料理とワインの店:BISTRO KRI-KRI
   

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  いぬけい  
     
 
左:MAY 右:十兵衛
撮影:岡崎伸彦
 
     
  抱き犬  
     
 

 

 通っている山梨県の村は標高が600メートル以上。雪は少ないが寒冷地にはちがいない。近頃は温暖化で冬もだいぶ過ごしやすくなったが、ハヤテが小さいときはそれこそアラスカへでも行ったような気分であった。なんせ家は築二百年、土台はあっても無きがごときシロモノ、裏側は壁なんか落ちちゃって人がユーユー通れるアリサマ。
 

 それでも借家は借家。遠慮して夜はハヤテを土間に置くことにした。外はさすがに寒くて無理だと思ったから。それが前述したような状態である。土間といえど外とは変らない。飲み残しのお茶がカチンカチンに凍るほどなのだ。あまりの震え方のはげしさに、とうとう部屋に入れてやることにした(それ以来、ハヤテはなにか都合が悪いことがあると震えてみせるようになった)。
 

 はじめはしおらしく片隅にいたハヤテも、だんだん私の布団のそばで寝るようになる。ストーブをたこうが炭をおこそうが風がビュンビュンと走り回る部屋である、自然の成り行きといえばいえる。こっちだってスキー帽をかぶったり靴下をはいたりして寝てるのだ。
 しばらくすると、やたらに重苦しい夢を見るようになった。ハヤテが私の上に乗っていた。ほどなく苦しい夢は姿を消し、心あたたまり足もあたたまる夢を見るようになった。ハヤテが布団に首をつっこんで熱い息を吹きいれていた。それでもまだその頃は叱られると思ってそんなふうに首だけそっと入れていた。そのうち睡眠中にやたら悪寒が走るようになった。ハヤテに押し出された私が布団の外で震えていたのだ。
 

 それからは私が寝ようとすると当然のようにやってきて、鼻で布団を持ち上げドッカと入り込んでくる。おかげで私はいつもハヤテのお尻を鼻先に眠りにつく。ときどき鼻が曲がりそうになる。ハヤテのへの字三連発である。
 そのうち村のだれかれが言う。「聞けばなんでもヘー、犬を抱いて寝るってぇじゃんかぁ」
  トホホホホ、その噂だけは本当です、長く空閨を守っていた私が犬のお尻をひしと抱いて寝るようになったのはヘー。

 
     
 
     
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