料理とワインの店:BISTRO KRI-KRI
   

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左:MAY 右:十兵衛
撮影:岡崎伸彦
 
     
  犬、山に登る  その2  
     
 

 苦手なものが多いのは登山道のあるような山でも同じである。中でもヘビは、必ず会う「三種の珍奇」の筆頭である。ちなみに二番目はトカゲ、三番目はヒト。
 なにが珍奇かと言って、まずその色である。たとえて青黄赤白黒(せいおうせきびゃっこく)。模様付きもいる。亀甲に七宝また青海波、麻の葉、唐草、よろけ縞。
 さてヘビ、トカゲ、ともに身体つきも珍奇なれど、所作も相応に変わっている。伸びたり縮んだりちぎれたり。もちろんヒトもジンゴに落ちない。伸びたり縮んだりの話ではなく、こちらは音声のことで。
 

 ほらほら、聞こえてきた。・・・ンチワコンチ、ワコンチワコン、チワコンチワコン・・。修験者の群れではないぞ。普通のオっさんやオバはんであるぞ。隣人にアイサツもしない都会人が、山にくるととつぜんアイサツ魔になる。これを珍奇といわずしてなんと言おう。しかしよく考えてみたら私もそういうオバはんの一人であった。せめて山では「今日も元気でいいヒトのフリをしよう」
 

 であるからして、とても忙しい。「チワコン」と「チワコン」の合い間に「マテ」とか「スワレ」とか犬に命令しなくてはならないし、場合によっては「ハヤテ、ごアイサツは?」とチワコン諸君の機嫌もとらなくてはならない。その上、苦手のヘビである。出なくていいとき出てくるから、「へふぃ、へふぃ、はふへへふへえー」とこっちだって舌がトグロまく。恐れるあまり、木の枝までヘビに見える。目が悪いから何か光ればウロコだと思う。耳だけはいいと思っていたが、よすぎて今度は幻聴を聴く。カサコソかそけしカサコソコソ。ありゃ、そちゃヘビさまかえ?
 それほどイヤなら山などいかなければいいものを、花は見たいわ景色も見たい。ほんにワチキはわがままな・・。
 


 櫛形山へ行ったときのことだった。登山ルートをさけて、廃道とおぼしき道を歩いていた。その方が人と出会わず、ハヤテもリードなしで走れるからだ。ハヤテは早、ヨロコビを全身にあらわしてドドド、ドドドと上り下りして、いた、が、急に、ピタっと動きを止めた。見ればビックリ仰天、大きなガマが草にうもれた廃道で、風船のようにふくらんで土俵入りをしていた。にらまれた私はチビってその場に立ち往生。額からは冷や汗がタラーリタラリ。
「さてお立会い、セッシャが取りいだしたるこのアブラ、所は山梨櫛形の、人跡未踏の山中で、見るもおそろしき大ガマの、土俵入りを瞥見し、腰を抜かした山姥の、したたる脂を釜で煮て、三日三晩寒風にさらし・・・」 
 バカなことをつぶやいている間に、塩でも取りにいったかガマは姿を消していた。ホッと胸をなでおろすかおろさぬうちに、今度は更にも大きなガマがノッシ、ノッシとやってくる。その後ろにも、そのまた後ろにも・・。驚くのはまだ早い。なんとガマ集団のど真ん中に、ふっといヘビが土俵の俵よろしく横たわっていた。
 

 それから先はよく覚えていない。とにかく気がついたら息を切らして駐車場にいた。ハヤテはというと、開けっぱなしの窓から飛び込んだのか、チョコンと助手席に座っていた。ああ、なんのために犬を飼ったやら。
 それにしても、どうしてヘビがいるのにガマたちは逃げなかったのか?それを調べに戻る気はないが、とんだ「高野のチビリ」ではあった。

 
     
 
     
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