登る  
     
 

 そも、犬を山に連れていくようになったのは、ヘビよけクマよけのためである。聞いたら犬は気分を害するかもしれない。
 都会には背広を着たオオカミがいるが、山では絶滅したオオカミのかわりにヘビやクマがゴロゴロといる。その上、得体の知れないものの異様な鳴き声、妄想を刺激する大木群、すぐに姿を変える道等等。やたら神経が疲れる。そこで犬なのだ。のほほんとしたその表情が恐怖に固まった心を解き放ってくれる。その上、タタタと走り回る音がヘビやクマを遠ざけてくれるし、想像で変形した木の形を普通に戻してもくれる。


 あるとき、あわや野獣と鉢合わせという場面があった。場所は山梨の裏山である。すでに日は落ちて草むらは真っ暗であった。そんな時間に山歩きをしなくてもいいのだが、空の美しさについ誘われたのだ。
  ふと、ザザッザザッと聞きなれない音がする。音はかなりなスピードで斜面を下ってくる。鼻息まで聞こえるようになった。私は棒立ちになったまま、逃げろ、逃げろ、と思っている。しかし足が動かない。ハヤテも毛を逆立てて首を低くしている。やがて、そろそろと斜面へ足を踏み入れていく。今度は別の心配が私を襲う。ハヤテは大丈夫だろうか。脳裏では早、怪物がハヤテをくわえて雄叫びを上げている。


 音がやんだ。眼前にある山肌は不気味に黒々と沈んでいる。一分、二分、三分。と、突然、ザザザと音が上下に分かれて、ハヤテがすごい勢いで飛び出してきた。
 どちらも逃げたのである。多分相手はうちの畑に出没するイノシシであろう。そのことを私はちっとも怒ってはいなかったのだが、ハヤテの出現で彼もしばらくは出て来にくくなった。とにかく双方ケガなく良かった良かった。鉢合わせしていたら、そんな理解あることは言っていられなかったろうけど。

 それからは歩きながら落し物を探すのが習慣になった。テキの出現を予測するつもりである。ヤバそうなのがあれば早々に引き返せばいい。
「ふんふん、これはタヌキだな、フンに隈取りがしてある。こっちはキツネだ。アブラゲの残骸がある、フン」
 冗談を言いながら歩いていたら、かなり大きなフンにでくわした。「すわクマか!」と恐れおののき、へっぴり腰で近づけば、日も高いのに朝靄ごとき白い湯気。はて面妖なと、かしげた首でハヤテを見れば、キャツめ後ろ足でフンに土をかけておる。
「こらっ、まぎらわしいことすなっ」
 それにしても世に「フン大辞典」というものはないのだろうか。
「この電子辞書には人名辞典から、百科事典、英和辞典まで、すべて入っております。その上、今回は特別にフン大辞典までお入れして、これでたったの○○円っ、大変ベン利でお買い得になっております」なんて。  

 
     
 
     
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